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[27026] IS~Friend~(インフィニット・ストラト、スラップスティック・コメディ)
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/22 10:45
チラ裏より移動してまいりました。
IS~インフィニットストラトス~の二次作品です。

・独自設定
・オリキャラ
・オリIS
・オリ武器

などでます、お気をつけ下さい。


元々は七巻を読了後
「あ~整備科志望のキャラとか面白いじゃないかなぁ」

と思い立ち一晩で書いたネタでした。
幸いにも好評で、皆様の支持もあってなんだか続きました。
今後も頑張りたいとおもいます。

この作品はにじファンにも投稿されています。




[27026] 【一発ネタだった】ルームメイトが・・・【続きました】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/09/22 09:03

 寮の自室のドアを開けたらルームメイトが男に押し倒されていた。
 しかもルームメイトが身につけているのはバスタオル一枚。
 合意か?合意の上なのか?
 それともレイプか?レイプなのか?
 完全に凍りついた二人を見下ろし、暫し沈思黙考。
 私は、右手でピースサイン(もちろんそれは2時間を意味している)。
 曖昧な笑みを浮かべ、ひらひらと左手を振り、そのまま後退を開始。
 つまり逃げる部屋を出ることにした。

「わぁ!待て誤解だ!」

 ルームメイトを押し倒している男…織斑一夏が叫んだ。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








 とりあえずルームメイト…篠ノ之箒さんには(勿体無いが)服を着ていただくことにした。
 織斑氏には事情を聞く。
 で篠ノ之さんに確認を取る。

「まぁなんだね、女同士で住んでるとは言え、バスタオルだけでシャワールームを出る癖を直すべきかなぁ」
「す、すまない…」
「で、問題は織斑君の部屋がココに割り当てられちゃったことだねぇ」

 山田先生は天然というか、結構抜けていうか、まぁそういうタイプだからな。
 おっぱいはおっきいんだけどねぇ
 正直男が生徒になったんだから。もう少しカッチリした格好をするべきだよね。織斑先生みたいに。
 あーでも似合わなさそ…
 そんなことを考えながら、端末を操作し、山田先生に連絡を取る。

『え゛!じょ、冗談ですよね?』
「残念ですが、事実です、現に織斑君はこの部屋のキー、持ってますし」
『ど、どうしましょう?』

 なんで生徒に相談するの?バカの子なの?
 元代表候補生のはずなんだけどなぁ、この女性ひと

「はぁ」
『あ、ひどいです。嶋野さん今の溜息は――』
「はいはい、それより織斑君の部屋を直ぐに用意してください、先生」
『う゛実はですね…直ぐには無理なんですぅ』

 はぁ?
 泣きそうな山田先生を問いただすと。
 なんでもこの一年生寮の空き部屋は、水道管やら電気配線に問題が有り、つまりインフラが整っていないため、使用できないそうなのだ。
 そんなもん春休みの内に終わらせとけや、と思い、実際にボソリと漏らしてしまった所、山田先生はぼろぼろ泣き出した。
 背後に非難の視線を感じるが、ちっと舌打ちし、通信を打ち切ることにした。

「とりあえず今日はどうにもできないでしょうし、今夜は織斑君を泊めます」
「「なっ!」」
『そーゆー訳には!』
「山田先生、“僕”が居るから大丈夫ですよ」

 含みを込めてそう言うと、私の個人的な事情を思いだしたのか?
 山田先生は納得したようだ

『あ~、はい。じゃぁ、すいませんがよろしくおねがいします。嶋野さん』

「「えっ!」」

 あっさりと山田先生が納得したことに後の二人が驚く。おおハモった


「仲がいいねぇ二人とも、息がぴったりあってるよ」

 二人をからかうと、織斑君は「まぁ幼馴染だからな」と言い。
 篠ノ之さんもまんざらではなさそうだ。
 はいはい、ご馳走様。

「いや、そうじゃなくてだな」
「そうだ!男女7歳にして――」
「はーい、はいはい。じゃぁどうする?廊下かロビーで寝るかい?織斑君」
「う…」

 私は二組だが、昼間の騒ぎは見ている。
 そんなところに居ようものなら、朝には身包み剥がされている可能性が有る。

「なら気心の知れた幼馴染の所にご厄介になるのは有りでしょう?」
「まぁそれはそうだが…お前はいいのかよ」
「お前ェ?」
「あ、すまん…だけど俺、おま、いや貴方の名前を知らないし」
「そういえば自己紹介してなかったか。シマノカオル。シマはやまどり嶋、ノは野原の野でカオルは井上馨の馨。よろしくね織斑一夏くん」
「えーと名前でいいか?」
「知り合って1時間も経っていない君に、ファーストネームを許す理由は無いね。嶋野“さん”とさん付けで呼(べやデコ助)ぶ事を要求します」
「はい…」
「篠ノ之さんは是非名前で呼んで頂戴。私も箒さんとお呼びしたしたいし」
「う、うむ…善処する」

 ルームメイトと苗字で呼び合う問というのは少々…ねぇ?
 なにやら織斑君が恨みがましい視線を送っている気もするが、無視無視と。

「で、嶋野…さん。貴方は嫌ではないのですか?男が一緒の部屋でも」
「うん。まぁ平気かな」
「なんでだよ?」

 さてどうしたものか…

「二人はISというのを知っているかい?」






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「はぁ?」
「何を…」
「勿論、インフィニット・ストラトスのことじゃないよ?」
「一体…あ、もしかして」

 へぇ織斑君は案外物知りなんだな。

「そう、intersexual…“僕”はつい数年前まではそうだったのさ」

 intersexual…通称ISとも。
 医学的には性分化疾患。
 色々言い方や症状はあるけども、男でも女でもなく生まれついた者。
 
「私は小学校に上がる前に両親を亡くしていてね、遠縁の嶋野の家に養子に入ったんだ」

 死んだ両親が、どんな思いで自分をISとして育てのかは、知りようは無い。
 普通は生まれて直ぐ、あるいは子供のうちに、どちらかの性別に外科手術でしてしまうものなのだそうだ。
 だが、何も告げず、何も残さず、両親は逝った。
 だから自分がISインター・セクシャルだとは知りもしなかった。
 自分は“男”だと信じて生きてきた。

「ところがぎっちょん。中学校に上がった直後だね。ちょっとしたことでISに触れたら、ISが反応した」
「それって…」
「そう、君と同じだね。で上に下にの大騒ぎの結果、自分がISだってことが判明したわけ」

 僕の場合は遺伝子レベルでは正真正銘の女の子なのだそうだ。
 つまり染色体はXX。

「でまぁ、女性化手術をして、女の子として生きていくことを決意したわけですよ」
「…」

 なにせISの出現以来、何かと女性の方がトクなのは事実なのだから。

「とはいえねぇ、物心ついてから十年。男として生きてきたわけだからね、そうは上手くいかない。
 色々と苦労も多いんだよ?」

 IS学園への入学を考慮して、中学からIS学園受験コースを志願したわけだけど、それはつまり女子学校に通うってことだからねぇ

「色々大変だったんだな」
「その一言で済むレベルではないけどね、ま大変さ加減では君の方が上でしょう?織斑君…世界で唯一の男のIS操者さん」
「…」
「まぁでも、“僕”としてはこの女の園に、精神的な意味で同性が居るのは、ちょっと嬉しいよ」

 すいと右手を差し出す。

「私と友達になってくれるかな?織斑一夏君?」

 これは彼にとっても悪い提案ではないはず。
 正真正銘、女の園に迷い込んだ男としては、多少なりとも気心の知れた友人ができるのは、楽なはずだ。
 中学校時代の苦労を知ってる僕が言うのだ、間違いは無い。

「こちらこそよろしく。で名前で呼んで良いか?」

 彼がこちらの手を取り、友情のシェイクハンド。

「もちろん、何ならあだ名でも結構だよ、僕も一夏と呼ばせてもらうから」
「おう、よろしくな馨」

 おっとそれ以上の接触は禁止だ一夏。
 心は兎も角、私の体は貧相とはいえ女の子なんだからな。
 あと君汗臭いよ、シャワーを浴びてきたまえ。
 そう言って一夏をシャワールームに追いやる。

「…」

 いまいち事の成り行きについてこれず、まるで空気の様だった篠ノ之さんの横に座る

「さて箒さん」
「な、なんだ」

 おや尻一つぶん横に逃げた。

「今までの話を総合して、今夜はどうしよう?」

 再度横に座り、(なにせ元男の子なので)ハスキーな声で篠ノ之さんに囁きかける。

「どう…とはなんだ、どうとは」
「どちらが一夏と一緒に寝るかってこと」

 ぼんっと篠ノ之さんが紅くなる。かわいいねぇ

「箒さんが一夏と寝る?」
「ばっ!ばかを言うな!男女は――」
「じゃぁ“僕”と寝る?悪いけど精神的な意味では、僕は男だよ」
「む…」
「それとも…“私”が一夏と寝ても良い?」
「それはだめだ!」

 おやおや

「じゃぁ箒さんは私と一緒に寝るってことで」
「いっ一夏を床に寝かせればいい!」
「それはちょっと可哀想だと思うよ?」
「~~~っ!」

 やぁやぁこんなナイスバディの美少女と同衾たぁ、ラッキーだねぇ
 一夏さまさまだ






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








 そんな訳で夜。
 さすがにIS学園の寮、二人部屋だというのに、ちょっといいホテル並にベッドが広い。これ以上からかったり、必要以上に密着すると…
ぶっちゃけ殺されそうなので、箒さんとは適当に距離をとって寝ることができる。
 ま、しかしあれだね一夏は鈍感だねぇ。
 箒さんもこりゃぁ苦労しそうだ。

 消灯時間にはなったが、まだ早い時間だ。小学生じゃあるまいし、こんな時間には眠れない。
 そんなわけでつらつらと世間話をする。
 数年振りに再開した幼馴染の会話の邪魔をするの野暮だし、私は極力発言を控え、話を振られた時だけ、返事をする。

「へぇ馨は、研究者志望なのか」
「うん、進級したら整備科にいくよ、二人とも是非頼ってちょーだい、特に一夏は専用機、配備されるんでしょ?」
「ああ、そうらしいな」
「おい、ちょっと近いぞ馨」
「いいじゃん…女同士なんだから」
「お前、心は男だと、言っていたではないか」
「はぁはぁ、箒タン良い匂いだよいち――ごふっ!」

 みぞおちを!みぞおちをぉ!

「男が横で寝てんのに、慎みがたんねぇぞ馨」
「このおっぱいがいけ――ぐぅぇ」

 おにんにん無くても股間は痛いのよ箒たーん。
 あ、そこはらめぇぇぇぇ

 暗転






                  \(゜ロ\)(/ロ゜)/






SIDE:箒


 まったくなんだこの生き物は!
 こうなったら私が慎み深い女性というものをきっちり教え込む必要が有るな!
 …
 …む、それは何かまずい気もするな。
 …気のせい、気のせいだ



SIDE:一夏


 なんか色々有りすぎて疲れた一日だったけど。
 箒にも再会した
 ちょっと変な奴だけど、友達も出来た。
 たしかに女だらけの中に、男心を知ってくれて奴が居るのはありがたいな。
 組が違うのが残念だけど。
 二組なら合同演習も多いらしいし、問題ないだろ。
 …ふぁ、寝るか





END? つづく

一夏に“友達”を作ってみた



[27026] 【何故続けたし】クラス代表決定戦にまつわるアレコレ・前編【誰得】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/11 06:22
「聞いたよ一夏、オルコット嬢にケンカ売ったんだって?」

 昼食を摂る生徒で賑わうというよりはもはや混雑する学園の食堂。
 なにやら箒さんと手を握りながら一夏がやってきた。
 おやおや見せ付けちゃって、周囲の視線が集まってるが…ありゃ、二人の世界だな。
 空いている席を探してきょろつく二人を手招きする。
 で開口一番がさっきのセリフだ。

「もう知れ渡ってんのか」
「学園中にね。でなんだって一夏は箒さんの手を握ってご飯に来たんだい?」
「それはな…」

 と、一夏がコトの次第を説明する…ふぅん。

「気持ちはわかんないでもないけど、ちょっとお節介じゃないかな?」
「それは!」
「だいたい、友達ならもう一人いるじゃない?ねー箒さん♪」
「誰のことだ」

 うわっ、ひどっ!

「酷いや箒さん…昨日は」

 一緒に寝た仲なのに…と続けようとしたら、ものすごい勢いで睨まれた、漫画なら「ぎんっ!」とかいう擬音が付きそうなレベルで

「それよりさぁ、ISのこと教えてくれないか?このままだと来週――」
「何も出来ずにコテンパンにやられるだろうねぇ、相手が悪いよ」
「下らない挑発に乗るからだ、馬鹿め」

 それいったらおしまいでしょ…箒さん

「私は手伝うよ一夏」
「おお!いいのか?」
「友達だろ?僕たち」
「ま、待て!ここは幼馴染である私が!」

 あ、あっさり食いついた、ちょろいなぁ箒さん。

「二人ともありがとう!助かる!」
「…くっ」

 怖いから睨まないで下さい。

「今日の放課後」
「ん?」
「剣道場にこい、まず腕がなまっていないか確かめる」
「いや俺は」
「いいんじゃない、フィジカルの方は箒さんにお任せするよ」
「よし、決まりだな」
「いや、俺の意見は…」

 しーらないっと
 さぁて、頑張って一夏にクラス代表になってもらわないとね…ふふっ



                  \(゜ロ\)(/ロ゜)/



「あ、おかえり」
「た、ただいま…」
「なんて格好をしてるんだお前」

 散々箒に竹刀でぶったたかれ、ふらふらしながら部屋に戻ると、馨がカロリー○イトを咥えながら、端末を弄っていた。
 格好は肌襦袢一枚だが、さっぱり色気がない。
 まぁ仕方ないんだろうけど。
 そんな馨に、箒がわなわなと震えている。

「昨日箒さんが着てるのみてまねっこ、どう似合ってる?」
「カオルはカオルでも由○かおるだったら良かったのにな」
「・・・親父ギャグとか最低」
「死ね馬鹿」

 場を和ませるジョークのつもりだったんだよぉ

「で一夏の腕前はどうだったの?箒さん」
「話にならん」
「あらまー、とにかくそっちの特訓は箒さんにお任せだね、どうせ訓練機の貸し出し申請出しても月曜には間に合わないし」
「そうなのか?」
「金土日と自主練したい先輩方の予約で一杯だったよ、本当は一時間でも多くISに乗ったほうがいいけど、しょうがないね」

 馨曰く「五月にはクラス代表同士の交流戦あるしね、さすがに先輩は余念がないよ」
 むぅ…

「ま、一夏は専用機持ちになるんだし、下手に量産機に乗って、変なクセでもつけるとまずいかもしれないし、いいんじゃない」
「そんなもんか?」
「そんなもんじゃない?とにかくご飯食べて、お風呂までは作戦会議といこう」

 半纏を羽織った馨はそう言って寮の食堂へと向かう。
 まぁ、俺達三人の中では、明らかにコイツが一番頭良いみたいだし、お任せするか…





              \(゜ロ\)(/ロ゜)/





「現時点での一夏の勝率は1%未満、そこはいいかな?」
「はっきりいうな…」
「君はIS稼働時間一時間未満の上に、つい先日はただの中学生だった一般人。
 対してオルコット嬢は、専用機のテストパイロットである代表候補生、下手な自衛隊員よりも訓練をしてる。
 君が負けて、当たり前じゃない、普通な0%だよ」
「ぐっ…」
「君に僅かながら勝機があるのは、まず君の専用機がまだ完成していない未知の機体であること。
 君が素人であるがゆえの、ビギナーズラック・・・というか素人ゆえの予想にもつかない行動がラッキーヒットをかます場合。
 たとえば開始と同時につっこんで、まずオルコット嬢のおっぱいをも――ひでぶっ!」

 箒…馨は俺ほど頑丈じゃないから竹刀で叩くのは止めた方がいいと思うぞ。

「イタタタ…結構有効な策だと思うんだけどね」
「真面目にやれ」
「はい…さてフィジカル面でのトレーニングは箒さんに一任するとして、私の方はどうやってオルコット嬢と戦うか、そのお手伝いをするよ」

 具体的には――といって馨は大量のデーダディスクを取り出す。

「まずはオルコット嬢とその専用IS【ブルーティアーズ】に関することから、孫子曰く――」
「『敵を知り、己を知らば、百戦危うからず』か」
「そゆこと、さっきもいったけど、逆にオルコット嬢は一夏に関するデータを殆ど集められないからね、その点では有利だ」
「ふむ、利に適っているな」
「次は『己を知る』だね、まだ一夏のISは届いてないみたいだけど、現状で一夏の取れる戦法はあまり多くない、射撃兵装は…牽制や面制圧ができるなら兎も角、点射や狙撃は素人には無理、だから近接戦闘を取るしかない。
 そういう意味では箒さんに剣の稽古をつけてもらうのはいいことかもね」

 馨は一枚のデータディスクを端末に差し込み、動画を画面に呼び出す。
 そこに映し出されたのは・・・

「これは!」
「第一回モンドグロッソ。織斑先生の戦闘映像だよ、先生のIS【暮桜】の兵装はたった一本のブレードだけ。色々参考になるよ」
「このデータディスク山は」
「半分は織斑先生の、残りはISの空戦機動の戦技教本データや、あとオルコット嬢のデータだね」
「どんだけあるんだよ…」
「実際に動いて覚えられないんだ、『見て』覚えるんだよ。ふふ今夜は寝かさない――ひでぶっ!」

 精一杯色っぽい感じで俺に迫ってきた馨に箒のつっこみが入る。
 …だから竹刀はやめとけって
 当たり所が悪かったのか、馨がふらふらと殴った箒に寄りかかる。

「ちょっ!どこに触ってるんだ!離せ!離さんか!」
「ふかふかおっぱい…」
「おい一夏!こいつを引き剥がせ!」
「お前が殴ったんだろう、介抱してやれよ」

 千冬姉の映像に心奪われている俺はそちらも見ずに適当に答える。

「くっ離せ!というか触るな!顔を押し付けるな!動かすなぁぁぁ!」

 何か破滅的な音がしたが俺は気にしないことにした。



[27026] 【一巻分までは続く?】クラス代表(中略)中編【オリキャラの崩壊がとまらない】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/11 08:00
巻頭付録
オリキャラのスペック

名前:嶋野馨(しまのかおる)
年齢:16(実はダブリ)
性別:女性(IS・男性として10年以上生活)
身長:175cm
体重:60kgないしょ!
3サイズw B:81(A) W67 H86
一人称:私(普段、女性を意識した場合)僕(男性を意識した場合)が混在
IS適正:C
専用IS:なし
特記事項:ISインターセクシャル、精神的には男性の意識が強く、変態的な言動(特に乳への感心が大)が多い
     IS操縦者としては並み(よりやや下)研究者志望であり、二年次には整備科へと進む予定
     家族構成:両親、祖母、兄(ただし養子のため義理の関係)








 まだ首が痛い、もう箒たんたら照れ屋さん☆

「いい加減にしないとホントに殺されるぞ」

 はは、あのおっぱいを堪能できたのだから、もう死んでもいいよ
 や、良くないけどね

「それはさておき、これがオルコット嬢の専用IS【ブルー・ティアーズ】のスペック」

 箒さんは入浴のため大浴場へ赴いて不在。
 できれば私も男子禁制のパライソへと赴きたいけど…
 箒さんが怖い時間も惜しいので早速勉強に移ることにする。
 端末を操作し、モニターにブルー・ティアーズのデータを映す。

「すげぇな、どうやって手に入れたんだ?」
「公開されてるデータを下に、本日の放課後、オルコット嬢が訓練しているアリーナに偵察にいって、私が修正したモノだよん」
「ああ、アングルが変なのはそのせいか…」

 私が隠し撮り撮影した、訓練飛行しているオルコット嬢の映像を見て、一夏が白い視線を向けてくる。

「へへ、いいお尻だよね、白人さんとしてはおっぱいは控えめだけど、スタイルが凄く良いんだよねぇ、セシリアたんは、うらやましいねぇ」
「たん言うな…お前はそれしか頭に無いのか」
「十代男子なんてそんなもんだよ、一夏がおかしいんだって」

 お前体は女だろうって、まぁそうだけどさ、一夏は淡白だねぇ
 やっぱり織斑先生と二人暮しだった、てのがいけないのかな?
 あんな美人のお姉さんと二人暮し、そりゃ十代の小娘なんて目じゃないよね。
 織斑先生ではぁはぁするのは、まじで生命の危機に直結してるので止めて置くことにする。

「あ、おかずが必要なら秘蔵のデータを提供するよ、箒さんは上手く僕が連れ出してあげるからいつでも言ってね」
「真面目に頼む」
「はーい」

 あんまり溜め込むと体に悪いよ?
 こほん
 英国製第三世代IS【ブルー・ティアーズ】、専用装備である誘導兵器「ブルー・ティアーズ」を運用するための機体で、戦闘スタイルは中距離射撃型。
 でこのブルー・ティアーズというのは、ようするにビ○ト、あるいはファン○ルである。

「ぶっちゃけたな、おい」
「この手の兵器はそう呼ばれる宿命にあるのさ」

 基本的には「一体で多数の敵を相手取る」機体ではあるけど、タイマンでも当然強い。 
 むしろチームを組んで一体の敵と相対するのが苦手なんじゃないかなぁ
 欧州では唯一の島国でハブ気味の英国製らしい、っちゃらしい機体だ。

「とりえず今日は撮って来た映像と、公開されてる映像の検証をしようか」

 ちょいとやばい橋を渡ってゲットした映像を含め、結構な量のデータが有る、検証には十分だろう。
 一夏は真剣な表情で、オルコット嬢の動きを。
 私は主に揺れるおっぱいとか、ほぼ丸出しのお尻とか、ちょっとしか見えないのが逆にそそる太もも、つまり「シリチチフトモモ」を、愛でることにした。






                 \(゜ロ\)(/ロ゜)/






「何をしてるんだ貴様らは…」
「おっぱいかんしょ――ぎゃー!」

 目が!目に!指が!

「おう箒お帰り」
「なんだ、対戦相手の研究か」

 目への激痛でのた打ち回る私をよそに幼馴染二人は和気藹々と会話している!
 なにこれ!ひどくない?

「幾つか分かったことがあるぜ」
「ほぅ」
「おそらくバストサイズは――ぎゃー!」

 目がぁ!目がぁ!
 ムスカ大佐の真似してる場合じゃないレベルで目がぁ!

「…まずこのブルー・ティアーズ、基本的に死角から攻撃するのがパターンだな」
「ISに死角は無いだろう」
「たしかにISはハイパー・センサーのお陰で360度視界を持ってるけど、人間の方がそれを処理する上では死角はあるよ」
「ああ、模擬戦の映像を見ると、そんな感じだ」
「ふむ」
「あと、セシリアはこのブルー・ティアーズを誘導している時は、それに集中しているみたいだな、明らかに動きが鈍い」
「目がいいね一夏は、所でこの腰のくびれからお尻のラインがたまんないと思わない?」

 あ、とうとう無視された…それが一番キツイですぅ







                \(゜ロ\)(/ロ゜)/







 そんなこんなで日曜日。
 いよいよ明日は対戦である。

「今日は休養日にしよう、一日かけて一夏は今日までの知識を脳に染み付かせて」
「やってみる…」

 ほぼちんぷんかんぷんだろう授業に。
 動物園のパンダ並みに女子に騒がれるストレス。
 箒さんの地獄の特訓
 そして深夜まで続く私との勉強会→寝不足
 以上のせいで一夏はもうぼろぼろだった、さすがにこれでは試合以前の問題だ。

「でいいかな?箒さん」
「構わん、大分マシになってきたしな」
「た、助かった…」

 べとりとベッドに倒れこむ一夏、あははキツそうだなぁ

「そうだ、いいものがあるんだ、三人でいこうか?」
「なんだ?」
「じゃーん!」

 ドラ○もんのように差し出した、携帯端末の画面にはクーポンメールが映っている。

「スーパー銭湯の割引クーポンか」
「一夏もでかい風呂に入りた言ってたしね」
「おお…いいな」
「午前中はゆっくり休んで、午後から出よう、昼ごはんも私がいい店知ってるから」

 半ば思考放棄の一夏はただ頷き、箒さんも「これはデ、デートか?」と小声でぶつぶつ言っている。
 あー私ってば空気扱いですかー?






                 \(゜ロ\)(/ロ゜)/






「旨かったけど、いいのか本当におごりで?さっきの店かなり高いだろ」

 まずは昼ごはんということで、知り合いのてんぷら屋さんで昼食をいただきました。
 やーあいかわらずあそこのアイスのてんぷらは絶品だね

わたくしお金持ちなの、お気になさらないでよくってよ?一夏さん」
「それセシリアの真似か?」

 ちがいます。
 実は女性化手術で入院してた時に、暇つぶしでやったFXで稼いだ貯金が結構有るんだよね。

「さて、私と箒さんはちょっと買い物があるから、一夏はそこの本屋で立ち読みでもしてて」
「なんだよそれ、仲間はずれか」
「お、おいそんな話は聞いて無いぞ」
「だって聞かれなかったし~。一夏も女性用の売り場で居心地の悪い思いしないで済むんだから、僕の配慮に感謝しなよ」

 いぶかしむ一夏を置き去りにし、ぐずる箒さんの手を引いてショッピングモールのとある店へと飛び込む。

「な!なんでこんな店に用事が」
「やっほー香月さーん、おひさー」
「いらっしゃい馨ちゃん、そちらがお友達?」
「そ、ルームメイトの篠ノ之箒さん、昨日のメールの件よろしくっ!」
「はいはい」
「馨!一体何が!」

 ふふ、気にしない気にしない…げへへ






((((((((((((((((/ロ゜)/






「なんだここは」

 立ち込める湯気、柔らかな水の音、何いってるのさ一夏

「スーパー銭湯だよ」

 ここに来るのが目的でしょうが。

「何故私は水着を買わされて、着させているのだ」

 もじもじしながら箒さんが言う、ちょっと声が怖いんですが

「水着混浴スーパー銭湯だから」
「「聞いてないっ!」」

 おおハモったね、でも・・・

「言って無いも~ん」

 クーポンを用意したスパはファミリー層をメインにしたレジャーっぽいトコなんだよね。
 水着着用で風呂ってのは日本人にはちょっと抵抗があるみたいだけど。
 そのせいで居るのは若い子ばっかりー
 まぁ男子の大半が女子にこき使われるようになって数年だけど。
 こーゆーことに使われる男子のリビドーはさすがはHENTAI国家NIPPONだね。
 ちなみに入り口は男女別で体を洗ってから、水着を着てから浴場に入りますので。
 初見だとだまされるんだよねぇケケケケ
 ひゃっほー女の子イパーイ!オパーイ!オシーリ!フトモーモ!
 男?ミエナーイ!

「そうか何も見えないようにしてやろう」

 え?
 グリッ
 目がぁ!目がぁ!このネタ三度目ぇ!

「まぁ馨の馬鹿は置いといて、風呂入ろうぜ、電気風呂に炭酸風呂、蒸気サウナ・・・色々あるんだな」
「う、うむ」
「なんだ箒もじもじして、ト――いてぇ!」
「思ってもソレを口にしちゃなんねぇよ…一夏サン」

 この子はデリカシーがなさ過ぎる。

「へっへー可愛いでしょう?箒さんの水着、私がチョイスしました」
「良く売ってたなこんな時期に」
「兄貴の友人にブティックしてる女性ひとがいてね、ツテで」

 ちなみに箒さんはセパレート、トップスはスポブラみたいなハーフトップのタンクトップ、アンダーもショートパンツ型。
 正直もっとエロイにしたかったけど、ここはあんまりエロイの入場拒否されちゃうんだよね。
 まぁ十分エロイけどね!(゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!

おい
「すみません」
 
 すばやくDOGEZAする。これ以上目潰しは勘弁してください、ネタ的にも。

「でも、良く似合ってるぜ」

 うほっ、この女殺し!箒さん真っ赤!
 かーわーいーいー
 あっー!
 小指が!足の小指が!ミシッって!
 
「馨は…狙ってんのか?」
「旧型スク水とかIS学園の指定は軽く逝っちゃってるよね」

 ちゃんと「いちねんにくみ しまの」と書いた名札もあるぜ…小指イタイ(;;)
 ちなみにパレオをオプションで着用しています。
 脚に自信が無いので。

「ふふっ邪魔はしないから二人で楽しんだらいいじゃない」

 てゆうかこれひびはいって無い?すごく痛いんですけど

「お、おいっ!」

 スススススと忍者のようにフェードアウト、がんばれ箒さん、その鈍感男には過剰なアピールが大事だよ!
 (もちろん離れたとこから覗き見守ります)



・・・
・・・・・・



 まぁ何にも無かったけどね!
 ちっあのヘタレ共が
 やはり水着に色気が足りなかったな、夏の臨海学校でリベンジするか…
 さっそく色々と手配をしておこう。

 ともあれ、たっぷりと英気を養い、月曜日を迎えたのです。

 …は?
 ……もう一回お願いします、山田先生
 ………一夏の専用機がまだ到着してないって?馬鹿な、おっぱいもみますよ?
 
 あー、どうしよう。




 つづく。



[27026] 【ここに書く】(全略)後編【ネタがなくなってきた】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/12 07:45
「おっぱい揉んじゃダメですよ!」

 両手でおっぱいをガードしながら、開口一番何言ってるんですか山田先生。
 まぁ言わせたのは私だけど。

「で、一夏の専用ISはまだ到着しないんですか?」
「はい、もう三日待ってくれと」
「はい却下。『すぐに持って来いこのクズ』と、織斑先生言ってやって下さい」
「断る」

 うほっ!即答されたよ。こえぇぇぇ、やっぱ先生は危険だ。構わないでおこう。

「納期は今日の昼休みまでって話でしたよね?山田先生」
「はい」
「なんでこうなるんです?」
「…なんででしょう?」

 質問に質問で返さないで下さい。

「馨、無いもんは仕方ないだろ、最悪放課後の試合までに間に合えば――」
「あのねぇ一夏、初期化と最適化、あと微調整で最低でも一時間はかけなきゃ、タダでさえドン底の勝率が、ド底辺まで下がっちゃうよ」
「そうだな」

 感心してる場合じゃないですよ先生!貴方の弟のデビュー戦なんですって!
 …
 結局昼休み中に一夏のISは届かなかった…






            ソレカラ\(゜ロ\)(/ロ゜)/ドンドコショー






「こないな」 ← 一夏さん人事みたいに言うのはやめましょう
「うむ、こないな」 ← 箒さん納得してる場合じゃありませんよ?
『どどどど、どうしましょう?』 ← 山田先生はもちついて
『どうにもならんな』 ← 織斑先生は落ち着きすぎです

 なんでボケ役の私がつっこんでるのか?おかしくない?

