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No61933 の記事


■61933 / )  Ep8を読む(11)・「悪の金蔵」とリフレインする運命
□投稿者/ Townmemory -(2011/04/21(Thu) 00:21:04)
http://blog.goo.ne.jp/grandmasterkey/
    ●番号順に読まれることを想定しています。できれば順番にお読み下さい。
     Ep8を読む(1)・語られたものと真実であるもの(上) no59667
     Ep8を読む(2)・語られたものと真実であるもの(下) no59700
     Ep8を読む(3)・「あなたの物語」としての手品エンド(上) no59771
     Ep8を読む(4)・「あなたの物語」としての手品エンド(中) no59806
     Ep8を読む(5)・「あなたの物語」としての手品エンド(下) no59987
     Ep8を読む(6)・ベアトリーチェは「そこ」にいる no61043
     Ep8を読む(7)・黄金を背負ったコトバたち no61527
     Ep8を読む(8)・そして魔女は甦る(夢としての赤字) no61687
     Ep8を読む(9)・いま、アンチミステリーを語ろう no61746
     Ep8を読む(10)・右代宮戦人の「幸せのカケラ紡ぎ」 no61906


         ☆


     前回の続きです。ですから前回をまず読んで下さい。
     Ep8を読む(10)・右代宮戦人の「幸せのカケラ紡ぎ」 no61906


    ●魔法エンドの六軒島殺人事件

     魔法エンドを選ぶと、「3日目の脱出行」が描かれます。
     潜水艦ドックから、小さなボートで戦人とベアトが脱出します。
     これは、物語を読んできたわたしたちにとっては、奇跡としかいいようがない脱出です。

     いったい、六軒島で2日のあいだにどんな物語が展開したら、戦人とベアトがふたりして愛の逃避行をするなんていう状況が発生するのか。

     それは、いくつか条件があって、ある程度解析できそうです。

     まず、これは魔法エンドなのですから、絵羽が生存していなければなりません。
     次に、戦人は、ここに登場するベアトのことを、
    「俺たちの世界では、何の罪も犯しちゃいないさ。」
     と言っています。つまりここに登場するベアトは殺人を犯していないと戦人は思っていることになります。

     絵羽が生存するのは、Ep3か、Ep7お茶会か、どっちかです。
     Ep3は、ベアトは殺人をバカスカ行なっていそうな雰囲気がぷんぷんします。
     いっぽう、Ep7は、人を殺すのは霧江や絵羽で、ベアトはノータッチです。

     というわけでEp7が有望です。
     魔法エンドで描かれた脱出は、Ep7お茶会そのものか、それに限りなく近い世界の延長上にある。
     ということが言えそうです。これをとりあえずOKとしましょう。
    「それに限りなく近い別の世界」というのが、ちょっとしたみそです。


    ●ベアトリーチェに罪がある

    「俺たちの世界では、何の罪も犯しちゃいないさ。」
     という戦人のセリフに対して、ベアトは意味深な答え方をしています。

    「いいや、………そんなことはないぞ。」

     まとめると、「ベアトはこの世界では罪を犯していないと戦人は思っているが、実は戦人の知らないところでベアトは罪を犯しているのだ」という感じになりましょうか。
     ここでの「罪」を、そのまま「殺人」という意味に受け取ることにします。
     するとこうなります。

    「ベアトは戦人の知らないところで人を殺してしまいました」

     でも、Ep7もしくはそれに限りなく近い世界では、ベアトは人を殺すタイミングなんてなさそうなのです。

     いつ?
     誰を殺した?


