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No45534 の記事


■45534 / )  右代宮霧江とシンパシー・フォー・ザ・デビル
□投稿者/ Townmemory -(2010/04/26(Mon) 01:47:23)
http://blog.goo.ne.jp/grandmasterkey/
     Ep4の「霧江からの電話」がずっと気になっていました。

    「悪魔」に追いかけられた霧江がどこかの部屋に閉じこもって戦人に電話をかける。鍵穴からはシエスタの黄金矢が飛び込んでくる。自分はもうすぐ死ぬ。
     そういう状況下で霧江は、

    「もし悪魔に遭遇したら、その正体を疑う必要はない。そういうものだと理解して欲しい」

     という趣旨のことを戦人に訴えます。
     まさかの悪魔全肯定発言。

     わたしはこれを素直に、
    「悪魔や魔女を信じさせたい“犯人”がいて、そいつに銃で脅され、“悪魔を信じろ”といった内容を『言わされている』」
     という受け取り方をしました。

     が。

     右代宮霧江という人は、さまざまな場面で描かれている通り、スーパースペシャル才女です。度胸だってすわっている。
     そういう右代宮霧江が、脅されて命があぶないからといって、何の芸もなく、強要された通りのことを言うだろうかというのが疑問でありました。

     例えば、もしも、
    「いっけん、強要された通りのことを言っているようだけれど、ある法則に従って読み解くと、別のメッセージが伝わるような言い方をしている」(しかし戦人はそこには気づけなかった)
     といった「仕掛け」がしくまれていたら、これはいかにも、霧江らしい。

     そういう仕掛けはないのかと思って、気が向くたびに暗号解読的に読み解いてみたのですが、はかばかしい進展はありませんでした。

    「強要されて言わされた」という前提が、そもそも間違っているのか?


     これに関して、最近、ちょっと面白そうなアプローチを思いついたので、以下それについて。


         *


     右代宮霧江という人物について、以下のような部分に注目しています。


    「去年よりもずっと成長したと思いますよ。えっと、今年で9歳でしたっけ?」
    「9歳。うー。」
    (Episode1)

    「うー! 濡らさない!」
    「くす、素直で可愛いぃ。戦人くん、真里亞ちゃんの面倒、ちゃんと見てあげてね。」
    「おうよ、任せろ!」
    (Episode1)

    「…………女の子には女の子の世界があったことを、私たちはたまに忘れるわ。時には尊重してあげないとね。」
    「……そうね。…お気遣いをありがとう、霧江姉さん。」
    (Episode2)

    「楼座さんは毎日を真里亞ちゃんと過ごしてるから、小さな変化に気付かないかもしれないけれど。一年ぶりに再会した私たちには、その大きな成長ぶりがよくわかりますよ…。」
    (Episode2)

    「うー! みんな幸せー!! 暗くなるの駄目ー!! 信じてー! みんなで幸せになれるって信じないと、幸せが逃げちゃう! みんなで信じないと駄目なの! うーうーうー!!」
    「……いい話ね。私も信じるわ。私たちは幸せになれるわよ。」
    「うー! 霧江伯母さん、ありがとぉ!! 戦人と朱志香お姉ちゃんも信じて! ベアトリーチェも、信じないと魔法が力を持たないっていつも言ってる。うー!」
    (Episode3)


     つまり、
    (1)右代宮霧江は真里亞によく注目しており、言及が多い。
    (2)右代宮霧江は真里亞に対する理解が深く、真里亞の感性に共感的である。


     ということが、各エピソードにおいて、非常によく示されている。そういうことが言えそうに思うのです。

     右代宮関係者の大人世代で、このように真里亞に対して優しい視線を向けるのは、右代宮霧江ただひとりなのです。
     夏妃は楼座と友好的関係にある、ということが語られますが、その夏妃だって、真里亞にこのような接し方はしていないのです。

     中でも注目したいのは、このセリフ。

    「…………女の子には女の子の世界があったことを、私たちはたまに忘れるわ。時には尊重してあげないとね。」

     Ep2で、真里亞がハロウィン・トリビアを滔々としゃべり、自分が魔女傾倒の夢見がちな女の子であることを一同にあきらかにしてしまいます。楼座は、それが恥ずかしいあまり、真里亞をひっぱたき、あのハロウィンかぼちゃのお菓子を取り上げて粉々に砕いてしまうのです。

