行政刷新会議の民間委員で構成する分科会が、財政支出の効率化に関する報告書づくりで、会計検査院の検査のあり方を批判し、見直しを求める記述をしたところ、会計検査院が、とりまとめ役の内閣府に文の削除や修正を繰り返し要求し、内容を変えさせていたことがわかった。
▽筆者:松田史朗、松浦新
▽この記事は2011年10月12日の朝日新聞夕刊に掲載されたものです。
▽関連資料:公共サービス改革プログラム(案)抜粋
▽関連資料:公共サービス改革プログラム(案)への会計検査院の再意見
▽関連資料:公共サービス改革プログラム抜粋
内容が「検査すべきは数百万円の手続きの間違いでなく政策効果の乏しい巨額支出。国民の期待に応えていない」など、検査院の変革を求めるものだったため反発したとみられる。
一連の行動を会計検査院は「内閣府は検査対象。たとえ民間委員の意見でも、内閣府がまとめた報告書で我々の検査に意見することは慎重であるべきだ」と説明。検査権限を背景に批判を封じ込めた格好だ。
問題は「公共サービス改革プログラム」の原案づくりで起きた。
公認会計士や学者ら民間委員は、2009年度に各官庁から会計検査院に提出された証拠書類が5104万枚余になることから、「事務コストの増大が現場に過度な負担をかけている」と記した。
また、数百万円の過大支出と、政策効果が低い数千億円の支出の検査に同じ手数をかけていると指摘。「国民が期待するのは政策効果が乏しい巨額支出を抽出することだ」と書いた。
「そもそも政策的な領域に踏み込むことを過度に避ける傾向がある」、「国民視点とは乖離している」とも記述した。
これに対し、会計検査院は、2月下旬から3月にかけて、内閣府の照会に答える形で、計3回にわたって記述は不適切だ、と注意する文書を送った。
震災後の3月25日には、会計検査院に関する憲法第90条や「内閣に対し独立の地位を有する」(会計検査院法第1条)などの条文を並べた文書を送付。約1ページ分の記述について「削除していただく必要がある」と迫った。
内閣府は要求を一部のんで、最終報告では「事業仕分けは会計検査の限界を明らかにした」などの箇所を削除。表現も弱め、分量も半ページ強に減らした。