「はぁ…まさかこのセリフを吐くことになるとはね」
「どうしたんだ馨」
「こんなこともあろうかと!」

 真○さん風に言ってみた。

「訓練機の貸し出し申請を今日の放課後に合わせてしておいたんだよ!」

 ばばーん!
 ピットのハッチが開き、IS(訓練機)が登場する。

「「おおっー」」

 先輩方も今日の一夏VSオルコット嬢に興味があったのか、予約で埋まっているということはなかったのだ。
 暇そうな三年の先輩を捕まえて整備もしておいて貰いました。
 かんぺきぃ!
 カオルちゃんたらエクセランッ!(何でフランス語なの?調子に乗ってるの?)

『手回しがいいな嶋野』

 こうゆうことって先生方がやっとくことですよね?ピキピキ

『なんだ?その顔は?』

 なんでもありまっしぇーん!ガクガクブルブル
 管制室にいるからいいけど、隣に居たら非常に危険だったに違いない。

「さ一夏は準備して」
「お、おう」

 借りた機体は純国産第二世代量産機『打鉄』
 身持ちガードが固い大和撫子な機体だ、ただその分機動性にやや難があって、この対戦に限って言えば微妙。
 他にもおフランス製の『ラファール・リヴァイブ』アメちゃん製の『ファントム・イーグル』があったけど…
 リヴァイヴは、汎用性の高く扱いやすい、尻軽できる子だが、今の一夏は一芸特化なのでやや宝の持ち腐れ。
 ファントム・イーグルは、アメちゃんの「白兵ってサムライ(笑)かよ」思想による火力型だから論外、機動性はグンバツなんだが…
 結局白兵戦闘能力が第二世代では群を抜いて高い、打鉄一択。現在の一夏の実力を考えてコレしかなかった。

 そんなご高説を垂れていると、山田先生の声がピットに響く。

『え!着いた?皆さん、やりました!一夏さんの専用ISが着いたそうです!』


気まずい沈黙がピットを支配した。




                    Orz




「これが一夏のISか」
『そうです、一夏さんの専用IS【白式】です』

 なんですかその某グラサンの大尉(中身は大佐)が乗ってたキンピカMSみたいな名前は。

『織斑、時間が無いさっさと準備しろ』

 織斑先生に促され、一夏が白式に乗り込む。

「あれ?」
「うんともすんともいわねぇぞ?」

 あれほんとだ、待機状態のままだ。おかしい

「ってエネルギーがからぁぁぁぁぁ!箒さん!そこのケーブルひっぱってきて早く速く!」
「お、おう!」
『あれー?』

 あれーじゃない!どうなってるんですか!
 あわててエネルギーの充填を開始すると、ようやく白式の初期起動が始まった。

「あれ…エラーメッセージしかでないんだけど」

 は?

「なにこれ!パラメータがぐちゃぐちゃなんですけどー!」

 責任者でてこーい!





                   \(゜ロ\)(/ロ゜)/





『はわわわ』
『ふむ、急がせすぎたか』

 何を呑気な!
 
「AIC値再取得、CN…だめだ応答なし、スラスタ出力…爆発させる気か!」
「おお…なんかすごいな」

 とにかく初期化すら始まらないのは大問題だ、手動で修正してやるしかない。
 空中投影ディスプレイとキーボードを呼び出し、超特急で白式のOSをいじくる。

『はわわ、うわ嶋野さんすごいですねぇ』
「はわはわ言ってないで山田先生も手伝ってください、セクハラしますよ」
『はひっ!』

 くそっ!絶対どさくさに紛れて、あのけしからんおっぱい揉みしだいてやる!

『どうなっていますの!?とっくに試合の開始時間は過ぎてますわよ!』

 きっー!やかましい!オートミールでも食ってろ!

『私の不戦勝ということでよろしいのかしら!?』

 まずい見物人達がざわついている、さすがに代表候補生、パフォーマンスってものを知ってるな。
 これでは一夏が臆して逃げたという印象が付いてしまう。

「馨、あとどれくらいかかる?」
「ごめん、どんなに頑張っても10分はかかる」

 一夏の表情にも焦りが浮かぶ、このままじゃこの一週間の努力がパーだ。

「私が…時間を稼ごう」
「なっ!」
「箒?」

 いつのまにかISスーツに着替えてきた箒さんが打鉄に乗りこもうとしている。

「無茶だ箒さん、そいつは一夏用に微調整してある」
「問題ない…私は幼馴染を侮辱されて、平気な顔をしていられるほど人間が出来ていないんだ」
「箒…」

 一夏の表情が歪む。

「なんて顔をしてるんだ一夏。あの女など軽く捻ってやる、私とお前でクラス代表決定戦だ」
「…」

 静かに、見詰め合う二人の視線が、絡む。

「頼む」
 
 万感の思いを込めて一夏が言った。
 箒さんは笑って応えた。
 まぶしいまでの
 今まで見た中で最高の笑顔だった。

「任せろ」





                   \(゜ロ\)(/ロ゜)/




「えーと、いいんでしょうか?織斑先生」
「一番強い奴がクラス代表、わかりやすくていいではないか。それに私は自薦他薦は問わんといったぞ」

 ガキが一人前に“女”の顔をしおって、生意気な。






 次回「クラス代表決定戦!」に続く
(ちょっと短いのですが、キリが良かったので、ここで続く)

 感想を下さった皆さま、おくればせながら感謝を、本当にありがとうございます。

追記:アメちゃん製IS【ファントム・イーグル】は作者の妄想です
   名前はF-4とF-15から。
   火力型という設定は某オルタの米国製戦術機の設計思想からパクリアイディアを拝借しました



[27026] 【妙にシリアス】クラス代表決定戦・完結編【でもオリキャラは相変わらず】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/14 08:34
 一夏とセシリアのクラス代表の座を賭けた決闘。
 当事者である一組はおろか、上級生までもが見物に集まったアリーナはざわついていた。
 試合開始時間になっても一夏が現れないのだ。
 そこに目をつけたセシリアが煽る、たいした女優ぶりだ。
 そして決定的な崩壊の直前、ピットから一機のISが飛び出してきた。
 だがそのISを纏っていたのは一夏ではなく…


「あら、篠ノ之さん、何の用ですの?」
「この状況で説明が必要か?」

 箒のセリフを如何にとったのか?
 セシリアはひどく冷めた表情を浮かべて、言い放った。

「最低ですわね」
「誰がだ…」
「言わなくては判りませんの?」
「いい度胸だ」

 公然と想い人を侮辱された箒が、静かな怒りを押し殺し、獲物を解放する。
 IS用の近接刀、打鉄に標準インストールされているそれは、日本刀を模したものだ。
 もちろん通常の日本刀の製法、素材で造ったのではなく、あくまで模したものではあるが、それは箒の手によく馴染んだ。

「武器の相性というものもご存知ないのかしら!」

 一方のセシリアが手にする長大なレーザーライフルが火を吹く。

「ぐっ!」

 とっさに回避行動を取ったものの、左肩の装甲を掠めた一撃で、装甲の一部が吹き飛ぶ。
 さすがにガードに定評のある打鉄、ものともせずに、箒が前に出る。
 譲れない女同士の、壮絶なバトルの火蓋は切って落とされた。






          ナンカシリアスジャネ?(゜ロ\)(/ロ゜)オレラバチガイダナ





「馨まだか」

 あれから約10分、箒はよく攻撃をしのぎ、善戦していたが、セシリアに一太刀として浴びせる事はできないでいた。
 武装の相性以上に、打鉄の動きが鈍いのだ。
 馨にしてみれば予想通りの結果だ、事前に取らせておいてもらった一夏のデータに合わせて、あの打鉄は微調整して“しまった”、それが裏目に出てしまっているのだ。
 さらに言えば、箒は生身ならば、全国大会で優勝するレベルの武芸者なのかもしれないが、それは一概にISでの強さには直結しない。
 とはいえ当の馨はそれどころではない。

「…どうしてここでエラーが!」

 超特急とはいえ、ほぼ問題無いレベルでOSは調整できたはずなのに、一向に白式の初期化が始まらないのだ。
 馨は床をガンガン蹴りつける、地団駄を踏むという奴だ。

「全パラメータは正常値に書き換えた、もうエラーを返す理由は無いのにぃぃぃ」

 頭にきたのか、白式を思い切り殴りつけ始める馨。

「お、おい!古いテレビじゃないんだぞ!」
「どこか!接触が悪い!ということも!有るには!有るんだよっ!」

 Pi!

「嘘…」
「よしっ!」

 会心の一撃!とばかりにガッツポーズを取る馨。

「さぁ一夏!颯爽登場で箒さんを助けに言って!」
「…おう!」

 色々と釈然としないものが有るが、一夏がピットの先へと進む。
 正常起動を果たした白式からはアリーナでの戦闘データがつぶさに送られてきていた。
 もう箒は限界のようだ。

「サンキューな馨!」
「いいから早く!」
「ああ、行って来る!」

 アリーナへと一夏の姿が消えると同時に、馨はその場にヘタリ込んだ。

「つ、疲れた…」
『ご苦労だったな嶋野、戻った篠ノ之を連れてお前も管制室に来い』

 NOと言わせない口調で織斑千冬は馨を呼びつけた…





               \(゜ロ\)(/ロ゜)/





「口だけですわね!篠ノ之さん」
「くぅ…」

 シールドエネルギー残り21、実体ダメージは中破、問題は足回りを破壊されたため、まともに飛べないことだ。

「ではサヨナラですわ!」

 セシリアの周囲に集まった四機の「ブルー・ティアーズ」とレーザー・ライフル、五門の銃火が容赦なく箒を襲う。
 ままならぬ打鉄を駆り、一発、二発と回避するが、三発目が掠め、四発目は右肩のアーマーを完全に破壊する、その衝撃で箒は無様にも地面に叩きつけられた。
 シールドエネルギー残7、そして回避不能を告げる、無情の警告。

「っ!」

 だが
 その一撃が箒を貫くことはなかった。

「ふぅ、ギリギリセーフ」
「い、一夏!」
「大丈夫か?箒、遅れてすまねぇ」

 射線に割り込んだ一夏が箒を庇ったのだ。
 その代償として、白式はかなりのシールドエネルギーを消耗したが、一夏は気にしていなかった。
 劇的な登場にアリーナの観衆から黄色い声援が上がる。
 なにせ皆が夢見る十代の乙女達だ、ヒロインのピンチに颯爽と登場する王子様、にしか今の一夏は見えない。
 そんな観衆の声も聞こえない者が約二名。
 一人は助けられた箒。まぁこれはいわずものがでろう。
 そしてもう一人はセシリアだった。

「(接近をまったく感知できませんでしたわ…今のは『瞬時加速』イグニッション・ブースト!?)」

 ISの搭乗時間が一時間未満のド素人が?
 そんな馬鹿な…

「ちょいとマシントラブルで遅くなった、スマン」
「…」

 一夏の言葉に、セシリアは無言、その瞳に憎悪を込めて、一夏を睨む。
 セシリアは男が嫌いだ。
 それは婿養子であった父の情け無い姿が、強烈なトラウマとなって、セシリアの精神を形成しているからに他ならない。
 ISの普及とあいまって、世界を蔓延し始めた、女尊男卑の傾向が、それを決定的にしてしまっていた。
 セシリアが成長し、大人となれば、あるいは何か違ったのかもしれない。
 だがセシリアの成長を待たず、両親は事故で逝った。

「認めませんわ…」

 小声で呟いた、セシリアは箒戦では使わないで居た、もう二基の「ブルー・ティアーズ」を分離させる。
 全力で叩き潰す。
 男など、弱くて、情けなくて、格好の悪い生き物で良い。
 今眼前にいる男は違う、幼馴染の少女を庇い、なんの努力も無く専用機を纏い、素人に有らざる才能の片鱗を見せ付ける。

 コンナコトハミトメラレナイ、ゼンリョクデコノオトコヲヒテイシナクテハナラナイ。

 セシリアは無言でトリガーを引いた。






        オイシリアスマダツヅイテッゾ\(゜ロ\)(/ロ゜)/ダイダイナンデサンニンショウヨ?





「えーと、一年二組、嶋野馨、参上しました、もう帰ってもいいですか?」
「座れ」
「はい…」

 なんですかコレ。 
 モニターを見れば、一夏とオルコット嬢が激戦を繰り広げている。
 箒さんの方は疲労困憊しているのと、一夏が心配なのか無言。
 じっとモニターを凝視している。

「まぁご苦労だった、これでも飲め」

 おおコーラですか、確かに頭脳労働直後で脳は糖分を欲していますが、炭酸はちょっと。

「安心しろ、ちゃんと炭酸は抜いてある」

 どこのグラップラーですかあなたは?
 あ、いえ何でもありません。睨まないで下さい。
 この人は読心能力でもあるのだろうか?

「『瞬時加速』…入れ知恵したのはお前か?」
「作戦を考えたのは私ですけど、まさかぶっつけ本番で一発成功するとか、一夏は本番に強いタイプなんですねぇ」
「…まぁよかろう。さて嶋野、個人端末を出せ、よこせ、コピーした白式のデータは没収する」

 従わねば殺す、そんな感じの口調で宣告された。

「白式のアレは立派な妨害行為ですよ?手口から犯人を――」
「好奇心は猫を殺すぞ」
「はい…」

 ちぇー。
 しぶしぶ、端末を先生に差し出す。

「…ついでにコレも消しておくか」

 あ、それは!先生が現役だったころの、ちょっとエロいグラビアデータ!
 らめぇ!消しちゃらめぇ!複製制限付きのプレミアデータなのぉ!
 あ、あっー…Orz

「先生酷いわ!横暴!」
「山田先生の分も消そうか」
「先生の下僕になります、だからそれは勘弁してください」

 ジャピングDOGEZA!

「何処で手に入れたんですかぁ!織斑先生、消して!消してくださぃ!」

 あ、山田先生まで、だめぇ!それは貴重な水着のデータなのぉ
 あっ!あぁん…Orz

「酷い、酷すぎる…一夏のためにあんなに頑張ったのに!その報いがコレなんてぇ(血涙)」
「お前はその情熱をもっと別のことに使え」

 だが断る!
 バシン!
 うぉぉぉ!これが噂の出席簿アタック!ていうかそれ端末!金属製の端末!
 いてぇぇぇ!

「馨」
「しくしく、なんでしょう箒さん」

 慰めてくれるの?

「うるさい、静かにしろ」

 酷い…でも口答えすると殺されそうだ、素直に従おう。

「はい…」

 管制室の隅っこに体育座りで、床にのの字を書きながら、気の抜けたコーラを啜る。

「なんかこのコーラ、しょっぱいな…」





                 \(゜ロ\)(/ロ゜)/





 結果だけ言えば、試合は引き分けだった。
 試合中に無事一次移行ファーストシフトを終了させた白式。
 そして、そのワンオフアビリティー『零落白夜』による攻撃がブルー・ティアーズのエネルギーを0にするのと同時に…
 白式のエネルギーも『零落白夜』の使用で0になっちゃったからだ。
 バカス、燃費悪いにも程が有るわ!

 夕食はしめやかに三人で残念会。
 戻って寮で反省会、私は白式のデータを見せてもらって、ちょろちょろと調整させてもらっている。
 しかし前倒れこうげきいっぺんとうな上に燃費悪いなぁこの機体、まさに試作機って感じだ。
 さてデータを端末に保存して…あれ?
 ああああああああ!!





               ナンダ?\(゜ロ\)(/ロ゜)/ナニゴトダ?





「しかし、しまらねぇ結果になっちまったなぁ」
「ぐすっ、僕のお宝データが」
「私は悔しいな、あの女セシリアに手も足も出なかった」
「ハッキングしてバックアップまで根こそぎ消去するなんて…酷すぎる」

 おのれ山田先生、この代償はその体で払っていただきますぞ・・・

「俺と違って箒はセシリアのデータを殆ど見てなかったんだろ?初見であれだけ粘ったんだから、大したもんだよ」
「全部市場に出てた健全なデータだったのにぃ」

 幾ら分くらいデータ飛んだんだろう・・・

「「馨」」

 何?慰めてくれるの?特に箒たんはその胸で泣かせてくれる?

「「鬱陶しい」」

 ひどいぃぃぃ

「泣きたいなら、存分に手伝うぞ」

 なんで竹刀を出すの?もっと優しくして?

「おい馨、千冬姉のデータはもう無いだろうな?有るなら没収な」

 微妙に欲望が透けて見えてますけど一夏さん!!
 やっぱシスコンだったのか…

「おい、一夏。没収してどうする気だ」
「いや、それは別に、弟してゴニョゴニョ」

 コレハハンゲキノチャンス

「Hなことに使うに決まってるよ!!」
「なっ、何を馬鹿なことを!」

 だって男の子だもん!

「「ほぉ…」」

 あ、あれ?なんで入り口に織斑先生が立ってるんでしょう?
 は、はわわわ

 前門に虎(織斑先生)後門に狼(箒さん)
 思わず抱き合い、子羊のように震える僕と一夏
 待って!話し合いましょう!暴力は何も生みません!
 ラブアンドピース!
 あ

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」」

 こうして1025号室には血の雨が降ったのだった。





P.S
翌日何故かオルコット嬢がデレていた。チョロすぎやしませんかセシリアさん?
しかし恐るべし織斑一夏。
君に【一級フラグ建築士】の称号を授けよう。
なんかフェロモンでも出してるんだろうか…




後書き
戦闘シーンの描写に七転八倒した挙句、全削除。
隙を見て加筆修正したいです・・・



[27026] 転校生がやってきた!
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/16 07:44
「大丈夫か!?箒」
「一夏!」

 間一髪、ブルー・ティアーズの放ったレーザーと己の間に割り込んだ、純白のIS、その操縦者、一夏。
 六年ぶりに再会した幼馴染。
 初恋の少年は、見違えるような青年になって劇的に箒の前に現れた。
 
「一夏」
「箒」

 ああ、なぜ一夏は服を着ていないのだろう?
 今はクラス代表を決める戦いの最中のはず。
 だが、そんなことはどうでもいい。
 何故か全裸の一夏に抱き寄せられる自分。
 ああ夢のようだ…

 夢?
 そうだ、おかしい、この男は、ドの付く鈍感のトウヘンボク。
 こんな、馬鹿なことが・・・!


「やはり、夢か」

 眼が覚めれば、冷めた現実が待っていた。

 ああ、何故あんな淫らな夢を見てしまったのか、隣のベッドでは一夏が寝ているというのに…
 いや原因はわかっている。

「またか…」

 奇妙な同居生活の片割れ、本来のルームメイト、嶋野馨。
 肉体は正真正銘、女子。
 だがその精神はおおよそ十代の男子、しかも変態スケベエ
 一応、女子であるので一夏と同衾させるわけには行かない。
 当然、わたしと寝ることになる。
 万が一破廉恥な行為に及んだ場合は切ると宣告してある。
 だが…
 わたしは馨の腕に抱かれていた。
 おおよそ女性らしい柔らかさに欠けた、まるで男のようなゴツゴツした肢体。
 身長も女子としては長身の部類に入るわたしよりも高い。
 ISインターセクシャル
 男でも女でもなく生まれついた者。
 馨はそのISである、長身も男性らしい体つきもそのせいだ。
 夜間にわたしを抱き寄せたのだろう、あのい、淫夢はこいつが原因か…

「はぁ」

 溜息を吐き、わたしはそっと馨の腕から抜け出す。
 ん…となにやら艶かしい声を挙げる馨に少しどきっとする。
 
「まったく…」

 これが馨の方から、わたしに抱きつき、例えばコンプレックスの塊である、胸にでも顔をうずめていたら、宣言通り容赦はしなかった。
 だが、この馨の抱き癖が出るのは決まって、大雨の夜、特に雷を伴うような強いの雨の日だ。
 最初に馨に抱きつかれているのに気が付いた夜。
 思わず悲鳴を上げそうになり、すぐさま怒りを覚えたわたしは馨を蹴りだそうとした。
 だが、ふと冷静になってみれば、馨は魘され、体は震え、うわ言に誰かを呼んでいる。

『両親は事故でね』

 そう言い寂しそうに笑う馨の顔を思い出した。
 事故
 そして大雨
 容易に想像が付いた。

 そういえば昨夜は少し強めの雨が降っていたな。
 カーテンの隙間から差し込む日光を見る分には、雨は夜中の内に止んだようだ…だからか、あまり魘されずには済んだ様で、馨の寝顔が健やかだった。
 女性化手術のせいでわたし達よりも一つ年上だという馨は、わざと子供のように振舞っていることも多いが、色々と苦労しているせいか基本的に大人びた表情をしている。
 だが、この無防備な寝顔は歳相応な可愛らしい寝顔だ。
 なんとなく馨の頭を撫でてやるとくすぐったそうに笑う。む…これは
 色々と問題の有る奴だが、わたしと一夏にとっては得難い友人であり、ルームメイトだった。
 こいつが居なければ一夏と打ち解けるにも、もっと時間が掛かっただろうし。
 年頃の男女が同居(断じて同棲ではない!)する上で、気まずい場面が必ず発生するが、そこも上手くフォローしてくれた。
 そっとベッドを抜け出す、朝の鍛錬に向かう時間だからだ。
 正直この抱き癖は、精神衛生上よろしくない。
 だがけして不快ではなかった。
 わたしも幼少時に両親の温もりを失った。
 馨に抱きつかれていると、まるで父親か母親に抱かれて眠っていたような気分になるのだ。

「だが…あれは無い」

 しかし今日の夢は無い、やはりライバルセシリアの出現のせいだろうか?
 いや…これは精神の鍛錬が足りないのだ。
 
「まだまだ精進が足りない…」

 胴着に着替え、朝の鍛錬にむかうことにした。






               \(゜ロ\)(/ロ゜)/






「ひっ!」

 全身に怖気が走る。
 原因は布団にもぐりこんで来た“何か”のせいだ。
 脛毛がじょりって!

「おいっ馨!」
「ふにゃ?」

 ああああ、またか!
 嶋野馨。
 肉体は正真正銘女子らしいが、その身長は俺に匹敵する175smの長身。
 ほとんど女性らしさを感じさせない丸みに欠けた肢体。
 それほど濃いわけではないが、脛毛もまぁ濃い(こまめに処理はしてるようだが)
 それがベッドに侵入にしてきたあげく、抱きついてきたのだ。
 想像してみてくれ、修学旅行で同部屋の男子が布団に入り込んできたようなもんだ。
 たまったものじゃない。
 箒は朝練でいないからいいが、知れたらコトだぞ、おい!

「あにゃ」
「おい、起きろ!」

 全力でホールドしてきやがった!
 痛い!気色悪い!
 やめろどこに触ってるんだ!

「おひりぃ」
「起きろぉぉぉぉl」

 そろそろ箒が…ひっ
 ガチャリとドアが開く、破滅の音が聞えた。
 そして俺の幼馴染の姿をした死神が姿を現した。
 お、終わった。

「なななななななななななな」
「箒!これは!誤解だ!」
「一夏…きさまぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「誤解だぁぁぁぁぁぁ!」

 俺は被害者だぁぁぁぁぁ!





             \(゜ロ\)(/ロ゜)/





 寮の食堂、朝の騒ぎのせいで出遅れたので、ほとんど誰も居ない。
 箒は俺達を散々叩きのめした後、さっさと出て行ってしまった。
 最近やたらと絡んでくるセシリアも既に登校したようだ。
 入るのは…ああ、のほほんさんくらいか、相変わらず眠そうだな。

「ごめんねぇ一夏、どうも朝はダメでさぁ」
「低血圧なのは、わかったよ。そんなとこは女子っぽいんだなお前」

 朝が非常に弱い馨は、前にも一度、ああやって布団に潜りこんできたことがあった。
 まったく。
 こんな風に色々と困った奴では有るけど。
 男心を理解してくれる友人は貴重だ。
 女子に囲まれていると、さりげなくフォローしてくれるし。
 箒やセシリアの理不尽な攻撃からも、やんわり庇ってくれる。
 部屋で箒が着替えているあの気まずい瞬間も馨が茶化してくれるお陰で大分ましだ。
 しかしなんであいつは俺がシャワールームにいる内に寝巻きに着替えないんだ…

「たぶんそろそろ来るんだろうなぁ」
「何がだよ」
「メンス」
「ぶっ」

 味噌汁を吹きそうになった。

「お前なぁ!」
「あ、ごめんごめん。食事中だったね」

 そういう問題じゃねぇだろ!

「箒さんが来たら、こそっと教えるから、デリカシーの無い発言は無いように、気をつけてね」

 あ、それは助かる。

「後15分で予鈴だよ一夏、急ごうか」

 こいつは低血圧のせいもあって朝飯はごく軽い。
 今日もサンドッチ二三切れで、とっくに食い終わっている。
 朝がっつり食う派の俺を待っていてくれるのだ。

「おう、ちょっと待ってくれ」
「ん」

 いい奴なんだけどなぁ…





               \(゜ロ\)(/ロ゜)/





 ふよふよと水中を漂うクラゲのように、SHR前の教室を通り抜け自分の席に向かう。
 ここはIS学園一年二組の教室。
 そんでもって私は嶋野馨、十数年男だと思って育ってきたけど、実は女だったという。TSトランス・セクシャルでもなければTJトランス・ジェンダーでもなくISインターセクシャル、今は手術したから正真正銘女の子、赤ちゃんも産めると、手術したDrのお墨付き、セクハラだよねっ!
 そんな僕も心は男の子
 子供のころはカオルなんていう女っぽい名前のせいで、よく苛めれらたけど、死んだ両親はちゃんと考えていてくれたんだなぁ。ありがたい。
 席に着き、まだ時間も有るので端末を操作し、ぺしょぺしょと内職をする。

「カオちゃん…」
「うん?何?」
「何してるの?」
「1/16【ブルー・ティアーズ&セシリア・オルコット嬢】フィギアの原型を作成中です」

 夏のワンフェスに出展します、1/16【打鉄&篠ノ之箒たん】も有るよ? (▽▽)b←サムズアップ

「はぁ…」

 隣の席に座る杉浦丹すぎうら・まことちゃんが溜息を吐く。
 それは私の中性的な美貌にまいったわけでも、フィギアの出来に感心しているわけでもなく…私が残念なことにな対する、諦めの吐息だ。
 ISである私は、背も高いし、容貌は中性的というか男っぽい。
 顔の造作も、美貌というといいすぎだけど、GURPSなら容貌に5CPくらいは使ってるレベルで整っては居る。
(そこに行くと箒たんや千冬お姉さまは15CPから25CPくらいは使っているだろう、もちろん乳のサイズも含めて)
 GURPSって何よ?ってググルといいよ?
 ただ、私の親しい人達の評価は「中性的で大人っぽい美人さん」ではなく
 「中性的で大人っぽいけど、色々残念な(変態という名の)淑女」である。
 まぁしかたないよねぇ、女の子二年生だし、ぼろが出るのは仕方ないって。
 あ、大人っぽいというのは、手術やらなんやらで一回ダブってるので、実は皆より一歳年上なんだよね、私。
 いっそ年下キャラの方がいろいろ受けたと思うんだけどなぁ…

「カオちゃんは黙ってれば女子高の王子様なのに、中身はスケベ男子だし」
「やだマコトちゃん、スケベなんて女の子がいちゃらめぇ」
「「「「…はぁ」」」」

 会話を漏れ聞いた数名のクラスメイトまでマコトちゃんと息をそろえて嘆息する。
 なんか…ごめん

 その時だった、スパーン!鋭い音が教室に響く。
 音の原因は勢い良く…というか破壊されそうなレベルで開け放たれたドア。
 教室中の視線がドアに集中する。
 そこにいたのは見慣れない生徒だった。
 小柄で華奢だけど敏捷そうな体躯。
 活発そうな印象とはうらはらに、髪型は長めの黒髪をツインテール。
 乳は控えめだけど、とにかく美少女だった。





             ソレハコッチニ\(゜ロ\)(/ロ゜)/オイトクナ





「えーと、どちらさま?」
「あたしは凰鈴音ファン・リンイン、今日からこの二組のクラス代表になる、中国の代表候補生よ!」

 その宣言に教室がざわめく。
 ふむ転校生、それも中国の代表候補生か。
 現在一年生で代表候補生というと、一組のセシリア・オルコットさん(英国、一夏にツンだったが、試合後速攻でデレた、おっぱいは欧米人としては控えめだが美乳、パツキン縦ロールのお嬢様だ、ジャンルは金髪美乳)
と四組更識簪さらしき・かんざしさん(日本、今期の生徒会長の妹、一夏の白式のあおりで専用機が未完成で放置プレイ中という不遇のメガネっ娘、おっぱいは姉に比べると控えめだが、メガネっ娘!メガネっ娘!大事な事なので二回言いました)
 の二人が有名だけど。
 原則転入のないIS学園に転校生というのは、「国の思惑」が当然バックにあるわけだ。
 おそらく中国が彼女を送り込んできた原因は…言うまでもなく織斑一夏ゆいいつのおとこのそうじゅうしゃ
 あぁ、いやだねぇ
 それにしても鈴音ちゃんはかわいいわぁ、抱きしめてぎゅーってしたくなる系
 しかし貧乳ロリ系は、この学園では貴重なタイプね。

「で。どちらがクラス代表さんかしら」

 ツインテールもいいけど、ああツーサイドアップにしたらどうかな?
 普段は丸出しのうなじが、何かの拍子に垣間見えるあのチ・ラ・リ・ズ・ム。
 あ、やだ鼻血でそう、私の心のおにんにんがおっきした

「カオちゃん、御指名よ…って、また変態妄想してるしこの子は」
「ふぇ?」

 鼻を押さえていると、マコトちゃんがなにやら囁いてくる。
 いやんくすぐったい。

「あんたが二組のクラス代表?」
「ええ、私がクラス代表の嶋野馨よん。よろしくね♪」

 小柄な鈴音ちゃんとひょろ長い私の伸張差は20cm以上あるので、自然鈴音ちゃんがこちらを見上げる形になる。
 あれーなんだろう?なんで私のおっぱい凝視してるのー?
 あ、勝ち誇った顔、ひっどーい、確かに私は貧乳ですけど、しょうがないじゃない!元男の子なんだから!

