2011/10/14
「誰か助けて!!!」
その叫びが運良く登山者に届き、小屋に連絡が入りました。
場所は間ノ沢の末端周辺。声はするけど姿は見えないので、声を頼りに坂本さんとヤブを掻き分けながらあっちこっち捜索。
捜索範囲はヤブだらけ。
少しは分かりやすい場所にいるかと思いきや見つけた場所はヤブの中。寒さしのぎ?でもそれじゃあ見つけにくいですよ。怪我が大したことがないなら少しでも見通しのある場所に移動してほしいものです・・・・。見つけてほしいから叫んでいたんでしょ?
事情を聞いてみましたら・・・。
遭難した方は西穂から奥穂を目指してきのう上高地から入山、お昼頃に西穂山荘を通過。泊まることなくなくそのまま穂高岳山荘を目指していたが15:00頃に間ノ岳 ( 本当は西穂高岳でした ) を過ぎたあたりでペットボトルを落とし、とっさに掴もうとしてバランスを崩して数m滑落。なぜかそのまま間ノ沢 ( 本当は西穂高沢でした ) を下降して明かりが見える上高地を目指していたがヤブで道が分からなくなり、さらに日没でビバーク。
今朝、上高地を目指すのを諦め夜明け前から岳沢小屋方面へ四つんば這いで進んだが疲労で動けなくなり救助要請となりました。
お昼を過ぎてから奥穂を目指す無謀な計画、( 普通なら夜明け前、遅くても夜明けと同時に西穂山荘から行動開始 ) このルートを一人で縦走するにはあまりにも乏しい登山経験、ツェルト・レインウェアを使用した形跡はなく、足元はスニーカーという誰から見ても明らかな装備不足。遭難する要素がありすぎです。食料も水もなく、助けを呼びたくてもあるのはバッテリーが切れた携帯電話だけ。天気は良かったものの、氷点下にまでなるこの季節のビバークは辛く長い長い時間だったでしょう。
無事に助かり、また山に戻ってこれる程度の怪我だったのでかなり厳しく注意しました。坂本さんのその愛のムチ(?)に野田までビビっていましたが、二人とも 「 登山をやめろ 」 だなんとことは思ってないし、言いませんでしたが、ぜひ登山の入門書や雑誌を読み、登山に慣れている経験者と歩き、どうしても一人で歩きたいなら難易度の低い山からやりなおしてほしいものです。
現在岳沢の天気は雨。遭難中に雨が降っていれば助けを求める声は届かなかっただろうし、ツェルトがないビバークは耐えられず、低体温症になっていたかもしれません。同情の余地はありませんが無事でなにより。
収容が終わり、ザックをビバーク地点に置いてきたとの事でしたのでまずは野田が探しに行きました。
本人から聞いた話だと
・間ノ岳で滑落して天狗沢を下降してきた。(本当は西穂高沢)
・ザックは岩の上に置いてきた。
・目印にライトを点けたまま置いてきた。
・(発見された場所に)どっちの方角から来たかはわからない。
・(天狗沢・間ノ沢方面を指して)たぶんあのへん
んんんー。こりゃ困った。
このときはまだ西穂の少し先で滑落したこたとはわかっておらず、(ザック発見したあとで全てが分かったので)この証言ではねえ・・・。
岩なんてそこらへんにゴロゴロあるし、ライト点けたままと言われても日中じゃそんなの見えるわけないし・・・。とりあえず天狗沢・間ノ沢を探してみたが見つからなかった。
午後から坂本さんが探したがやっぱり見つからない。本人と連絡を取ってみると写真があるとのこと。( 先に言ってよ! )それを見た坂本さんが場所を特定して発見、回収しましたが、場所は証言とは全然違う岳沢のはるか下でした。
遭難して冷静なつもりでも実は冷静さを失っているときに自分の現在地、置かれている状況をしっかり把握し、記憶し、それを的確に伝えるのは簡単なことではありませんが、正確な情報じゃないと捜索側が混乱してしまい遭難者などを見つけるのに時間がかかります。
じゃあどうすれば冷静になるのか?難しいですね・・・。僕はホワイトアウトしたり、冷静さを失う場面に遭遇するととりあえずコーヒータイムにしてお湯を沸かしますけど。あくまでも僕の場合は、ですが。
さてと、岳沢小屋の営業も残りあとわずかです。遭難について書くのは今回が最後になるのでしょうか?
ブログを読んでいる方はこの遭難の経緯をただ読むだけではなく、どうすればよかったのか?というのを考えてみてください。登山は楽しいことですが、危険もあります。そのリスクを完全に0にすることはできませんが、リスクを減らすにはどうしたらいいかを少し考えてみませんか?
と、思ったら西穂~岳沢間で行方不明者。明日から本格的に捜索開始です。天候は良くありませんが早く見つけてあげたいです。
某山岳マンガのセリフに 「死にたくなかったら歩け!」 というシーンがありますが、今回の遭難者はよく歩いたと思います。
いくつかの間違いを犯してしまいましたが、なんとかして助かりたかったのでしょう。
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