| ☆EP6ネタバレ警報☆ 以下、約30行のネタバレ改行後にそのまま載ります(伏せ字ではありません)。ご注意下さい。
ネタバレ改行中
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●「認める」は何も認めていない
もお、何でつっこまないんだよヱリカさん! と、モニターのこっち側から言いたくてしょうがなかったことがあるんです。
少し、抜き出してみましょうか。
「一つ。“6人の部屋は全て密室でアル”。」 「認める。もちろん、郷田たちがチェーンを切断するなどして、密室を破るまでの話だが。」
「一つ。“密室の定義とは、外部より構築不可能であるコト”。」 「認める。」
「一つ。“密室の定義とは、内外を横断する一切の干渉が断絶されていることを指ス”。」 「認める。ただし、ノックや声、内線電話など、一般的な部屋で想定できる干渉方法を否定はしない。」
もうおわかりになったと思います。これ、復唱要求と回答なんです。 復唱関係でこんなやりとりになったことって、全エピソードで今回が初めてです。
復唱要求とは、 「いまからいうのと同じセリフを、赤い字で言ってみろ。真実なら言えるはずだ」 という意味だったはずです。
だから、 「6人の部屋は全て密室でアル」 という復唱を要求されたら、 「6人の部屋は全て密室である」 と回答しなければ、意味がありません。
つまり、ここでの戦人は、 「復唱要求に応じたフリをして、一切応じていない」 と解釈することができてしまうのです。
戦人の復唱要求に対する、ベアトリーチェの応答は、例えば以下のようなものでした。
妾が真里亞に渡した封筒と、楼座が開封した封筒は同一のものであるぞ 嘉音はこの部屋で殺された この部屋には、お前たち以外は存在しない。お前たちの定義とは、戦人、譲治、真里亞、楼座、源次、郷田、紗音のことを指す
ベアトリーチェによる復唱は、それ自体を抜き出しても、意味が発生するのです。 ところが、戦人による復唱を、それ自体だけ抜き出すと、こうなります。
認める。 認める。 認める。 それを認める。
戦人の復唱は、単体では、どう読んでも有意にはならないのです。 これを意味あるものとして受け取るには、前後の文脈がなければなりません。
そして、文脈というのは、読み手が「解釈」することによって発生する文意の流れのことです。
すなわち。 復唱者である戦人は、当然、 「俺はその解釈で『認める』と言ったわけではない」 というつっぱね方が、可能です。
いちばん簡単な突っぱね方は、こうです。
「復唱要求。“6人の部屋は全て密室である”。」 「「認」識した。すなわち、あなたから私に対して、そのような要求があったという事実を、私の意識は認める。だがべつに回答はしない」
サギだ、と思います? でも、「こういう解釈をとってはならない理由」がない限り、「認める」がこの意味であっても、ゲーム的にはいっこう、かまわないはずです。
もし、ベアトリーチェと戦人のゲームで、ベアトが「認める」なんていう手抜きな復唱をしようものなら、 「いっひっひ、どうしたベアト、復唱できてないぜぇ〜」 というツッコミが、即座に入ったんじゃないかな、と、わたしは感じるのです。
この解釈法を持ったうえで、以下のやりとりをあらためて読むと、ソコハカとない愉快を覚えます。
「“第一の晩の犠牲者6人の所在は、発見場所のとおりである。夏妃は自室、絵羽は貴賓室、霧江は蔵臼の書斎、楼座と真里亞は客間で、あんたは客室”!」 「……………………。」 「まさか、この時点でもう、この程度のことも復唱拒否ですか?!」 「………いいぜ。それを認める。」
もちろん、「それを認める。」は、 「この程度のことも復唱拒否しなければならないふがいない無能な自分、それを認める」 と解釈することができるのです。直前の言及をうけているのですから、この解釈は何ら恥じることがない。
つまり、「認める」という言い方で受けた復唱は、このゲームでは、一切考慮する必要がない。 もちろん、考慮したって良いですよ。 でも、不都合になったら、キャンセルしちゃっても良い。 それは、戦人が状況によって、つごうよく切り替えてかまわない。 そう、つまり、これも「左目と右目のリドル」。 ふたつの真実。 差し替えロジックトリック。 「クローゼットとベッド下のジレンマ」です。
以下、戦人とベアトリーチェが、「認める」「認めようぞ」という形で受けた復唱要求を、すべて抜き出しておきます。 戦人は、そしてわたしたちは、以下の条件を、任意に却下することができます。
・6人の部屋は全て密室でアル ・密室の定義とは、外部より構築不可能であるコト ・密室の定義とは、内外を横断する一切の干渉が断絶されていることを指ス ・密室破壊時、室内には犠牲者(夏妃・絵羽・霧江・楼座・真里亞・戦人)以外存在シナイ ・密室破壊後、部屋に入ったのは、私を除き、蔵臼、留弗夫、秀吉、郷田の4人のみである ・犠牲者たちは、他殺を除くあらゆる方法で死んではいナイ ・第一の晩の犠牲者6人の所在は、発見場所のとおりである。夏妃は自室、絵羽は貴賓室、霧江は蔵臼の書斎、楼座と真里亞は客間で、あんたは客室 ・隣部屋に所在するのは、秀吉、譲治、紗音、熊沢、南條である!