     わたしにはひとつ心当たりがあります。


     ラムダデルタは、このゲーム盤に私は“絶対”に勝てないと豪語している。

     その時点で、逆説的にルールXは判明しているの。本当に馬鹿な子ね。
     つまり、物語が常に6月20日から始まるようなもの。恐らくこれが、ベアトリーチェなる魔女の心臓部でしょう。
    (『Letter of Bernkastel』うみねこのく頃に翼)


     ベルンカステルはベアトのゲーム盤に絶対勝てないのだそうです。なぜならこれは、「6月20日から始まる」ようなゲームだから、だそうです
     6月20日というのは『ひぐらし』で意味を持つ日付です。
    『ひぐらし』では、6月19日に最初の殺人が発生します。そして、それが発生したら、もう連続殺人の惨劇は絶対に止められないという条件のゲームでした。
     だから、惨劇を止めたいと思うなら、6月19日の殺人を絶対に発生させてはならないのです。
     古手梨花は、「6月19日の殺人を回避するカケラ」を数百年かけて探すことにより、このゲームをクリアできたのでした。

     つまり、「物語が常に6月20日から始まる」というのは、「最初の殺人が昨日すでに起こっている」ということであって、「もう連続殺人の発生は絶対に止められない」。

     だから、うみねこのルールXとは、
    「ゲームが始まる前日、10月3日にはすでに第一の殺人が発生しているので、犯人は後戻りできなくなっている。犯人が連続殺人を断念することは絶対にない。よって惨劇は必ず発生するのである」
     ということだろうと推定されます。

     ようするに。
     ベアトリーチェさんは、戦人が島に来る前日、10月3日あたりに、一人ほどザックリ殺っちまっているだろう。そしてそれは、魔法エンドに限らず、ほとんどのゲーム盤で起こっていることだろう。
     そういうことを、言いたいわけです。
     では、ベアトリーチェは誰を殺したのか。


    ●ベアトリーチェは誰を殺した?

     おあつらえむきに、「ゲーム開始前にすでに死んでいる人物」という条件がコールされています。
     それは金蔵です。
     つまりベアトリーチェは、10月3日に、金蔵を射殺もしくは刺殺したのです。


     でも、それは変だ。金蔵については、1年以上前に大往生する姿が描かれているではないか。それを蔵臼が隠すから、親族会議は混乱を見せるわけなのだろう……という話になってきます。

     いつもの通り、こう考えることにします。
    「金蔵が1年以上前に大往生したカケラ世界」「金蔵がベアトに殺害されたカケラ世界」
     があって、両立している。

     そして魔法エンドは後者のカケラである。

     すると例の意味深な会話はこういう意味になります。
    「俺たちの世界では、何の罪も犯しちゃいないさ。(殺人を犯したのは霧江さんと絵羽伯母さんなのだから)
    「いいや、………そんなことはないぞ。(なぜなら妾は金蔵を殺したからな)

     Ep7お茶会には、「蔵臼が金蔵の死を隠してる」という描写があります。蔵臼が金蔵の死を隠すためには、金蔵の大往生という条件が必要ですから、そこだけうまく合いません。だから「Ep7に限りなく近い別の世界」という処理になるわけです。

    (あ、そうでもないかな。ベアトが4〜5日くらい前に金蔵を毒殺し、それが自然死に見えた場合、「今、親父殿の死がばれるのはまずい」と蔵臼は考えるでしょう)


    「金蔵の大往生」が明示されるゲーム盤は、必ず常に「ベアトリーチェ以外の人物がゲームマスターをしている」盤です。
    「ベアトリーチェが存在しないゲーム盤(Ep7)」すら作れてしまうベルンやラムダのようなゲームマスターが、「ルールXが最初から無効化されてしまった(金蔵がもっと前に死んでいることによって)」ゲーム盤を持ってきている、というのは、想定できる話だと思うのです。


    ●善なる金蔵と悪の金蔵

     ちょっと、やみくもな想像を展開しますが、「金蔵が大往生するか/魔女に殺されるか」の違いは、「金蔵が善人か/悪党か」に関係あるかもしれません。

     ようするに、金蔵が善人なら大往生をとげることができるが、悪党なら魔女に殺されてしまう。そういうアングルを仮説的に提示したいわけです。


    ●金蔵が善人の場合

     金蔵がいい人の場合は、こんなストーリーが展開します。

     善人の金蔵は、運命に翻弄されたりはしましたが、基本的に善人なので、イタリア軍の黄金をせしめようなんて思ったりはしません。
     いい人なので、ビーチェさん……通称イタリアンベアトさんにも好かれます。2人は恋を育てます。

