起業時に「できる店員さん」をスカウトした話

2011/07/26

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アパレル 友人がアパレルショップを立ち上げたときに、まず人が上手く集まらなかった。

アルバイトの情報誌を読んだことがある人なら分かると思うけれど、アパレル系って常に募集しているぐらい入れ替わりが激しいところが多い。

平均勤続年数みたいのも、たぶん他のアルバイト系に比べて短いんじゃないかな。この辺は、飲食店とかとも近いかも。業種的に潰れやすいっていうのもあるかと思うけれど。


面接するのを諦めた

友人は、求人誌に広告を出して面接を経て雇っても、なかなか定着する人がいなかったり、仕事ぶりがお世辞にも良いとは言えずに悩んでいた。雇った人が、仕事の「できる人」か「できない人」かまでは、はっきり言って見抜けなかったらしく、「面接で凄く感じが良かったのに・・」と言うことも、しばしば。

その後、友人は面接を諦めて、できる店員さんをスカウトしようと言い出した。

面接では、仕事っぷりまでは想像するしかないけれど、確かにアパレル系の場合は、自らが相手の接客を受けることができるから仕事ぶりを把握しやすい。私も、面白そうだと思い(当時、初日だけ)付いていった。

できない店員さんとは

例えば、できない店員さんとは、「見れば分かる、読めば分かる、当たり前のことしか口にしない人」だ。よく服のお店に行って「new arrive」って書いてあるのに、わざわざ「これ入荷したてなんです」とか口にする人のこと。いや、入荷されたのが半年前だったりしたら、逆に驚く。

「これ人気で凄く売れているんです」とかもそう。いや、「凄く売れている割に在庫余っているがな」みたいな。

また、そのような店員さんって、空気読むのも下手い。服を手に取った瞬間に寄ってきて、「これとこれ合わせるといいんです」とか。いや、「まずは値段見させろよ」とか、「家で洗えるか知りたかっただけだっつーの」みたいな感じになることが多い。

「試着できます」とかもそう。いや、試着室は目の前にあるぞー!

できる店員さんとは

逆に、できる店員さんは違う。商品を売ることの前に、自分を売ることが大切だということを理解している。

例えば、「これ色落ちしやすいですか?」とか聞いたときに、素人でも分かるような、素材の説明をしてくれて納得いく答えを出してくれる。こちらが理解していない場合には、もっと分かりやすい言葉や表現を選んで変えてくる。つまり、会話しながら常に相手の顔色を伺いながら問題意識みたいのを考えているんだと思う。マニュアル情報ではなく、いわゆるプロのアドバイスをきちんと添えてくれる。

会話の中にも、自らの体験談を交えたりして、自分なりの味付けをした受け答えをしてくれる。とにかく、「買い物をする」というのを、すごく気持ちよくさせてくれるのだ。だから、会話していて楽しい。

何か聞きたいな、と思った時には、なぜかいつの間にか近くにいたりと、空気読むのも上手い。この人がいるから、買いたくなるという気持ちが強くなる。つまり、いわゆるファン心理みたいを抱かせるのが、できる店員さんだと思う。

人が良かったから伸びた

一通り周りながら、「この人に来てほしい」と思った相手に対して、友人は名刺を渡してスカウトし始めた。

いきなり渡すのではなく、当然、「相手の接客で良かった点を取り上げつつ、実はこのような者なのですが、是非ウチに・・」のような流れ。もちろん、(怪しまれたりもしたし)早々上手くはいかず、何人かには断れたりしながらも、しばらく続けて、結局良いメンバーを雇うことができた(内1人は、途中で寄ったカフェでスカウトしたらしい)。

仕事っぷりを見てから雇ったおかげもあって、実際の仕事の働きぶりもとても良かった。その後、アルバイトから社員に上がる人も出てきて、現在の店舗数は2つになって、少しずつ軌道に乗っているとのこと。あと、やはり仕事ができる人は、学習意欲も高いから何かと頼もしいと言っていた。

ちなみに、ネットショップに併設しているブログ自体も、例えば新入荷のワンピースとかも単に写真撮るんじゃなくて、実際に着ている画像を載せたりして、洋服の合わせ方などのイメージを上手く提示している。やはり、イメージの喚起は大切だと思う。

やっぱりこういう成功例を身近で見ると、本当に「人」だよね、と思う。ある程度「できる人」が揃っていると、マイナスをプラスにできる力にもなる。かなり部下に支えられているんじゃないかな。

ちなみに、友人が言うには、「2人引き抜くと、怒られたりするよ」とのことです。

買いたがるように後押しするトーク

営業も接客も、要は商品にプラスして価値を生む人のこと。

見れば分かる価格などに終始するのであれば、まだ伝書鳩や機械のほうが気楽だと思う。営業や接客ができる人は確実に、相手が望んでいることを見極めようとする。会話のやりとりからこちらが関心のあること、関心のないことを見極めて、商品購入後のイメージが上手く湧くようにトークする。洋服で言うと、「合わせ方」や「着こなし方」など、こちらの想像力を刺激して、こちらが望む未来を持ってくるんだな。

また、これは経験した時間に比例するわけではないと思う。結局は、経験した密度なので、短期間であっと言う間に経験者を越えていくこともある。これが、俗にいう「未経験者」の強いだったりするんだけれど。

結論として、優れた営業や接客は、「売り込む」ようにしているというよりは、「買いたがる」ようにするのが上手い。

終わりに

あなたが現在、営業や接客に就いているのなら、やはり伝書鳩レベルからは脱してほしい。

また、違う職であっても、自分がどこかで接客を受けたときに、「なぜ、この店員さんは邪魔なのだろう」「なぜ、この店員さんと話していると楽しいのだろう」と、考えながら受け答えすると面白いと思う。「私ならこうするのに」の考えが、コミュニケーション力を上げる参考になるかもしれない。

また、やはり「できる人」は知識はあって当然だけれど、それを分かりやすく説明することも優れている。つまり、知識バカではないってこと。

コミュニケーション力とは、テクニックに終始するとスカスカしてウザくなる。あくまで「相手に関心を持って、相手が望むことを提供する」というのが、コミュニケーション能力の基本。それを忘れないようにして欲しい。

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