「早速だけど、替わって」
「何を?」
「クラス代表。嫌なら…」
「別にいいわよ」

 私は即答した、隣の一組程ではないが、二組もノリで私をクラス代表に選んだ。
 何せ専用機持ちもいないし、留学生はいるが、代表候補も居ない。
 入学当初は私もネコ被ってたし、傍目には「女子高の王子さま(笑)」だったからなぁ
 IS適正【C】の私をクラス代表って(笑)
 学級委員も兼ねてるし、正直めんどくさいし、全然おkだよ?

「あ、そう」

 あっさりと承諾した私に鈴音ちゃんが拍子抜けした調子で答える。

「その代わりだけど、まず名前で呼んでいいかしら?」
「いいわよ、それくらい」
「えへへ、鈴ちゃんでいいかしらね?私も好きに呼んで頂戴、でもって…抱っこさせて!」
「え!ちょ、何よ!放しなさいよ!」

 うはー、やらかーい!

「やだ!くすぐったいって!」
「おっとごめんごめん」

 これ以上はまずい、まだネコ被っとかないと警戒されてしまう。
 このレベルならまだ「ちょっと過激な女の子同士のスキンシップ(はぁと)」のはずだ。

「勝手にクラス代表を交代するな嶋野」
「おや先生、何時からそちらに?」
織斑先生ブリュンヒルデの出席簿程では無いが、私のチョークジャベリンも中々痛いぞ」
「うはー、すみませーん」

 二組の担任のジェニー先生。
 元アメリカ代表候補生で、現役時代はプレ○ボーイ誌にもグラビアが載ったナイスバディの美女さんだ。
 いやー眼福眼福。
 教卓の一番前という普通は皆嫌がる席を率先してGet!したのは言うまでも無いよ?
 とはいえ戦乙女の投槍ヴァルキリー・ジャベリンならぬ投げチョークが眉間にめり込むのは一回だけで勘弁ですから、大人しく席に着きます。

「さて、貴様ら、紹介前に勝手に自己紹介した、中国代表候補生の凰だ、仲良くしろ」
「「「「Yes,Ma’am!」」」」
「どうした!声が小さいぞ!」
「「「「Yes,Ma’am!」」」」
「よろしい、凰も地元ではどうだか知らんが、私のクラスの配属された以上、軍隊ハートマン方式でいくからな、覚悟しておけ」
「…Yes,Ma’am」
「声が小さい!タ○落としたか!」
「つ、付いてません!元々!」

はうっ!鈴ちゃん顔真っ赤にして可愛い!激写!

「嶋野ぉ!無断撮影は禁止だといっただろう!」

 はうぅ!眉間に!眉間にチョークが!





                 \(゜ロ\)(/ロ゜)/





「で、私が気絶してる間に鈴ちゃんはクラス代表になって、隣に宣戦布告にいったわけだ」
「ジェニー先生は負けず嫌いだからね、来月のクラス代表の交流戦も全力で勝ちに行くって」

 まぁ折角の代表候補生で専用機持ちだもんね。
 一組は専用機持ちだけど素人の一夏
 三組は専用機持ち無し
 四組の専用機は未完成
 勝った!これは勝った!
 うはーパス券Getだぜ!

 あ、半泣きの鈴ちゃんが帰ってきた、あれは織斑先生に撃退されたな。
 さっそく慰めてあげなくっちゃ!
 私の胸でお泣きよ~♪


後書き
本分から考察するに
IS学園は一学年約120名
一クラス約20名で計6クラスなのでしょうか?
ソースは2巻の1組2組の合同演習での千冬の発言から
「専用機持ちは、織斑(中略)だな。では八人グループになって」
この時点での専用機持ちは五名、八人グループということは5x8=40
よって一組と二組の合計は40→一クラスは20名→単純計算では6クラス?
なのか?
でも6クラスだとクラス交流戦がトーナメントだとあれ?
総当り戦だと6は多いよ・・・だしなぁ
設定資料集とかでないかなぁ・・・



[27026] 【閑話】バ○トにまつわるエトセトラ
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/17 05:16



 二人部屋での三人生活もすっかり慣れて、もう面倒だしこのままでもいいかもね?
 みたいな、話をしたら、二人とも微妙な顔をしやがった。
 私のフォローのお陰でどんだけ助かってると思ってるんだい?特に一夏さん?
 そろそろ部屋の用意もできるだろうし…
 まぁまぁ気になるわ、さっそく山田先生の所にいって聞いてみなくっちゃ。
 別にうっかりジャージ姿でぼーっとしてる山田先生をいじろうってんじゃないからね?



「ううううう」

 山田先生が寮長室で頭を抱えていた。何故だろう?
 寮長室にはなぜか鈴ちゃんもいて、私を見て開口一番「あ変態」とか言う。
 酷いわ!Mに目覚めちゃうかも!

「で嶋野さんは何の御用でしょう?」

 またおっぱいガードして、かえっておっぱい強調されてますよ先生。
 あー鈴ちゃんの目がレイプ目だ、視線は山田先生のおっぱい。
 やっぱコンプレックスなんだろうなぁ
 山田先生とか箒さんが、でかすぎてコンプレックスだと知ったら、血の雨が降るよね。
 僕は山田先生のちょっとだらしないおっぱい(スイカ大)も
 織斑先生のグレイトゥなおっぱい(スイカ)も、はっ寒気が!居ないよね?居ないね?おk
 箒さんのけしからんおっぱい(メロン)も
 セシリアさんの生意気なおっぱい(でか目のグレープフルーツ、アンダーがエロイ)も
 鈴ちゃんみたいな控え目なおっぱい(あえて・・・言うまい)も好きだけどねぇ

「ねぇ変態」
「カオルって呼んでよぉ」
「胸のデカイ奴は皆死んだらいいと思わない」
「ひっ」

 先生怯えてるよ?

「まぁまぁ鈴ちゃんにはまだ未来があるわ、私なんてこのタッパでこの乳だからもう絶望的よ?」
「いいのよ慰めてくれなくて…」
「私達良いお友達になれそうね」

 こうしてAカップ同盟(スローガンは「目指せ!まずはBカップ」)が設立しました。
 AAなんてカップはなくってよ!

 ドイツからやってきた転校生も密かに加入するのは未来の話。





後書き
ちょっと行き詰まったので気分転換に。
まぁ3サイズはおろか身長まで不明なんで鈴がAカップかは不明ですが。
ラウラは…



[27026] 【あれ?】鈍感な友達を持つと楽じゃない件【原作から乖離した件】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/17 20:52


キンコーンカーンコーンと終業のベルが鳴る。

おおようやく午前の授業が終わった。
朝まともに食べられないせいで、もはや体内のカロリーは枯渇寸前。
可及的速やかに栄養を補給せねば!

「あ、鈴ちゃんお昼は学食?場所は?一緒に行こうか?」
「場所なんてとっくに覚えたわよ、つ・い・て・く・ん・な!」
「いいじゃんかよぅ、お姉さん、ずっと妹が欲しかったんだよぅ!」
「同級生じゃない!」
「私ダブリだから、もう結婚できる歳16歳なのよ?」
「け、結婚!」

 とまぁこんな感じで、半日で鈴ちゃんはクラスの愛玩動…ゲフンゲフン、妹的ポジションに納まった。
 ジャンルはツンデレ妹、これに萌えない男子はいない、女子もまた然りだ。

「そのカオちゃん流の思考をクラスの皆に押し付けない」

 むぎゅ、マコトちゃん、イタイです。
 もうまんざらじゃないくせにぃ…イタタタタタ!
 耳!耳が千切れます!

「おじさまのメールの件、今日中になんとかする約束だったわよね」
「いたっ!いたいって!やめて新しい私が生まれ――ぎゃー!」

 マコトちゃんの言う「おじさま」というのは嶋野の義父のことだ。
 杉浦家と嶋野家は先々代、つまり曾お祖父さんの代からの付き合いで、お互いに「子供が男女だったら結婚させよう」とか言い出すぐらい仲が良い。
 ところがぎっちょん、祖父の代も義父の代もうまく性別、年齢がかみ合わず、それは果たされないでいた。
 まぁ何がいいたいかっていうと、マコトちゃんは幼馴染で、義兄の婚約者で、将来の義姉さんってわけなの。
 つまり「絶対に頭が上がらない人物」なのね。これがな。

「昼ごはんくらいは食べさせてよぉ、空腹で死んじゃう」
「はい、お弁当」
「…ありがとうございます」

 ちっ、手回しのいいことで!
 
 そんなわけで、その日の昼休みも放課後もマコトちゃんに拘束されて…なんか言い回しがエロイなぁ…しまったのですよ!





                  \(゜ロ\)(/ロ゜)/





「別にそんなに急がなくてもいいのに…」

 放課後が終わり、寮に引き上げてからも拘束され既に時刻は八時すぎ。
 ぶつくさ文句を言いながら寮の廊下を歩けば、そこはパラダイス。
 四月も半ばになり、少し暖かくなったせいか、薄着の娘が増えてきたのだ。
 一応一夏っていう男もいるんだから、少しは意識しないとだめだよー?
 まぁ一夏の視線に気が付いて恥らう女子の可愛いことといったらないから、口にはしないけど。

「わぁ!」
「きゃっ!」

 とキョロキョロしていたら、凄い勢いで走ってきた女子が、あちらも前を見ていなかったのか、私に追突してきた。
 すわっ!これは出会いの予感!と言いたいところだけど・・・
 ウェイトの関係上、その女子は弾き飛ばされ、転びそうになる。
 これはいかん!

「おっと危ない!」

 素早くその女子の手を取り、抱きよせて、ぎゅっ、役得役得。
 むこのすっぽりと収まる感覚は…
 見覚えのあるツインテール、やはり鈴ちゃんだ。
 あれ?

「離しなさいよ!痛っ!」

 あーさっきので足首痛めた?
 私はひょいっと鈴ちゃんを抱っこする。

「ちょっと!止めなさいよ!恥ずかしいじゃない!」
「だーめ、足診てからね」

 所謂「お姫様抱っこ」で寮内の医務室を目指す。
 道行く見物人がざわざわするが、気にしなーいっと。
 鈴ちゃんは恥ずかしいのだろう、顔を隠すようにしている、可愛いねぇ。

「はーい先生、急患ですよー」
「あぁ?なんだヅカごっこは他所でやれ、あたしは野球観戦中だ」

 と校医も兼ねてる先生はのたまう。
 医務室に隣接する、宿直室から出る気が無いらしい。
 応援しているチームが開幕から十連敗中だそうだ。

「まったく」

 ベッドに鈴ちゃんをそっと降ろすと、靴を脱がし、靴下を脱がす。

「あーやっぱりちょっと熱持ってるね、でも腫れて無いから、大丈夫かな?痛くない?」
「だから、平気だっていったでしょ」
「足はそうみたいね。でも、なんで泣いてたの?」
「泣いて無いわよ!目ぇ悪いんじゃない?」
「一夏のせい?」
「!」

 図星か…
 既に鈴ちゃんが一夏の幼馴染だというのは情報は掴んでいたが…
 転校したばかりで人間関係が希薄な鈴ちゃんが、廊下を涙ぐみながら前も見ずに走る、その原因は、一夏しかいない。小学生でもわかる簡単な推理だ。

「誰かに愚痴をぶちまけると、結構楽になるよ?お姉さんに話してご覧?」

 念のため、足首に湿布を貼り、包帯を巻く。
 その間、鈴ちゃんは無言。
 隣室から漏れてくるTVの場違いな音と、先生の悪態だけが響く。

「さ、これでよし、部屋まで送るよ。今度はおんぶがいいかな?」
「あの馬鹿がいけないのよ…」

 ぽつりぽつり、と鈴ちゃんは事情を話してくれた。






                 \(゜ロ\)(/ロ゜)/マタシリアスカ





「ふむ、普通『僕のために一生味噌汁を作ってくれ』と言い出すのは男の方だし、ちょっと古いよ、さらに中華風にアレンジしたら、あの鈍感には通じないでしょう」
「う…」
「付き合いの短い私でもわかる理屈なんだけど、恋する乙女は複雑だね?」
「うっ、うっさい!」
「ふぅ…で、鈴ちゃんとしては、どうするの?」
「一夏が謝るまで許さない」

 それだと一生二人は仲たがいしたままじゃないかなぁ…

「まぁ一夏が謝罪するのはOKとして、鈴ちゃんの方も少しは譲歩しないと」
「…」
 
 おーおーこれは意固地になってますな。
 ここは人肌じゃなかった、一肌脱ぎますかね。
 良い友達を持ったぞ貴公ら(笑)
 あー、でもお節介かな?
 でも、面白そうだし、いいよね、アハ






             \(゜ロ\)(/ロ゜)/





「あ、鈴」
「…」

 ひっぱたかれ、罵られ、さらには箒にまで罵られ。
 気まずい沈黙にも耐え切れず、さっさと寝ようかと準備していたら
 さっき部屋を飛び出していった鈴が、何故か馨におんぶされて戻ってきた。
 なんだ?何事だ?

「今日は鈴ちゃんはこの部屋にお泊りなのよん」
「はぁ!?」
「一度でいいからやってみたかったのよねぇ『深夜のお茶会』ミッドナイト・ティーパーティ

 な、何を言ってるんだコイツは…

「一夏は廊下で寝る?」
「なっ!」
「女の子泣かせる馬鹿は、牛に轢かれて死ぬといいよ?」

 お前までかよ!

「箒さんもそれでいいかな?」
「…お前のことだ、もう決めているのだろう?」
「モチコース」

 それはモチロンとオフコースの造語なのか?

「馨…あんたもこの部屋なの?」
「そーよー、ここは本当は箒さんと私の愛の巣部屋なのに、一夏の部屋が無いから、同居させてあげてるの」

 おいおい、無理矢理三人部屋にしたのはお前だろう!

「ふーん」
「一夏さん!」

 うわっセシリア!

「お茶会と聞いて、本場英国の代表候補生である私が参上致しましたわ」

 か~お~る~

「最高の茶葉をお持ちしましたわよ!」
「ありがとうセシリアさん(チョロいなこの子)」
「いえ、これくらい当然ですわ!」
「中国茶だって美味しいわよ…」
「ほうじ茶はカフェインも少なく、良いと思うが、どうだ」
「はいはい、女の子がする深夜のお茶会だからね、ここは英国式にいきましょう」

 なんなんだろうな、この疎外感は…





                \(゜ロ\)(/ロ゜)/






「旨い」
「でしょう?」

 一口飲んだそれは、普段呑んでいる紅茶とは別物の味がした。
 俺は夜は食べない派なのだが、眼前には、スコーン、クッキー、そしてロイヤルミルクティーが並べられ、深夜というには大げさだが夜中のお茶会が開かれていた。
 女子は皆寝巻きだ、箒は浴衣、馨は肌襦袢、セシリアはネ、ネグリジェかよ、鈴は普通にパジャマだ。
 暖かくなってきたといえさすがに夜は寒い、暖房をつけるのも大げさだし、女子は皆上に一枚羽織っていてくれてよかった、正直かなり気恥ずかしい。
 ちなみにスコーンは俺が焼かされた。ひでぇよな
 クッキーは馨が用意しておいたモノらしい。
 お茶は、ネットで淹れ方を見ながら淹れたが、上手に淹れられたようだ。
 お湯を沸かすコンロは、馨の私物の携帯カセットコンロ、なぜこんなものを持ち込んでるんだお前は。
 ティーセットはセシリアの私物。
 これ高くね?

「普段使う物ですから気になさらないで」

 そうなのか?

「ロイヤル・アルバートのムーンライト・ローズかぁ、深夜のお茶会らしくていいね。セシリアさんはセンスがあるねぇ」
「そんな、こんなの英国人ならば当たり前ですわ(もっと褒めて結構ですわよ!馨さん)」

 なんか凄いらしいな。

「おい、馨、これ高いのか?」
「無粋なこと言わないの!」

 スコーンにジャムとクロステッドクリームを塗りたくながら馨が言う。
 太るぞ!
 いてぇ!
 女子全員が一斉に攻撃してきやがった!
 しかしさっきから、やけに馨が冷たい。
 あとやたら鈴にべたべたしてる、くそっ、なんなんだよ。
 まぁこいつお陰で、ぽつぽつ鈴とも会話できているし、箒と鈴も少し打ち解けてくれているようだ。
 あぁセシリアはなんか空回りしてる、上手く馨に乗せられているというか…

「折角だし映画でも流そうか」

 おいおい、もう九時だぞ、終わるころには明日に…うぇ恋愛物か

「ラブロマンスですの?」

 そのようですなセシリアさん

「ふん、軽薄な」

 といいつつガン見してますね?箒さん

「うわベタベタ」

 といいつつ身を乗り出すのは何故ですか?鈴さん

「ハーレクインに出てくるイケメンって、大抵胸毛有りと割れ顎なんだけど、正直どうなんだろう?」

 うぇ、そうなのか?

「あらワイルドでいいじゃありませんか」
「欧米人の考える事はわからん」
「割れ顎って何よ?」
「ジョン・トラボルタの顎みたいの」

 なぜ全員で俺の胸元と顎を見ながら会話してんだ!映画観ろよ!





「おい馨」
「何」
「不健全なシーンのある映画をチョイスするな」
「キスシーンくらいで何言ってのさ、ベッドシーン無しなんだからいいじゃん」

 お前はこの微妙な空気が平気だからいいだろうよ!
 見ろよお前以外の女子の様子を!
 空気がピンク色に見えてきた…





 ようやく映画はクライマックス、主人公がヒロインにプロポーズするシーンだ。
 むぅ、女子は全員うっとりしてる、俺は気まずい、馨はにやにやしてる。

「あの一夏さん」
「なんだセシリア」
「なぜ一生味噌汁を作って欲しい、がプロポーズですの?夫婦はパートナーであってメイドではありませんのよ?女性に対する酷い侮辱ですわ」

 あ、ああそうね、普通にメイドの居る世界の人にはそんな風に聞こえるのか。

「まぁちょっと遠回しだよな」

 大体今時、味噌汁って…あ、れ?

『あたしがもっと料理が上手くなったら…あたしの作った酢豚、ま、毎日食べてくれる?』

 フラッシュバックする記憶。
 夕焼けの教室で、恥ずかしそうに言う鈴の姿を、思い出す。

 ギギギとさび付いたブリキのロボットのように鈴の方を見る。
 馨にだっこされている鈴と目が合った。
 顔が真っ赤だ。
 …
 やべぇ

「さて、さすがにそろそろお開きにしましょうか、遅刻して先生にどつかれるのも嫌だし」
「あの、私も泊まってよろしいのかしら?ベッドが狭いようでしたら…その私は、い、いち――」
「大丈夫、補助ベッド用意してあるから、一夏は補助ベッドで寝てね」

 あ、ああ

「おいセシリア、今何を提案するつもりだったんだ?」
「さて誰が普段一夏が使ってるベッドで寝るか決めようか?」
「「っ!」」
「(チョロイ…)」

 なにやら箒とセシリアがギャーギャー言い合っているが、まったく耳に入ってこない。

 俺と鈴だけが、固まったように、動けずに居た。

 どっくん、どっくんと心臓の音がうるさい。

 あれは…プロポーズなのか?

 今日日、女子からプロポーズというのは珍しくも無いけど…中学生だぞ?

 もし、仮にそうだとしたらだ…俺は

「鈴…」
「な、何よ」
「ごめん!」
「ちょっ!やだ、やめてよ」

 土下座しようとする俺を鈴が押しとどめる。

「子供同士のおふざけでしょ、そんなにマジにならないでよ!ちゃんと覚えていてくれなかったのは…許さないけど、はたいて…ごめん」
「…」


 俺はダメな奴だな…


SIDE:鈴

 さっきのやり取りは小声だったのと、あの二人はどっちが一夏のベッドで寝るかでもめていたので気が付かなかったみたいだ。
 馨の奴が声に出さず「ヘ・タ・レ」と言うのが判ったが、だってしょうがないじゃない!
 せめて二人きりの時に謝ってくれれば…もう!一夏の馬鹿っ!






後書き
クラスの件ご指摘ありがとうございました
やっぱり一学年120名だと4クラスが妥当な人数ですよね
しかし交流戦はトーナメントだと3位決定戦も含めて4試合か・・・地味だな
総当り戦だとどうなんだろう・・・

それにつけても鈴が可愛くかけなくて死ねる。
あとセシリアさんが登場判定で悉く失敗しまくるのですが・・・



[27026] スポンサーは無理難題をおっしゃる【改稿しました】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/18 23:28
 鈴ちゃんと一夏が無事仲直りした翌日。
 我ながら中々の手際と自己満足して眠りに就いた訳ですよ。
 ちなみにごちゃごちゃうるさかった二人はまとめて一夏のベッドに。
 呆然自失気味の一夏を補助ベッドに。
 そしてちゃっかり屋さんの私は、鈴ちゃんと同衾(笑)
 まぁなんにもしないけどね?
 小声で「あ、ありがとう」とか言われただけで萌え死にました、へへへへ。


「というわけで私は恋のキューピッドだったのですよ」
「そうか」

 うわ興味なさそうですね織斑先生

「へぇ嶋野さんって意外に気配り屋さんなんですねぇ」
 
 意外って…

「お前にそんなセンシティブな神経があったことに驚いてる」

 ジェニー先生。ガラスのハートを持つ十代の子供に掛ける言葉じゃないですよ?
 
 山田先生はもっと褒めて!残りの二人はまず褒めて!

 所で・・・なぜ私は先生達に呼び出されてるのでしょうか?
 Why?

「簡単なことだ、織斑の居る部屋に女子を二人も泊めよって、見ろ朝から生徒ばかどもの抗議で我々は手一杯だ」
「さすがにちょっと…」
「つまりだな、見せしめが必要なのだ、わかるな嶋野」

 さっぱり理解したくありません。




\(゜ロ\)(/ロ゜)/









 寮の掲示板に人が集まっている。
 ざわざわ




下記の者、寮内の風紀を乱した罰則として、当面の反省室行きを命ず

 一年二組 嶋野 馨

 以上




「当面って期限切られて無いわよ」
「…あの反省室に?」
「三日で精神崩壊すると評判の?」
「「「「恐ろしい…」」」」






\(゜ロ\)(/ロ゜)/






昼、学食にて

「その色々とすまんな馨」

 例によって日替わり定食の一夏と焼き魚定食の私。

「いいよ、別に。それより一夏こそ箒さんと二人きりだからって、Hなことしちゃ駄目だよ?」
「しねぇよ!」
「し、しないぞ!」

 まぁ一夏からは無いよね、さてさて箒さんからどうかなぁ?声がどもってましてよ?(ニヤリ)

「それは兎も角として、これからしばらくは僕らもライバル同士だからね、馴れ合いは無しだよ?」

 五月のクラス対抗戦のスケジュールが発表になったのだ。
 (リーグ戦なので、総当りだ)
 一回戦第一試合は一組対二組
 優勝クラスには「学食のデザートフリーパス券」半年分が賞品として送られるため。
 皆気合が入っている。

「臨む所だよ」
「まぁ下馬評では二組ウチが圧倒的だけどね」
「む」

 専用機持ちの代表候補生がクラス代表なのは二組のみ。
 条件は四組さんも一緒だが、あちらは専用機が未完成とのことなので、問題無し。
 目の上のたんこぶだった、一組の英国代表候補生セシリアさんはクラス代表じゃないしね。
 三組?眼中に無いね。
 一夏のデータは、たっぷりと取らせて貰てるし、この数週間でよっぽど急成長しないかぎり、二組の勝ちは揺るがない。
 まぁコーチが箒さんとセシリアでは(お互い張り合ってしまって)そう大した進歩もないだろうしね、うふふふぅ(ドラ○もん風の笑い)

「ま、まさか…謀ったな!シ○ア
「恨むなら君の生まれを恨むんだね、一夏ガ○マ!」

 ぺこん
 いて

「何、ガン○ムごっこのしてんのよ馬鹿二人」
「鈴」「鈴ちゃん」

 そのさっきの衝撃はその食器トレイですか?

「馨、練習付き合ってくれるんでしょう、敵とじゃれてる場合じゃないわよ」

 はーい
 あ、一夏が面白くなさそうな顔してる。
 オウ!ジェラスィ?
 ふふふふ、教育の成果が出てきましたな?
 鈴ちゃんにも「私と仲良くしとくと、色々と一夏が面白いよ」とアドバイスした甲斐があったね、効いてる効いてる。
 さてさて、箒さんとセシリアさんはどうでるかな?





\(゜ロ\)(/ロ゜)/






 つ、疲れた…
 箒とセシリアも異常なくらい熱心にコーチしてくれるんだが。

箒「ギューンでドーンでガーンだ」

 どこの終身名誉監督だお前は

セシリア「回避は右斜め(以下略)」

 長い、判りづらい…
 いつもなら通訳してくれる馨が敵に回ってしまったのが痛い。

 手の内は知られているし、白式のスペックもバレバレ、こちらの諜報員は既に対策済みなのか、二組の防諜員によって悉く捕らえられてしまい…
 鈴の専用機のデータも、鈴の実力も不明。

「最悪だな、おい」

 あんにゃろう、ここまで読んでいたのか?
 クラス代表を決める試合後の、セシリアの辞退もまさか?

(どっかの馨「いやそれは私のせいじゃないよ?あれはマジでイミフ」)

 嶋野馨…恐ろしい奴だ。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「これが反省室かぁ…ただの殺風景な部屋ですよね?」

 よいせーと荷物を降ろす。
 当面の着替えと教科書類が詰まった鞄は非常に重たかった。
 改めて反省室とやらを眺めてみる。
 広さは4畳の和室。
 壁紙は白一色。
 家具は、勉強用の机のみで、学習専用の端末は有るが、外部へのアクセスはフィルタによって遮断されているので、有害サイトはもちろん、普通のサイトも見れない、見れるのはあくまで勉強に必要なデータだけということだ。
 持ち込んだものにしても娯楽品の類は一切許可されない。
 差し入れも無い。
 う、寝具はぺらぺらの布団だ、ちょっと黴臭い気もする。
 これは十代の乙女には拷問かもしれない。いや拷問だ。

「(まぁ、丁度いいかな?)」

 鞄からどでかいクリップで止められた紙束を取り出す。
 これはとあるISの仕様書だ。
 先日送られてきたデータをプリントアウトしたもので、それをペラペラと読み始める。
 どうにも理解出来ないところは、別の参考書を開き、それでもダメなときは端末を使う。

「はぁ(義父さんたら親馬鹿なんだから…)」




 ことの起こりは数週間前まで遡る。
 週末、実家に里帰りした僕は、祖母にたっぷり甘え、手料理をご馳走になってご満悦だった。
 義父も義母も昔から仕事人間で、ほとんど家には帰ってこず、私や義兄の世話を焼いてくれたのは祖母だったので、私達は典型的な「お祖母ちゃんっ子」である。
 自分の体がISであると知れ、かなり精神的にまいっていた時も、助けてくれたのは祖母だった。
 さすがに戦後の混乱期を生き抜いただけあって、祖母は私にとって目標といえるくらい「強く逞しい」女性だ。
 でも愛読書が「菊○秀行」というのは、ちょっとハードボイルドすぎると思うんだ。

 まぁそれはともかくとして、珍しく両親はその日帰りが早かった。
 久々に娘が帰宅するので、早めに切り上げてきたらしい。
 僕が男の子だったころは、あまり接点のなかった両親だが、僕が女の子だとわかった時から、かなりの「親馬鹿」になってしまった。
 義母はそれほどでも無いが(それでも「やっぱり娘はいいわねぇ」と良く言う)…
 義父は酷かった。
 頭のネジが飛んでしまったのかと思う豹変ぶりで、まぁやっぱり女の子が欲しかったんだろうねぇ、男親にとって「娘」というのはやはり特別な物だから。
 正直かなり引いたけど、元男として義父の気持ちも判らないでも無いので、なるべく優しくしてあげることにしたんだ。

 で、遅めの夕食に付き合いながら、学校生活の話などをするわけですよ。
(一夏と一緒に住んでるとか、言うと義父が発狂するので黙っておきます、はい)
 義父はIS関連の会社を経営しており、義母は開発主任兼副社長でもある。
 とはいえ社員全員で50人にも満たない小さな会社なんだけどね。

「へぇクラス代表になったのね、やるじゃない」
「馨は男前だすけ、顔で選ばれたんじゃろ」
「まぁお祖母ちゃんの言う通りかな」
「女学校なんてのは、そんなもんだぁ、おめぇ気をつけろよぉ?」

 祖母は都会に出てかなり長いはずだが、地元の訛りがまったく抜けない、そんな祖母に育てられたので私も幾つかの方言を標準語だと思っていたりする。
 あれは気が付くと猛烈に恥ずかしいものだ。
 でまぁそんな話をしていると、義父がぽとりと箸を落とした。
 あの顔はろくでもない事を言い出す前兆だ。

「馨ちゃん…と言う事はだ、五月のクラス対抗戦に出るんだね?」
「出ますよ?クラス代表ですから」
「…そんなのお父さんは許しませんよ!」

 いきなり何を言ってるんでしょうか、この人は。
 あ、端末に飛びついた。

「杉浦くん!緊急事態だ、馨ちゃんがクラス代表になっちゃったらしい!」
『ええ!個人トーナメントには滑り込めそうでしたが、クラス対抗戦では、とてもスケジュールが!』

 今端末に映ってる杉浦さんは、マコトちゃんのお父さんで、専務取締役兼工場長さんだ。
 義父の幼馴染で、親友というか、悪友というか…
 てか何の話ですか?

「このままじゃ馨ちゃんのデヴュー戦が量産機だよ!倉持だのデュノア如きの量産機にウチの娘が乗るってだけでも我慢できないのに!」

 倉持技研は「打鉄」を開発した、日本でもトップクラスの企業だし
 デュノア社は名機「ラファール・リヴァイブ」を開発したフランスの企業だ、国際的大企業だと思いますが?
 あ、義父さん?やば――
 
「すぐにメンバーを総動員して、スケジュールをつめ――――ぎゃぁー!」

 義母のアイアンクローが義父の眼球を抉る、あれは痛そうだ…
 てか義父がびくんびくんと断続的に痙攣してますわ!
 お義母さま!やめて、お義父さまのライフはもう0よ!
 
