実態とかけ離れた韓国の雇用統計、そのワケは?

四大卒の半数が事実上の失業者、それでも若年失業率は6%

■調査方法を変更せよ

 統計の基礎となる聞き取り調査の方法にも改善の余地がある。統計庁は全国から抽出した3万2000世帯を対象に雇用・失業の実態について標本調査を行っているが、最初の質問項目は「先週何をしましたか」というものだ。「仕事をした」と回答すれば就業者となるが「仕事をしなかった」と回答すれば、次に「最近4週間の間に求職活動をしましたか」という質問に移る。この質問に「求職活動はしなかった」と回答すると、政府はこの回答者を失業者とは見なさなくなる。1年に1回しかない企業の社員募集に向けて準備する数十万人の若者が、履歴書の提出や面接などの求職活動を直近の4週間にしなかったという理由で、失業者に含まれなくなるのだ。韓国では多くの企業が1年に1-2回しか新規採用を行わないが、多くの先進国では募集が常に行われているため、韓国よりも失業率が高くなる傾向にあるのだ。

 調査担当者に対し「求職活動をしなかった」と回答すると、その次に「先週の時点で就職したいと思いましたか」という質問に移る。就職の意思があるかどうかを判断するための質問だ。前の質問で「求職活動をしなかった」と回答した場合、次にこのような質問を受けると、多くが「思わなかった」と回答する、と専門家は指摘する。「就職を希望しているのに求職活動はしていない」と見られたくないからだ。

 韓国開発研究院(KDI)のファン・スギョン研究員は「韓国の調査方法は日本の労働力調査の方法をそのまま導入したが、そこに問題があるようだ」「質問方法さえ変えれば、潜在失業の実態をもっと正確に把握できるはず」と指摘する。潜在失業者が少ないのであれば、政府による雇用対策の時期と方向に食い違いが出ることも考えられる。ちなみに国際労働機関(ILO)は「求職活動をしているか」よりも「就職を希望しているか」を先に質問するよう勧告している。これは、韓国が採用している方式とは異なるものだ。

■失業率ではなく雇用率を指標にせよ

 実態を反映していない失業率よりも、雇用率(15歳以上の就業可能人口に就業者が占める割合)の方が、雇用の事態をより正確に反映している。リーマン・ショック以前の2007年時点での韓国の失業率(3.2%)と、現在の失業率(3.0%)だけから判断すれば、雇用はむしろ好転しているといえる。しかし、雇用率で見ると事情は異なる。リーマン・ショック前の雇用率は63.9%で、現在の雇用率(63.6%)を上回っていた。そのため失業率よりも雇用率の方が、就業者数減少の実態をより正確に反映していることになる。

金正薫(キム・ジョンフン)記者
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