結婚していない男女の子(非嫡出子=婚外子)の相続分を、結婚している夫婦の子の半分とする民法の規定は「法の下の平等」に反し、違憲--。大阪高裁がそんな決定を出していたことが分かった。
婚外子に対する相続差別規定については、最高裁が95年、合憲判断を示した。だが、家族制度をめぐる状況は近年大きく変化し、国際社会の取り組みも進んでいる。
法相の諮問機関「法制審議会」は96年、選択的夫婦別姓などとともに、婚外子の相続差別規定をなくす民法改正案要綱を答申した。また、国連の人権規約委員会や女性差別撤廃委員会は再三、日本政府に対して差別撤廃を勧告している。婚外子への相続差別を法で規定している国は、日本を含めわずかだ。
だが、自民党などの反対が強く、法改正の動きは鈍かった。
婚外子として生まれることは、子供の責任ではない。高裁決定は、その前提に立ち、相続差別規定について「法が非嫡出子を嫡出子より劣位に置くことを認めるもので、いわれない差別を助長する結果になりかねない」と指摘した。
法制審答申や、国連人権機関の勧告にも言及し、さらにこう説いた。「わが国における婚姻、家族生活、親子関係における実態の変化や国民意識の多様化、諸外国での区別撤廃の進捗(しんちょく)など、国内的、国際的な環境の変化が著しく、相続平等化を促す事情が多く生じている」--。もっともな判断ではないだろうか。
もともと95年に最高裁が「合憲」とした時も、15人の裁判官のうち5人が「違憲」と反対意見を述べた。また、一昨年9月に小法廷で合憲判断を示した訴訟では「少なくとも現時点(09年)においては、相続差別規定は違憲の疑いが極めて強い」との補足意見が付いた。今回の高裁決定も、08年末時点で、区別を放置することは、立法の裁量の限界を超えているとの判断だ。
「法律婚を尊重する」という立法目的も、時代の変化に伴い、その合理性が問われるということだろう。
最高裁は昨年7月、婚外子の相続差別が争われた別訴訟で、小法廷から、憲法判断や判例変更をする際に開かれる大法廷に審理を回付した。結果的に当事者が和解し、大法廷での判断はなかったが、判例を変更する可能性もあっただろう。
民主党はかつて、政策集で婚外子の差別撤廃を訴えたことがある。政権獲得後は、国民新党との関係もあり、民法改正問題で表立った動きはない。だが、国連機関や高裁決定も指摘するように、これは人権問題だ。大法廷の新たな判断を待つまでもなく、国会が差別解消に動く時だ。
毎日新聞 2011年10月5日 東京朝刊