「さっきから…何の話をしてるのかしらねぇ…あ・な・た」
『ふ、副社長…』
「この一件、工場長が噛んでるということは…ウチの男共の大半が関与しているのかしらね?」
『…』

 蛇に睨まれた蛙って奴ですね、わかります。

「だってお前!」
「問答無用!」
「ごばぁ!」

 ああ、お義母さまのシャイニングウィザードが!

『お呼びですか?副社長』
「あ、ごめんね絹子ちゃん、すぐに監査してもらわないといけない事態が発生してね」

 これは…魔女狩りだよ!ウチの会社で内部監査と言う名の魔女狩りが行なわれるよ!
 ガクガクブルブル

「ほんに、夜子さんは良く出来た嫁じゃぁ」

 お祖母ちゃん、貴方の息子が今にも死にそうなんですが…






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「まったく、確かに馨は可愛いけど、ウチの男共は馬鹿ばっかり!」
「えーと」
「あんたもねぇ、男だったころのつもりで接するのは大概にしなさい」
「申し訳ございません」

 DOGEZA!

『ですが主任、倉持が投げて、篠ノ之博士が完成させた機体ですか?興味があります』

 この人は大塚さん、義母の直属の部下さん。
 元日本の代表候補生、山田先生とは同期でライバルだったらしい。
 正直あのぽややんと、できる女!って感じの大塚さんがライバルとか想像できない。
 まぁ結局二人の親友だった、もう一人の代表候補生が代表になったらしいけど。
 
『ちょうど新型のテストもしたいですし、どうでしょう?当社の技術力のアピールに一つ馨さんに尽力いただくというのは』
「ふむ、さすがに男共の計画は許可できないけど、それなら有りか、じゃぁあれを調整して使おう。お前も好きだろ?」

 私に拒否権が無い上で聞いて来るんだから、酷いよね…





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「しかし義父さんも、ブルーティアーズのデータなんてどうするつもりなんだろう」

 昨日マコトちゃんに急かされて纏めたのは、セシリアさんのブルーティアーズ。通称ファ○ネルの所見である。
 ウチの会社は確かにIS関連企業ではあるけど、あんなとんがった武装に関するデータは必要ないと思うんだけどねぇ?
 あ、でもたしかあのファ○ネル、高機動ブースターとしても流用できるとか言ってたっけ?その線かなぁ…ちょっと見当違いなデータ渡しちゃったなぁ。
 まぁいいか、どうせ義母さんに見つかって、しばかれるだけだろうし…
 チクるのは可哀想だけど、関与してるのがばれると、お小遣い減らされちゃうしなぁ…

「うーん、しかし何度見てもかっこいいよなぁ」

 端末に映し出された、例のISの姿に思わず嘆息してしまう。

「嶋野、飯だぞ」
「あ、すみません織斑先生」
「ほら食え」

 めざし一尾(一部炭化)、沢庵二切れ(しかも切れてない)味噌汁(具がわかめ、明らかに増えるわかめ)ご飯(水加減を間違えて、糊化している…)

「苛めですか?」
「これが反省室の特別メニューだ、よろこべ、私のお手製だ」
「一夏の料理が上手い理由がよく判りました」
「うるさい、食え」

 というか先生もここで食べるのですか?
 これは拷問だな…
 うわ!向こうは普通に寮の食堂のおばちゃんが作った定食じゃないか、ずるっ!

「本来なら、色々と説教をかますのが反省室のメニューだが、今回は特別処置だ勘弁してやる、泣いて喜べ」
「…」

 もちゃもちゃするご飯をほおばりながら、心で涙しました。

「そのISは…」
「はぁ、義母がテストとデモをやれと送り込んできたんですが、生憎鈴ちゃんが来たので不要になってしまいました」
「それで納得するような夜子さんでは無いだろう」

 あ、やっぱり顔見知りですか、まぁ義母は昔日本の代表団にメカニックとして参加したって、言ってからな、さもありなん。

「先生と義母って性格似てますよね」
「私はあんなに乱暴…スパナで人を殴るほど人非人ではないぞ」

 いや対して変わらないかと?どの口でそーゆーこというかな?この人は

「なんだ」
「いえ」
「凰に代わって貰えばいいだろう、一回戦程度なら、恩もたっぷり売ったんだろう?」
「なんですか、いきなり」
「私は現役を引退したことに後悔はそれほど無いがな、その機体を見た時は思ったよ、ああこの機体と戦いやりたいとな」
「それで、『暮桜』と同じワンオフアビリティを持つ白式と、こいつの戦闘を見たいと?」
「ただの独り言だ」
「私ではこの子の性能を引き出す事はできませんよ、当然ワンオフアビリティもです」
「だから独り言だといったろう、食ったか?では明日の予習と今日の復習して寝ろ」
「はーい」

 なんだ反省室なんて楽しいだけじゃないか…
 まぁこの子のお陰で鈴ちゃんの練習にも付き合えるし、いいか。
 しかし義父さんは何を考えてるのかなぁ…







\(゜ロ\)(/ロ゜)/






 某所

「鎌田くん、馨ちゃんから英国のBT兵器のデータが来たぞ」
「おお、噂のファ○ネル兵器ですな、社長すぐにデータをこちらに、暗号化します」
「これでまた一歩『サ○ビー』に近づいたな」
「はい、百○は倉持にやられましたが、これは譲れませんな」
「ああ、あんな名前が似ているだけの機体に遅れは取れん、返す返すも馨ちゃんの専用機計画が夜子さんにばれたのが痛い」
「はぁ(社長のせいですけどね…)」
「だが、秋のキャノンボール・ファストまでにはなんとしても!」
「最悪サザビーが無理でも例の機体に、強襲高機動パッケージ…『闘士』ケンプファーをインストールすれば」
「ああ、とりあえずは何とかして“あれ”を馨ちゃんの専用機にする、今根回しをしていることろだ」
「さすがは社長」
「うむ、くれぐれも夜子さん以下、女子社員には内緒だ」
「分かっています」

 今日日、男に優しく笑いかけてくれる女子は稀少だ。
 特にこの会社の場合、夜子が実質のトップとして恐怖政治を布いているため、女子は皆、男を見下している。
(まぁ社長以下オタク・・・特にガノタ、が多すぎるのがいけなのだろう)
 
 そこに現れた可憐な一輪の花。 
 
 元男?
 
 それがどうした。
 
 むしろ萌える。
 
 …

 ……悲しい理系男子達にモテモテとは気が付きもしない馨であった。




「ひぅ…なんか寒気が、この部屋暖房がしょぼいよ、布団はペラペラだし…ううう箒たんのベッドに帰りたい」





\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「結局、あっという間に試合当日じゃねぇか」
「うむ、今日までの私の指導を思い出せ、勝てるはずだ」
「私“の”指導を思い出して下さいね、一夏さん」

 もういいよそれは…
 てか八割は二人掛かりで俺を攻撃していた“だけ”だよな?
 まぁ回避は上手くなった気がするけど…

 初回に比べれば大分体に馴染んできた白式を呼び出し身に纏う。
 武器は当然「雪片弐型」のみ。
 まぁなるようになるしかないか。
 これはリーグ戦だ、最悪鈴に負けたとしても、残り二クラスに勝って、どこかで二組に土が付けばプレーオフということも有りうる。
 まぁ馨が参謀についてる以上、あんま考えられねぇけど。
 つまり最低でも引き分け、できれば勝っておきたい試合だ。

「じゃ、行って来る」

 ピットから飛び出し、アリーナに立つ。
 まだ鈴は来てないのか?そろそろ開始時間だけど。

「お、来た来た…え?」

 向こうのピットから飛び出してきたISに俺はおもわず間抜けな声を上げた。
 どうにも情報が集まらず、やむなく二年生の新聞部員から“買い取った”情報…写真に写っていた鈴の専用IS【甲龍】じゃ…無い?
 観衆もそのISの登場にざわめく。
 ISに疎い俺にもそのISには見覚えが有った。
 今から数年前。
 第二世代ISの黎明期。
 全世界の男子を熱狂させた一機のISがあった。
 とあるISメーカーが自社の技術のデモンストレーションとして開発したIS。

 第一世代の名残を残す全身装甲フル・スキンは丸みこそ帯びているものの、女性らしいフォルムをあえて無視。

 右肩の物理シールド

 左肩のスパイクアーマー

 なぜかモノアイを模した頭部センサーと、角の用なブレードアンテナ

 鮮やかな赤とピンクと黒の配色。

 当時としては破格の機動性能は「通常の三倍のスピード」と称された。


 そのISの名を…【箒星】と言う。


 もちろんそれは伝説的なテレビアニメに登場する、主人公のライバルの登場機を意識したものだ。
 なにせ赤いカラーの「箒星(彗星の和名)」だ。
 幾つかの国際大会に出場し、そのネタ性とは裏腹に、圧倒的な性能で勝利を重ね、話題を攫い、全世界のガノタ達を熱狂させた。
 当然のように「緑色の機体を量産してくれ」という要望が殺到したが…
 コストパフォーマンスの問題で実現はしなかったそうだ。

「な、なんだって箒星がここに!鈴はどうしたんだ!」
「ごめんね一夏、色々と事情が有るんだよ…スポンサーからの圧力というか、脅迫というか・・・」

 頭部の装甲が開き…そこに見慣れた顔が見えた。
 え・・・馨!?








後書き
感想掲示板でのご指摘と自分でもイマイチ戦闘シーンが上手く書けていなかったので
ちょっと改稿しました、まだ粗は目立ちますが

で肝心の戦闘シーンは次回に続くですが・・・
IS世界にガノタがいたら、絶対一機くらいはこうゆう機体作るよね?
という妄想爆発です、すみません。
外観は普通に明貴美加画伯のMS少女にザクガールがいますので
あんな感じをイメージしてくださいw
もう少しISっぽいですが。




[27026] 【男の子なら】必殺技は叫ぶもの【誰もが通る道】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/21 03:33



『却下』

 いや却下とか言われても困るんです、お義母さま。

『中国代表候補生だかなんだか知らないけど、一度送り出した以上はある程度データをとらなきゃ話にならないわ。
 それがテストパイロットとして…いいえ人間として、最低限のラインよ』

 むちゃくちゃな…

「いつから僕」
『私』
「すみません、いつから私はテストパイッロトになったのでしょうか?あと前から思ってたけどISはパワードスーツだから、パイロットって、おかし――」
『口答え禁止』

 横暴ですぅ

『その件なら、正式にあんたをウチのテストパイロットとして登録してあるよ、コード送るから、箒星を専用機にしても構わないよ』
「いえ、結構です、ぼ…私は整備科志望だっていいましたよね?」
『そうだったね、でも絵里ちゃんは、整備科で操縦者で代表候補生だったじゃないか』

 絵里ちゃんというのは、先日も話しに出た大塚さんのことである。
 あんな才媛さんと一緒にしないで下さい。

「不器用ですから」
『古いよ』

 日本の誇る名優さんですよ!

『とにかく、模擬戦程度のデータじゃ勘弁しないよ、いいね』

 義母さまスポンサーは無理難題をおっしゃる・・・

 クワ○ロ大尉の気持ちがしみじみとわかったよ…





\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「ねぇ鈴ちゃ~ん、どうしたら良いと思う?」
「知らないわよ、抱っこしようとするな!あたしは子供じゃない!」

 ちぇー。

「一夏との試合だけでいいから代わって?」
「嫌」
「量産機の三組や、未完成機の四組との対戦データじゃ、あの人納得してくれないんだよぉ」
「知らないわよ!あんたの母親でしょう!」

 うん、義理だけどね。

「…ごめん」

 あ、しゅんとしちゃった、誤解されたかな?

「あら、やだ気にしないで、結構仲良いのよ?ウチ」
「…いいわ、一夏の件の借りはこれでチャラよ」

 「借りを作るのはあたしの趣味じゃないから」って、男前だよね鈴ちゃんて。

「いいの?」
「一夏を直接ぶちのめす必要も無くなったしね。…次の週末一緒に街に行くんだ」

 デートですね?デートですか・・・(←悪企み中・・・

「へぇ、じゃぁここ行くと良いよ」
「スーパー銭湯?」
「一夏、寮の大浴場が使えないでしょう?それでよくぼやいているから」
「あいつデカイ風呂が好きだもんね・・・こ、混浴水着スパ…日本て相変わらずなのね」

うん、むしろ悪化してる気がするね。

「水着の用意は…無いよね?ここか、ここで調達したらいいよ」
「あ、ありがと…」

 一緒に行けないのが残念(反省室に入室中は週末の外出も禁止だ、ヒドイ)
 さてさて、鈴ちゃん一歩も二歩もリード。
 箒さんとセシリアさんはどう出るかな?
 可哀想で鈴ちゃんの手助けしたし、今度は二人の手助けもしないとなぁ(ニヤリ)
 しかし一夏の周りは下手なラブコメマンガより面白いな…うふふふ。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/






「おまっ、それっ!鈴はどうしたんだよ!」
『鈴ちゃんは急病…ということになってるよ?』

 馨はプライベートチャンネルで一夏に事情を話し、ついでになぜか千冬がノリノリで協力してくれたことも告げる。
 一夏は脱力したように納得、いや諦めたようだった。
 お互いに頭の上がらない肉親(女性)がいることに、苦笑する。

「箒星の製造メーカーは確か…」
『駆動系とかISの内部パーツ専門のメーカーだけど、職人さんの手作りによる、超高精度のパーツが絶大な評価を得ていて、全世界のISでこのメーカーのパーツを一つも使ってないISは存在しないとかいうヨタ話もあるね』
「SHIMANOだっけか、そっかお前の実家なんだな」
『うん、所帯は小さいんだけどね、皆凄腕ばっかり、手作業でミクロン単位の工作とかしちゃうんだ』

 一夏がプライベートチャンネルの通話が苦手らしく、傍目には一夏が一人でしゃべくっているようにも見える。
 そんな中、麻耶が二組の代表の急病を告げ、代理として交代前の代表が急遽出場することを告げたことにより、会場のざわつきも少し落ち着いてきた。


『これから先一夏はどんどん強くなると思う、それこそ僕なんて歯牙にもかけずにね』
「なんだよ、それ」

 心外だと言わんばかりの一夏の表情に馨が薄く笑う。

『義母さんのことはもちろんだけど、やっぱり男の子だからね、君と一度全力で戦ってみたかったんだよ』
「お前、女だろう…」
『心は漢よ?』
『いつまでしゃべくっている、とっと試合を開始しろ』

 千冬が二人当てに大音量で通信を送ってくる。
 思わず顔を顰めた二人だが、とにかく開位置へと付く。

『予め言っておくけど一夏、外見はほぼ同じだけど、中身は最新のパーツに変わってるから、第三世代機にだって遅れは取らないよ?』
「臨む所だよ!」

 一夏の返事と同時に、試合開始を告げるブザーが鳴り響いた。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/






「(距離を取られたら勝てない!)」

 馨は白式と一夏のことを良く知っている。
 そして一夏はそのことを良く理解していた。
 それゆえの試合開始と同時の瞬時加速イグニッション・ブースト
 一気に自分の距離に持ち込み、喰らい付き、離れない、雪片弐型の攻撃力は、「零落白夜」抜きにしても、過剰といえる程高い、唯一の武装なのだから、そうでなくては困るというのもあるが、当たれば――。

「なっ」
『そう簡単にゲームセットにはさせないよ、一夏』

 瞬時加速での急接近し必殺一撃を加える、それは果たせなかった。
 瞬時加速にこそ劣るものの、箒星もまた爆発的な加速力で距離を取っていたのだ。

『通常の三倍と称された箒星のスピード、舐めてもらっては困るね!』

 馨は左手に構えたライフルのトリガーを引いた。
 H&K IS4、通称『ブリッツ』
 ドイツの名門銃器メーカーH&K社がIS用に開発した、傑作アサルトライフル、箒星の初期装備である。
 開発チームとしては武装もザ○を模した物を造りたかったようだが、いかんせんノウハウも無ければ、現実的でもない、よって箒星の武装は至ってリアルである(苦笑)

 50口径と、IS用の実銃としてはそれ程大口径ではないが、その分恐ろしく“速い”。
 ブリッツ…雷の二つ名は、その凄まじいまでの発射速度と銃弾の速度から取られたものだ。
 そして小口径であるが故に、弾数が多い。
 口の悪い兵士がつけたあだ名は「一人弾幕生成銃」だ。

『左舷の弾幕が薄いよ!一夏!』
「分厚すぎるわ!ふざけんな!」

 暴力的な銃弾のシャワーを一夏はなんとか、この数週間で身につけさせれらた、IS機動制御で回避し続ける。

『やるね一夏「当たらなければばどうということは無い!」と言ってよ』
「いい加減にしろっ!」

 多少の被害は無視して、一気に距離を詰める。
 一夏は戦法を切りかえることにした。
 セシリアのレーザーに比べれば、実銃のダメージは低い、そう踏んだ。
 再びの「瞬時加速」
 だが…

「なっ!」

 一夏の飛び込む、どんぴしゃの機動に、まるで未来が見えているかのように、馨がグレネードを放る。
 回避は間に合わない、というかグレネードは時限信管によって、爆発、内部に詰まっていたベアリング弾をばら撒く。
 そのベアリング弾の雲に一夏は突っ込んでしまう。

『まず通常機動で死角を取ることだね一夏、普通に突っ込むじゃ、機動予測はそう難しく無いよ?』
「うるせぇ!」
『箒さん風に言うと、キュとしてガっといって、ボーンってとこかな?』
「…そんな感じだ」



(/ロ゜)/



「くしゅん!」
「あら、風邪ですの箒さん」
「いや、恐らく一夏か馨が私の悪口を言ったに違いない」

 だいたいあってます



(/ロ゜)/



「(くそう、距離が詰められない、正直ブルーティアーズの制御で動きの止まるセシリアよりやりづらい)」


 箒星は十分な機動性でアリーナを飛びまわり、強烈な銃撃を浴びせてくる。
 少しでも近づけば、散弾グレネードで制圧しに掛かってくる。
 シールドエネルギー自体はそれ程減っていないが、白式の装甲は既に穿たれた無数の弾痕で見るも無惨なことになっている。

「(このままじゃ、いきなり「絶対防御」が発動して、シールドエネルギーを一気に持っていかれることになる…)」

 焦るな、冷静になれと一夏は己に必死に言い聞かせる。
 下手な突撃は…悔しいが馨には通用しないのだから。



(/ロ゜)/



 管制室では、千冬、麻耶、箒、セシリアが固唾を飲んで一夏と馨の試合を見守っていた。

「まさか馨があんなに強いとは…」

 普段のふざけた姿が脳裏に焼きついている箒には、到底想像できない姿だった。
 自分が打鉄に乗って、あそこいたとして、果たして勝てるか…

「あんなのは、箒星の性能と、白式との相性が良いだけですわ、私なら…」
「山田先生、箒星のスペックを出せますか?」
「あ、はい、モニターに出します」
「うっ…」
「見事なものだ、さすがは夜子さんだな」

 枯れた技術を限界まで詰め込んでみた。
 そう言わんばかりのデータがモニターに映し出される。
 内装は最新の物に置き換わっているが、フレームも設計思想も、第二世代機、それも黎明期の物でしかない。
 おそらく総合性能は最後期の第二世代量産機「ラファール・リヴァイブ」よりややマシと行った所か。
 だが操作性が良く、セッティングによってタイプを変更できるリヴァイブと違い、箒星は単体で万能機として完成してしまっている。
 その分、射撃にしろ、防御にしろ、白兵にしろ、恐ろしく乗り手の腕を要求するピーキーな機体になっている。

「搭乗時間も大して長くも無いだろうに、嶋野の奴も良く性能を引き出している・・・あのISを良く理解している証拠だな。
 戦術も手堅く、射撃も基本に忠実、下手な専用機持ちの規格外共より、良い手本になるな」

 反省室でもくもくと勉強していた馨の姿が、千冬の脳裏に蘇る。

「う」
「しかも織斑の規格外の動きにも良く対応している、嶋野のような理詰めのタイプはイレギュラーには弱いのだが…」
「ううう・・・」

 そのイレギュラーに対応出来なかったセシリアが渋い顔をする。

「それだけ良く、あの馬鹿のことを理解している、と言うことか…お前ら、うかうかしていると穴馬に掻っ攫われるぞ」

「それはありえません!」「断じてありえませんわ!」

「そうしてくれ、私もあんな訳のわからん妹はごめんこうむるし、夜子さんと親戚になるのも気が進まない」

ひどすw



(/ロ゜)/



『あ、やば、弾切れだ』

 ぽそりと香るが呟く。
 一夏はそれ、聞き逃さなかった。
 実弾兵器である以上、いつかは必ず弾切れが発生する、リロードの瞬間は――

『うっそよーん』

 隙を付こうとし、逆に動きが雑になった一夏に、馨の刺すような銃撃が突き刺さる。

「だぁぁぁぁ!馨てめぇぇぇ!」
『やだなぁ一夏、敵の言うこと間に受けてどうするの?』
「男の純情を弄びやがって!」
『やだ弄ぶなんて、一夏のムッツリスケベ』

 ブチ
 世の男には、面と向かって「スケベ」と言われるよりも。「ムッツリ」と言われるほうが腹立たしい、そういう性格の人間が居る。
 一夏はまさにそのタイプだった。
 なにかトラウマでもあるのだろう。

「死ねェェェェ!」
『うえっ?』

 怒りを爆発させた一夏が「瞬時加速」中に方向転換という荒業をやってのけ、一気に箒星へと肉薄する。
 慌てた馨が近接武装ヒートホークをコール。
 雪片弐型の斬撃を受け止める。
(ちなみにこのヒート・ホーク。形はそっくりだが、至って普通の合金製のアックスでしかない。)

「ようやく俺の距離だぜ!馨」
『はいはい、少しは一夏にも見せ場を作ってあげないとね』
「なにぉぉぉ!」
『見せて貰おうじゃない!白式の近接戦闘能力とやらをね!』
「シ○アかよ!」
『君の乗ってるのだって、名前は似てるじゃない?』
「しらねェよ!」

 白兵戦闘の間合いから、離脱しようとする馨、させじと食い付く一夏。
 雪片弐型とヒートホークが火花を散らす。

「いいねぇ、射撃戦もいいけど、やっぱチャンバラが無いと、ロボット物は華が無いよねっ」
「負け惜しみはみっともないぜ!このまま一気に押し切らせてもらう!」

 白と赤、対照的なカラーの二機は、アリーナ内を所狭しと飛び回りつつ、鍔迫り合いを繰り広げる。
 だが近接は一夏に分が有る様だった。
 箒星は万能機として一定以上の白兵戦闘能力を持つが、特化型の白式に軍配が上がる。
 だが馨は不敵に笑った、今ならば言える!あのセリフが!

『ISの性能が、戦力の決定的な差で無いことを見せてやんよ!』
「またパクリか!微妙にアレンジすな!」




(/ロ゜)/



「さっきから、一夏さんだけやたら叫んでますわね」
「馨がプラベートチャンネルで話しかけているんだろうが、一夏の奴はあれが苦手だからな」
 
 再びの管制室。
 オープンチャンネルでひたすら独り言を言ってるようにしか見えない一夏が痛々しい。
 状況は一夏が押し気味ではあるが、馨はよく攻撃を受け流していた。

「やるな…あいつ」
「凰の練習に付き合っていたのだろう?自然と上手くなるだろうよ、甲龍は近接パワー型だからな…
 それと、嶋野のおしゃべり、あれは『口プロレス』という奴だな」
「なんですの、それ?」
「野○監督のぼやきみたいなものですよ、オルコットさん」
「ボヤキ…?」

 山田先生、その例えは英国人の少女には通用しないと思います。

「要するに、戦闘中に会話で揺さぶりをかけてくるのさ、一種の精神攻撃だな」
「まぁ卑怯な!」
「(お前も良く喋っているではないか…)」

 箒がジト目でセシリアを見る、セシリアのアレはまぁうんざりする、という意味では立派な精神攻撃である。

「なんだオルコット、お前の先輩の得意技だぞ」
「は?」
「英国の代表…メイルシュトロームの操縦者だ」
「え?」

 セシリアの脳裏に、偉大なる先輩の、優雅な微笑がリフレインする。
 馬鹿な・・・そんなわけが・・・

「あの出来損ないのIS…メイルシュトロームが各国のISと五分に張り合ったのは、あいつの『口撃』による所が大きい、私も辟易したものだ。
 英国代表候補生が、どいつもこいつも、やたら戦闘中にしゃべくるので、あれは英国では、標準の戦闘オプションかと思ったくらいだ」
「断じて違いますわ!!!!」

 先人と自身の名誉の為にセシリアは大声で否定するのだった・・・

 (注:作者の妄想です)




(/ロ゜)/



『ごめんムッツリは訂正するよ、オープンスケベってことでいいんだね?』
「スケベから離れろ!!」
『認めたくないものだな、若さ故の過ちというものは』
「やかましぃぃぃ!」

 絶え間ない馨の「口撃」に一夏のMPメンタル・ポイントは確実に削れらていた。
 イライラと焦燥は、動きの雑さを招く。
 その隙を突いて、箒星が急速離脱を試みる。

「(しまった!)」

 慌てて箒星へと突撃をかける、一撃当てれば!

『一夏はカウンターってのを覚えるといいよ、特に君みたいな一撃必殺型はね…チェーンマイン!』

 量子変換インストールされている武装を素早く呼び出すために、大声で武器名を叫ぶ!
 と言うのは、素早く展開できない、という証拠で有り、IS乗りとしては恥ずかしいことだとされている。

 だが馨はこう考える「男の子だから恥ずかしく無いもん!」
 むしろカッコイイ
 何より元々有る程度のスピードで展開できるなら、武器名を叫べばさらに速く展開できる、という事・・・
 突っ込んできた白式にカウンターで連装吸着地雷チェーンマインが絡みつく。
 どこぞの強襲用MSが装備していたアレだ、現在箒星に量子変換されている武装では、最大の威力を持つ武装。
 それは即座に大爆発、箒星も離脱しこそねたので、爆風に巻き込まれるが、損害は軽微だ。

『勝った!第三部完!』
「何が完だ!」
『あ、やっぱ生きてたか…さて仕切り直しだよ…え?』

 センサーが捕らえた異常熱源。
 ほぼ同時に、アリーナに、先ほどとは比べ物にならない、爆音が鳴り響いた。




後書き
戦闘・・・やっぱ微妙。
とりあえず感想掲示板でご指摘のあった店は捕捉、つっこみありがとうございます点は補足できたと思います。
貴重なご意見ありがとうございましたmm



[27026] 【皆さんの予想の】降臨(アバン+Aパート)【斜め上を突いてみた】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/21 03:20
すごく反省しています、でも面白いからいいかな?








