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2011年10月13日
無職は恥ずかしいことじゃない――。10年勤めた会社に突然解雇され、一時は職を失った38歳の男性が、働くことの意味を語り合うイベント「無職フェス」を15日、大阪市内で開く。
黄金週間を控えた4月28日。取り扱い説明書を作る会社の正社員だった市川剛司さん(38)=奈良市=が大阪市天王寺区の雑居ビルの一室に出勤すると、社長に言い渡された。
「いきなりやけど、今日でこの会社は終わりや。荷物まとめて午前中で帰ってや」
突然の倒産と解雇通告。「俺の人生がゴールデンウイークになってしまった」。頭が真っ白のまま帰宅した。妻は絶句した。
毎日通う場所も、名刺もなくなった。就職活動は心が折れそうなことばかり続く。書類選考で落とされ、面接で心ない言葉を浴びせられ、理由も分からぬまま不採用通知が届く。ハローワークでは求職者同士が孤立し、無言でパソコン画面を見つめるだけだ。貯金は減り、毎日が不安で人と会うのがつらくなった。
5月中旬、大阪市北区で、素人が手作りした小冊子ばかり置いている書店を見つけた。「俺にもできるかも」。A4判の紙に、解雇された怒りや将来への不安を書き連ね、ホチキスでとじた。不思議と、気持ちが落ち着いた。
「もし、心を開いて同じ立場の仲間とつらい気持ちを分かち合うことができれば、前向きな気持ちが生まれ、無職を脱出するヒントも見つかるかもしれない」。そう考え、無職者が出会い、つながるための小冊子「WORK LESS(ワークレス)」を作り始めた。
自らの失業体験をつづったほか、これまでに同じ境遇の約15人からエッセーなどの原稿が集まった。寄稿者同士のつながりが生まれ、東京で計画されていた「無職フェス」を大阪でも同時開催する企画が生まれた。失業体験を語り合い、不採用通知を持ち寄って朗読する予定だ。
気持ちが前向きになると、結果もついてきた。約20社の就職試験に落ちた後の7月、団体職員の仕事が見つかった。「失業は人生の中の一つの状態。人間性まで否定されたと思い込む必要はない。気持ちを立て直すことさえできれば、物事に向かっていける」。そう信じている。
15日午後3時から、大阪市中央区の大阪城公園内にある大阪社会運動顕彰塔前で。申し込み不要。雨天時は同市中央区内久宝寺町2丁目の「路地カフェ」(06・6762・0323)で。問い合わせは市川さんの電子メール(lifeisgw@gmail.com)へ。ブログ(http://ameblo.jp/workless01/)も開設している。(白木琢歩)