     イタリア黄金を盗もうとしたのは山本中尉です。日本軍とイタリア軍の戦闘が発生し、双方が全滅します。
     金蔵はビーチェを連れてボートで島を脱出し、山本の暴力であばらを折られたビーチェを南條医院にかつぎこみます。

     金蔵は戦後もビーチェをかくまい、赤ちゃんができます。この赤ちゃんはのちに九羽鳥庵ベアトになります。この出産時にビーチェは死んでしまいます。
     金蔵は忘れ形見の九羽鳥庵ベアトを大切に育てます。ところがビーチェへの愛に狂った金蔵は、九羽鳥庵ベアトとビーチェを同一視するようになり、九羽鳥庵ベアトと関係を持ってしまいます。子どもが生まれます。九羽鳥庵ベアトは楼座に連れ出され、事故で死亡します。

     金蔵は、九羽鳥庵ベアトとその赤ちゃんの運命を翻弄してしまったことを悔やみ続けます。かなうならもう一度会ってひと言詫びたい、許しを得たい。
     それがかなうまでは死ぬに死ねない……。
     その願いは、「碑文を解いた少女」が現われることで、叶います。「黄金を手にして現われた女性」は象徴的な意味で金蔵にとってはベアトリーチェなのです。
     金蔵は、彼女を通して九羽鳥庵ベアトに詫び、少女は「お父様」と呼ぶことで、金蔵に許しを与えます。
     もう思い残すことはない……。「ベアトリーチェに、もうひと目だけ会いたい」という執念だけで生き続けていた金蔵は、安堵して、糸がぷつりと切れるように大往生をとげるのです。

     これは、おおむね描かれた通りのお話ですね。
     悲しいし不幸だけれども、基本的には良い話として諒解できます。Ep8の戦人は必ずこっち側の真実を採用するでしょう。


     しかし、Ep7の物語は、「黄金を自分のものにしようとしたのは金蔵かもしれない」という可能性を見せびらかして、放り出します。

     そっちの話は、だいたい、以下のようになるような気がします。


    ●金蔵が悪党の場合

     こっちの金蔵は邪悪です。イタリア軍が持ってきた200億円の黄金を見たら、
    「こいつを自分のものにすれば、何でもできるぞうー!」
     と考え、それを実行してしまいます。

     山本中尉に黄金奪取計画を打診したところ、善人の山本中尉は「バカなことを言うな!」と一喝してきたので、話にならんなと考えます。金蔵は、日本軍とイタリア軍を同士討ちさせてしまえば、生き残った自分が黄金を独占できるではないかと考えます。

     通訳の立場を利用して、イタリア軍に「日本軍が黄金を狙っている」と吹き込みます。あげく、イタリア軍の部屋に自分で手榴弾をほうりこみます。
     イタリア軍は「日本人の裏切りだ」と考え、報復攻撃に出ます。日本側とイタリア側が戦闘し、ほぼ双方が全滅します。生き残った者がいたら、金蔵が射殺します。

     ビーチェが生き残っていました。金蔵はビーチェに劣情をいだいていたので、あばらを折って動けなくします。そして性的な暴行を加えます。ビーチェが抵抗したので、顔をさんざんに殴りつけて、ボッコボコにして、抵抗する力を奪います。

     金蔵は「この女も俺様の戦利品だ、生かしておいていつまでも自分のものにしよう」と考えます。
     気絶したビーチェをボートにひきずりこんで、新島の南條医院にかつぎこみます。
     一命をとりとめたビーチェは、意識を回復し、顔面を殴打されて見るも無惨になった自分の容貌を知って、
    「こんな身体じゃ恋もできない! どうして私を助けたんですか! あのまま死にたかった!」
     と絶叫します。

     金蔵はビーチェを別荘に監禁して、その後も関係を続けます。ビーチェは自殺しようと考えますが、自分が妊娠していることを知ってしまいます。お腹の子に罪はないので、出産を待って、その直後に自殺します
    (Ep3の魔女ベアトリーチェは、「金蔵の手から逃れるために自ら命を絶った」と、自分のことして語っています)