「…なんか、むかつくくらい楽しそうね、あの馬鹿達」
 
 一夏と馨のやり取りは
 一夏が、親友にして悪友の弾と一緒に騒いでいる時に良く似ていた。
 あの男子達が馬鹿をやっている雰囲気は、どうにも女子には踏み込めない領域だ。
 それは二人の共通の知人である鈴にとっても、その性分から、他の女子に比べれば、ずっと踏み込んではいるが、それでも、性差という埋められない溝が有る。
 だというのにだ。
 馨はあっさりと、越えられない壁を乗り越えてしまっているように見える。

「馨の馬鹿…」

 鈴は二組側のピット…BピットでIS『甲龍』を展開。
 ハイパーセンサーを駆使して二人の戦闘を観戦していた。
 一応急病、ということになっているので、その辺をうろうろするわけには行かないが、試合は見たい。
 そこで閃いた、試合中のピット程、隠れているのに適している場所は無いということを。
 近いのでISを展開しハイパーセンサーを使えば、モニターで見るより、つぶさに戦闘の観察ができる。
 そして、それゆえに、誰もよりも速く、鈴は異常に気が付いた。

「っ!」

 センサーが捕らえた異常な熱量、本能的に鈴はアリーナへと飛び込み、叫んだ。

『一夏!馨!直ぐに逃げて!』






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








 鈴の警告とセンサーの告げる、緊急事態。
 だが馨は、まず呆然とする一夏へと箒星を寄せる。

「一夏!まずい、逃げよう」
「逃げるって」
 
 状況を理解していない一夏だが、白式がアリーナ中央の土煙の中に熱源を探知すると同時に、そのISからロックオンされたことを告げるアラートで我に帰る。

「なんだ?」
「一夏、馨、なにしてんのよ、速く!」
「鈴!?」
「ダメだ鈴ちゃん、逃げ場を奪われた」
「…最悪、もうこのグズッ!馬鹿ッ!」
「どういうことだよ、馨」
「遮断シールドがレベル4でロックされてる、応援も来ないし、逃げ場も無い」

 馨の説明と同時に三人は散開した、強烈なビーム砲撃が、寸前まで三人が居た空間を焦がす。

『プラズマキャノン…?大気の減衰を物ともしないとか反則。
 出力は軍用ISクラスだよ、アリーナのバリヤを、光○力バリヤよろしく、破ったのはあれだね…』
『止めなさいよ、あんなパリンって破れるバリヤの話は』

 まったくである。
 そして土煙が晴れ、謎のISが姿を現した。

『なん…だと!』

 馨が思わず叫ぶ。
 白を基調に、青のラインと赤のワンポイントで塗装された、ISだった。
 鮮烈なトリコロール。
 目を引くのは生身の露出がまったく無い「全身装甲フル・スキン」である。
 箒星も全身装甲フル・スキンだが、間接部分を中心に装甲に覆われてない部分も有る。
 そのISにはそれが無かった、そんなISは全世界を探しても何処にも無い、ISの防御力はバリヤーと絶対防御によって成っており、装甲はシールドエネルギーを節約するための副次的な物でしかないからだ。
 美しいISだった。
 スカートにしか見えない腰部ユニット、袖のようにしか見えない腕部ユニット。
 胸部装甲の突起は…まるでリボンのような形状をしている。
 放熱索だと信じたいそれは、髪の毛(片結びのサイドテール)を模しているようにしか見えない。
 両椀で保持する荷電粒子砲は…傍目には大型の実体剣のようにも見える。
 おそらく遠近両用。剣として使う場合は、インパクトの瞬間にプラズマが噴射されるのだろう。
 そしてISの周囲には数機の…ビットだろうか?
 なにかファ○ネルぽい物体とシールドっぽい物体が浮遊している。
 その姿はどう見ても…某魔法少女(2ピー歳時)にしか見えなかった、馨には。

『か、管○局の白い悪魔!』

 馨が絶望的な声で呟く。

『連邦の白い悪魔じゃないの?だってガン○ムカラートリコロールじゃない』
『むしろ性能的にはビグ○ムに近いよ、鉄壁の機動砲台だからね』
「なぁ、何の話だ?」
『今度BD貸して上げるから。てか今はそれどころじゃないよ、このままだ僕ら全員「頭冷やされて」しまう…』

 一人戦慄する馨を、残りの二人は怪訝な目で見る。

「とにかく逃げ場が無い以上、俺たちでなんとかするしかねぇだろ、このままじゃ観客席が危ない」
『たく、馬鹿なんだから』

 実の所逃げ場はあるのだ、アリーナの遮断シールドを一夏が「零落白夜」切り裂けばいいのだから。
 それを言い出さない一夏に、鈴は呆れながらも、それを好ましく思う。
 それでこそ、自分の惚れた男だ。

『OK,三人ならあれもできるしね』
「なんだよ、いい作戦があるのか?」
『なんか嫌な予感がするけど、言って見なさいよ』
『ジェッ○ストリームアタック』
『死ね!』「踏み台になって潰されろ!」

 二人は光の速さで馨に突っ込んだのだった。

『酷いなぁ…っ!』
【stand by ready.】

 機械的な合成音がアリーナに響く、と同時に謎のISのセンサーが不気味に光る。
 次の瞬間、まさに暴力と言うべき火力が解き放たれた…




後書き
すごく短いのですが、インパクトを優先したかったのでここで一旦カット
Bパート+エンディングに続きます。
ビグザムと聞いて
某シャチさんのところの某なのはさん(某の意味が無い!)を思い出しました。
束さんの中の人繋がりというのも有ります。
くすっと笑っていただけたら幸いです。



[27026] 降臨(Bパート)【エンディングまで収まらなかった罠】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/21 23:01
 それは銃撃、などという生易しいものではなかった、まさに「砲撃」と称すべき、圧倒的な火力が、大気を焦がし、大地を抉る。
 アリーナのグランド内に含まれている、比較的沸点の低いものなど、あっさり蒸発している有様だった。

『冗談抜きで戦艦の主砲並だよ!』
『ふざけてる場合じゃないわよ馨!』

 さらには周囲に浮遊するビットからのレーザーが雨霰と降り注ぐ。

『真面目な話、鈴ちゃんが来てくれてよかった、ぶっちゃけ弾がもうあんまり無いんだよね』
「どうすんだ!」
『一夏はいい加減、プライベートチャンネルを覚えて、向こうに作戦ばれちゃうでしょうが』
『そうよ、馬鹿!』
『馬鹿馬鹿言うな!…おできた』
『…』
『…結果オーライということで、とにかく向こうの防御性能が知りたいから、軽く仕掛けてみよう』
『三人とも!速く退避して――』

 管制室からの退避勧告を、馨が遮断する。

『一夏は、白兵戦を仕掛ける振り、僕は牽制射撃、本命は鈴ちゃんのアレでどうかな?』
『俺は囮かよ』
『相手の格闘性能も判んないのに、白兵仕掛けてどうすんのよ』
『よし準備OK、いこうか』

 残弾を節約するためだろう、馨はプランを立てながら、ブリッツのバレルをヘヴィバレルへと換装、セレクターを切り替え単射モードにし、ブリッツを簡易スナイパーライフル仕様へと変更していた。

『じゃぁいくぜ』
『隙あれば、攻撃もOKだよ』

 後方へ回り込もうとする一夏、それを援護するように馨はアンノウンの装甲の薄い部位を狙って狙撃を開始する。

『うぇ!』

 あっさりと、弾丸がシールド型ビットに阻まれる。
 硬い。
 馨など眼中に無しと言わんばかりに、アンノウンの主砲が一夏を襲う。

『遅い!』

 威力は高いが、この砲撃、その分スピードが遅い、さらには発射にタイムラグがあるせいで、タイミングが読みやすい。

『一夏!当たらなければ――』
『うるさいぞ馨!真面目にやれ…ってうわぁ!』

 アンノウンが大量の小型誘導弾を射出、一斉に一夏を襲う。
 慌てて回避運動に入った一夏目が賭けて、主砲が火を吹く。
 誘導弾で追い込み、主砲で止めを刺す、どこかで聞いたような話だ。

『あれはアクセル・シューターを再現してんのか…まったく、良く出来てるね!』

 狙いを武器破壊に切り替え、主砲目掛けて、銃撃を繰り返すが、シールドビットと本体のバリヤに阻まれ、まったく届かない。
 反撃のビットからのレーザーを避けながらも、馨は粘り強く狙撃を続ける。

『狙い撃つよ!ストラトスだけにね!』
『そのまま続けなさい馨』

 砲撃が大地を穿って作り出した黒煙に紛れ、一夏と馨の牽制を利用し、至近距離の死角へと踊りだした鈴が攻撃を仕掛けた。
 振り上げた青龍刀はシールドビットが阻むが、甲龍の最大武装はそれではない。

『喰え!』

 甲龍の両肩ユニットに搭載された兵装が、火を吹いた。
 まぁ見えないのだが。
 衝撃砲。
 空間そのものに圧力をかけ、打ち出す、第三世代兵装。
 その特徴は砲弾も砲身も目には見えないこと、極めて回避が困難なその攻撃を。

『うそっ!』

 アンノウンがあっさりと回避していた。
 とうよりも、白兵距離まで接近されたので、早々に離脱した、というべきか。
 一見鈍重そうな外観からは想像できない、爆発的な加速力。

『これは…厄介ね』
『うーむ、今のはフラッシュ・ムーブもどきなのか』
『馨、あいつの取りそうな行動、直ぐにデータにして転送しなさい』
『いえっさ☆』

 あくまで緊張感の無い馨だった。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







『ええぃ、管○局のエースは化け物だ!』

 ついに弾の切れたブリッツを収納、あまり通用しない気もするが、予備の銃器をコールする。
 イタリア・フランキ社製、IS用ショットカノン、SPAS-18
 18というのはISという文字をもじったものらしい(さすがイタリア)
 ベースは同社のSPAS-15。
 ほぼISサイズ用に大型化しただけ、と(イタリア製だけに)専らの噂だが、実際はきちんとIS用に再設計されている良銃である。
 セミオート・ポンプアクション両方が行なえ、なおかつボックスマガジンを採用しているため、高速での再装填が可能。
 ストックも折りたたみ式で、傍目にはアサルトライフルにも見えるが、至近距離での取り回しも良い。
 とはいえ、対一夏専用に普通の散弾しか用意してこなかったので、あの鉄壁砲台にダメージを与えるとなると、それこそゼロ距離でズドンしないとだめっぽい。
 もっともこれまでの攻撃がまともに通用していないことを考えると、望み薄だ。
 一度など、一夏と馨二人で押さえ込み、甲龍の衝撃砲の最大出力を見舞ってやったが…ピンピンしていた。

『おい馨、シールドエネルギーは後どれだけ残ってる』
『殆ど被弾して無いからほぼ満タン』

 狙撃による牽制に努めているので当たり前だった。
 しかも箒星は実弾兵装ばかりなの攻撃には殆どエネルギーを使わない。

『あたしは200ちょいね…かなり厳しいわよ』
『こりゃ、あれだね、作戦を切り替えよう』
『どうすんのよ』
『あれにダメージ通せるのは、一夏の「雪片弐型」だけだよ、それでいこう』
『それが当たらない無い、から苦労してんだろ!』

 砲撃を回避しながら、一夏が怒鳴る。
 なんとか接近しても、アンノウンはあの暴力的な加速で、あっさりと白兵距離から離脱してしまう。

『…てかさ、あいつおかしいよね』
『たしかに…まるでロボットみたいな動きだよな、ルーチン通りにしか動かないというか』

 ビットとミサイルにより牽制で動きを制限し、主砲の一撃。
 白兵を挑まれれば、即座に離脱。
 それの繰り返しだ。

『まるで…人間が乗ってねぇみたいだ』
『ISは人間が乗らなきゃ動かないわよ』
『うん、一部の研究者、特に男性至上主義者共にとっては悲願とも言える研究なんだけどね』

 独 立 稼 動スタンド・アローン
 遠 隔 操 作リモート・コントロール
 いずれも、この女尊男卑の風潮を面白く思わない…保守的な男共によって、日夜膨大な資金と時間が無駄に消費されていることを、研究者志望の馨は知っていた。
 そこに行くと、M○モドキのISを開発したがる、義父達など可愛いものだ。
 たぶん…

『そういえば…さっきから、会話中はあんまり攻撃してこないわねっと!』

 鈴がひょいっと華麗な機動で砲撃を回避する。
 このようにまったくしないわけではないが、こうやって三人が作戦会議をしていると、アンノウンは攻撃の手を緩めてくる。
 まるで、こちらを観察するかのように…

『まぁやっぱりジェットストリームアタックだね』
『おい』
『いや、真面目な話ね、こんな感じで』

 馨が作戦のイメージ図を二人に送信する。
 近接を嫌って距離を取る、というアンノウンのルーチンを逆手に取る作戦。
 連続して接近戦を仕掛けることで、アンノウンの行動を制限、これを繰り返し、破綻した所に、一夏の「零落白夜」を叩き込む。

『なかなか良い作戦だけど…即席の連携じゃぁ成功率、低そうよ?』
『あら、鈴ちゃん、一夏の親友である私は自信あるよ?幼馴染の鈴ちゃんは無いの?』
『有るに決まってるじゃない!あんたこそ、そんな旧型で足引っ張らないでよね!』

 いつからお前は俺の親友に格上げされたんだ?と思わないでもなかったが、一夏にもこの作戦は中々良いように見えた。

『確率がゼロじゃなきゃ、いいだろ、可能性が有るだけさ、これでいこうぜ』
『…男って、本当に博打が好きよね、馬鹿みたい』
『一夏、一夏「分の悪い賭けは嫌いじゃない…」って言おうよ、そこはさ』
『お前はそこからアニメとゲーム離れろ』
『ははは、無理かな?さぁて、幼馴染と親友による、コンビネーションアタックだよ、センスは認めるけど、な○はさんを模した機体で悪事をしようなんて…「頭冷やそうか?」ひゃっほー!』
『『真面目にやれ!』』

 な○はさんて誰だよ、というつっこみをいれつつ、二人は真っ先に突っ込んだ馨の箒星を追い、アンノウンに突っ込む。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「即席の連携してはよくやった方か…」
「冷静になってる場合じゃありませんよ!」

 管制室。
 馨提案のジェッ○ストリームアタックは確かに効果はあった。
 ビットを全機破壊し、本体にもそれなりのダメージを与えた。
 だが…
 馨が遠近両用と踏んだ、ブラズマカノンが猛威を振るった。
 インパクトの瞬間、側面に備えられた砲口から噴射されるプラズマで生成された刃は、近接兵装でガードしても、ガード毎吹き飛ばされる威力。
 ほぼ無傷だった箒星もかなりのシールドエネルギーを減らされてしまう。
 この攻防で殆どダメージを受けなかったのは、鈴のみ、さすがに代表候補生の面目躍如である。

「システムクラックの方は?」
「ダメです」

 観客席のロック、アリーナの遮断シールドの解除、いずれも三年の精鋭が攻略を続けていたが、芳しくないらしい。
 すでに教員による制圧チームは全員準備万端だが、教え子…それも入学したてのヒヨコ達の死闘をハラハラしながら見守るしか、出来ないで居た。

「…チッ」

 苛立つ千冬。
 弟のピンチに、やはり冷静ではいられないのだろう。
 なぜか置いてあった塩をコーヒーに投入してしまい、とんだ恥も掻いた。

 それゆにえ気が付かなかった、いつの間にか箒とセシリアの姿が消えていたことに。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/








『…作戦がある』

 思いつめた表情で一夏が言う、白式の残エネルギーは100を切っている、これではエネルギー無効化攻撃はあと一回が関の山だ。

『拝聴しましょう』
『言って見なさいよ』



『馬鹿なの?死ぬの?』
『それはあれだね?幽○白書の、霊○発射桑○だね?え、違う?…まぁ論理的には可能だけど、一歩間違うとバラバラだよ?』

 一夏の作戦、鈴の衝撃砲のエネルギーを利用した「瞬時加速」イグニッション・ブーストによる突撃。
 そも「瞬時加速」イグニッション・ブーストの原理はこうだ。
 スラスター翼からエネルギーを放射、それを一度内部へと取り込み、圧縮、再解放。
 その際に得られる慣性エネルギーを利用し、爆発的な加速を行なう。
 ならば、そのスラスターから放出エネルギーは外部からでも良い。

『もうエネルギーが残り少ない、これしか手が無いんだ、それとも鈴、何か良い案は有るか?』
『う…』
『ちなみに私は完全に弾切れ、あとは淑女の嗜みヒートホークだけね』

 到底役に立ちそうに無い。と肩を竦めて見せる馨。

『だから、壁と発射台になるよ』
『はぁ?』

 箒星の両肩、シールドとアーマーを前面に向けさせ、なおかつスラスター群を後方に向ける。

『その作戦、ちょっとタイムラグがあるでしょ?だから攻撃を防ぎ、なおかつ空気抵抗を低減してアシストするのさ、スリップストリームって知ってる?』

 ロードレースではこうやってエースのゴール手前へのスプリントをアシストする者のことを「発射台」などという。
 それをやろうと馨は言っているのだ。

『燃えるシュチュエーションになって来たねぇ、アニメなら25分くらいかな?』
『ああ、もうっ!馬鹿二匹!』

 鈴がヤケになって叫ぶのとほぼ同時に、アリーナに声が響いた。

「一夏ぁっ!」

 アリーナのスピーカーがハウリングするほどの大音声、箒の声だった。

「男なら…男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」

 再びの大音声。

『そのくらいって…簡単に言うなぁ箒さん』

 と馨が突っ込む。
 一夏はそれどころではなかった、何やってんだアイツは、と思わず箒がいるであろう、放送室に目を向ける。

『やばっ、一夏、あいつが』
『箒っ!逃げろ!』

 アンノウンが大音声の方向に興味を持ったのか、センサーを向け、そしてゆっくりと砲口を向ようとしている。

『鈴!馨!』
『摑まって一夏』
『ああぁ、もうっ!どうなってもしらないんだからねぇ!』

 鈴は甲龍を最大砲撃モードに、補佐用の力場展開翼を後方へ広げ、両肩を押し出すように構える。
 発射までコンマ5秒、馨がまずスタート、その後に張り付いた一夏は腕への軋みに耐えながらも、後部スラスター翼を展開する。
 衝撃砲の発射とほぼ同時に、攻撃を感知したアンノウンの副砲が馨と一夏を襲う。
 全砲火を受け止めた箒星のシールドエネルギーがあっさりと0へと降下していく。

『こんなろぉぉぉぉ!』

 衝撃砲が白式の背部スラスターに着弾する寸前、気合で馨は箒星の機動をずらす。
 制御を失い、アリーナのグランドに突っ込む箒星、しかしその指だけは力強く。

 b←サムズアップ。

 着弾、トラックに追突されればこんな感じだろうか、という衝撃を背中に受け止めた、一夏は軋みを上げる体に耐えながら、加速をした。

『――――オオオオオオオッ!』

 一夏の咆哮に応えるように雪片弐型の放つ光が強くなる。
 通常に二倍近い大きさになったビーム刃。
 「零落白夜」使用可能、エネルギー転換効率90%
 そのシステムメッセージを聞くまでも無く、一夏は理解していた。
 初めてISに触れたときに感じた、ISとの一体感。
 全能感ともいえる、鋭敏化した五感、異常なまでの集中力、世界がはっきりと見える感覚。
 そして何より、激痛と疲労でとっくに限界を超えているはずの身体から湧き上がるような、力。

 その全てを込める様に、一夏はアンノウンに突撃する。
 驚異的な防御力で一夏の突撃を受けとめたアンノウン。
 それでも一夏は加速を止めない。
 残ったエネルギーを搾り出すように、再度の「瞬時加速」イグニッション・ブースト

『ウオォォォォォォォ!』

 そのままアンノウンを、観客席のシールドまで押し込み、叩きつける。

『これでっ!』

 雪片弐型を振りかぶり、両手に構え、切り落とす、上段からの袈裟懸け。
 その一撃は、観客席のシールド毎、アンノウンを切り伏せ、バリヤなど物ともせず、本体へと直接ダメージを与えようとする。
 アンノウンの「絶対防御」が発動すること、その残撃は、アンノウンの左腕を切り飛ばしただけだ。
 まだアンノウンは動ける。
 もはやエネルギーの枯渇し、動けない白式を、アンノウンの右腕が殴り飛ばす。

「『一夏っ!』」

 叫ぶ箒と鈴、地面に叩きつけれそうになる一夏を、追撃してきていた鈴がすかさずキャッチ。

『もう、しぶといのよ!』

 襲撃砲を叩きつけたいところだが、甲龍も先ほどの最大砲撃でもはやエネルギーに余裕が無い。
 馨はすでに起き上がれない、なんとか一夏の安全を確保し、後は白兵で片をつけるしか――
 追撃の為にふわりと浮かび上がったアンノウンに、鈴が覚悟を決める。
 だが一夏はふっと笑って言った「ちゃんと考えてあるんだぜ?」
 怪訝な表情の鈴。

「狙いは?」
 既にISの展開が解けている一夏は大声で叫ぶ。それに対し。

完璧ですわ!パ-フェクト

 良く通る、完璧なクイーンズ・イングリッシュ。
 「口撃」などと言われてしまう様なおしゃべりは、うるさいときも有るが、こんな時は頼もしい。

 観客席から躍り出た、青いビット、ブルーティアーズ四基の同時狙撃と、二基の弾道型による追撃。
 まず狙撃によって、スラスタを打ち抜かれたアンノウンが地面へと落ち、そこへ容赦なく、弾道型が着弾爆発を起こす。

 そう、一夏に残撃によってシールドは、破られているのだ。
 認識外の奇襲。
 人間の狡猾さを証明したそれは、アンノウンの息の根を完全に止めていた。

『ギリギリのタイミングでしたわ』
「セシリアならやれるって信じてたぜ?」

 鈴の甲龍を通しての通信。
 一夏の言葉に嘘やおべっかはなかった。
 それは本気で戦ったがゆえに、あるいは本人よりも、理解しているのかもしれない。
 だがそんな一夏らしからぬセリフに、セシリアは周章狼狽する。
 なにやら、どもった様子で、わたわたと通信を返してくる。

 ブチッ

 鈴がキレて、通信を切る。

「あ、おい何すんだよ」
「うるさい!馬鹿ッ!」

 思わず怒鳴る。そこへ――

『鈴ちゃん!そいつまだ生きてる!』

 馨の警告、アレだけ攻撃されてなお、アンノウンは生きていた。
 だが、怒りに任せた鈴の衝撃砲が、そんなアンノウンを容赦なく襲った。
 100%八つ当たりである。

『いい加減っ…消えて無くなれっ!』

 エネルギーが切れて墜落しそうになった、二人をなんとか馨が受け止めたのは、まさに奇跡だった。
そのスピードまさに【箒星】すいせいのごとし。

『(赤い)彗星の二つ名は、伊達じゃない!』

 と叫んだとか、叫ばなかったとか…







後書き
とりあえず次話でエンディングを書いて
一巻のエピソードは終了です。
二巻以降はプロットも書いてないので、しばらく時間を置いてネタを練ります。
でチラ裏だと流れも速いので
分不相応にもその他板へと移動しようかなぁ、とか考えています。
(まず誤字脱字と文章の変な所なおしてからか・・・)



[27026] Friends ?
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/25 13:31
「身体中が痛いよ、一夏」
「安心しろ俺もだ、馨」
「鍛え方が足らんな、馬鹿者共が」

 もっと優しくしてください、先生。

「鈴はぴんぴんしてるもんなぁ、言い返せねぇ」

 ここは医務室。
 空中に放り出された鈴ちゃんと一夏を、間一髪キャッチした後、私と一夏は気絶。
 ここに運ばれた。
 診断の結果は一夏が「全身打撲」全治数日。
 私は、軽い打撲と火傷、あと全身の筋肉痛、気絶したのは疲労のせいだって、とほほ恥ずかしいなぁ。

 この騒ぎなのに、クラス対抗戦は、明日一日置いて明後日には再開するそうだ、たくましいなぁ。
 とはいえ白式は損傷が激しいので、一組はセシリアさんが代打、二組は正規の代表である鈴ちゃんに戻る。
 ちなみに僕と一夏の試合は、一応51対49で僕の判定勝ちということになるらしい、やっほう!
 まぁ「圧倒的じゃないか我が組は」状態だったしね?

「よくやった、と言ってやりたいところだが、とんだ独断専行をしおって」

 ひぇ頑張ったのに、お説教ですか!?

「少しは褒めてあげなさいよ。千冬」

 げ、この聞きなれた声は…やっぱりお義母さま!

「夜子さん」
「はい千冬、お久しぶり…でもないけど」
「義母さん?どうして学校に、いてて」
「あんたには言ってなかったけど、私はここの理事の一人よ」

 そうだったんですか…

「理事会には良く欠席されてますが」

 ぶっ

「だって倉持から来てる理事がしつこいんだもん、未だに量産型の打鉄の内装があそこのオリジナルじゃなくて、ウチ製になったの根にもってるのよね…まったく度し難いわ」
「…」
「ほら馨、後は姉弟水入らずにしてあげましょうか、あなたが居ると千冬も先生の仮面が外せないしね」
「よけいなお世話です夜子さん」

 にやにやする義母さん、すげぇ織斑先生を圧倒してる、これが歳の功・・・いえなんでもありません。


「後私も話があるわ」

 いあ、お義母さま、私全身が痛くて、あー!ひっぱっちゃだめー

「嶋野理事」
「はいはい、余計なことは詮索しないわよ、どんなISだったか知らないけど、ウチみたいなパーツメーカーには関係ないし。第一趣味じゃないのよ」

 硬い織斑先生の呼びかけにも、軽く応じた義母さんに引っ張られ、私は医務室から連れ出されたのだ、痛いですってば!
 せめておんぶしてぇ!





\(゜ロ\)(/ロ゜)/






「なんかすげぇパワフルな人だったな」
「昔からだ、あの人は。正直私も頭があがらん」

 千冬姉が、頭が上がらないって…相当だな、馨の奴大丈夫か?

「…お前が無事でよかった」

 家族に死なれては寝覚めが悪い、なんて憎まれ口が続いたけど、そう言う千冬姉の表情は柔らかい。
 普段は絶対に見せない、世界中で俺だけに、二人だけの家族に向ける笑顔。
 馨には悪いが、馨の母さんに感謝。

「心配かけて、ごめん」

 俺の言葉に、千冬姉は小さく笑った。

「心配などしていないさ、お前はそう簡単には死なない」

 なんだよそれ

「なにせ、私の弟だからな」

 すごい理屈だな…千冬姉なりの照れ隠しなんだろうけど…

「では私は仕事に戻る、少し休んだら、部屋に戻れ」

 そう言って千冬姉は医務室を出て行ってしまった。

「でも馨帰ってこねぇな…大丈夫か?」

 まぁその後箒や鈴がお見舞いに来てくれたので退屈はしなかったが。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







 連れだされたのは、自販機の並んでいるちょっとしたロビー。
 おごりだよ、といって飲み物を買ってくれたのは…
 げぇ!これは、で、伝説のデレロー飲料。

 飲む牛タン塩味!

 ゲ、ゲ○の味がするらしいのですが…なんでこんなの置いてるの?誰が飲むの?

「義母さま、今ベッドに隠れていると、嬉し恥ずかしのイベントが見れる気がするんです、だから部屋に戻りた――」

 具体的には眠っている意中の男子にチュー!
 大胆になりきれなくてホッペかデコにちゅー!もまた良し!

「前半の専用機との試合は悪くなかったね」

 人の話、聞いてー!

「まぁ後半を見れなかったのは残念だけど、箒星の状態を見る限り、相当だったみたいね」
「緘口令がしかれちゃってますんで、詳しい事は」
「そのくらいは私も理事だからわかってるよ。とりあえず箒星は持って帰って修理だね」
「う゛すみません…」

 盾になって突っ込んだとか言えねぇ…あでもログ取れば、ばれるんじゃないかな…
 山田先生がログぶち抜いてくれてると良いんだけど、あの人抜けてるからなぁ

「欲しくなったかい?」
「何がですか」
「専用機だよ」
「なんでそんな話をするんです」
「一夏君と一緒にいるなら、専用機持ちの方がいいだろう、束の妹に、中国と英国の代表候補、ライバル多そうだし」

 ちょっ、いきなり何を。
 一夏は友達ですよ?
 
「友達ねぇ…五十年生きてる人生の大先輩として言わせて貰うなら…男女の間に友情なんて成立しないよ、馨」

 それは私が身も心も女子ならそうでしょうよ。
 やめて下さいよ、そういうこと言うの…

「ふん、とりあえずは勘弁してあげるか、さて仕事があるんで帰るよ、養生しな」

 あのお義母さま、ここに置き去りにしないでください、僕身体が痛くてうごけな…
 あっ、あーいっちゃったよ…

 偶々通りかかった山田先生に保護されるまで、ロビーでべそかいてました。
 まぁ山田先生のおっぱいどさくさに紛れてタッチできたし、いいか。
 やわらかかったぁ





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「お引越しです」

 主語が抜けてますよ先生?

「部屋割の調整がようやくできたので、お引越しです、何時までも三人一緒じゃまずいですよね?」

 おお、つまりついに部屋からお邪魔無視いちかが居なくなるということですね?
 ひゃっほー!これで箒たんとただれた――たわばっ!
 全身の筋肉に激痛が走り、悶絶痙攣、びくんびくん。
 やめて箒さん、筋肉痛が経絡秘功のツボ点いてるぅ!

「今不埒な想像をしたな、馨」

 箒さん…ひどいよぉ、もっと優しくして?

「えっと、お引越しするのは篠ノ之さんだけです」

 うぇぇぇぇぇぇ!?

「何故わたしが!」
「いや、だって年頃の男女が一緒の部屋はまずいですし…」
「馨だって、体は女でしょう!心はともかく!」

 箒さんひどい!
 アタシのセンサイなオトメゴゴロ(ここまで棒読み)が傷ついたよ!
 責任とってそのおぴっ!
 伸ばした手を箒さんが掴む、ねじる。

「また破廉恥な行動に出ようとしたな、馨」

 それ以外の感情…具体的には嫉妬とかシットとかジェラシーとか混じってますよね?
 というか痛いです、それ以上ねじっちゃらめぇ!

「嶋野さんを、女子と二人にするとろくなことをしないので、織斑くんと一緒にしておけ、と織斑先生とジェニー先生の指示です」

 なん…だと?
 あの二人ではどうすることもできないではないか!

神は死んだ!Orz
「いや殺すなよ」
「納得がいきません!」

 そうよ箒さん、か弱い私に代わってあの二人に反抗して!
 応援(だけ)するわ!

「なぁ箒、なんだってそんなに怒ってんだ?」
「お前という奴は…」

 あ、怒りの矛先が鈍感キングの方へ。

「大丈夫だって、箒がいなくてもちゃんと起きれるし、歯も磨くし、馨の面倒もするからさ」

 あ、一夏の馬鹿チン!
 ブチンと何かがキレタ擬音が聞こえる。
 どうやら一夏にも聞こえたようだ。ちょっと顔が引き攣ってる。

「…すぐに部屋を移動します」
「ひっ!」

 山田先生が怯えてるよ…
 あと箒さん、そんな怖い目で見なくても大丈夫です。
 間違いなんて、ないですから…絶対に…ね?一夏さん?
 …
 あーもう義母さんが変なこというから、やり辛くなっちゃったなぁ…


(/ロ゜)/


「ねぇ一夏」
「なんだ」

 箒さんが居なくなり、寂しくなった部屋。
 後で取りに来るとい言う、箒さんの私物を整理してあげながら、ぽつりと一夏に話しかける。

「男女の間に友情は成立しないのかなぁ」
「昔そんなドラマあったな」
「あったねぇ」

 うん、大丈夫そうだね、この鈍感キングなら。
 つまり、問題は私の方ってことかぁ…
 男と恋愛って、それって精神的BLボーイズラブだよね、あっちはあんまり趣味じゃないんだけどなぁ


























 幕間


 学園の地下50m
 一定以上の権限を持たない者は、存在すら知らない、閉鎖区画がそこにはある。
 撃墜されたアンノウンはすぐさまここに運び込まれ、現在解析中だった。

「無人機か…」
「コアは未登録の物が使われていました」

 険しい表情の千冬と麻耶。

「そのうち眉間の皺が取れなくなるよ千冬」

 ドアを開けて、部屋に入ってきた人物が、親しげに千冬に話しかける。

「夜子先生!?」
「おや麻耶ちゃん、久しぶり、あいかわらずみたいだね」

 どこ見て言ってるんですか!と思わず手で胸をガード。

「ここはレベル4の権限がなければ立ち入りは禁止です。教員時代なら兎も角今はレベル2の嶋野理事?」
「十蔵さんに頼まれて来たんだよ」

 実質的な学園の責任者の名を出し、夜子はつかつかとアンノウンに近寄る。
 ひょいっとパーツの一つを拾い眺める。

「どこかで見たような造りだねぇ」
「…」
「おやだんまりかい、まぁいいさ、麻耶ちゃんコアは辛うじて無事なんだって?」
「あ、はい。他はもうメチャメチャにされてしまいましたが」

 おかげでこの無人機を制御していた方法は不明のままだ。

「じゃあ貰って行くから」
「えええっ!」

 夜子の言葉に驚愕する麻耶、さらに険しくなる千冬の視線。

「一度有る事は二度は有る。かろうじて平穏だったこの世界も、千冬あんたの弟の出現で、また・・騒がしくなるよ?
 一夏君を中心にね」

 その時、一夏君の周りには味方が一機でも多いほうがいいだろう?