     このセリフはその直後に、霧江が楼座に対して言ったものなのです。

     ほのめかしてきな表現で言っていますが、このセリフは、

    「女の子が、魔女にあこがれたり、空想の世界をつくりあげることは、おかしくもなければ悪いことでもない。彼女が大事にしている内面世界をみとめておあげなさい」

     という意味にちがいないと思うのです。

     わたしの印象では、霧江という人は、真里亞の語る魔女の夢や魔法の話に対して、とてつもなくシンパシーを持って接している。
     そのように見えてしかたないのです。
     口先だけ真里亞に優しく合わせている譲治なんかよりも、ずっと共感的に見える。

     このセリフのあと、別のシーンで、「真里亞ちゃんはこの一年でかなり成長したわね」という意味のことを、霧江は語ります。
     楼座は、「魔女なんかにいつまでも夢中なのは恥ずべき成長不良だ」と思っているので、霧江のその言葉にポカンとするわけです。

     どうやら霧江という人は、
    「内面に、空想の別世界を持っている」ことと、「人間の成長」とは無関係だ
    (夢みたいなことにむちゅうになっているからといって、「成長が遅い」「成熟していない」ということにはならない)
     という考え方を持っているようですね。


     ひょっとして、霧江は子供のころ、真里亞みたいな少女だったのではないかな。
     魔女とか魔法とか、そういう空想的なものを、霧江もすごく好きで、内面の空想世界をとてもだいじにしていたんじゃないかしら。
     そして、そういう感性を、大人になった今でも、ちょっと持っている。

     だから、以下のような発言が、ときおりぽろっと出るのかも。

     明日夢さんなんか死んでしまえ。
     そして私と再婚してほしいって、ずっとずっと嫉妬して呪って、そしてやっと明日夢さんが死んだ。
     私は確信したわ。
     私には魔法の力があって、それが呪いとなって明日夢さんを殺したんだって確信したわ。

    (Episode3)

    「嫉妬のレヴィアタン、ここに……!」
    「悪夢の中だっていうなら、………私の悪夢に出てくる友人がいてもいいわよね。嫉妬の地獄の、友人よ。危機一髪だったわ、ありがとう。」

    (Episode6)



         *


     さて。以上のような人物理解をもとにして、Ep4「霧江からの電話」を、再び考えてみます。

     霧江は飛び道具による襲撃を受けています。描写でもそうですし本人もそう言っている。
    「だんだん着弾が近づいてくる」なんてことも言っていますね。「鍵穴から精密狙撃ができる特殊な飛び道具」なんてものの存在は、なかなか認めがたいので、
    「犯人は霧江と同室しており、脅しとして、消音器つきの拳銃をぱすぱす撃っている」
     くらいの理解をしたいと思います。

     やはり、「霧江は犯人の顔を見ている・誰が殺人者なのかはっきりと認識している」と考えるのが自然のように思います。

     にもかかわらず霧江は、戦人への電話で、
    「犯人は誰々よ、会ったら逃げて!」
     とは、言わなかったのですね。


     冒頭で軽く推理したとおり、やはり犯人は、
    「人々を襲って次々と殺しているのは、金蔵が召喚した悪魔である」
     というようなことを、脅しによって強要し、霧江に言わせた……。
     これはOKな気がします。

     この連続殺人事件の犯人は、
    「魔女、悪魔、そして“魔法”が、このように存在することを、認めてもらいたい」
     という願望を、持ってるっぽいのです。

     信頼度の高い、霧江という人物の口からそういう言葉が出れば、戦人は真に受ける可能性が高い。少なくとも、そのことについて真剣に考えざるをえない。
     犯人はそういう意図をもって、武器で霧江を脅し、「悪魔や魔女が現れて、次々に人を殺した」という作り話を「言わせた」。そう仮定します。


     霧江はその要求を聞いて、どう思っただろう。


     真里亞の内面世界にある「魔女と魔法の世界」のお話を聞いて、そこにシンパシーを感じることのできる右代宮霧江。
     ひょっとしたら、幼少期には彼女もそんな少女だったかもしれない右代宮霧江。

     右代宮霧江は、この要求から、
    「魔女、悪魔、そして“魔法”が、このように存在することを、認めてもらいたい」
     という、犯人の願望を、逆算で「理解」することができたんじゃないだろうか。

