2011年10月13日00時48分
「ギョーザ日本一」の栃木県宇都宮市の看板が危うくなっている。根拠としてきた総務省家計調査による、都道府県庁所在市・政令指定都市の1世帯当たりのギョーザへの支出額が、今年3月以降6カ月連続でトップから滑り落ちているためだ。代わって急浮上してきたのが浜松市。近年、ギョーザによる町おこしを強力に推し進めているライバルだ。このままだと、16年ぶりに宇都宮市が年間首位の座を明け渡す……?
1、2月は順調にトップの座を守り続けた宇都宮市だが、3月には一気に14位に転落した。原因は東日本大震災。ギョーザ店や工場が被災して製造がストップしたほか、計画停電でスーパーから冷凍ギョーザが姿を消し、ガソリン不足で具材の調達もままならなくなったためだ。
震災以降も後遺症は続き、4月は3位、5月と6月は2位と回復は進まず、7月には6位と、順位を再び大きく下げた。このほど発表された8月の調査結果でも2位と、トップへの返り咲きを果たしていない。
この間、ライバルの浜松市は宇都宮市に代わって6カ月連続で首位をキープし、1〜8月の累計支出額は3014円と、宇都宮市の2603円にすでに411円の差をつけている。
ギョーザが調査項目に加えられた1987年以来、年ベースで宇都宮市は常に全国一を守り続けてきた。唯一の例外は静岡市にトップを奪われた95年だけだ。2007年4月に政令指定市になった浜松市とは、08年の調査から比較が可能となり、翌年にはわずか50円差にまで迫られたが、宇都宮市が4187円で逃げ切った。
月ベースでも、宇都宮市にとって2位以下が6カ月続く記録は、少なくとも浜松市が調査対象に加わった08年以降では例がない。独自の調査をもとに「ギョーザ日本一」を掲げた浜松市に対し、宇都宮市のギョーザ業界は総務省家計調査で1位という国の「お墨付き」を背景に、距離を置く姿勢をとってきた。
今年1〜8月のギョーザへの支出の月額平均は、宇都宮市が325円、浜松市は377円と、浜松市に50円以上のリードを許している。累計で411円に達した差を、9〜12月の4カ月でひっくり返すのは容易ではない。
約80店が加盟する宇都宮餃子(ぎょうざ)会でも対応を検討したが、キャンペーンの実施などの対策は見送った。平塚康専務理事は「ここ1、2カ月でようやく震災の後遺症から抜け出せたところ。あれだけの災害の後だから、この落ち込みも当然といえば当然」と冷静に受け止めながらも、11月5、6日に宇都宮市中心部で開くギョーザ祭りに起爆剤の効果を期待している。(今田幸伸)