 そう言い捨て、去って行く夜子。
 千冬にはその言葉を否定することはできなかった…




後書き
とりあえず無事一巻分のエピソードは完結です。
さてさてシャルとラウラをどう料理するかな・・・



[27026] 転校生(美少女)がまた来た【一人二組に下さい】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/29 05:06

 六月に入ったが、一向に梅雨がやってくる気配もなく、今日も晴天。
 夏の焼け付くような太陽がそろそろ顔を出し始め、少し暑いアリーナのグランドに、約60名の乙女がずらり整列。
 本日は一組&二組の合同演習。
 格闘と射撃を含む実戦演習を、一日かけてみっちり仕込まれるのだ。
 織斑千冬先生おにきょうかんおねえさまに…


 そんなわけでややげっそりしながら、私こと嶋野馨も列に並んでいる。
 せめて織斑先生もISスーツなら眼福だが、ジャージ、しかも上下長袖。
 ああ太陽よ地面を焦がせ、温度よ上昇しろ、織斑先生の上着(とできればズボンも)脱がしたまえ。
 詠唱、祈り、念じよ!とやっていると、なにやら隣に並んでる鈴ちゃんと、ちょうど前の一組の列に居る、セシリアさん、一夏がなにかくっちゃべっている。
 ほうほう、転校生に一夏がひっぱたかれた、ざまぁ(笑)
 どれどれ、その転校生とやらを拝見しますか。
 おおっ、見事までのロリキュートなバディに、あたしや鈴ちゃん以下のちっぱい!
 銀髪!眼帯!?
 キタコレ!
 妖精さん系ロリ美少女キタコレ!これでかつる!
 よし後は織斑先生が脱ぐだけだな
 詠唱!祈り!念じよ!!降り注げSUN!サンサンと!

「安心しろバカは私の目の前にも三名いる」

 やーい、一夏たち私語でまた叩かれてんのぉ――
 バシン!バシン!バシッひでぶっ!
 なぜか私の頭にも出席簿が降って来た…Why?

「そのポーズのせいじゃねぇか?」

 しまった祈りに力を込めすぎたか。




(/ロ゜)/




「「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい……」」

 鈴ちゃんと一緒ステレオでに一夏へ呪いを送る。
 あ、あの顔はろくでもないことを考えたな、おっと鈴選手のローキック、これは膝裏に決まりましたね、いい角度です。

「そうだな、まず戦闘実演してもらうか、待ちきれないのだろう?――凰!嶋野!ついでにオルコットもだ!」

 うぇ!

「なぜわたくしまで!?」
「専用機持ちはすぐ始められるからだ」
「せんせーい、僕専用機ありませーん」

 手を挙げて元気に発言する。

「貴様【箒星】はどうした」
「昨日実家に帰りました、それにアレは僕の専用機じゃありません」
「今日から実習なのになぜ返す?」

 びゅんびゅんと出席簿が唸る。こえぇぇぇ

「それは義母の命令ですので。直接義母に聞いて下さい、先生が」
「ちっ、使えん奴だ。」

 ふふふ、やはり義母の名を出せば、さしもの織斑先生も怖くない!
 うわ!「後で山田先生に連絡させよう」とか言ってる、ひでぇ…
 あ、でも、涙目の山田先生を慰めてやると、いいことあるかも!わぁおGoodアイデーア!

「嶋野ぉ!さっさと訓練機を装着してこんか!」

 あ、やっぱり実演はやらされるんだ、めんど…いますぐ行きます!
 ぶんぶん主席簿振らないでくださいよぉ!



(/ロ゜)/



「何やってんのさ、二人とも」

 訓練機を装着して戻ってくると、鈴ちゃんとセシリアさんが撃墜されていた。
 ハイパーセンサーで見ていたけど、やっぱ山田先生は強いねぇ
 あとおっぱい揉んだ一夏は死ね、あのおっぱいは私のもんだぞ。
 (注:違います)

「で、まだやるんですか?」
「あの様では、山田先生が強いのか、この二人が弱いのかわからん」
「えー一対一じゃ僕なんか手も足も出なですよー」
「なら好きな専用機持ちを指名しろ」
「ほぉ、それはまた太っ腹な!いえ、先生のお腹はスマートですが」
「早く選べ」
「じゃぁラウラさんで是非!」
「断る」

 即答です!ふむツン系か、ううむ興味深い…

「えーと、じゃぁデュノア君、一択で」
「おい!馨!自称親友じゃなかったのか!」

 うるさいよ一夏!あえて言おう!

「戦いは非情さ」(きまったっ…!)
「またそれか!」

 だって一夏じゃ勝てないし…

「勝つ気か?訓練機で」

 千冬先生が傲慢に笑う、またこういう笑顔が良く似合うんだ、この人。

「デュノアくん次第では・・・いけると思いますよ?」
「あの、僕は構いませんが…」
「では始めろ」

 さてさて、フランスの代表候補生の実力、見せてもらおうじゃない!




(/ロ゜)/




「さてさっきはデュノアが山田先生の機体の解説をしてくれたが…オルコット名誉返上・・の機会をくれてやろうか?」
汚名・・を返上させていただきますわ!もうっバカにして!」

 珍しいな千冬姉があんな冗談言うなんて。なんか怖い笑顔浮かべてるし。

「よしやれ」
「こほん…馨さんのISは米国製第二世代量産機『ファントム・イーグル』ですわ、ロッキード&マーティン、ボーイング社の共同出資の開発室製ですの。実質この二社製ですわね。 
 量産機とは言うものの、下手な専用機よりも高い、と揶揄される高級量産機で、比較的初期の機体であるにも係わらず、未だに現役、ちなみに制式採用してるのは米国のみで、あの金満国家的な――」
「自分の故国との歴史的な軋轢を解説に差し挟むな」
「うっ…その特徴は、白兵戦闘能力を度外視し、高機動火力型に特化しいる点ですわ、山田先生の『ラファール・リヴァイブ』が、誰にでも乗りこなせる、いかにもフランス製らしい軽薄な――」

 バシン!
 振り下ろされた出席簿エクスカリバー
 セシリアは頭おさえてぷるぷるしてる。
 学習能力ねぇな。
 俺もあんまり人のことは言えないが。

「もういい、凰続けろ」
「う、はい!…えと『ファントム・イーグル』は、その特化性の代償として、量産機としては非情に扱い難い機体なのよ。
 実際に美国でも『イーグル・ドライバー』と呼ばれるエース達の実質的な専用機状態となっているとか、何とか。
 意味無いじゃない量産機のさ」

 愛嬌のある言い回しに全員がどっと沸く。

「てかあれ基本軍用、なんであんなのが訓練機としておいてあるんですか、ちふ…織斑先生」
「三年にもなれば、あの程度乗りこなすものだ」

 へぇ、そうなのか・・・
 あれ待てよ?じゃぁ、そのファントム・イーグルを乗りこなしてる馨ってすげぇのか?
 てかさっきからシャルルばっかり攻撃してて、馨はふよふよ漂ってるだけじゃねぇか、何してんだ?アイツ

「ボーデヴィッヒ、ファントム・イーグルの他の特徴はなんだ」
「はい教官、ゲシュペンスト・アードラーの最大の脅威は、機動性でも火力でもなく、極めて強力な電子戦能力を備えていることです。
 幽霊ゲシュペンストの名はF-4より付けたといいますが、その真意は――」

 電子線?ってなんだ?
 ゲシュペンストってファントムのドイツ語か?
 ファントム・・・オペラ座の怪人?
 いや確か本当の意味は・・・幽霊?




(/ロ゜)/





『どうしたんですか先生?鈴ちゃんやセシリアさんの時とは随分違いますね?』

 ううううう

『入試の時は先生のそのおっぱいにしてやれましたが、大分慣れてきましたからね、そうそう不覚はとりませんよ?』

 これが『口撃』!そう言えばエミリーさん(わたしの同期の英国代表候補生)も、すごくおしゃべりだった!
 織斑先生の言ってたのホントなのね…
 麻耶!そんなことに感心してる場合じゃないわ!
 冷静に――

『さて、次の麻耶ちゃんの恥ずかしい話は…はい証言者は、またまた大塚絵里さんです』
『止めてください!このままじゃ私の教師としての威厳が!』
『いや、そんなの元々無いし。それはある日のことでした、またまたおっぱいの成長してしまった麻耶ちゃんですが』
『いやぁぁぁぁ!』

 延々とこちらの恥ずかしい話を暴露し続ける嶋野さんを必死に探す。
 開始早々、まずデュノアさんが攻撃してきた、その対応に気を取られた瞬間、センサーから嶋野さんが消えていた。
 ファントム・イーグルの真骨頂とも言える電子戦、ISのハイパーセンサーをジャミングできるのは・・・同じISだけ。
 整備科志望のせいか、機械には滅法強い嶋野さんは、もうかなりのレベルで電子戦を仕掛けてくる。
 一対一なら、対抗電子戦をしつつ、処理できた。
 たぶん今嶋野さんは電子戦に手一杯で、まともに動けてないはず。
 でも!でも!
 デュノアくん、強い!
 私が乗っているリヴァイヴをフルカスタムした専用機。
 まず機体の地力で負けてる、しかも資料通り、ラピッドスイッチで、手を換え品を換え攻撃してくる。
 これをさばきながらでは、とても対抗電子戦なんて無理。
 しかもさっきから、嶋野さんの精神口撃が絶え間なく襲ってくる。
 しかも話題が全部、胸!
 生徒には聞こえて無いよね!プライベート・チャンネルだし!
 でも、デュノアくんには聞かれてる!
 その証拠にデュノアくんが真っ赤!
 うわぁぁぁぁん、お母さぁぁん!

『なんとぉ!ブラのホックが壊れてぇ!』

 もうやだぁぁぁぁぁ!かえるぅぅぅ!



(/ロ゜)/カッタゼ



 バシン!バシン!バシン!

「三回も殴った!親父にも殴られたことないのにぃ!」

 ちなみに義母にはけっこう叩かれてます。
 暴力反対!

「誰が電子戦をしろと言った」
「(おっぱいの)神が」

 バシン!バシン!
 私の頭は木魚じゃないんですよ!ぽんぽん叩かないで!

「貴様はそのままアリーナを延々とマラソンしていろ」
「勝つためには手段を選ばないのは悪いことですか?」
「私は戦闘の実演をしろ、と言ったのだ」
「それならデュノアくんがしたからいいじゃないですか、ねー?」
「え?う、うん…そうかな」

 うわ、一歩引かれた、まぁあんだけおっぱいおっぱい連呼すれば「痴女」だと思われてもしかたないかぁ。
 でも彼も結構可愛いよねぇ、女装させたら間違いなく私より可愛い。
 男の娘か、イマイチ萌えなかったジャンルだけど、これは目覚めそうね…おそるべし、シャルル・デュノア。
 少女漫画界一の殺し屋をたらしこんだ男と同じ名前は、伊達じゃない、ってわけね。
 (注:フランスでは良く有る名前です、あとイミフの人はツーリング・エクスプレスでググッてね?)
 はっ!一夏がピンチ!?

「そうか、そんなに死にたいのか」

 え?
 がしっ!ぎりっ!
 い、痛い!
 頭が割れるように痛い! 
 織斑先生のヘッドロック!
 ロープ!ロォープッ!
 頭蓋骨が!頭蓋骨が!ミシミシいってるぅ!
 あ、でもおっぱいちょっと当たってる(はぁと)
 
 ギリリリッ

 死ぬ!
 脳みそでちゃうぅぅぃ!





(/ロ゜)/





 午前の授業は馨が身を持って千冬姉の恐ろしさを示してくれたお陰で、粛々と進んだ。

 馨?
 アリーナの隅に投げ捨てられているな。
 返事が無い、ただの屍のようだ…くわばらくばら




後書き
ちょっと見切り発射ですが、第二巻のエピソードに突入します。



[27026] 転校生にまつわるアレコレ
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/05/06 00:03
 この学園の屋上は生徒に解放されている。
 なので天気の良い日などは、生徒がお昼ごはんを食べる定番スポットだ。
 もっとも今は噂の転校生(デュノア君の方)を見るために、食堂に押しかけているらしく。誰も居ない。
 いえーい貸切~

「どうしてこうなる」

 それは一夏が鈍感だからですよ箒さん。
 昼休み、実習中にお昼ご飯に誘った箒さんだが、余計なおまけが四人。
 鈴ちゃん、セシリアさん、デュノアくん、そんでもって私。
 一夏に誘われた時に、言おうかとも思ったけど、鈴ちゃんとセシリアさんの視線が「ダマレ、デナクバコロス!」と言っていたので、どうしようもなかった。
 本当は私くらいは遠慮するべきかとも思ったけど…こんな面白い見世物を見逃すバカは無いでの、のこのこ付いてきた。
 今度うまーく箒さんと一夏を二人きりにしてやるかなぁ…
 あーあー、三人の間に火花が散るのが見えるよ。
 
 鈴ちゃんは酢豚、約束の酢豚だ、健気だねぇ。
 セシリアさんはサンドイッチ…まぁこれは一夏の冥福を祈ろう。
 そして箒さんは、ごく普通のお弁当、でもかなり手の込んでそうなお弁当だねぇ。

「この流れで、お前は無いのか?馨」
「あるわけないじゃん、朝ダメなんだからさぁ」

 私は学食の焼き魚弁当(定食を弁当箱に詰めてくれるサービスだ)、豚汁、サラダ、おやつのバナナ一房まるごと。
 あげないよ?昼は私の最大の栄養補給タイムなんだから。

 きゃっきゃうふふとじゃれあう四人を眺めながら、黙々と食事を取る。

「(箒星の回収は、六月末の個人トーナメントに絡んでのことかな?あんまり興味ないんだけどなぁ)」

 完璧にセッティングされてしまったISなんて、何にも面白くない。
 学園の訓練機は、実習用に扱い易いリヴァイヴや打鉄が多いが、ファントム・イーグルのような、じゃじゃ馬も有る。
 特に今日使ったファントム・イーグルは面白い、あのアンバランスな機体を自分色に染め上げちょうせいる快感は…まぁ理解してもらえないか。

「そういえば馨、部屋の件は、やっぱりか?」
「うん。私が引っ越しで。今日から一夏とデュノアくんが同棲」
「どっ…不埒なことを言うな!」

 でも怒りの矛先は一夏、いえーい

「男同士とか!変態!死ね!」

 いえーい

「おとこどうし…いけませんわ!そんなの!」

 あ、まんざらでもない人がいるw

「なんだよ、お前ら」

 おーおー皆して不埒な妄想しちゃって、おやデュノアくん顔真っ赤、ふーんどこぞの鈍感キングと違うんだねぇ、顔真っ赤ねぇ…興味深い。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「じゃぁ一夏、短い間だけど世話になったね」
「どっちかというと俺が世話になった気もするがな」
「選別は君のベッドの下に入れて置――」「持っていけ」

 ようやく男みたいだけど一応女、な私が居なくなるのに?
 あーでもあれデュノアくんの横じゃし難いかな?

「だが断る」
「いらんと言っている」
「僕はそれが無くても実物と同棲するからいらんのだ、寧ろ邪魔だ、よって君に進呈する。
なんならお近づきの印にデュノアくんに差し上げたまえ、ヤポンのヤマトナデシコの魅力を理解してもらうためにな、では頑張りたまえ織斑親善大使」

 シュタ!と手を挙げて部屋を颯爽と出る。

「馨ぅ!」

 聞こえなーい!

 荷物が多いので、台車を借りて、ごとごと押しながら引越し先に向かう。
 さて、誰の部屋かな?
 たしか二人部屋をひとりで使ってるのは三人くらい。
 できれば1055室のゾフィー・クリティーネさんと同室をキボンヌ!
 アメリカからの留学生、身長155cm、86、56、88、ボンキュンボンのナイスバディ!でも可憐な美少女!守ってあげたくなる系の!

「はーい山田先生!僕の新しい部屋はどこですかー?ここでもいいですよ?」

 と寮長部屋でのたまってみた。

「…これが新しい部屋のキーです」

 なんですかそのマジックハンドとぶんむくれたツラは、そんなに午前中の演習で負けたのが気に入らないんですか?
 先生が気をしっかりもって、デュノアくんと戦えばもっといい線までいったでしょう?
 私はただステルスで隠れて、貴方に精神攻撃しかけただけで、銃弾一発撃ってないんですよ?

「…うぇ」

 今にもマジ泣きしそうなんで勘弁してあげることにしました。



(/ロ゜)/



「ゾフィーたんじゃなかった…」

 ルームキーの刻印は1002号室、あれーここって使われて無い部屋のはずじゃ…
 鍵を開け、中に入ってもやはり誰もいない…荷物もない
 まさか一人部屋?
 えーつまんないなぁ
 と思いつつ、荷解きと配置を開始する。

 イタリア辺りが、専用機と候補生を送り込んできて、陽気なイタリア娘さんと同居生活が始まるかもしれないので、一応スペースは自分の分だけに留めて置く。
 適度な妄想をしていると、ガチャリとドアが開く。
 おや同居人さん?
 って織斑先生!何故ここに!

「ここがお前の部屋だ、同居人と無用なトラブルを起こすなよ」
「それは命令ですか教官」
「先生だ、いい加減覚えろ。それと命令だと思っていい…嶋野!」
「はい、なんでせう?」
「問題を起こすな、特に刺されたとか撃たれたは勘弁してくれ」

 なんですかソレ…

「貴様のことだからすでに情報は把握しているだろうが、ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデウィッヒだ、少々一般常識に疎い、頼んだぞ」
「ああ、朝一で一夏をひっぱたき、午前の実習で私のオファーを0.1秒で断った、ラウラさんですね」
「…」
「私、嶋野馨、よろしくねー」
「…」

 先生コミュニュケーションが取れません!

「あいさつぐらいせんか」
「ラウラ・ボーデウィッヒだ」
「えーとなんて呼んだらいい?私は馨で構わないけど」
「…」

 先生ぇ!

「仲良くしろよ、ボーデウィッヒ。そいつは中々面白い奴だぞ」
「ご命令とあれば」

 …先が思いやられるなぁ。

「でフロイラインの荷物はそれだけ?」
「フロイライン…?」
「なんて呼んだら良いか言ってくれないのがいけないんだよ?」
「装備は後日届く、今は最低限の装備だけだ、貴様には関係無い。あとフロイラインなどと呼ぶな、反吐が出る」
「えーじゃぁラウラさん?」
「貴様に名で呼ばれる理由は無い」

 ふーん、でもあなた姓で呼ばれるのあんまり好きじゃないでしょう?
 織斑先生がボーデウィッヒって呼んだ時の物欲しそうな顔。
 気が付いてないのかな?
 どうも織斑先生には懐いているみたいだけど…

「装備って…まさかMP5とか417が送られてくるの?」
「良く分かったな」

 ハンドガンくらいなら兎も角、サブマシンガンやアサルトライフルを何に使うのか教えてプリーズ!
 折角の憩いの空間が硝煙とガンオイル臭にまみれちゃうよ!
 先生にチクって止めさせないと…

「貴様織斑一夏の親友だそうだな」
「そうだねぇ、少なくとも学園内では一夏が気を使わないで済む人間の一人だと思うよ」
「あんな男のどこが良い」
「友達になるのに、良いも悪いもないよ、単に気が合うだけ、異性として意識はしてないしね」
「…」
 
 またまた沈黙。
 とりあえず、色々試してみるかぁ

「ご飯はどーする?あとお風呂は大浴場行く?」
「貴様に心配される筋合いは無い」
「いや、だってルームメイトだし、織斑先生に頼まれてるから」
「む…」

 基本的に織斑先生の名前を上手く使えばコントロールできそうだな。

「とりあえず、ご飯行こうか」
「いらん、レーションが有る」
「それは非常用にしなよ、寮のご飯美味しいよ?運が良ければ織斑先生居るし」
「…案内しろ」

 ふむこれだな…



(/ロ゜)/



「居ないな…」
「残念だね。ボーデウィッヒさん、ザワークラフト食べる?一応ドイツからの留学生には及第点貰ってるらしいけど」

 あ、黙って盛ってる、ドイツ人のソウルフードというのは本当なんだなぁ。

「これはなんだ」
「これは南蛮漬け、から揚げを甘辛い酢のタレに軽く漬けた奴、まぁマリネみたいなものかな」
「マリネか…ヴルストは無いのか?」
「ウィンナーの焼いたのだったら、あっちに」

 あ、盛ってる盛ってる、ふむ意外に肉食なのね。
 ラウラさんのチョイスは、パン、オニオンスープ、ザワークラフト、ウィンナー。
 私はご飯、味噌汁、南蛮漬け、キャベツ千切り、白菜の漬物

「ドイツじゃ夜はあんまり食べないんだっけ」
「そうだな、昼食を沢山取る」
「学園の学食も美味しいよー、デザートがね、色々有って、トルテも色々あるよ?なんだっけあの童話に出てきそうな名前のサクランボのが美味しかった。明日ご馳走してあげるね」

 因みに、先月のクラス対抗戦は一回戦の判定勝ちが聞いて我が二組が全勝優勝!
 一敗が響いた一組は二位。
 三組は善戦するも全敗でドベ。
 四組は三組にのみ勝って三位。
 よってデザートパス券半年分は二組のものとなりました。

「シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテか」
「そうそれ」

 黒い森のさくらんぼケーキ!
 ココアスポンジベースで生クリームだっぷりで、カロリーもたっぷりですw
 チェリーの甘酸っぱさアクセント。
 ちなみにドイツでは、シュヴァルツヴェルダー産のキルシュ酒を使うのが法律なんだって、すごいね!
 周囲の女子が羨望と脅威の眼差しで見ている中、気にせず食べる、あのか・い・か・ん。
 ふふふ、甘いものの嫌いな女の子など(まぁ基本的には)居ないのだよ君。

「…どの程度のものか確認する必要が有るな」

 …あれ?割とチョロイ?



(/ロ゜)/マジウマ



「ほいじゃ、シャワーお先」

 妙な奴だ。
 油断するとこちらの懐にするりと入り込んでくる。
 
 教官をだしに私をコントロールしようとする狡猾さ。
 食べ物で釣ろうとする、いやらしさ。
 午前中の演習で見せた、判断力。
 反面、教官をおちょくり粛清されるような、馬鹿さ加減。

 まるで北欧神話のトリックスター、ロキの様だな。

 織斑一夏の友人だというが、明らかに周囲の女子とは違う。
 あれではまるで…

「ボーデウィッヒだ、聞こえるか」
『はい、聞こえています隊長』
「嶋野馨という人物の調査をしろ、IS学園一年二組所属だ」
『了解です』

 事務的に通信を終えた辺りで、奴がシャワールームから出てきた。
 キモノ?のような寝巻きを来ている。

「大浴場も使えるけど、シャワーでよかったの?」
「他人と風呂に入る習慣は無い」
「ふぅん、まぁそのうち慣れたらいいんじゃない?日本人の風呂にかける情熱は古代ローマ人にも劣らないよ」

 漫画読む?
 と何故か「タオルを持ったローマ風の彫像」が書かれた表紙のコミックを見せる。
 無視してシャワーを使うことにした。



(/ロ゜)/テルマエロマエ



「!」
 
 シャワールームから出てきたラウラさん。
 なんで全裸にバスタオルですかラウラさん?
 親しき仲にも礼儀有りですぞ、あなた。
 まぁしかし…ペタンとかロリンとかツルン、という擬音が良く似合うボディですね?

「どけ」
「あ、はい」

 あ、そのまま寝るですか。
 あれが外人さんの感覚なのか…ぽんぽん冷やさないでね?
 あと夜中トイレに起きて、寝ぼけてそのまま出ないでね?

 ううむ…
 こうして悩ましい夜は更けていくのでした…



[27026] 変態に技術を与えた結果がコレだよ!
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/26 15:02

 暗幕が引かれ暗闇が支配する会議室。
 灯りは、端末が投影するモニターの光のみ。
 円卓状に配置されたシステムデスク、モニターの青白い光が映し出すのは…KKKよろしく、三角形の覆面を被った、謎の集団だった。
 おそらく誰かに見られば、全員が社会的な死を招きそうな、妖しげな集会。
 言葉を話すことも禁じられているのか、全員が猛烈な勢いでキーボード(投影型)を叩き「チャット」でのみ会話している様は、不気味を通り越して、SANチェック物である。

議長:さて、有意義な議論も一段落付いたので、本題に入ろうか。>ちりり
総員:異議なし!
議長:まずは長老のありがたいお言葉からだ。
長老:いい時代になった、こうしてM○を模した物が作れる時代に、ワシらが現役のころは「まずはATアーマードトルーパーを」が合言葉であった
一同:むせる…
長老:先代のころは「レイバーを」と息をまいた、

 直撃世代がまじ泣きしています、しばしお待ち下さい…

長老:諸君らの健闘を期待する
一同:長老に敬礼!
議長:長老のありがたいお言葉をかみしめつつ、本日の議題に入る、議題は我らが希望の星、馨ちゃんの専用機計画についてである。先日の魔女狩りでかなりのダメージを受けたが、まだ諦めるような段階でないことは、同志諸君の知っての通りだ
トンプ:ファ○ネルのデータが手に入ったと聞いていますが!
ガンテツ:落ち着け同志トンプ、あくまで所見だ
ダルマ:英国のBT兵器適正の高い候補生がテストしてるそうだが…あまり芳しくないようだな?
ロートル:うむ、制御中…とくに攻撃時はそれに集中しないとダメなようだ
ダルマ:となると馨ちゃんでは扱いきれない可能性が高いな
ガンテツ:まるで唐突にドラ○―ンを装備したスト○リの如き酷評を浴びる可能性が有る
一同:ざわ…ざわ…
トンプ:ぐぬぬ
議長:うむサ○ビーへの夢は膨らむが、まだ現実的な所には至っていないと言える。
ロートル:そもそも当社預かりのコアは2個、両方とも開発室に占有されていますからな
SYS:>YUDAさまがログインされました、拍手でお出迎え下さい
YUDA:それに関しましてご注進が
議長:おおYUDA君、大丈夫かね?
YUDA:大丈夫です、ごく普通に仕事をしている振りをしていますので
トンプ:さすがは同志YUDA、潜入工作中に会議に参加とは
YUDA:いえそれ程でも、実は彗星のパスコードを室長が馨さんに送ったようです、なし崩し的に彗星を専用機にして我々の計画を潰す算段のようで
議長:ありうる手だ
ダルマ:なんて狡猾な…
ロートル:だが彗星とて、当社の技術の結晶とも言える機体だ、パッケージをインスコすれば第三世代機にだって遅れはとらんぞ?
議長:同志ロートルの気持ちは判るが、やはり彗星は設計思想が第二世代機の枠を超えていないのは事実だ
ザンファ:そもそも現状彗星のパッケージはどこまで完成しているのです?
ガンテツ:07、08、09はいつでも使える状態だな、プランとしては16と18も問題は無い
ダルマ:見事に実弾兵装に偏ってますね…
議長:07と08は前任の操縦者が白兵大好きっ娘で、速攻で作らされたなぁ
トンプ:シャ○的には14は大事でしょう、開発は遅れているのですか?
ガンテツ:やはりビーム兵器が問題だ、第二世代機の泣き所だな
ロートル:まずは彗星の14なり15のパッケージ完成を優先させてはどうだろう?
ダルマ:いえやはりエネルギー兵器を使うのでしたら、第三世代相当の本体を用意するべきです、発展性が
トンプ:折角の新型で14というのは、少し悲しいですよ、やはり!せめて100でないと!
ザンファ:落ち着け同志トンプ、100ではISとしては精々ビームライフルくらいしか見所が無いぞ
ガンテツ:可変機構搭載しようとしての失敗作だからなぁ…
ザンファ:ファ○ネルが難しいのでしたら、シナ○ジュでどうでしょう?
議長:福○は好かん
ロートル:議長の原理主義には困ったものだ…
トンプ:可変機というのはどうでしょうかね?
ダルマ:展開装甲か、それでは第四世代機相当の機体になる、到底無理だ
ザンファ:機動特化なら部分的な再現はいけるのでは?白式とやらのデータを見るに、いけそうですよ?
一同:侃々諤々

 どうせならガン○ムを!
 己連邦の犬め!
 そもそもびゃくしきとかつける倉持がいけない、IMEの第一変換は百式だぞ!
 ATOKつかえよ
 あーだこーだ、あーだこーだ

 脱線しつつも議論は白熱し。誰も一言も発していないのに、部屋に熱気が篭る。
 その時だった
 バン!とドアが開け放たれ、光が部屋に差し込む。
 すわ手入れ!と全員がまずチャットのログを消しに掛かるが。
 だが…
 なだれ込んだ女子社員が暗幕を開け放つと、その場の全員が、たいしてまぶしくも無いくせに

「目がぁ!」

 と悶絶する、悲しいオタクの性だ…
 その隙に女子社員達が端末を押収する。
 男達のキモイ悲鳴が部屋に響く。

「はいはい、いい年こいた大人が馬鹿みたいなことしてないのよ」
「夜子さん!」「副社長!」「室長!」
「くえぇぇぇ」
「ちょ!長老!てか常務!しっかりしてください!あれは奥さんではありません!」

 誰か救急車!担架を、いやAEDが先だ!
 常務!常務!気を確かに!
 などと阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられる。
 誰も彼もが一流の技術者だというのに、この馬鹿共は
 と青筋をおったてつつ、夜子は議長と書かれた覆面を被っている男に歩み寄る。

「ねぇあなた」
「なんだね?私はただの議長であって社長ではないぞ」

 ネクタイをぐいっとひっぱると議長がキュウと悲鳴を上げる。

「大事な話があるから、ちょっとこい」

 ずるずると引きずられていく議長…というか社長を、死地へ向かう兵士を見送るように、男共は最敬礼…
 おいおい。








「…なるほど」


 土曜の午後、アリーナでの自主練習、一夏と愉快な仲間達(別名一夏のハーレム)に加わった新たな仲間、シャルル・デュノアくんが、一夏にIS戦闘、射撃についてレクチャーしている。
 よっぽど判りやすかったのだろう、一夏がしきりに感心している。
 私は、白式に取り付いて、ペコペコとデータ取り、相変わらず燃費が悪い子だなこの子は。
 で面白くないのは自称“一夏の専属コーチ”のお三方。
 箒さん、鈴ちゃん、セシリアさんである。
 いずれも劣らぬ花の乙女。
 セシリアさんは、自分でも薔薇といっていたが、正直薔薇というには棘が足りない気もする、まぁ華やかな美貌なのは事実だけんど。
 箒さんは、凛としたたたずまいは、紅梅を思わせる。ただ梅というには少し色気が足りない。身体はエッチィんだけどねぇ
 鈴ちゃんの溢れんばかりの生命力と陽性の魅力は、やはり向日葵だろう。うむこれは我ながら上手い例えだと思う。

とはいえ…

「ふん。私のアドバイスをちゃんと聞かないからだ」

 『こう、ずばー、がきん、どかっ!という感じだ』のどこがアドバイスですか?箒さん

「あんなにわかりやすく教えてやったのに、なによ」

 『なんとなくわかるでしょ?感覚よ感覚。…はぁ?なんでわかんないのよバカ』

 何一つ教えてませんよね?鈴ちゃん?

