5人が死亡した大阪市此花区のパチンコ店放火殺人事件で殺人などの罪に問われた高見素直被告(43)の裁判員裁判で、争点となった「死刑の違憲性」の審理が12日、大阪地裁(和田真裁判長)で開かれた。元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授が弁護側証人として出廷。「死刑制度そのものは違憲ではないが、絞首刑は(残虐な刑罰を禁じた)憲法36条に違反する」と指摘。死刑執行に立ち会った経験を振り返り、絞首刑について「むごたらしく、正視に堪えない残虐な刑だ」と述べた。
土本氏は東京高検検事として死刑執行に立ち会った。土本氏は当時の手記を手に「(絞首台の)踏み板が外れる音がした後、死刑囚は首にロープが食い込み、宙づりになっていた。医務官らが死刑囚の脈などを確かめ『絶息しました』と告げていた」と振り返った。
さらに「少し前まで呼吸し体温があった人間が、手足を縛られ抵抗できない状態で(ロープにつられて)揺れているのを見てむごいと思った」と証言した。
絞首刑を合憲とした1955年の最高裁判例に対しては、土本氏は「当時妥当性があったとしても、今日なおも妥当性を持つとの判断は早計に過ぎる」と述べ、否定的な見解を示した。
閉廷後、記者会見した土本氏は、弁護側証人となった理由について「裁判員が絞首刑の何たるかを知らずに死刑を適用するかどうかの作業に参加するのはよくないと思い、情報提供の必要性を感じた」と話した。【牧野宏美、村松洋】
毎日新聞 2011年10月13日 東京朝刊