     悪党の金蔵はめちゃくちゃ怒ったりガッカリしますが、幸い、女児の赤ちゃんが残されています。ビーチェが戦利品なら、この子も戦利品だ。監禁して、育て上げ、ビーチェの代わりとして関係を持ちます。また子どもが生まれ、事故で九羽鳥庵ベアトが死にます。今度の赤ちゃんは、さすがにあんまりだと思った源次が遠くに連れ去ります。どうしてこう、ビーチェとその子どもたちは自分から逃げだしてゆくのだ! 金蔵はますます狂っていきます。

     この金蔵像は、Ep1〜4で描かれてきた彼のイメージに近い。と、わたしは感覚的に思うのです。

     そういう悪の金蔵は、十数年後に九羽鳥庵ベアトの忘れ形見(碑文を解いた少女)に再会したからといって、もう思い残すことはないなんて大人しく死んだりはしそうにないのです。
     もちろん、口では「すまなかった、一言わびたかった。会ってくれてありがとう」と言うに決まっています。でも同時に、内心では、

    「今度は逃がさぬ」

     と思ってるにちがいありません。今度はビーチェを逃がさないために、自分は絶対死ぬことはできない、と、ますます妄執を深めそうだ。あと100年くらい勝手に生きるんじゃないのか。

     碑文を解いて黄金を継承し「ベアトリーチェ」になった少女は、源次や金蔵本人から、六軒島の歴史をすべて聞くのです。金蔵がどうして黄金を手に入れたか。そのために金蔵が何をしてきたか。悪の金蔵はそれを自分の手柄のように語ります。

     聞いた少女はこう思うわけです。

    「こいつは屑だ。死ねばいいのに」

     1986年10月3日(推定)に、それを実行します。


    ●出産時の死亡なのか、自殺なのか

     Ep3で、魔女ベアトリーチェは、
    「金蔵に監禁されたので、自殺して霊的な存在になることで、その支配から逃れた」
     という自分の物語を語っています。

     だから、二択です。

     金蔵は善人なのか、悪党なのか。
     ビーチェは金蔵を愛して出産時に亡くなったのか、それとも金蔵から逃れたくて自殺したのか。

     そして、さらにその延長上に、こんな二択を設定することができます。

     金蔵は最期に満足を得て大往生したのか、それとも生かしておく価値がないとみなされて誰かに殺されたのか。


    「俺たちの世界では、何の罪も犯しちゃいないさ。」
    「いいや、………そんなことはないぞ。」

     この会話を、「金蔵を殺害したベアト」というストーリーだと考える場合。
     魔法エンドの金蔵は、「悪の金蔵」です。


     しかし、Ep8を読んできたわたしたちは、そしてEp8を経験したベアトは、そんなふうに善悪を一面的に見ることはおかしいんだ、という視点を持っています。

     悪の金蔵は、露悪的に振る舞っていただけで、本当は善良だったかもしれない。善良な金蔵が、自分を正当化することをよしとせずに、自分を悪いものとして語っていただけかもしれない。

     そういう「かもしれない」の側面を、見ようとしてあげること。それが真の魔法であって、それが「愛をもって見る」ことなんだと、わたしたちは知っています。

     だから、そういうふうに見ようとせず、一面的に金蔵を悪だとみなして殺してしまったのなら、本当に愛がないのはベアトリーチェのほうです。
     愛がないのが罪なら、ベアトリーチェには罪があります。彼女は自分のことを、罪のある存在だといっています。
     だから彼女は自ら死ぬわけです。


     というストーリーをわたしが勝手に読みました。


    ●ここだけは紗音であってほしくない場面

     さらにその延長上に話を展開していきます。

     魔法エンドで語られる「ベアトリーチェの罪」が、ルールXに基づく金蔵殺害のことであると仮定します。
     魔法エンドのゲーム盤は、Ep7お茶会か、それに限りなく近い世界だと推定しました。よって、Ep7お茶会(その近似世界)では、金蔵はベアトに殺害されていることになります。つまりルールXが起動しています。

