九州電力が原発を巡るやらせ問題の結論として選んだのは、自ら設置した第三者委員会の調査結果を踏みつぶしてまでも、佐賀県の古川康知事を守ることだった。九電が14日に提出した最終報告書。第三者委が指摘した知事のやらせへの関与や不透明な関係など、知事に都合の悪いことは盛り込まない「つまみ食い」の内容となり、かえって知事との蜜月関係を印象付ける形となった。【斎藤良太】
「無実の可能性が高い方に『あなたが要請しましたよ』と言えないでしょ」
報告書提出後、福岡市の九電本店で会見した眞部利應(まなべ・としお)社長は、古川知事のことを何度も「無実」と繰り返した。
第三者委が先月30日にまとめた最終報告書は、玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に関して国が今年6月に開いた県民説明番組で、九電が組織的に再稼働賛成の意見投稿(やらせメール)をしたのは、事前に知事が九電幹部に伝えた発言が発端と認定。同原発へのプルサーマル発電導入を巡る05年12月の県主催討論会では、九電が質問者を仕込んだことへの県の関与も指摘した。
ところが、九電の最終報告書では、こうした知事や県の関与部分は一切触れていない。会見した小野丈夫・経営管理本部長は「恣意(しい)的なつまみ食いでは」と指摘されると、「たとえ外から(要請が)あったにしろ、私どもの行為が問題なのだ」と反論。仕込み質問に関しては「私どもとしては県の意向をそんたくし、独自にそういう動き方をしたのではと考えている」と第三者委の指摘を否定した。
また、眞部社長は「社内調査では信じてもらえないから第三者委を設けた」と言いながら、第三者委の調査結果を無視している矛盾を指摘されると「私の目で自信を持っている」と強弁。第三者委の委員長を務めた郷原信郎弁護士が九電の姿勢を批判していることについて「もう委員長でもない」と不快感を示した。
毎日新聞 2011年10月15日 0時25分(最終更新 10月15日 1時42分)