・出入りの定義とは、客室と外部の境界を跨いだかどうかである ・客室とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット内の全てを含む
●チェーンロックはなぜ外部から操作してはいけないのか
屋敷の客室密室。あの戦人が閉じこめられた密室ですが、ヱリカとドラノールが、何度も何度も、 「外からチェーンロックをかけるのは禁止!」 という意味のことを、しつこくしつこく念を押します。
これを彼女たちがいうたびに、わたしは、 「あれー、そんな条件、いつ出たっけ?」 と、首をかしげたのでした。
読み返してみたところ、(読み落としがあるのかもしれないのですが)、外からのチェーンロック施錠を禁止する条件は、以下の場所にしか出てこないのです。
「一つ。“6人の部屋は全て密室でアル”。」 「認める。もちろん、郷田たちがチェーンを切断するなどして、密室を破るまでの話だが。」 ドラノールが頷いて合図すると、後ろのコーネリアがやり取りの記録を取る。 「一つ。“密室の定義とは、外部より構築不可能であるコト”。」 「認める。」 「……つまり、外部からはどんな細工でも、密室を構築できないということ。チェーンロックを外部より、細い針金などで器用に掛け直した、などは認められないということです。」
部屋の外からの、針金ハンガーでのチェーンロックかけ直しが禁じられているのは、戦人が「外部より構築不可能」の復唱に応じたからで、そしてその復唱は「認める」系の回答なのです。
すなわち。 「客室の密室は、外部から構築してはならない」 という条件は、 「認める。」 という復唱を、「認識した」という意味だということに「差し替える」ロジックトリックによって、キャンセルすることができる。
これをキャンセルすることができれば、あとは何も、むずかしくはない。
1.ドアを開ける。 2.外に出る。 3.外からチェーンをほどこす。 4.逃走する。
この手順で脱出すれば良い。 なんと戦人は、嘉音を身代わりにすることなく、密室を脱出することができました。
●文脈通りにとらえた場合
えーっ、という反応が聞こえてきそうです。(あるいは、ブー!かな)
それはいくらなんでも、言葉遊びがすぎる、ずるくはないか。 文脈上、「認める。」というのは、「要求された復唱の内容を認める」以外には解釈できないのであって、差し替えロジックは無効であると考えるべきだ、と。
では、自然に認識される文脈通りの意味だとして、戦人がひとりで脱出する方法を考えてみたいと思います。
もう一度、復唱要求シーンを引用します。
「一つ。“6人の部屋は全て密室でアル”。」 「認める。もちろん、郷田たちがチェーンを切断するなどして、密室を破るまでの話だが。」 ドラノールが頷いて合図すると、後ろのコーネリアがやり取りの記録を取る。 「一つ。“密室の定義とは、外部より構築不可能であるコト”。」 「認める。」
第1の復唱要求。密室判定に対して、「郷田たちがチェーンを切断するまで」というただし書きがついています。 このただし書きは白い字ですが、「文脈から判断して」、「郷田たちがチェーンを切断するまでは、6人の部屋は全て密室であった」という意味にしか、取ることができません。
そして第2の復唱要求。ここで密室が定義されます。この「外部より構築不可能であるコト」によって、外からチェーンをかけなおすことが禁止されるのです。
「郷田たちがチェーンを切断するまでは、密室である」 「密室は、外部から構築不可能である」
足し合わせると、こうなるのではないでしょうか。
「郷田たちがチェーンを切断するまでは、外部より構築不可能である」
戦人が閉じこめられた密室は、ヱリカのガムテープ封印によって密室化しているのです。 ヱリカがほどこした封印は、当然のことながら、郷田たちがチェーンを切断したあとに発生しているのです。
よって、こうなるのではないでしょうか。 「ヱリカが構築した密室は、『外部から構築不可能』という条件を持たない」
これは当然の論理ではないでしょうか。文脈からいって、戦人の密室定義は戦人が作った密室に対する言及であるにきまっていますし、ヱリカがガムテープによって「再構築」した密室は、チェーン切断後に再構築されているのです。
この方法でも、戦人はひとりで外からチェーンをほどこし、脱出することが可能になりました。
●内側からしか出来ない!
