経済

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尾瀬:「管理肩代わりを」東電、協議へ 維持費支出困難 

 尾瀬国立公園(福島、栃木、群馬、新潟県)の土地の4割を所有している東京電力が、国や自治体、公園管理団体に指定された民間団体に保全活動を肩代わりしてもらう「風景地保護協定」制度の利用を検討していることが13日、分かった。

 東電は、公園管理のため人件費や設備維持に毎年2億円を拠出。しかし福島第1原発事故の収束や賠償の費用を捻出するため人員削減や資産売却を迫られており、これまでと同じ水準の管理体制を維持することが困難になった。

 原発事故後、東電は尾瀬の土地を売却しない方針を表明。制度利用について東電は今後、環境省や地元自治体などの関係者と協議を進める。東電は公園内の木道の敷設や架け替え、湿原回復のための種まきなどをしており、こうした事業の分担や費用負担が話し合われるとみられる。

 風景地保護協定は03年施行の改正自然公園法で制度化。国立公園や国定公園の土地の所有者による管理が不十分で風景の保護ができない恐れがある場合、国や公園管理団体などが所有者と協定を結び、代わりに管理できる。

 環境省によると、この制度の利用は阿蘇くじゅう国立公園(熊本、大分県)が唯一の例で、04年から土地所有者らと協定を結んだ公園管理団体が、野焼きやその準備のための草刈りを実施。また上信越高原国立公園(群馬、新潟、長野県)の浅間地域でも、協定締結に向けて準備が進められている。

 東電は、水力発電の水源地として公園約3万7200ヘクタールのうち、群馬県側の約1万6000ヘクタールを所有。1995年の尾瀬保護財団の設立時に3億円を出資し、代々の社長が財団副理事長を務めるなど、尾瀬の自然保護に重要な役割を果たしてきた。

 【ことば】尾瀬と東京電力

 尾瀬の豊富な水を発電に使うため1916年、旧利根発電が尾瀬の群馬県側の土地を取得。22年には旧関東水電が水利権を得たが、戦争や震災で大規模な開発が難しかったことや自然保護を訴える声があり、発電所の建設計画は実現しなかった。51年に東電が設立された際、2社から土地と水利権が引き継がれた。現在、公園全体の約4割、湿原など貴重な自然が広がる特別保護地区の約7割を所有し、全長65キロの木道のうち約20キロを管理。登山客の増加で荒廃した湿原の回復などに取り組んでいる。

毎日新聞 2011年10月13日 15時00分

 

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