     この連続殺人が、「お願いだから、魔法の存在する幻想世界を、認めて欲しい」という悲鳴のようなものである、ということを、察知し、理解したかもしれない。

     ひょっとしたら、そういう犯人の心の動きに「共感」すらしたかもしれない。


     もし、仮にそうだとしたら。
    「犯人は誰々よ、逃げて!」というメッセージは、戦人をあおり、対決を生み出すだけです。犯人は戦人を殺すしかない状況になりますし、戦人は犯人を撃退しようと考えるでしょう。「戦人の安全」という点でも、メリットがないのです。

     そうではなく。
     霧江の、この状況での最善手は、
    「戦人が、犯人の気持ちを“理解”するよう、誘導すること」
     なのです、たぶん。

     この犯人が、殺人をやめることがあるとするなら、それは、
    「誰かに、深く理解されたとき」
    「戦人が、理解してくれたとき」
     に、ほかならないだろう。

     だから、戦人にそれを促す。逃げろ、とか、犯人を阻止しろ、とかではなく、「理解せよ」という布石をうつのです。


     だから、こういう発言になる……。

    「………もし。あなたの前に悪魔やら魔女が現れても。」
    「あぁ…。」
    「その正体を、疑う必要は何もないわ。……そういうものだと、理解して。」


     あなたの目の前に「魔女」として現れたその人物の、
     魔女性を認めてあげなさい。
     その人物が、どうしてそんな願いを抱いたのか。それを理解してあげなさい。

     そういう意味合いの発言のように、急に見えてくるのです。

     そのように解釈した場合、この「疑う必要はない、理解して」発言。内実は、以下のこのセリフと、意味するところはまったくおんなじであると言えるのです。

    「…………女の子には女の子の世界があったことを、私たちはたまに忘れるわ。時には尊重してあげないとね。」

     真里亞の内側にある魔法の世界。それを尊重せよ。
    「犯人」の内側にある魔法の世界。それを尊重せよ。


     犯人は、「犯行を行なったのは悪魔だ、と言え」というところまでは、要求したと思うのです。
     ですが、「魔女や悪魔を理解しなさい、と言え」とまでは、要求したとは思えないのです。
     だから、この部分は霧江のアドリブだと思うのです。
     そういうアドリブをあえて入れたのだとしたら、それは、どうしても戦人に伝えねばならなかったこと、かなりシリアスな本心なのではないか、という推定ができます。

     同じシーンの霧江のセリフですが、これなどは、とてもシリアスで深刻なトーンがあって、「言わされている」感じはまったくしないのです。

     ……あなただけは信じ、理解して、………私たちに受け止め切れなかった存在を、……受け止めてほしいの。


     あなただけは信じ、理解して。ということは、霧江たちは信じ切れず、理解しきれなかったのです。
     私たちに受け止め切れなかった。ということは、受け止めようとしたのだけれど、受け止め切れなかったのです。

     霧江たち大人が、信じ、理解し、受け止めることができたなら、この惨劇はきっと起きなかった。
     それができなかったから、この惨劇が起きてしまった。

     だから、最後に残った戦人にそれを託す。信じ、理解し、受け止めることで、これを終わらせて欲しい。それが、あなたが生き残る道でもある……。



     右代宮霧江は、「誰も魔法を信じない世界の孤独な魔女たち」に対して、シンパシーを抱くことのできるメンタリティの持ち主であった。
    「悪魔、魔法、魔女の作り話」を強要されたが、そのことによって、犯人の中にある内的幻想世界がどんなものであるか、理解することができた。
     この惨劇を止める方法は、抵抗でも逃走でもなく「理解」である、という結論に、霧江はたどりついた。
     その結果、犯人の強要に抵抗するのではなく、また戦人にも抵抗を促すのではない。犯人が要求する通りのストーリーを戦人に告げ、「理解を促す」。これが、戦人をこの惨劇から救う可能性のある最善のルート。

     だから、悪魔のストーリーを語り、それを「理解して」と訴える。

     犯人が霧江に求めていたアクションと、霧江が考えるこの状況下の最善手は、たまたま、ぴったりと一致した。だから、抵抗的なメッセージなどは彼女は入れなかった。ただただ、「理解し、受け止めるのよ」とシリアスに助言した……。


     ひょっとしてそんな感じだったかもしれないな、という一説です。


    ■Twitter http://twitter.com/TowMemo
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