しかし、以上のようなへりくつを一発で吹っ飛ばしかねない赤字があります。
「しかしこの扉にはチェーンロックが掛かっています。外すも掛け直すも自由ですが、それは内側からしか出来ません」
これ、ヱリカの赤字です。 内側からしか掛け直しちゃダメ、と、赤字で言い直されてしまいました。
これを抜けてみます。 というか、単純な言葉遊びで抜きます。 このことが、チェーンロック密室に対する、わたしの根本的な疑問。わたしの出発点でした。 状況を頭の中で再構成してみると、どう考えても「物理的には単独脱出が可能」であるのに、どうして不可能のように扱われているの? というのが、すごく不信感だったのです。
以下の形でよくないですか?
1.ドア開ける。 2.外に出る。 3.チェーンをガムテープでつなぐ。 4.逃走する。
ロノウェふうに言うと、 「外からチェーンを掛けてはいけない、とは言われましたが、掛かった状態でちぎれているチェーンを、外から修復してはならないとは言われておりませんもので」
ましてやあの部屋には、針金があるのです。 切れたチェーンを針金で延長し、それをたぐってチェーンの先端をドアの外に引き出し、ガムテープでつないで、針金を除去する。 これは簡単で、1分でできます。
●嘉音が介在する赤字について
以上が、わたしが真っ先に考えた、ep6密室解法ですが、終盤で問題が発生してしまいました。 戦人を救出したのは嘉音だと、ベアトリーチェが赤字で言ってしまいました。つまり、「嘉音を使って密室を解かねばならない」という条件が生まれてしまいました。
ベアトリーチェとしては、それは当然の選択かもしれません。 というのも、ヱリカやドラノールが「外からチェーンをかけちゃダメ」「ダメ」「ダメ」というアピールをするのが、どうにも、しつこすぎるようにわたしには感じるのです。
つまり……ヱリカは、「外からチェーンをほどこしてはならない」という条件が、ほんとうは存在してない、欺瞞であることを、自分でわかってるんじゃないか。 わかっていながら、「外からは構築不可能」であるかのように、戦人をミスリードしているんじゃないか。 わたしは、それを疑っているのです。
だとすれば、「外からガムテープで修復した」という解は、ヱリカの手の内です。 つまり、ヱリカはこの密室問題に正答することができます。 この場合、ベアトリーチェは、 「戦人は外からガムテープでチェーンをつないで脱出したのだが、それ以外の方法で脱出したかのようにヱリカに思わせなければならない」 のです。
そこで、 「戦人は密室を単独脱出したのだが、嘉音の救出によって初めて脱出できたように見える」 というかたちを、無理してつくってみたいと思います。
とりあえず、大きな赤字は以下です。
戦人を救出したのは、間違いなく嘉音本人である。 戦人救出時、客室に入ったのは嘉音のみである。 そなたと嘉音は入ったのみ、戦人は出たのみ。
客室に、嘉音は存在しない。………もちろん、クローゼット、ベッドルーム、バスルーム、この全てにおいてである。
だいたいまとめると、
・嘉音が戦人を救出しなければならない。 ・嘉音は客室に入らなければならず、出てはならない。 ・嘉音が客室に存在してはならない。
と、なります。
まず、嘉音に戦人を救出していただきます。
救出の定義が決められています。
「救出者とは、戦人の開けたチェーンロックを、再び掛け直した者、ということにする。戦人を救う意志があったかどうかは、問わないことにしておく。」
こういうのはどうですか。 「戦人の開けたチェーンロックとは、屋敷本館客室のものでなくともよい」 だってそんな条件はありませんものね。
想定としてはこうです。 1日目の夜。日付が変わるか変わらないかのころ。 いとこ部屋でトランプをしていた戦人が、こんなことを言い出します。
「いっひっひ、おもしろいこと思いついちまった。いけすかねえ探偵気取りの女に一泡吹かせるのさ。真里亞、おまえもそうしたいだろ。よし、ちょっくら2人で屋敷のほうに行ってこようぜ」
ゲストハウスは、リゾートホテルとして建てられたもので、いとこ部屋はその客室です。つまり、いとこ部屋のドアにはチェーンロックがある見込みなのです。
戦人が、そのチェーンロックを開けます。
