原発整備資金:730億円積み残し 検査院が縮減要求

2011年10月5日 18時59分

 原発を新増設する地域のインフラ整備などに使うエネルギー対策特別会計の周辺地域整備資金が、着工の遅れで約730億円も積み残されていることが、会計検査院の調査で分かった。東京電力福島第1原発事故の影響で着工がさらに遅れると想定され、検査院は5日、今後必要とされる約70億円を残し、残りを東日本大震災の復興や原発の安全対策などに活用するよう経済産業省に改善を求めた。

 この整備資金は、特会に巨額の剰余金が累積したことから、建設地域の自治体に対し主に原発着工から運転開始までの期間に交付する交付金の財源として、03年に剰余金を移し替えるなどして設置。自治体は交付金を福祉施設建設や地域振興策などに充てている。

 検査院によると、新増設が計画されている原発は、東電が5月に中止を決めた福島第1原発7、8号機を除き全国に12基。このうち中国電力島根3号機など3基が既に着工している。残り9基のうち5基は当初の着工予定から10年以上経過し、福島県に計画する東北電力浪江・小高原発は37年も経過。用地の取得や地元の同意を得るのが難しく着工が遅れているという。

 検査院は、原発事故の影響で住民の同意を得るのが一層難しくなり、原子力政策や安全審査指針の見直しで着工がさらに遅れると判断。10年度末で約1230億円あった整備資金のうち500億円が既に東日本大震災の復旧に向けた1次補正予算の財源に使われたが、今後着工済みの3基分に必要な約70億円を残し、さらに資金を縮減すべきだと指摘した。

 指摘に対し経産省は「原子力政策の見直しの流れや交付先の自治体の意見を聞きながら検討したい」としている。【桐野耕一】

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