     ルールXに基づく金蔵殺害は、連続殺人事件の一環です。
     金蔵を殺してしまったら、もう後には引けない。右代宮一家を全員殺して島を爆破するところまで行かないかぎり、警察がやってきて自分は破滅する。だから金蔵を殺したら最後、絶対に六軒島爆破まで行ってしまう。これが(この推理上の)ルールXです。

     金蔵の死を露見させないという理由で連続殺人事件を続行しようとする者は、金蔵を殺害した人物か、死の露見によって蔵臼が破滅したら困る人物か、どっちかです。

     つまり、ちょっと思い切ったことをいうと、魔法エンドのベアトの中身は可変ではなく、朱志香一択だ、という可能性をわたしは考えているのです。


     というか、このベアトだけは紗音じゃないことにしたい
     そういうわたしの気持ちがあるのですね。
     これはわたしが特に、願望に基づいて言っているものですから、そのへん割り引いて読んで下さいね。

     わたしは……。
     なんの根拠もない、ただのわたしの願望ですが、個人的に以下のような真実が存在していてほしいと思うのです。
     すなわち……。

     譲治にプロポーズされて、紗音がその場で迷わず指輪を嵌める世界では、紗音はベアトリーチェではない。

     そういう真実がぜひとも存在してほしいんだ。


     たとえばEp2がそうです。紗音はその場で指輪を薬指にはめています。
     そして、Ep7お茶会がそうなのです。弱気になる譲治に、左手の指輪を見せて、「ほら、私はもう指輪をはめましたよ。気持ちはもう揺れたりしないのですよ」と言っているのです。未来を語る譲治に、「その未来を私に実際に見せて下さい」と言うのです。

    「未来を私に見せて下さい」と言った紗音が、黄金の間で、その口で、「私もう生きても死んでもどうでもいいです」とかいってなげやりに射殺されて、でもどういうわけか生き残り、戦人と一緒に愛の逃避行をする。
     ちょっとそういうストーリーラインはご免こうむりたいんだ。

     そのためのひとつの方法としては、「魔法エンドとEp7お茶会はつながってない」ことにすることもできます。
     けれどもそれ以外の方法として、「Ep7お茶会のベアトは紗音ではなく、その延長にある魔法エンドのベアトも紗音ではない」とするほうが、わたしにはしっくりきます。


     例えばこんな挿話。

     Ep7お茶会では、理御は鎖にしばられて、右代宮一族が殺しあいをしていく朗読劇を強制的に見せられます。
     理御は「私は犯人を知っているし、真相ももう知ってるんだから、こんな劇をこれ以上演じる必要はないんだよ!」とクレルに絶叫します。
     でも、上演は止まりませんでした。

     Ep7は、普通に読んだら紗音がベアトリーチェである、と読める物語です。よって、理御が知っている「犯人」「真相」とは、紗音ベアトリーチェのそれである、と推定されます。
     なのに、クレルは上演を止めなかった。なぜか。
     それは、Ep7お茶会は、「紗音ではないベアトリーチェ」が、「私の物語も知って欲しい」と願って朗読したものだからです。きっと。
     ベルンは再三「この朗読のゲームマスターは私ではない」と言っています。Ep7お茶会のゲームマスターはきっと「クレルの中にいる、紗音ではないベアトリーチェ」です。

     クレルは「我は我らなり」と言っています。自分は複数形の存在だって言ってるんです。クレルの中には、中身の異なる複数のベアトリーチェがいそうなんです。
     シャノン=ベアトリーチェは、自分の物語を心ゆくまで語って、理御にそれを理解してもらい、一定の満足を得ました。
     それ以外のベアトリーチェだって、話を聞いてもらって、誰かに自分を理解してもらいたいのです。


     ……恐らく、理解できるのは、自分だけ。
     自分の中にいる自分たちにだけでも、せめてわかってもらえれば、それでいい。
    (Episode7)


