2011年10月14日 (金)
フィギュアスケート・NHK杯へようこそ! (1) (by 刈屋富士雄)
ウィンタースポーツの季節がいよいよやってきました。とくにフィギュアスケートの男女シングルは、日本がトップクラスの選手を多数擁する、毎年楽しみな競技です。昨年のバンクーバー冬季オリンピックでは、浅田真央選手が銀メダル、高橋大輔選手が銅メダルを獲得し、男女ともその実力をいかんなく発揮しました。他にも女子では安藤美姫選手、鈴木明子選手、男子では小塚崇彦選手、織田信成選手と、みなさんもご存じの実力派がズラリと並んでいます。若手も09-10年シーズンの世界ジュニア選手権でともに優勝した村上佳菜子選手、羽生結弦選手と、次代のエースが着実に成長。まさに日本は男女そろって、黄金期を迎えているといっても過言ではないでしょう。
その注目のフィギュアスケートで、11-12年シーズンのグランプリシリーズで唯一の日本開催となる『NHK杯国際フィギュアスケート競技大会』が11月11日~13日の3日間、札幌市にある真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開催されます。NHK杯は1979年から始まり、今年で33回目。95年からは世界のトップ選手が集い、チャンピオンを決定する『ISU(国際スケート連盟)グランプリシリーズ』(以下、GPシリーズ)に組み込まれ、今季はその4戦目となっています。
GPシリーズは毎シーズン世界で6大会が行なわれ、そのうち選手は2大会に出場。その成績の上位6位までの男女シングル、ペア、アイスダンスの選手とチームが『GPファイナル』へ進み、チャンピオンを争うシステムです。今季は12月にカナダのケベックシティで行なわれる予定です。
今回のNHK杯には、男子では高橋、小塚の両選手に加え、町田樹選手、女子では浅田、鈴木両選手と石川翔子選手の、男女それぞれ3選手が出場する予定です。何といっても一番の興味は、今季初戦となる浅田選手の演技ではないでしょうか。バンクーバーオリンピックの栄光から一転、10-11年シーズンから新しいスケートを作り直している浅田選手がどんな演技を見せてくれるのか。大いに注目されるNHK杯です。浅田選手の見どころは、このコラムでまた改めてご紹介したいと思っています。
NHKでは、このNHK杯の様子を総合テレビとBS1でお伝えする予定です。男女シングルだけでなく、ペアとアイスダンスの華麗な演技もくまなく放送する予定ですので、お見逃しなく。
私が最初にフィギュアスケートに心をときめかせたのは、1972年の札幌オリンピックで銅メダルを獲得した“銀盤の妖精”、ジャネット・リンさんの存在でした。まだ小学6年生だった私は、その演技の見事さはもちろんですが、「世の中にはあんなサラサラの金髪ってあるんだ!」と、妙な所にえらく感心した記憶が残っています(笑)。それ以来、アナウンサーになる前から、フィギュアの魅力に取りつかれてしまいました。
初めてフィギュアスケートの実況をしたのは、95年のNHK杯です。それ以降、NHK杯の放送にはずっと関わっています。海外の初実況は、95-96年シーズンのフランスのパリ。GPファイナルの1回目で、当時はまだ『チャンピオンズ・ファイナル』と呼ばれていました。この大会では後の世界チャンピオンで、オリンピックでもソルトレイクシティ(02年)で銀、トリノ(06年)で銅と、2大会連続でメダルを獲得したロシアのイリーナ・スルツカヤさんが、大きな国際舞台でのデビューを飾っています。まだ頬が赤かった少女の、人並外れた身体能力の高さには本当に驚かされました。無名だったスルツカヤ選手が、ここから頭角を現していきました。
オリンピックでも98年の長野から昨年のバンクーバーまで、4大会連続でフィギュアスケートの実況に関わっています。何といっても忘れられないのが、トリノオリンピックで優勝した荒川静香選手の珠玉の演技。トリノ大会では日本唯一のメダルで、しかも金メダルとなった荒川選手のすばらしい“芸術作品”を実況することができて、本当に幸せでした。
フィギュアスケートは採点競技ですので、「100メートルを9.9秒で走る」といった記録へのこだわりはそれほど強くありません。また、サッカーや野球のように明快に勝負が見えるわけでもありません。しかし、その分、単なる競技としての面白さだけでなく、“芸術作品”としての奥深さがあるスポーツだと私は感じています。いってみれば、ゴッホやピカソの絵と同じ。音楽との一体感でも、豊かな表現力でも、さらにはジャンプやステップの技術力でも――感動の理由は人それぞれで結構なのではないでしょうか。自分なりに“芸術作品”を楽しんでいただければと思っています。
ただ、そうはいっても、選手にとっては勝者と敗者に分かれる、厳しい勝負の世界に変わりはありません。「芸術作品として完成させるのか」、それとも「高得点を取りに行くのか」。勝つために、同じようで実は微妙に違う、この2つの要素のせめぎ合いもフィギュアスケートならではの面白さといえるかもしれません。
NHK杯の勝負の行方に関しては次回からじっくりご紹介するとして、今回はぜひみなさんにご覧になっていただきたい、NHK杯恒例の名物コーナーを宣伝させてください。その名は、『ようこそ豊の部屋へ』。初見の方は何が何だかわからないでしょうが(苦笑)、これが実はフィギュアスケート・ファンから絶大な人気を得ている、04年のNHK杯名古屋大会から続く看板企画なのです。ひと言でいえば、大会に出場した選手をゲストとして招きトークを展開する、フィギュアスケート版の『スタジオパークからこんにちは』。今回の放送日は、エキシビションが行なわれる最終日の11月13日。エキシビション前とその間の整氷時間を使って、競技が終わってリラックスしている選手にお話を聞きます。
ホスト役はグルノーブルと札幌の両オリンピックで代表選手として活躍、現在はコーチを務める樋口豊さん。この「豊の部屋」では、樋口さんならではの世界に広がるフィギュアスケート人脈と、その気さくな人柄もあり、日本選手だけでなく世界中の選手たちがやって来て、楽しいフリートークを展開してくれます。たとえば昨年は、満足なジャンプができずメダルを逃した浅田真央選手が、それにも関わらず訪ねて来てくれて、いろいろな質問に嫌な顔ひとつせず答えてくれました。その健気(けなげ)な真央ちゃんの姿を見て、豊さんが何と本番中に号泣してしまうというハプニングも発生。こんな樋口さんの真っすぐで楽しいキャラクターも見どころです。
当初『ようこそ豊の部屋へ』はハイビジョンで放送されていまして、それを見たさにハイビジョンテレビを購入したという人もいたというほどの、伝説の名物コーナーです(笑)。私と、今回放送されるBS1でメインキャスターを務める元フィギュアスケート選手の太田由希奈さんも、進行役としてご一緒する予定です。
『ようこそ豊の部屋へ』は華麗なエキシビションの模様とともに、BS1でお伝えします。選手たちのめったに見られない気さくな素顔と、樋口さんを中心に何が起こるかわからないハプニングの数々を、ぜひみなさんも今回のNHK杯からお楽しみください。私がいうのも何ですが、必見です!!
次回からは、男女シングルだけでなく、ペアやアイスダンスも含め、NHK杯の今回の見どころをご紹介していくつもりです。ご期待ください。
投稿時間:12:00 | カテゴリ:BSスポーツ