「わたくしの理路整然とした説明の何が不満だというのかしら」

『防御の時は(長いので略)』

 私としてはセシリアさんの説明が一番理解できますが、一夏には無理ですね。

「OK一夏、調整終了、多少は加速で使うエネルギーの効率良くなったはず」
「お、サンキュ馨」
「嶋野さんは調整凄く上手だね、本職の人みたい」
「これでも整備科志望だからね、これくらいはチョロイよ。白式は初期設定が、絶妙のバランスでね、大幅にいじくれなて詰んない」
「おい」
「なにもしてないって、安心しなよ、さてシャルル先生はどうする?」
「あ、いや僕は自分でするから」

 あーやっぱ避けられてるねぇ。
 まぁいいけどさ。

「さて、じゃぁセシリアさんのブルー・ティアーズを見てこようかな!」
「結構です」
「…鈴ちゃん?」
「間に合ってるわ」
「ほ、箒さぁん」
「私のは専用機ではない」

 …なんか扱いが酷い。
 いいもん、自分の機体いじるもん。
 昨日の放課後帰ってきた箒星は、まだコンテナの中だ、別に急ぐでもないから、放置してあるんだよね。
 さてどんなことになってるやら。
 義父さんの「いい仕事をしたと思う!」っていう笑顔のメールがちょっとキモイよ
 どんなトンでも機体になってるんだろ…



(/ロ゜)/



「ちょっと可哀想ですわね」

 捨てられた子犬のような風情でとぼとぼとアリーナを去って行く馨。
 その様子にセシリアはちょっとバツが悪そうに言う。
 しかし

「だってあいつ一夏をひっぱたいた子と仲良くしてんのよ、少し灸を据えてやら無いと」
「まったくだ」

 シャルルと同時に転校してきたドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデウィッヒ。
 初日に一夏をひっぱたいた、という話しは、全校生徒に広まっており、ラウラに構う生徒はいない。
 だが、ただ一人、ルームメイトになったという馨が、嬉々としてラウラの世話を焼く姿が、あちこちで目撃されている。

「まったく、ちょっと可愛い子だとすぐにチヤホヤするんだから!」

 なんとなく妹ポジションを奪われたようで悔しい、けどそんなこと絶対に認めたく無い鈴。

「あの不埒物め…」

 ある意味においては、自分よりも一夏に親しい位置にいるはずの馨が、その一夏を殴った者と親しくしているのが気に入らない箒。

「ええ…まぁそうなんですけど」

 実はあまり馨と接点が無い無いため、そこまで感情的になれないセシリア。

「あれ?馨は?」
「知らないわよ」
「知らん」
「え、あの箒星の整備にいかれましたわ」
「なんで二人とも機嫌悪いんだ?また馨がなんかしたのか?」
「「うるさい!バカ!」」

 すごすご引き下がり、ああシャルルはいいなぁという顔をして、余計に怒りの炎に油を注ぐ一夏。

「むかつく…一夏!模擬戦よ!模擬戦!」
「うぇ!なんだよいきなり、今シャルルに射撃の訓練を…」
「お前は下手に鉄砲など覚えるより、まず剣の道を究める努力をするべきだ!私が稽古をつけてやる!」
「いや、だからそのためにまず射撃の…」

 たじたじになる一夏、そこでいきなりアリーナ内がざわつきはじめる。

「ねぇ、ちょっとアレ…」
「ウソッ!ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国でトライアル段階だってきいたけど…」
「エスコートしてる機体何?どこの専用機?」

 そんな声につられ、一夏達もそちらに目を向ける。
 そこに居たのは、もう一人の転校生、ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデウィッヒだった。
 漆黒の機体を身に纏い、傲岸不遜を絵に描いたような表情で周囲を睥睨している。
 その横に付き従うようにもう一機ISが居た。
 見たこともない機体だった。
 学園の訓練機では無い、だがこの場にはいない残り数名の専用機とも違う。
 しかし一夏は、その鮮やかな赤に見覚えがあった。

「馨?」
『はぁい一夏、どうかな?箒星のニューボディは』
「ガン○ムじゃねぇか!」

 一夏は全力でつっこんだ。



(/ロ゜)/キャスバルセンヨウカ



 箒星は様変わりしていた。
 特徴的な全身装甲が一部オミットされ、装甲のほぼ全てが丸みを帯びたものから、鋭角な物に代わっている。
 そしてモノアイ型のバイザーはツインアイ型になり。
 一本角はどこかで見たようなV字型になっている。
 どう見てもR○―78だった。
 まぁカラーはトリコロールではなくレッドとブラックなのだが。

『やぁ僕もビックリしたよ、まさかこのパターンは予想できなかったね』
「…もういいつっこむの疲れた」
「おい」

 オープンチャンネルで一夏に呼びかけてくる声、忘れもしない、転校初日に自分を罵倒した声、ラウラの声だ。

「…なんだよ」
「私と戦え」

 唐突な申し出、一夏は困惑しながらも、それを断る、戦う理由がない。だが

「貴様にはなくても私には有る」

 一夏が渋い顔をする。
 第二回モンド・グロッソ(ISの世界大会…ワールド・カップのようなものだ)。
 その決勝戦。
 優勝は確実と思われていた織斑千冬は決勝戦を棄権。
 大会二連覇を捨て、彼女は誘拐された弟…一夏を助けに向かったのだ。

 その際に情報提供を行なったドイツ軍への『借り』を返すため、千冬は一年程ドイツ軍のIS部隊で教官をしていたのだ。
 ラウラはその際の教え子であり、個人的に千冬に心酔している。
 それゆえに千冬の経歴に傷をつけた一夏が憎いのだ。

「…また今度な」
「いいじゃない、やろうよ一夏」
「「「「馨!」」」」

 重々しい雰囲気を一蹴する、馨の能天気な提案に、異口同音に皆が馨の名を呼ぶ。

「僕も箒星のテストしたいし、一夏はどっちかというと実戦で伸びるタイプだから、いいと思うけど?」
『余計なマネをするな馨』
『いいからここはこの馨さんにお任せだよ、ラウラさん』

 プライベートチャンネルで話しかけてきたラウラに馨はあっさりと返す。

「タッグマッチかチーム戦にしようか?その方が実践的だしね、僕ラウラさんについーた、一夏も好きな子指名しなよ」
「あたしと組なさいよ!一夏」
「私が組もう、なぁ一夏」
「いえ、わたくしが!」

 我先にと名乗りを上げる、三人娘。
 それを冷笑しラウラは言い放つ。

「全員で構わん、まとめて処理してやる」

 カッチーン
 という音が聞こえた。

「いい度胸じゃない…覚悟しなさいよ!」
「コテンパンにしてやろう」
「これだからドイツ人は…」
「いやさすがに四対二は卑怯だろ…」
「ねぇ一夏、僕らが勝ったら、学食のジャンボパフェ食べるの付き合ってよ、さすがにあれは一人じゃ食べ切れそうに無いし」
「ああ…あのバケツに入ってるみたいな奴か、別にいいぜ。俺らが勝ったらどうする?」
「ふふふ、織斑先生の秘蔵ショットを進呈するよ」
「お前まだ持ってたのか…」
「待て馨、それは私にくれたものとは違うものか!」
「うん」
「絶対に負けん!」

 馨がどうやってラウラを手なずけたのか、理解し、嘆息する一夏。

「(なんていうか…案外可愛いところもあるんだな)」

 そんな風に思っていると
 
「さすがに四対二というのは卑怯だな、うむ、多勢に無勢など武士の名折れだ、私が…」
「ちょっと箒!何さらっと抜け駆けしようとしてんのよ!」
「あのわたくしとしてもやはり、四対二は少し卑怯なので、よろしければそちらに移っても」
「セシリアまで!!あたしも!」

 なぜか競ってラウラチームに行こうしケンカを始める三人娘。
 明らかに「一緒にパフェ」の一言が原因である。
 その証拠に馨が悪魔のような哄笑を浮かべている「チョロイ…」と
 まったくチームワークの期待できそうに無い女子に見切りをつけ、一夏はシャルルの手を取った。

「頼むはシャルル」
「あ、うんいいよ」
「やっぱ男同士っていいな」

 なぜか少し赤くなるシャルル。

「あ、大友さん、いまの録音データどう?うんモチ肉声だよ。じゃぁアップロードお願いね、うん料金はいつもと同じくらいでいいかな?」
おい馨…
「おお、すごいすごい、見る間にダウンロード数が上がってるよ、ぼろい商売だなぁ」
何してんだてめぇはよぉぉぉぉ!
「一夏のBL的発言とシャルルくんとの妖しいツーショットは余す所無く録音&撮影してうpしてるからb(サムズアップ)
あ、謝礼はまとめて振り込むから口座番号を教え――」
しねぇっぇぇぇ!

 ブチ切れた一夏の特攻が合図で試合は始まった。



[27026] 【皆】もっと優しくして?【特に織村先生】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/04/29 04:52
 この野郎!
 自分だけなら兎も角(この辺に一夏の諦観が垣間見える)シャルルまで!
 頭に来て馨目掛けて「瞬時加速」イグニッション・ブーストを使おうとした瞬間。

『一夏!ダメだ!』

 飛び込んできたシャルルからの秘匿回線プライベート・チャンネル

【敵性ISよりロックされています、脅威度:A】

 白式が告げるロックオン警報。
 そして背筋に走った悪寒に任せるまま、大地を蹴りスラスタを点火、真上と回避する。
 刹那、俺が居た地点の地面に高エネルギー弾が着弾、爆発を起こす。

「へぇよく避けたね、少しはシャルル先生の授業を覚えていたかな?」
『落ち着いて、さっきのはブラフだよ。嶋野さんの作戦…挑発だよ』
『…くそっ馨の奴』

 例によっての精神攻撃…とにかく馨はあの手のこの手で、対戦者のメンタルを攻撃してくる。

「はいはい、一夏高度上げてね、練習してる皆さんの邪魔になるでしょう?アーユーアンダスタン?」

 イラッ
 このヘタクソな発音の英語が妙に神経に障る。

『一夏!』
「OK大丈夫だシャルル、俺は冷静だぜ」
「流れ弾が危ないから、全員射撃兵装は考えて撃つようにね」
「それだと格闘中心でこっちに有利だぜ、いいのか?」
「あんまり派手にやると担当の先生に怒られて終わっちゃうしね。ラウラさんもいいね」
「構わん、このシュヴァルツェア・レーゲンは、何処ぞの機体と違って、ちゃんと近接戦闘にも対応している」

 暗に白式おれを皮肉るラウラ。

「…千冬姉の【暮桜】だって、武装は雪片だけだったけどな」
「…貴様如きと、教官を一緒にするな」

 バチバチと俺とラウラの間に火花が散る。
 やれやれと馨が肩を竦めている、イラッ

「射撃一切禁止だとデュノアくんが不利だしねぇ」
「…ふぅん、それも挑発?」
「おやおや、どうしたんですか?王子様?何かお気に召さない点でも」

 白熱する俺とラウラとは逆に、目がまったく笑っていない笑顔を浮かべるシャルルと、ニィっと口の端を吊り上げ不敵に笑う馨
 うわ、なんか背筋がぞわっと来た、シャルルって怒らすと怖いんだな…覚えておこう。
 とりあえず高度を取らないと周囲に流れ弾で被害が出るし、火器中心のシャルルが実力を出し切れないじゃないか。

「馨手出しは無用だ、奴は…私の獲物だ」
「はいはい、サポートは任せてね」

 こちらを挟撃しようとする…というよりは突っ込んでくるラウラをフォローするように馨が動いているのだろう。
 そういえば馨が使っている武器、新型…エネルギー兵器?

【三菱重工製、荷電粒子砲<ビームライフル>:火力A 連射A 精度A】

 白式告げる武器の性能に驚愕する、セシリアのレーザーライフルに匹敵する性能だ。
 さすが国産!っと

【接近警報>>ドイツ製第三世代IS<シュヴァルツェア・レーゲン>詳細不明】

「どうした!ご自慢の武器は使わんのか!」
「余計なお世話だよ!」
「一夏!」
「おっと王子様のダンスの相手はわ・た・し☆ですよ!」

 ラウラ目掛けて放たれたシャルルの銃弾を、滑るような動きで射線に躍り出た馨が受け止める。

【SHIMANO製積層装甲シールド<三井・住友金属工業製特殊合金使用、強度AA】

 げっ全然効いてねぇ
 くそっ見た目はまるきりガ○ダムシールドじゃねぇか!
 これ見よがしにシャ○マーク入れやがって!サン○イズに許可取ったのか!

「取ってるよ?ふふ五十一口径程度じゃ無駄無駄ァ!」
「それなら!」

 シャルルが素早く武器を持ち替える、速い!あれが高速切替ラピッド・スイッチか。
 呼び出された、六十一口径アサルトカノン<ガルム>が火を…吹かなかった、あれ?

「卑怯だよ!嶋野さん」

 なんだってシャルルは…そうか!あの野郎、下方に回りこむように回避機動を取ったのか、それじゃぁ下に流れ弾が行ってしまう。

「ふふふふ『ありがとう最高の褒め言葉だよ!』はっはっはっは!」

 わざとだろう、こちらの神経を逆なでするような哄笑…心底楽しそうに馨が笑う。
 くっそーイライラする奴だな!いちいち!

「何処を見ている?貴様の相手は私だといったぞ!」

 大口径のレールカノンで俺を翻弄していたラウラが唐突に眼前に現れる、これは…瞬時加速イグニッション・ブーストか!
 シュヴァルツェア・レーゲン、黒い雨を意味するその名の通り、漆黒の装甲のIS。
 一気にこちらの間合いに…いや一歩その内側に踏み込みんできたラウラは腕部に装備されているプラズマクローを振るった。
 接近されすぎて回避は間に合わない、滑りこませた雪片弐型の鍔元で受け止める。

「いいのか?回避しなければ勝手に自滅するだけだぞ!」

 確かにそうだ、エネルギーを消滅させる「零落白夜」の効果でラウラの右腕のプラズマクローは掻き消えた、だが左腕のプラズマクローが容赦なくこちらを抉りに来る。
 空中で何度も激突しながら、切結ぶ。
 そんな中

【警告!ロックオン警報>>敵性ISよりロックオンされています】

 白式が再度のロックオン警報を発する、馬鹿なシャルルと戦闘しながら!

『別にロックオンするだけなら、そんなに手間じゃないんだよ?』

 あざ笑うような馨からの秘匿回線プライベート・チャンネル

『一夏避けて!』

 シャルルからの警告、ロックオン警報に気を取られた、意識の空隙。
 ラウラのプラズマクローが白式の装甲の無い部分に突き刺さる。
 装甲に覆われていない部分を守る為、ISの絶対防御が発動。
 おかげで軽い衝撃だけで済が、シールドエネルギーがごっそり削られる。
 それはHPが減るのと同時に、俺にとっては攻撃用のMPが減ることも意味している。
 くそっ!白式にとっては得意なはずのレンジなのに、圧倒されてしまっている。
 
【警告!ロックオン警報>>敵性ISよりロックオンされています】

 同じ手を何度も――ってうわぁ!

『上手な嘘の付き方、少し本当を混ぜる、だよ一夏…おっとと』

 ぎりぎりで回避した荷電粒子砲。あの野郎ぉ…
 シャルルが降らす弾丸の雨も、あのシールドと持ち前の機動性で凌いでいる。
 わかっちゃいたが、馨を敵に回すとやり辛いことこの上ない。
 …よし逆にちょっと冷静に成って来た。
 神経を集中させ、ラウラの動きを良く観察する、攻撃を回避、防御しながら、その癖を探る。
 …
 ここだ!
 先月のクラス対抗戦で言い放った馨のセリフ「カウンターを覚えなよ」
 攻撃の瞬間とは、ある意味最大の隙だ。
 たとえ一撃受けたとしても、まだゲームセットになる程エネルギーは減っちゃいない。
 だが「零落白夜」の特性で、相手はこのカウンターを喰らえば、甚大な被害が出る。
 ラウラの右の攻撃に合わせる形で、雪片弐型を突き出す。
 余裕の表情だったラウラの目が見開かれる、このタイミングじゃ防御も回避も間に合い――

 刹那、ラウラの表情が笑みに変わった。

 雪片弐型がラウラに当たる…その直前でぴたりと止まる。
 いや正確には、雪片弐型を突き出す俺の腕が動かない・・・・のだ。
 腕に続き、足が、胴が、全身が、見えない“何”かに拘束されていく。

「ふっ、俄覚えのカウンターなぞ、このシュヴァルツェア・レーゲンには通用しない」

 微動だにできない俺目がけて、大口径のレールカノンがゼロ距離で放たれた…

「ちいっ!」

 いや放たれそうな瞬間、ラウラが何故か回避運動に入る。
 ラウラが居た空間を四条のレーザーが切り裂く、これは…セシリアのブルー・ティアーズ!?

「セシリア、援護はありがたいんだが…ってうわぁ!」

 謎の拘束から開放された俺だが、白式の警告が画面を埋め尽くす。

【ロックオン警報>>甲龍よりロックオンされています】
【ロックオン警報>>ブルー・ティアーズよりロックオンされています】
【ロックオン警報>>シュヴァルツェア・レーゲンよりロックオンされています】

 慌てて回避運動に入る、特に鈴のIS「甲龍」の衝撃砲は眼に見えない、うかうかしているといい的だ。
 てかなんで俺が狙われてるんだ!?





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「よくも一杯食わしてくれたわね!馨、覚悟しなさいよ」
「要するに、お前ら全員倒せば、一夏とパフェということだろう?」
「コホン、箒さん、順番ですわよ順番」

 酷い理論だった。
 ラウラ&馨VS一夏&シャルルのタッグマッチに割り込みをかけたのは。
 言うまでもなく、馨の離間の索に踊らされた三人、箒、鈴、セシリアである。
 喧嘩の末、↑のような理論に至り、一致団結、三人がかりで一夏に襲いかかることにしたのだ。

 参ったのは、双方のパートナーを援護していた、馨とシャルルである。
 
「…なんか凄く冷めちゃった」
「なんとなくこうなるかなぁって思ってけどねぇ…あーあラウラさんは眼中に無しか、きっついなぁ」
「勝負は無効でいいかな?」

 右腕に五十五口径アサルトカノン「ヴェント」左腕に六十二口径連装ショットガン「レイン・オブ・サタディ」をコールしたシャルルが言う。

「まぁ、この調子じゃねぇ、てかさ…下の訓練機組の会話傍聴してごらんよ」
「え?」

「なんか勝ったら織村君とパフェが食べられるんだって!」「嘘!ホント?」「え、言う事聞いてもらえる?」「デュノア君はどうなってるの?」
「二人に勝ったら、一日自由にできるらしいよ」「さっきオルコットさん達が…」

 何か間違った情報が伝言ゲームによって拡大している。

「なんか怖いよ!嶋野さん!」
「あー最悪、これやっぱ私が怒られるのかな」
「ちょっと馨聞いてるの!」
「あ、鈴ちゃん、それどころじゃないよ」
 
 訓練機組の銃器が一斉に上空を向いた。

「リヴァイブ組、対空砲火開始!打鉄の突撃を援護しろっ!」
「「「了解!」」」
「「「ええっ!」」」

 箒、鈴、セシリアが叫ぶが、もはや遅い、雲霞のように襲って来る訓練機組をまず何とかしないと、一夏どころの話ではない。

「\(^o^)/オワタ」
「なんでバンザイしてるの!?嶋野さん!なんとかしないと!」
「ふふふ、デュノア君、こーゆー時はね『三十六計逃げるに如かず』!!」
「ちょっ!ずるいよ!」
「バイバイキーン!」

 馨は逃げ出した。


(/ロ゜)/イェイ



 五分後…
 担当教師の報告で、バカ騒ぎ聞きつけた教師陣のISが突入、既に満身創痍の参加者達を次々と制圧。
 上手く逃亡したち思われた嶋野馨だったが、逃亡中に織斑千冬えんまさまに捕捉され、あえなく御用となった。
 騒ぎの元凶となった一夏と愉快な仲間たち(笑)は全員千冬の前に引っ立てられた。

「全員まず反省文からだ…その後の覚悟はできているな?特に嶋野」
「なんでいつも僕だけ!」
「騒ぎの元凶はお前が言い出したことだろうが…お前には学習能力という物は無いのか?」
「ついカッとなってやった、今は後悔している。だが反省はしていな――」

 ゴキン
 何か危険な音と共に一撃で気絶し、引きずらていく馨、及び連行される六名。
 その背中は煤けていたと言う…






\(゜ロ\)(/ロ゜)/






 ISスーツのまま連行されたので、俺達はアリーナの更衣室に戻って着替えることになった。

「あーひでぇ目にあったな、シャルル足大丈夫か」
「うん、ちょっと痺れてるけど、なんとか」

 全員が正座の上、延々と反省文を書かされた、因みに騒ぎを拡大させた馨は実に二十枚。
 最初に一夏につっかかったラウラは十枚。
 他のメンツは巻き込まれた形の俺とシャルルですら同罪ということで五枚。
 当然四百字詰めの原稿用紙に手書きである。
 ひでぇよ千冬姉
 目の前には竹刀をもった千冬姉が延々と説教を続けてくれており、当然一切の不正は不可能だ。
 ラウラは正座が出来ないのか、当初からぶるぶる震えており、後半は虚ろな目をしてビクンビクンと痙攣していた。
 (余談だが、セシリアもぶるぶるしていた、妙に色っぽかったし、鈴は千冬姉が苦手なのでもう借りてきた猫みたいに縮こまっていた)
 一方、二十枚も書くことの無い馨は、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…と念仏のようにうわ言を呟きながら、原稿用紙にはすみませんすみませんすみません…と書き続けていた。
 軽く魂が抜け出かけてな…
 明日は日曜だが、外出許可も出ないらしい…
 なおバカ騒ぎの参加した全員に反省文が命じられたのは言うまでもない。
 恐るべし千冬姉。

「あーでもあのままだったら負けてたな」
「そうなの?」
「あいつなんか変な技を使うんだ、こっちの動きを止める、あれがあいつのISの兵装なのかね」
「…たぶんAICだね」
「AIC?」
「アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。慣性停止能力だね」
「ごめん、わからん」
「うーん、簡単には説明はできないや、部屋に帰ってからね…あと僕少し機体の整備をしたいからちょっと先にピットによってくね」
「そうなのか?じゃぁ先に着替えてるな」

 その後更衣室にやってきた山田先生と話しているこ所に、シャルルが戻ってきて…
 なぜか急に不機嫌になった。
 なぜだ?
 とにかく書類にサインをしないといけないということで、シャルルには先に部屋に戻ってもらうことになったんだよ。
 なぜあんな事になったんだろうな?

 




\(゜ロ\)(/ロ゜)/






 なんか罰として寮の食堂は禁止らしい、酷いよ…
 そして替りに用意されたのは…

「さぁ食え、今日の飯だ」

 ご飯(根っこ飯という奴だ)味噌汁(具なし)きゅうり(生一本)
 これはもはや料理と呼ぶレベルではない。

「なんですか!このてぬ――」
「また織斑先生謹製の夕飯ですか…しかしこれは酷い」
「きょ、教官が手ずから作ってくれた夕食だぞ!何を言うんだ馨!」
「ラウラさん今手抜きって――」
「黙って食え」

 ラウラさんがワキワキと愛用のナイフを探っている、反省室に入る前に取り上げられていて良かった…

「はい(刺されちゃう!)」

 せめて塩を…と呟きながら生のキュウリをゴリゴリと齧る。
 ラウラさんは何か神聖な物のようにおずおずと味噌汁に口をつける。
 僕も啜ってみた、これは

「!」
「うっ、薄い」
「馬鹿者!塩分控えめで優しい味と言え!」
「いやいや汗かく職業なんですよ僕らは――優しい味ですね」

 今にも愛用のナイフを手の甲に突き立てそうなラウラさんの視線に沈黙する馨。

「先生せめてお替りを要求します」
「無い」
「ひどい…」
「これは罰だ、わかっているのか?馬鹿共」
「ちょっと楽しく騒いだだけじゃないですか、怪我人だっていないし」
「まぁ良いデータが取れたようだな」
「乱戦のデータなんて滅多に取れませんから――はっ!」
「お前わざとやってるだろ?」
「芸人の悲しいサガといいましょうか…」



(/ロ゜)/



 ぽんぽんと会話のキャッチボールをする千冬と馨を、羨ましそうに、じっと見詰めるラウラ。
 小柄なせいで幼く見えるラウラだが、普段の鉄面皮とちがい、やたら可愛く見え、内心で千冬は微笑する。


「(しかしまぁ、あのボーデウィッヒを一週間も立たずにこうまで変えるとは、さすがは夜子さんのむす…子供だな)お前ももう少しその馬鹿な所をなんとかしてくれればな…」

 実は結構馨のことを評価している千冬だが、素直に褒めるには、馨は少々性格に問題がある。
 (あと褒めるとつけ上がりそうだった)

「酷いですよ!織村先生!もっと優しくして!もっと褒めて!プリーズ!」
「うるさいぞ馨、お前ごときが教官に優しされたり、褒められる必要はない」
「ラウラさんももっと優しくして?」

 嫉妬モードのラウラさんには聞き入られなかったそうです。
 







後書き
相変わらず難産な戦闘シーン
今回は頑張って一人称に挑戦しました…すごく微妙です。
次回、シャルル男装がばれる。中心で進みます。



[27026] 馨さんの日常【煩悩まみれ】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/05/08 14:34
(2011/05/01 誤字脱字修正、若干加筆修正
ご指摘ありがとうございました。辞書を換えたらこの有様だよ…)



ラウラさん観察日記
いちねんにくみ しまのかおる


6月某日(月曜日)

一組に転校生がやってきて、一夏の部屋から追い出された。
何故かって?その転校生のひとりが、業界で最近話題の「もう一人の男の操縦者」
デュノア社の御曹司(?→どうも婚外子らしく、この表現は微妙)、シャルル・デュノア君だったからだ。

授業中にちょっと変わったことをしたら織斑先生に散々怒られたあげく
ヘッドロックで気絶させられた、ひどい
でもちょっとおっぱいあたって幸せ。

そして私の新たなルームメイトはもう一人の転校生。
ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデウィッヒさんだ。
うむとりあえず可愛い。


(/ロ゜)/


6月某日(火曜日)

朝の寮の食堂で、ばったり織斑先生に遭遇。
朝からラウラさんは嬉しそうだ、ああ可愛い。

先生と同じメニューにこっそり挑戦するも…箸が使えず四苦八苦するラウラさんがひどく可愛い。
その様子を愛でていたら織斑先生にぶたれた、ひどい。
ラウラさんは先生の鶴の一声でスプーンに切り替え、無事朝食を終えた。


同日昼食
一組に赴き、完全にぼっち状態のラウラさんを連れ出す。
約束通り昼食を一緒に取る。
箸の訓練をするラウラさんがやっぱり可愛い。
昼は沢山取るというドイツ流らしく、かなりの量。
私も昼はかなり食べるので周囲の女子が恐怖の目付きでこちらを見ているが、気にしない。
本日の焼き魚定食は鯵の開き、実に美味。

食後に宣言通り、黒い森のさくらんぼケーキを食す。
「まぁまぁだ」などといいながら二切れも平らげるラウラさんがとても可愛い。
二人合わせて1ホール食べ、周囲の女子が(以下略)

午後の授業、満腹で居眠りしかけ、眉間にチョークがめり込んだ。ひどい



(/ロ゜)/



6月某日(水曜日)

すっかり忘れていた。
ラウラさんが言っていた「装備」が届く。
本物のMP5KやG36にちょっと興奮する。
触らせてはくれなかったので、ひと通り視姦目で堪能したところで織斑先生にチクる。

一生懸命装備の必要性を説くが、先生に怒られしゅんとするラウラさんがやたら可愛い。
帰りしな先生に叩かれる「なぜ事前に報告しなかった」とのことだ。ひどい
そもそも持ち込まれる荷物の検査体制が甘い気がします。
チクったことがばれてラウラさんに、恨みがましい目で見られる、そんな様子すら可愛い



(/ロ゜)/



6月某日(木曜日)

たまには大浴場もよかろうという気分なので、ラウラさんも誘う。
にべもなく断れるが「時々織斑先生も(以下略)」であっさり釣れる。
いそいそと準備するラウラさんが可愛い。
いつも裸で寝ているのは、制服と野戦服とISスーツ以外の服が無いせいと判明。
とりあえず肌襦袢を貸すことにする。
風呂でも眼帯は付けたままらしいが、いちいち他人の事情を詮索する野暮はしない。

大浴場はまさにパラダイス
身も心も洗われ
さらには良い目の保養である。
箒たんの生おっぱいはやはりすごい、思わず拝んだ。
他の生徒が真似し始め、箒さんに殴られた、ひどい。

先生が来るまで粘ろうとし、のぼせるラウラさん、普段の姿からは想像できない痴態に萌える、これがギャップ萌えか。
またブカブカの肌襦袢を着るラウラたんが可愛い。
のぼせてフラフラなのと裾を引きずってしまうので、持ち帰り抱っこして帰る。
「ええい離せ」とだだったこぱんちするがのぼせているので痛くない。
ああ可愛い
今日はいい一日だった。

と思ったら、のぼせるまで放っておく馬鹿があるかと織斑先生に呼び出され説教を食らう。
「可愛くてつい…てへっ」とか言ったら叩かれた。ひどい



(/ロ゜)/



6月某日(金曜日)

朝から雷を伴う大雨。
梅雨入りしたらしい。
欝だ。

昼になってもやまない。
欝だ。

放課後になってもやまない
欝だ。

夜になってもやまない、むしろひどくなってきた。
ふとんをかぶってがたがた震えていると、ラウラさんが
「なんだ雷が怖いのかガキめ」
と散々いじくった仕返しをしてきた。
反論する気力もわかない。
至近距離に雷が落ちた、我慢できずラウラさんに抱きつきがたがた震える。
殴られるかともおもったけど、結局ラウラさんは一緒に寝てくれて、朝まで手を握っていてくれた。
正直すごく助かった。







\(゜ロ\)(/ロ゜)/






 まったくこれは謎の生き物だな。
 
 嶋野馨 年齢16歳(中学一年を病気で休学→留年)
 IS用パーツメーカーSHIMANO所属テストパイロット。
 同社社長夫妻の養子。
 中学校時代、学園の入試成績ともに優秀。こと知識面では学年でもトップ10に入り、上級生にもひけを取らず。
 実技では、ISの適正自体はそれほど高くは無いが。先日の演習、及び先月のクラス対抗戦での戦闘記録を見る限りでは、一学年の中でも優秀な部類に分類される。
 本国の分析官によればISの特性を引き出すのが得意なタイプ・・・か。
 ただし、三年前(丁度入院した時期)より以前の経歴に細工の形跡が見られる、とのこと。
 詳細は人員を現地に投入する必要有、何を大げさな・・・

 今私のベッドに潜り込み、私の手を握ってぶるぶる震えている謎の生き物。
 調査によると、実の両親は大雨が原因の土砂崩れで死亡・・・
 先日大浴場に案内してくれた際、遠目にはわからないだろうが、上気した肌にうっすら浮かび上がってきた、腹部の大きな傷痕。
 あれから私は大浴場に毎日行っているが、こいつは一度も入っていない。
 アレを見られるのが嫌なのだろう。
 トラウマか・・・難儀な話だな。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/

 





 今ありのままに起こったことを話すぜ。
 ルームメイトがシャワーに入っていて、ボディシャンプーが切れているから持って行ってあげたんだ・・・
 同時にルームメイトがシャワールームを出て、洗面所でばったり顔があったんだよ。
 まぁ普通なら男同士だし、笑って済ますよな?な?
 でもよ、そしたらルームメイトが「きゃっ」って言って。
 しかもなお・・・胸があったんだよ
 いやそのバスト的な意味でな?
 おかしいよな?
 俺のルームメイトは男だった・・・はずだよな?

