一柳が代表を務める構想エネルギー21研究会の第51回勉強会の講師に東京大学大学院工学系研究科教授の大橋弘忠氏をお招きし、「原子力安全は何が問題か」と題して講演をいただきました。
講演では、基礎的な原子力の知識・考え方、最近の原子力に関する話題、本当の問題は何か?について説明頂きました。まず、過去の原子力トラブルの事例について、何が現場で起きていたのか?何が問題であったか?を一つ一つ例に挙げられ、その中で、技術的には問題の無いことであっても、マスコミが社会事件化、大企業悪者観を植え付けることにより、国民の不安を煽り、過剰反応の連鎖を生む風潮にあることを問題の一つとして指摘されました。また、原子力分野の専門外の識者、一般知識人は、原子力に理解を示しつつも、原子力を特別視している傾向にあり、その結果、行き過ぎた品質管理や膨大な量の検査などに繋がっていることも問題であると述べられました。
従って、原子力に関しては、「社会としての成熟」と、「科学的知識に基づく客観的な判断」が必要であること。また、原子力安全と一般産業安全には区別が必要であり、原子力はそれなりの知識・技能を持った人間(専門家)が適切に取り扱うべきであると述べられました。その上で、「原子力は専門家の問題であるとともに、専門家には相応の説明責任が課せられて然るべき」であると説明されました。
最後に、現在の規制当局と推進事業者との対立構図について触れ、最大のステークホルダーは国民であることを前提に、規制側と推進側の間に生じている現実との乖離を無くすためにも、より実効的な構造の見直しが必要であると結ばれました。
質疑では、参加者より、「知識・技能を持った人間(専門家)だけに任せておくのは危険ではないか?」との質問に、講師が「専門家以外の国民が何も知らなくて良い、任せっぱなしで良い訳ではなく、一般の国民が十分に原子力の安全性・危険性を理解し、その上で、信頼できる専門家に任せられるようにすることが重要」と回答されるなど、その後も熱の籠もった質疑・議論が展開されました。
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