特集

3.11大震災
関連リンク
関連機関

原発風評 土湯温泉ピンチ 一般客激減 5軒が廃業 福島

3連休中も閑散とする温泉街=24日昼、福島市土湯温泉町

 1000年以上の歴史を持つ福島市の土湯温泉は、福島第1原発事故の風評被害で一般客の入り込みが激減し、苦境に立たされている。9月に入ってからは旅館・ホテル3軒が相次いで営業を停止。地震被害で再開を断念した施設2軒と合わせ、22軒のうち5軒が廃業する非常事態となっている。即効性のある打開策が見えない中、街の再生へ知恵を寄せ合う動きも出始めている。

◎電話で「放射能は?」
 3連休中日の24日。秋晴れにもかかわらず、温泉街は閑散としていた。廃業した老舗旅館の玄関には、自己破産の申し立てを告知する張り紙が出され、自動ドアの向こうには、枯れた鉢植えが並んでいた。
 土湯温泉観光協会によると、23〜25日の3連休の人出は例年の4割程度。ことし4〜7月の宿泊者はさらに少なく、前年の約3割に当たる約2万7700人にとどまった。
 土湯女将(おかみ)会副会長で、旅館「山根屋」おかみの渡辺啓子さん(56)は「問い合わせを頂くお客さまが皆、『放射能はどのくらいか』と聞いてくる」と嘆く。
 福島市の計測によると土湯温泉地区の放射線量は市内有数の低さで、9月下旬は毎時0.15マイクロシーベルト程度で推移する。渡辺さんは「これまで通りのもてなしで、土湯は安全だと口コミで広げてもらうしかない」と望みをつなぐが、持久戦は必至だ。
 観光協会によると、土湯の宿泊施設は2次避難所として、ピーク時で約1000人の被災者を収容。1泊3食で1人当たり5000円が県から支払われ、営業の継続を支える役割を果たした。

◎仮設入居で引き揚げ
 しかし、8月中に仮設住宅などへの入居が一気に進んだことから、2次避難者は現在、温泉街全体で十数人に減少。被災者の生活再建と自立に向けた動きとはいえ、深刻な風評被害に苦しむ旅館・ホテルは、収入の見通しが立たなくなった。
 自力で営業を続ける旅館・ホテルもツアー客が見込めず、苦境に立つ。約70室の山水荘は8月の売上高が前年の約6割にとどまった。紅葉が見ごろの10〜11月も「半分程度」と見込む。
 原発事故が観光業に与えた風評被害に対し、東京電力は21日、損害賠償の算定基準を示したが、前年に比べた減収分の2割は賠償の対象外とされた上、支払いは10月以降。国の支援策の内容も依然不透明だ。
 町内会などでつくる住民組織「自治振興協議会」は10月、「土湯温泉町復興再生協議会」を発足させる。廃業した旅館の従業員寮などを放射線量の高い地域の住民の避難先に活用するといったアイデアを練るという。自治振興協議会の委員でもある土湯温泉観光協会の渡辺和裕会長(61)=山水荘社長=は「地域再生を住民全体で考えたい」と話している。
(安達孝太郎)


2011年09月26日月曜日

Ads by Google

△先頭に戻る