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【放送芸能】

J−POPには特別な魔法ある マーティ・フリードマン(米国人ギタリスト)

 米国人ロックギタリスト、マーティ・フリードマンのJ−POP愛は、深くて濃い。「特別な魔法」が、そこにはあるのだという。9月には自らのギターでJ−POPをカバーするアルバム「TOKYO JUKEBOX」の第2弾も出したマーティに、あふれる愛を語ってもらった。 (早川由紀美)

 マーティがJ−POPにはまり始めたのは一九九〇年代半ば。米国の人気メタルバンド「メガデス」のギタリストとして、たびたび来日していたころだ。「この音楽、一体何? 神秘的で面白い」と感じたという。

 J−POPというジャンルの中には、ギンギンのロックの要素もあれば、未来的ディスコのような趣もある。ZARDは透明感のある女性ボーカルなのに、メロディーはメタル的な部分もある。「あり得ない組み合わせ。邦楽にはルールがない」と驚いた。

 一方で、どんなジャンルでも共通して邦楽は「メロディーが強い(メロディアス)」だと感じた。女性ボーカリストのJUJUの曲は「日本ではR&B(リズム・アンド・ブルース)として聴かれているんだけど、R&B果汁は全体の2%ぐらい。あとは歌謡曲のメロディーでできてる」と分析する。「でも、なぜかR&Bのクールさは入っている。その組み合わせは、変わった考え方だけど有りだと思う。大好き」

 今回のカバーアルバムでは、そのJUJUの「素直になれたら」やAKB48の「会いたかった」など、ギターをボーカルのように歌わせることのできる十三曲をよりすぐった。松浦亜弥の「Yeah!めっちゃホリディ」はハードロック仕様なのに、なぜか切なさも増している。八代亜紀の「雨の慕情・舟唄」は、ほどよく水分が抜けて格好良くなっている。「J−POPはメロディー重視」というマーティの“理論”が再確認できる仕上がりだ。「原曲を作った人が喜んでもらえるよう、アレンジを考え抜いた」という。

 弾いてみての新たな発見もあった。「木村カエラの『Butterfly』はシンプルに聞こえるけれど、分析すると複雑。細かいこだわりがある。複雑なものを複雑に聞こえるようにするのは割と簡単だが、深い組み立て方をして、シンプルに聞こえるようにするのは二重の職人技」。嵐の「Beautiful days」についても同じことを感じたという。

 「米国では『才能で成功する』というイメージが大事。評価されるのは、曲よりも歌唱力。でも人は才能だけでは喜ばない。プラスアルファの説明できない部分の方が大事」。AKB48の団結力や木村カエラのプロモーションビデオの面白さなど「アーティストそれぞれの良さを引き出す特別な魔法を加えることに、J−POPはたけている」と評価する。「個人的には、才能より魔法の方が素晴らしいと思う」

 Marty Friedman 米ワシントンDC出身。1990年、メガデスに加入。後にメガデスは全世界で1300万枚以上のアルバムセールスを誇る世界的バンドに。来日ツアーを重ねるうち日本への興味が深まり、アリゾナ州立大学の日本語弁論大会で2位になるほどまでに日本語も上達した。バンド脱退後、東京・新宿に活動の拠点を移す。2008年にはNHK紅白歌合戦で石川さゆりと共演、「天城越え」を演奏する。著書に「いーじゃん!J−POP だから僕は日本にやって来た」「サムライ音楽論」など。09年に「TOKYO JUKEBOX」、今年9月14日に「TOKYO JUKEBOX 2」をリリースした。

 

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