嘉音(を名乗ることができる肉体を持つ誰か)は、「お気をつけて、戦人さま、真里亞さま」などといって、玄関先まで2人を見送り、いとこ部屋に戻る。つまり「客室に入る」。 そして嘉音は、戦人が開けたチェーンロックを、再び掛け直す。
これで、嘉音は客室に入り、戦人を救出し、「屋敷本館の客室には」嘉音は存在していません。 「嘉音に戦人を救出する意図があったかどうかは問わない」という素敵な条件を、フル活用した解き方です。
この密室破りのメイントリックは、「いとこ部屋」も「客室」である、という点です。 異なる2つの名を持つ部屋が存在してはならない、なんていう条件はないのです。
「紗音」が、「嘉音」という別名を持っていても、この密室は解けますが、 「いとこ部屋」が「客室」という別名を持っていても、解けるのです。
「客室内とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット内の3区分である」 という定義が、ヱリカとベアトリーチェによって確認されています。 いとこ部屋には、当然、ベッドルーム、バスルーム、クローゼットがある見込みですから、客室の定義をみたすのです。
だめ押しで、こんな描写はどうでしょう。
紗音と嘉音は、ゲストハウスの準備に追われていた。 「……親族の方々を泊めるなら、お屋敷の客室で充分だろうに。」 「そうね。こっちのお掃除、大変だもんね。……でも、ゲストハウスのお掃除は、好き。」 「奥様や、他のムカつく使用人もいないから静かでいいもんね。」 紗音は苦笑いしながら、客室の細部を点検していく。
ここでは、「ゲストハウスの」「親族の方々を泊める部屋」を、「客室」と呼んでいるのです。 つまり、ここに伏線がありました。 伏線が存在する以上、「いとこ部屋」が「客室」との「一人二役」を演じていても、ノックス違反にはなりません。
地味なところで、少しひっかかりそうなのは、以下の赤字でしょうか。
「そなたの入室からロジックエラー時まで、客室を出入りしたのは、そなたと戦人と嘉音のみだ。」
これをそのままのめば、ヱリカの入室からロジックエラー発生時までの短い間に、「嘉音が客室に入る」という現象が発生しなければなりません。
ひとつの抜け方としては、「そなたの入室」を、「事件が起こった屋敷本館客室への入室」とは受け取らない場合。 この場合、たとえば、「ヱリカにあてがわれたゲストハウス客室への入室」からロジックエラー発生時までという、数時間のあいだに、「嘉音が客室に入る」という現象が発生すればよいことになり、いとこ部屋の入退室で問題なくなります。
もっと派手にひっちゃぶくなら、こうでも良いです。
「復唱要求。“出入りの定義とは、客室と外部の境界を跨いだかどうかである”。」 「認めようぞ。」 「復唱要求。“客室とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット内の全てを含む”。」 「認めようぞ。クローゼット内を客室でないと言い逃れる気などさらさらないわ。」
そう、ここに、「認める」系の復唱があるのです。 つまり、ベアトリーチェは、この2つの条件を、「差し替えロジックトリック」によって、任意にキャンセルすることができます。 よって、
「出入りの定義とは、客室と外部の境界を跨ぐことだとは限らない」 「客室とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット内の全てを含むとは限らない」
これで、「客室の定義」と「入室の定義」をうたがうことが出来ます。ここで問題になっている赤字は、「客室に、どのタイミングで入室したか」ですので、事実上、何の意味もない赤字へと変えることができました。 これってあたかも、「王子様をカエルに変える魔法」ですね。
さあ。これで。 「戦人は単独で密室を脱出した」という現実の上に、 「戦人は嘉音に救出された」という幻想描写を書き加えることができました。
以上のような密室解法が、わたしの提案する、「チーズを1切断で8分割する方法」です。
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