![](/contents/069/782/105.mime4) | 「右代宮霧江とシンパシー・フォー・ザ・デビル」 no45534 の補遺です。
Ep2はやけに気になるところが多いエピソードで、霧江がらみでもいくつかひっかかりを感じます。 くどいかもしれないが、どうしても重視せざるをえないのが、やはりこの発言。
「…………女の子には女の子の世界があったことを、私たちはたまに忘れるわ。時には尊重してあげないとね。」 「……そうね。…お気遣いをありがとう、霧江姉さん。」 (Episode2)
以前わたしは、この発言を起点にして、「Ep2における霧江とブレザーベアトの対決」について検討したこともあります。が、今回はそれとは少しずれた話。
この「女の子の世界を尊重」発言のあと。 少し時間をおいて、霧江と楼座が2人きりで話をするシーンがあります。
楼座は、「うちの子はまだ一人で服もたためない」と愚痴をこぼし、 霧江は、「でも私には、真里亞ちゃんが大きく成長しているのがわかる」と言う。 そして少し、母親同士の育児関係の世間話があって、
「うぅん、気にしてません。…こちらこそごめんなさい。私たち、互いに娘を持つ母親同士なんだから、もっと交流しなきゃいけないのに。いっつも会えば変な話ばかりで…。」 「……この屋敷の空気のせいよ。ここの空気を嗅ぐと、いっつも私たちはギスギスしあってるもの。……楼座さんとは、親族会議じゃない席で、一度ゆっくりお茶でも飲みたいわ。銀座に行き付けの素敵な喫茶店があるの。ぜひ今度招待させて。」 「ありがとう、霧江さん。その時はぜひ…。」
と、このようなやりとりでシーンがしめくくられます。
そういえば、Ep6では、楼座はこんなことも言っていました。
「霧江さんの話が出たから言うけど。………彼女の話は、私にとって、希望、……夢なの。」 男を寝取られても、彼女は18年間、辛抱強く待った。 自暴自棄にならず、それでもなお留弗夫の側で支え、じっと伏して奇跡を待ったのだ……。
どうも楼座は、霧江に対して興味を持っており、機会があれば霧江の話を聞きたいと思っているっぽいのです。 母としての霧江にも、女としての霧江にも興味があって、できればそれを自分の参考にしたいという気持ちがありそうだ。 そして霧江にも、楼座とはきちんと話をして、交流を持ちたいという意志があるみたいなのです。
互いにそういう意識はあるのだけれど、たまたま、これまでそういう機会はなかった。
さて。 「そういう機会」が、もしあったとしたらどうなっていただろう。そういう「カケラ紡ぎ」をしてみたいわけです。
もしもこの2人に、「銀座の喫茶レオポルドで、定期的に会って話をする」という関係性が生じていたら、どうなっていたか。
楼座が抱えている大きな問題のひとつは「育児」です。楼座は、気持ち悪いことにばかり夢中になっている発達障害じみた一人娘のことを、当然、霧江に相談することになる。「うちの真里亞、これこれこうなんだけど、大丈夫かしら。どうしたら治るのかしら」。
そこで霧江は、こう答えることになりそうなのです。
「…………女の子には女の子の世界があったことを、私たちはたまに忘れるわ。時には尊重してあげないとね。」
前回も取り上げましたが、霧江という人は、 「内面に、空想の別世界を持っている」ことと、「人間の成長」とは無関係だ (夢みたいなことにむちゅうになっているからといって、「成長が遅い」「成熟していない」ということにはならない) という考え方を持っているらしい、と推測できるのです。
霧江は、 「大丈夫、それは心配する必要のないことだから、長い目で見守っていておあげなさいよ」 というアドバイスをする可能性が、高いように思われます。
そういうアドバイスを、立ち話的にちょっとするのではなくて、腰を落ち着けて、ゆっくりと、いくつかの具体例を混ぜたりして、楼座が納得できるような言い方で、順序だてて話す。
楼座は例えば、「あの子、ぬいぐるみや陶人形と本気でお話しているのよ、気持ち悪いわ」なんて話をする。 霧江は例えば、「ああ、それは発達的に重要なプロセスだから、阻害しないほうがいいわ」みたいなことを言うのかもしれない。
相談相手がいるというだけでも、ずいぶん気持ちは違うものです。 それが理知的で異様な説得力のある霧江なら、なおさら。
霧江の話に納得して、楼座は、 「気持ち悪いけれど、もう少し、長い目で様子を見て見よう」 という余裕を持つかもしれない。
そうなった場合……。 つごうのいい想像をすると、 そうなった場合、楼座はさくたろうの首をひきちぎらないんじゃないだろうか。
わたしは前に、 「さくたろう殺しが発生しない場合、六軒島連続殺人事件も発生しない」 という推理を検討したことがあります。 → 「【カケラ紡ぎ】六軒島の惨劇を起こさない方法」 no36486
そのときには、 「もし戦人が家出をしない世界があったら、“戦人が縁寿と真里亞のめんどうを見る”というオプションが可能となるため、真里亞が一人で留守番する状況が発生せず、さくたろう殺しも発生しない」 といった可能性をさぐりました。
「楼座と霧江との間に、育児相談をしあう関係が生じたら、さくたろう殺しは発生しない」 というのも、これもかなり有望そうな気がしてきたのです。
それにしても、楼座と霧江はあるていどお互いに興味を持ちあっているみたいなのに、どうしてこのような「2人の育児相談」の関係性が、これまで発生しなかったのでしょうね。
ひとつには、楼座に「子供の恥を、あまりさらしたくない」という気持ちがあって、なかなか踏み込めなかった。そういうのはあるでしょうね。理解できる感覚です。
それとは別に、ちょっと恣意的なことをいうと、 「霧江は、とてもとても忙しく、他人ちの子にかまけているどころではなかった」
霧江には6歳の縁寿という娘がいるわけで、自分のところの育児ですでにして大変です。まだ目を離しづらい年齢だ。 霧江は仕事も持っています。さすがに今はフルタイムではないでしょうが、「留弗夫のビジネスパートナー」とまで言われる存在であるわけで、仕事を全休できるともあまり思えない。
おまけに、夫の先妻の息子は絶賛反抗期中だ。なんと、ほとんど脅迫的な意図で家出をするという腰の据わった反抗ぶり。 しかもその継子の反抗理由の焦点にいるのがほかならぬ霧江本人。 これはもう、一家の大問題。 人さまのおうちのことに口をはさめるような立場では、霧江はぜんぜんない。もうちょっと余裕があれば、 「楼座さん、娘を持つ母親どうしで、ちょっとお茶でもしません?」 なんて誘うこともできたかもしれないけれど、実際の霧江は楼座の育児相談どころじゃない。
……というように話を持っていくと、「戦人が家出をしない世界があったら」という仮定をとる「六軒島の惨劇を起こさない方法」との合流をはかることができるわけなのですが、それはちょっと、恣意的に話をとりすぎな気もするので、ここまでで控えておきます。
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