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東日本大震災:福島第1原発事故 除染地域拡大へ 線量高めの地域、歓迎と厳しい声

 ◇「早く打てる手あった」

 福島第1原発事故による放射性物質の除染に関する政府の基本方針案がまとまり、除染対象地域が福島県外の都県に大幅に広がる見通しとなった。自治体の担当者や住民からは評価する声の一方で、「遅すぎる」と厳しい意見も上がった。【早川健人、和田浩幸、藤野基文】

 方針案によると、環境相は事故による被ばく線量が年1ミリシーベルト(毎時0・23マイクロシーベルト)以上の地域を11月中に「汚染状況重点調査地域」に指定。自治体は国と協議しながら除染の区域や方法を決める。除染費用は国が負担することになる。

 航空機による文部科学省のモニタリング調査では、現段階で東京都と福島、宮城、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉の7県で年1ミリシーベルト以上の場所が見つかっている。環境省はモニタリングや自治体の調査を参考にしながら、原則として市町村単位で調査地域を指定するという。

 首都圏でも周辺より高い空間放射線量が確認されている千葉県北西部。柏市の染谷誠一・放射線対策室長は「市単独の除染費用負担は無理なので、国の支援はありがたい」と歓迎、「細かい内容が早く知りたい」と語った。

 ただし、住民の中には厳しい意見もある。2児の母で、各自治体に放射線量の測定や除染を求めて署名活動をした我孫子市の主婦(41)は「国が年1ミリシーベルト以上の除染の必要性を認めたことはありがたいが、何しろ遅い。この地域の汚染がひどいのは4月後半には分かっていたし、早めに打てる手があった」と指摘した。

 一方の東京都内。葛飾区では5月末以降、区内7カ所の公園で週1回ずつ線量測定を行っているが、現在でも一部の公園で毎時0・23マイクロシーベルト以上を観測している。

 8月には小中学校や公園など398カ所の砂場で線量を測定、区独自の目安(毎時0・25マイクロシーベルト)を超えた20カ所で砂の入れ替えを進めている。

 今月6日に、毎時0・24マイクロシーベルトを観測した葛飾区の「金町二丁目ときわ公園」。近くを通りかかった男性会社員(42)は「小学生の子供がいるので、国の方針に従って、除染が進められれば安心だ」と、ほっとした様子だった。

毎日新聞 2011年10月12日 東京朝刊

 

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