     ベアトリーチェは、自分の中にいる別のベアトリーチェたちに、自分の物語を理解してもらいたかった……。


     シャノン=ベアトリーチェが語った「自分の物語」に出てくる金蔵は、善良な金蔵でした。
     だから、シャノン=ベアトリーチェのカケラ世界に住んでいる金蔵は、善良なんです。きっと。

     でも、善良でない金蔵の姿も、示唆されている。
     Ep7お茶会を朗読するクレルのハラワタの中には、極悪非道の金蔵がいました。
     よって、Ep7お茶会の金蔵は極悪非道の悪党です。だから紗音ではない別のベアトリーチェは、許せなくて金蔵を殺したのです。


    ●魂のルフラン

     その「Ep7お茶会の朗読者」である、「紗音以外のベアトリーチェ」
     その正体とは、朱志香=ベアトリーチェである。
     という仮説をこれから話します。

     Ep7お茶会のベアトは朱志香であり、魔法エンドのベアトは朱志香である……という我田引水なお話をしますよ。


     Ep7お茶会の金蔵は殺害されており、よってEp7お茶会の金蔵は悪党のほうだった、という議論をすでにしました。話をここに乗っけます。

    「金蔵悪党説」のほうのストーリーを思いだします。
     イタリアのベアトリーチェは金蔵からの暴力を受け、恋もできない身体にされ、ボートで拉致され、監禁され、自殺します。そんな感じでストーリーを想像しました。

     ところで、
     Ep7お茶会のストーリー内にも、恋もできないような身体にされた人がひとりいます。

     朱志香ちゃんは、霧江に顔面をボッコボコにされました。記憶では、鼻が折れて眼球が損傷するレベルまで殴られたと書いてあったんじゃないかな。

     黄金をせしめるために島内の全員を皆殺しにしよう、というアプローチをとった霧江は、まるで悪党説の金蔵そっくりです。
     そんな霧江に、「恋もできないくらいに」容姿を破壊された朱志香がいます。

     そんな朱志香ちゃんを、ベアトリーチェであると仮定してみます。
     Ep7お茶会は魔法エンドと繋がっている想定ですから、魔法エンドでボートに乗ったベアトリーチェは、実際には美しい容姿を失った朱志香である、と考えるのです。
     海に漕ぎ出た朱志香は、戦人を置き去りにして自殺することになります。


     ベアトリーチェは六軒島から脱出するとき、もとの美しい容姿を喪失するのである。
     ベアトリーチェは六軒島から脱出したのち、「六軒島の領主」を現世に置き去りにして自ら命を絶つのである。



     そんな物語が、リフレインされたことになります。数十年という時をへて、ビーチェ→朱志香という順で。


     この整合を、わたしは美しいと思うので、真実にしてしまいたい。そう思うわたしがいるのです。
     この整合は、「金蔵悪党説」と「ジェシカ=ベアトリーチェ説」を重ね合わせたときにだけ発生します。
    (ついでに、そんな朱志香が一命を取り留めたりしたら、幾子に拾われて「18歳」と名乗ることができるので、手品エンドが派生します→ Ep8を読む(6)・ベアトリーチェは「そこ」にいる


     このきれいなリフレインが、果たして意図されていないものなのか? というのは、むずかしいところですが、うーん、意図されてないかもしれません。されててもおかしくありません。どっちでも良いでしょう。

     みずから「ベアトリーチェになろうとした」少女は、まさしく「ベアトリーチェとしての運命」を完遂したんだ。そういうストーリーは、長い物語のピリオドとして、ふさわしいものと感じられます。

     そんな「ピリオドとしてのふさわしさ」を手に入れるために、あそこにいるベアトリーチェは朱志香であってほしい。


     そういう「あってほしい」を本当のことにしてしまおうとしているのが、わたしという魔女であって、このエントリはそのための魔法の呪文である……と、そんな感じで受け取っていただけると、わたしは良い気分になれます。



    (「Ep8を読む」シリーズはここでいったん終了とします。あと2つほど書きたいことがあるんだけれども、それは「補遺」として付け加えるか、別シリーズとします)
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