 シャワールームから出てきたルームメイト・・・シャルル・デュノアは今どう見ても女の子にしか見えない。
 ジャージの上から、その・・・膨らみが自己主張してるんだ・・・
 当然、会話は一切無し。
 あれから十五分、嫌な沈黙が部屋を支配している。

「ひっ!」

 唐突にシャルル・・・女の子なのにシャルルっていうのも変だが・・・が悲鳴を上げる。
 何事!とシャルルの視線の方向に顔を向けると――

「何やってんだ!お前はよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 俺のベッドの下から顔を半分出した馨がこちらをじーっと見ていた。
 どこの隙間女だお前は!こえーよ!

「ベッドの下にいるのは斧を持った男の方だよ一夏」

 んなこたぁどーでもいいわぁ!

「し、嶋野さん、いったいいつから・・・」
「あなたが部屋に帰ってくる前から」

 まて、まず鍵はどーした。

「ここ元僕の部屋じゃん、キーは持ってるよ?」
「返せよ!」
「えー、色々便利だからヤダ」

 ヤダじゃねぇぇぇぇ!
 だいたい何で俺のベッドの下にいるんだよお前はよぉぉぉぉぉぉぉ!!

「まぁそれはともかくとして」

 ともかくじゃねぇぇぇ!大事なことだぁぁぁ!

「うるさいよ一夏、しかしよりにもよって一夏にバレちゃったねぇデュノアさん」
「嶋野さん、まさか・・・」
「あ、うん気がついてたよ」

 な、なんだと・・・?

「いつから!」
「まず君の転校前から疑っていたこと、実際に会ってみて、二日目の放課後には確信したよん」

 そう言って、馨は端末を起動、あるサイトを俺たちに見せる。

「ネットのアングラ界隈ではね、デュノア社のテストパイロットの話は結構話題だったんだよ、二人目の男のパイロットってことでね」
「ひっ!」

 シャルルが息を飲む。
 無理もない、ISスーツに身を包んだシャルルの画像がいくつもアップされている。

「まー大別すると『こんな可愛い子が女の子のハズがない』っていうコアな層と、
『こんな可愛い子は男の娘に決まっている』というアレな層、
『いやどう見ても男装女子だろJK』という層が、意見を日夜戦わせていた訳のよ」
「…なにそれ怖い」

 気持ちはわかるぞシャルル。
 もうやだこの国…

「ちなみに僕は『女子だろJK』派ね」

 ああ、それはなんとなくわかるわ。

「でまぁ会ってみてすぐわかったよ」
「な、なんで?」
「匂い」
「ひぃ!」

 馨の変態的な告白にシャルルが恐怖のあまり俺にひっつく
 ちょ!気持ちはわかるがシャルルさん・・・その胸が当たっているのですが・・・
 う、たしかにこれは女子の匂いだ、甘いというか、なんというか・・・
 そのことに気がついたシャルルが非難を込めた視線で俺を見る

「…一夏のえっち」

 え?俺が悪いの?
 おかしい、シャルルはこんな不条理で理不尽なこと(俺の周囲の女子が良く言う事)言わないのに・・・

「一夏のえっち!いいね!今のセリフ、めっちゃ萌えたよ!」
「嶋野さんの変態…」
「うはぁ!」

 なぜか悶絶してベッドでごろごろ転がる馨、おいそっちはシャルルのベッドだぞ、やめろ

「あーいいもの聞けたし(録音もしたし)、帰るね」
「し、嶋野さん!」
「別に誰かに言いふらしたりはしないから」

 こともなげにそう言う馨に、シャルルは納得がいないようだ。

「どうして?」
「僕が一夏の友達だからかな、じゃぁねー」
 
 そう言って馨は帰っていった。
 まぁ確かにあいつはそんなことしないだろうな・・・

「あいつもちょっと事情が有るんだよ、俺からは言えないけど」
「そう・・・なんだ」

 その後、馨のおかげか、すこしあの気まずい空気は消え。
 シャルルは事情を話し始めてくれた…






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「いやはや、一夏のラッキースケベぢからを考えると、そう遠くはないと思ったけど、やはりか」
「馨ちゃん?」

 この後の展開を想像してにやにやしながら自室へ戻る途中。
 知り合いの子に声をかけられた。

「おや簪たん」
「たんはやめて…恥ずかしい」
「はは、ごめんごめん、ついね。どうだった最新話?」
「面白かった…いつも録画データ…ありがとう」

 返す、といって差し出されたディスクを受け取る。
 昭和に流行った某ヒーローアニメのリメイク版の動画データである。
 賛否両論含めて、今話題のアニメである。 

「気にしないでいいよー」

 四組の更識簪ちゃん、日本の代表候補生。
 にして同好の士である。
 寮内では見れない番組(有料チャンネル)で放送している番組を中心にシェアしてるのだ。
 まぁ録画と編集は実家の兄貴に任せているのだが。
 簪たんのおうちはお固いから、無理なんだとか、やれやれ前時代的な。

「馨ちゃんが見た後でも…いいのに…」
「自分は二話纏めて見る派だから気にしないでいいよ。それより例の話、考えなおしてみる気は?」
「ううん…自分で完成させたいから、でもデータは…そのありがとう、すごく参考になる」

 彼女の専用機【打鉄二弐式】の開発を担当していた倉持技研だが、現在は一夏の【白式】に人員を割いて、未完成のまま放置なのだ。
 酷い話だ、技術者としてあり得ない話だが、どうも上からの命令らしい。
 あそこの経営陣はロクでもないことで有名だからなぁ。
 この話を義母さんにしたところ、是非うちシマノで面倒を見たい、と言い出した。
 だが、簪ちゃんは色々思うところがあるのか、自分で機体を完成させたい、とこのオファーを断っている。
 多少でも助けになるだろうということで、一夏の白式のデータを(無断で)簪ちゃんにあげたり(同じ開発室だから色々参考になるそうだ)と色々支援しているのだ。
 なにせ貴重な同好の士ですからね。

「まぁ無理強いはしないけど、やっぱりプロに一度見てもらうのは大事だよ?
 未完成機をほっぽって、モルモットに夢中な会社のことなら気にしなくても大丈夫だから」

 うちの副社長かあさんが嬉々として手を回してくれるはずだ。

「うん、でも…」
「OK、必要な時は何時でも言って、怪我しないようにね」

 そう言って別れる、アニメの話題だと素直なのに、ISの事は頑固だなぁ。
 でもこのままじゃ月末のトーナメント参加は覚束無いし、夏の臨海学校も欠席しそうだな…
 うーむ簪たんの水着姿をファインダーに収めるためにも…ここは一つ、色々手を回しますかね。
 くっくっく
 悪く思わないでね簪たん、素直にうんと言わない貴方が悪いのよ?

「あら、嶋野さん」

 む、簪ちゃんが頑固な元凶だ。

「これは生徒会長、ご機嫌麗しく、今日も素敵なおっぱいですね」
「君は本当にブレないね、人間としての軸はブレブレだけど」
「ありがとうございます、最高の褒め言葉ですわ、おほほほほ」

 ばちばちと僕と生徒会長…簪ちゃんのお姉さんの間に火花が散る。
 簪ちゃんのこともあるが、若干キャラかぶってんだよね、いわゆる同属嫌悪って奴?

「…あの子に妙なことしたら、ただじゃ済まないよ?」
「合意の上でしたら問題はないはずですわ、お・ね・え・さ・ま」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
 というJ○J○(伏字になってないぞ?)バリの擬音が会長の後ろに見える。
 負けん!
 見える!僕にもスタ○ドが――

「寮の廊下で殺気を飛ばすな馬鹿共!」

 バシン!バシン!

「先生…私にも会長としての威厳が」
「知るか、下級生をいじめている暇があったら仕事をしろ」 
「ううう、最近毎日のように先生に叩かれる気がする」
「お前が何かと問題を起こすからだ、見ろ」

 おお遠巻きに寮の皆がこっちを見て怯えている。
 会長の殺気のせいですね、わかります。
 さすがに織斑先生相手ではさしもの会長も分が悪いのか、すごすごと退散する
 やーい!ざま――バシン

「いちいち挑発するな」
「これはあれですか?好きな子程苛めちゃうって奴で――」

 ギリッ!
 ああ!アイアンクロー
 先生!せめてヘッドロックで!
 それならおっぱいが当たってしあわ――
 あー!頭蓋骨が!
 頭蓋骨がミシミシいってます!
 もうこのネタ二度目ぇ!





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







 気絶したまま自室へ放りこまれ。
 意識が戻った後もラウラさんに

「教官の手を煩わせるな馬鹿者」

 と罵られる…ううっ酷い。
 鈴ちゃんはラウラさんと仲良くしているせいで最近いつもいじわるだし。
 箒さんも以下同文――というか意地悪通り越してる気がする。
 セシリアさんはなんか接点がない――
 シャルルさんには完全に変態扱いだし。
 嗚呼
 もう僕には簪たんしか優しくしてくれる女子がいないよ…

(注:50%くらいは自業自得です)




後書き
前々シャルさん中心じゃなかった件
やはりシャルは一夏の嫁だからか・・・
あと前半のラウラさんネタは
今月号のコミックアライブへのリスペクトからくるオマージュです。
けしてパクリでは・・・ないよ?
あの四コマは秀逸すぎる・・・ええい単行本はまだか!



[27026] お節介はトラブルの素
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/05/08 16:29
(加筆修正しました)


 日曜日
 昨日の騒ぎのせいで外出禁止を言い渡されたので、部屋でゴロ寝しながら論文でも読もうと思っていたのですよ。

「馨、アリーナに行く、付き合え」

 えー、自主練ですか?ラウラさん
 めんどくさ…
 うっ、なんですかその可愛く不貞腐れたような表情は!
 本人はただジトーっと睨んでるつもりかもしれないけど、美少女はあんな表情でも可愛いって得だよねっ!

 仕方ないのでお供することにした。
 
「今日は邪魔をするなよ」
「なんのことです」

 アリーナへ向かう道すがら、唐突にそう言う、ラウラさん。
 とりあえずすっとぼけて見る。

「昨日の、織斑一夏と戦おうとした私へのお節介のことだ」

 ありゃ、ばれてるんだ。

「織斑先生からラウラさんのこと頼まれてますからね」

 あの場には鈴ちゃん、箒さん、セシリアさん、さらにシャルルさんが居た。
 一夏にケンカをふっかければ、大騒ぎになるのは目に見えていたんだもん。

「なんだってラウラさんはそんなに一夏のこと目の敵にするんです?」
「奴の存在が許せんからだ」

 全否定ですか。

「だから理由は?」 
「奴が教官の経歴に傷をつけたからだ」

 経歴に傷?
 …ああ第二回モンド・グロッソ、決勝戦棄権のことか。
 圧倒的な強さで決勝に駒を進め、大会二連覇は確実、と言われていた日本代表の不戦敗。
 あれには一夏が関係してるんだ、へー。

「やっぱり織斑先生はすごいねぇ」
「話が繋がらんぞ」
「詳しい事情は知らないけど、先生は一夏の為に国家を代表して出ていた試合を蹴ったわけでしょ?
 ラウラさんは軍人さんだから余計かもしれないけど…できる?」

 ラウラさんがショックを受けた様子で黙りこむ。
 まぁできないよね
 第二回モンド・グロッソともなれば、ISも世間にすっかり浸透し、国民の期待(と国の威信)が掛かっている。
 一夏がどう関わったのかは知らないけど、普通棄権などできない。
 実際直後の世論は大荒れだった。
 新聞、雑誌、テレビによる連日の偏向報道。
 そういえば(事情を知っていただろう)義母さんの機嫌が悪くて、めちゃめちゃ怖かったな…

「その一件で一番辛かったのは、一夏だよ?自分のせいで大好きなお姉ちゃんが――」
「うるさい」

 あらあら

「まぁ織斑先生の『勁さ』って、案外そーゆーところが根っこに有るのかもね」

 誰かを守る為の強さ。
 あのアンノウンとの戦闘で見せた一夏の力は、やはりそんな織斑先生の背中を見てそだったからなのかな?
 
「…」

 なんかラウラさんがフリーズしてる、どうも思考がオーバーフローしたみたいだ。

「案外ラウラさんと一夏は仲良くなれると思うよ」
「ありえん」
「そう?だって二人とも織斑先生のこと大好きじゃない」
「ぐ…」

 ちなみに、こっそり一夏に連絡したので、無用なトラブルも起きず、日曜日は平和に過ぎて言った。
 やれやれ。


 放課後、いそいそと帰り支度をしていると、鈴ちゃんに捕まった。

「鈴ちゃん、耳がちぎれちゃう!ひっぱらないで!」

 身長差の関係で非常に痛いのですが!

「チビで貧相で悪かったわね!」

 そこまで言ってませんから!だから耳を引っ張らんでください!
 あと自虐ネタは苦し、イタタタ!

「いいからアリーナで模擬戦するわよ!トーナメントまでもう時間ないんだから!」

 うう、ようやく離してくれた、ちぎれるかとオモタ…

「前々から言っていますが、私は整備科志望なので、あまり操縦者としての評価には興味がないのです」
「あんたのことはどうでもいいわ!」

 ひどい(;;)

「あたしはどーしても!トーナメントで優勝する必要が有るのよ!」

 はいはい例の件ね…まったく誰が言いふらしたんだ、すっかり間違った情報として流通してるよ。
 ま、面白そうだから、訂正の情報操作はしてないけど…

「はぁ…昼休みに量子変換インストールしたパッケージの調整してから行くから、十分くらい遅れてもいい?」
「逃げたら承知ししないわよ、わかってるわね!」

 八つ裂きですか?
 とほほ
 今日中に読んでおきたい論文有ったのに、徹夜かしら。

「だいたい、模擬戦なら一夏を誘えば良いではないですか、ただでさえ鈴ちゃんは二組で色々不利なのですから」
「それができたら苦労は無いわよ!最近はずーっとデュノアとべたべたして、男同士でもうっ!」

 あはは、これはシャルルさんが女だとばれたら血の雨が降るな、おっぱいも結構あったし…
 あれはコルセットか何かで絞めつけてるんだろうか?
 苦しくないんだろうか?
 あんまり体に良くないよね。







\(゜ロ\)(/ロ゜)/








 専用機ではない箒星は、学園の格納庫の一角を専用のコンテナ(三重ロック)ごと占領している。
 かなり邪魔臭いですが、まぁ…ごめんなさい。
 パスコードを入力しコンテナをオープン。
 外部コンソールで箒星のロックを解除し、状態をチェック、よし悪戯はされてないみたいだな。
 あまり遅くなると鈴ちゃんのご機嫌が斜めなので、急いで台車にのせ、整備ルームへ。

「そぉい!!」

 普通女の子一人で運ぶもんじゃないんですけどね!
 …
 微調整を終え、今度はピットへの搬入口に載せるのに四苦八苦していると、ばたばたと通路を女子の集団が走っていく。
 皆さん通路を走ってはいけませんぞ。

「第三アリーナで代表候補生がガチバトルだって!」
「誰と誰?」
「例のドイツの子に、中国と英国の子がふるぼっこにされてるって!」

 うぇ…
 とか言ってる場合じゃ無い、急がないとまずそうだ
 ちょ!誰か手伝ってー!!



(/ロ゜)/シリアス?



 なんとかピットへの搬入し、急いで箒星を装着する。
 ハイパーセンサーでアリーナを探れば、うわまずいな、鈴ちゃんとセシリアさんにげてー!

【システムオールグリーン 「箒星」起動します】

 くそ、試しに量子変換インストールしたパッケージ、ラウラさんとは相性悪そうだ。

【機動砲戦パッケージ「三連星みつらぼし」稼働効率100% 装甲色を変更します】

 いちいち仕事が細かいよね…これどうやって装甲色変更してるんだろう?P○装甲?んなわけないか。
 与太話へのセルフつっこみは置いておいて、スラスタをふかしアリーナへと飛び出す。
 火器によって灼かれた大気のオゾン臭が鼻をつく。
 
 丁度セシリアさんが自爆寸前のゼロ距離ミサイル攻撃を敢行…
 駄目だ、やっぱり効いてない!
 地面に転倒している鈴ちゃんを蹴り飛ばし、セシリアさんにお返しとばかりに、レールカノンのゼロ距離砲撃。
 吹き飛ばされた二人めがけて、肩から有線サイ○ミュ…ではなくワイヤーブレードが射出された。
 ラウラさん、やり過ぎだよ!

 スラスタに命令を送り込む。
 一度放出したエネルギーを再度スラスタ内部へと飛び込み、圧縮、放射。
 いわゆるひとつの瞬時加速イグニッション・ブースト
 急加速でラウラさんに接近、三連星のメインウェポンであるマルチランチャーをぶっ放す。

「無駄だ」

 まぁそうでしょう。
 砲弾は空中で、静止する。
 それで止められるのは折込済みです。

「ブレイク!」

 撃ち出したのは“ただ”の砲弾ではない。
 ハイパーセンサー対応のスタングレネード弾だ。(一発…すごく高いです…)
 強烈なノイズを撒き散らし、ハイパーセンサーはもとより、それによって増幅されている操縦者の感覚へと攻撃を行う特殊弾頭。
 防護処理のされている三連星でさえ、鋭い頭痛と軽いめまいを覚える。
 そんなのをまともに至近距離で食らうとどうなるか。
 あるアメリカ人は言った「脳がフライにされたかと思ったぜ!」
 まぁつまりそれだけキツイということだ。
 ラウラさんが悶絶している、今のうちに二人を安全な所へ…
 うげ
 スタングレネードで鈴ちゃんとセシリアさんも気絶してしまった、うわー思ったよりダメージがでかかったんだ、やべー。
 慌てて、ワイヤーを切り裂いて、気絶してる二人を抱えて(セシリアさんのっぱいが当たるように抱えるのをもちろんだ、緊急事態だからね!)
 一路ピットへ向かう。
 気絶したお陰でISが解除されたので、機体ごと抱えるより楽だけど…
 あんまり加速すると生身の二人が持たない、あーヤバイヤバイ。
 低速飛行で、ピットへ退散、予め途中で捕まえたのほほんさん以下三名がピットに向かってくれているはずだから

【警告:ロックオン<シュヴァルツェア・レーゲン】
  
 もう回復したの!?
 ドイツの科学力は世界いちぃぃぃぃ!だから?

【レールカノン装填、回避してください】

 無理です。
 抱えている二人を庇うため、飛来したレールカノンの砲弾をモロに食らう。
 シールドエネルギーがごっそりと削られた。

【警告:ワイヤーブレードが接近しています、着弾まであと2秒です】

 ごめんね二人とも。
 瞬間的に3Gくらい入るかもだけど、宇宙飛行士の大気圏突破とか大気圏突入(10G)に比べれば可愛いものだから!
 加速開始。
 ピットまであと10m,5m、だめだ間に合わない!
 やむなく二人をピットへ向けて放り投げ、全力加速フルブースト、華麗にクイックターン!

「むぎゃー!」

 ナイスクッション!のほほんさん! 
 ワイヤーブレードをなんとか回避…ぎゃー足掴まれたー!
 そのまま地面に叩きつけられ、またまたシールドエネルギーが!
 巻き上げられるワイヤーによって少しずつラウラさんの方へ引きづらていく。
 必死にもがいて抵抗するが、やば箒星の挙動がおかしい。
 ここは口プロレスで!

「あの、緊縛プレイはちょっと…」

 場を和ませる軽いジョークを、まったく聞いていない、怒り心頭のラウラさんが居た。
 うわー涙ぼろぼろ流してる、催涙効果もあるのか…いっそ気絶出来れば楽だろうに。

「よくもやってくれたなズビ…馨、覚悟は出来ているな?」
「鼻水出てますよ」
「死ね」

 やべ、体が動かない!
 嘘!AICの射程こんなに長いの!?怒りのパァワァ?そんなバナナ!
 あーラウラさん、話し合いましょう?暴力は何も生みません。
 ラブアンドピース!!

「却下だ」

 あわわわ
 ガチャンとリボルバー式の大型レールカノンが装填される音が、死刑宣告のように響く。

「それくらいにしとけよ」

 おお!一夏さんが現れた!
 純白の白式が天使のように見える日が来るなんて!

「大丈夫?馨さん」

 シャルル(結局本名は教えてくれなかった、いけず)さんは本当に天使のように見える。
 
「土曜の続き、するか?」

 ラウラさんが悔しそうな顔をする、シュヴァルツェア・レーゲンが強機体とはいえ、エネルギーには限りがあるし。
 平気な顔こそしているがスタングレネードの影響はまだあるはず。

『その辺にしておけ馬鹿共、アリーナは専用機持ちの遊技場ではないぞ』

 放送が入る、織斑先生だ。
 ラウラさんが黙って踵を返す。 
 ただ秘匿回線プライベート・チャンネル

『続きは寮に帰ってからだ…』

 とメッセージが来た。
 うわぁぁぁん!こわいよぉぉぉ!

 ねぇ一夏、今夜は部屋に帰りたくないんだ…
 泊めて?

「却下」

 友達じゃなかったのかよ!
 




              ダメタコリャ\(゜ロ\)(/ロ゜)/シリアスナシカw






 医務室に担ぎ込まれた、鈴ちゃん、セシリアさんは治療を受け、まぁ命に別状は無いそうだ。
 目が覚めてまずしょっぱなに二人に怒られました。

「なんで怒るの?」
「よりにもよってハイパーセンサー用のスタングレネードなんて使うからだと思うよ」

 シャルル先生のつっこみ!
 うっ…

「そうよ!あんたのとばっちりであたしもひどい目にあったんだから!まだ目がチカチカするのよ!」

 今度なんか奢んなさいよね!と鈴ちゃんがのたまう。

「そうですわ!私も怪我より、頭痛の方が深刻でしてよ!馨さん」

 この埋め合わせは高くつきましてよ!ってあんたこんなかでは一番金持ちの癖に何言ってのさ!

「酷い…酷過ぎる…僕が助けに行かなければ、ラウラさんに酷い目に遭わされたんだよ!」
「何よ!あそこから逆転するところだったんだから!」
 
 いやいやいや

「そうですわ!あのまま続けていれば、かならず私が勝っていましたわ」

 …もう好きにして。

「お前らなぁ…まぁ怪我は無いんだろ?よかったな」
「良くないわよ!バカ!」
「そうですわ!何故わたくしたちが…一夏さんのおバカ!」

 恋する乙女は大変だねぇ。

「でも真面目な話、AICは厄介だよ、特に鈴ちゃんの甲龍は相性最悪だね」
「う゛…」

グーしかだせないジャンケンみたいなものだ。

「アクティブ・イナーシャル・キャンセラーか…雪片なら切り裂くことはできるんだよな」

 へぇ一夏の癖に良く予習してるな、シャルル先生の教育の賜物か。
 きょう…いく
 金髪女教師のいけない授業…いかんエロイ

「馨さん?」←若干目が怖いですシャルルさん

 いえなんでもありませんよ?
 なぜバレるんだ。
 しかしこの子あれだ静かに深く怒るタイプだ、こーゆーのが一番ヤバイんだよ、いきなりナイフでズドッって刺すタイプね。
 で貴方を殺して私も死ぬー!的な

「馨さん」

 ひっ!レ、レイプ目!

「すみません」

 なんで僕の考えてること分かるんだろう?

「まぁエネルギーの一種だから零落白夜で無効化はできるだろうけど…」
『一夏の場合はその雪片を振るう腕を停止させられたからねぇ、まぁ一夏の攻撃は単純だからなぁ』

 そんな話をしていると、ドドドドドドドと何か地鳴りような物が聞こえてきた。
 なんだ!王○の暴走か!
 うわ!
 ドアが吹き飛んだ!マンガみたい!
 しかも生徒の大群が医務室になだれ込んできた!何事だ!

「織斑君!」
「デュノア君!」

 うわ!ゾンビ映画みたいに二人に女子生徒が群がってる群がってる!こえぇぇぇぇぇ

 …

 騒ぎの元凶は学園が交付した今月の学年別トーナメントの試合形式の変更だ。

「何々…より実戦的な模擬戦闘を行うため二人組での参加、二人組!一夏ぁ!」
「一夏さぁん!」

 おおゾンビの群れにより強力なゾンビが投入された、これはもはや修羅場だ!

「ごめん!俺シャルルと組むから!」

 一夏が叫んだ、ほぉそれはやはりシャルルさんの為か、こんな甲斐性が一夏にあるとは…
 ああ、100%友情ですね、だめだこりゃ。

 まぁ押し寄せてきた女子は納得してくれたが、二人説得の難しいのがいるよな…

「一夏ぁ!あたしの組むのよ!幼なじみでしょ!」
「一夏さん!わたくしと組みましょう!クラスメイトですし!」

 一夏がたじたじだ…ここは一つフォローしとくか。
 ぱしぱしと端末を叩き、二人の秘匿回線プライベート・チャンネルに通信を送る。

鈴ちゃんへは
『もっと強い人と組んだほうが優勝は近いじゃない?例えばセシリアさんとか?AIC対策にはレーザー攻撃は有効だと思うよ』
「!」
セシリアさんへは
『一夏と組んでもラウラさんには勝てないですよね?その辺はセシリアさんには分かってると思いますけど。
相性は悪くとも、前線で粘り強く戦ってくれる…例えば鈴ちゃんと組んだ方が勝率は高くないですか?』
「!」
「どうしたんだ、二人とも?」
「まぁ、いいわ。そのかわり一緒に組まなかったことを後悔するくらいけちょんけちょんにしてあげるからね!」
「このセシリア・オルコットの真の実力を魅せてあげますわ!」
「お、おう…」

 チョロイなぁ…この二人は特にチョロイわ。そこらへんが可愛いんだけど。

「まぁ頑張って」
「人事みたいに言うなよ馨」
「あんまり操縦者としての評価には興味が無いんだってば、それに機体の挙動がおかしかったから検査して、結果によっては箒星での参加は無しだな」
「…なんでだ?」
「IS基礎理論の蓄積経験についての注意事項三だよ、一夏」

 シャルル先生は優秀だなぁ。
 一夏が教科書の文面を思い出し、噛みながら言い切った。おお頑張ったね。
 まぁレベルCまでいった理由じゃないから、そんなに深刻じゃないけどね。

「でも訓練機で出ればいいんじゃない?」
「それだと約数名泣いちゃう人が居るんだよねぇ」

 主に義父とその周辺の人たちが。
 あーあ。参ったなぁ




[27026] 寂しいと死ぬうさぎはメガネっ娘の夢を見るのか?
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/05/16 10:16
 泊めてくれとすがりついて懇願したというのに、一夏の奴ぅ
 まぁここで逃げても仕方ないしね
 うん「逃げちゃダメだ」いい言葉だね。
 覚悟を決めて、おそるおそる部屋のドアを開ける。
 …
 ラウラさんは、黙々と拳銃の分解整備をしていた。
 なんかもうムチとかもって待機してるかと思ってたので、少し安心して、とにかくまず謝罪する。


「あの、放課後はごめんねラウラさん」
「…」

 あれ?無反応

「ラウラさん…?」

 まったく返事もしてくれない。
 放置プレイ?いやいや冗談抜きで無視?
 誰!?ラウラさんに、これが一番キツイって教えたの誰!?
 うさぎは寂しいと死んじゃうんですよ!! 

「…」

 うう沈黙が痛い。
 駄目だ今日はもう寝よう。

「ぐすっ」

 半ベソかきながら布団にもぐる。
 メソメソと泣き言を言っていると、拳銃の整備を終えたラウラさんがこちらを向く。
 あれ…笑ってる?

「ふん、少しは反省したか?」

 日本海溝よりも深く反省しました。

「私はちゃんと寸止めするつもりだった」

 嘘ん

「他ならぬお前に信用されていないとはな、頭にきたし、がっかりしたぞ」
「…返す言葉も有りません」

 う~ずるい言い方だなぁ。
 完璧に僕が悪いみたいじゃないですか。

「まぁいい、いつまでもメソメソされると部屋が湿っぽくてかなわんからな、許してやろう」

 傲岸不遜
 そんな四文字熟語が思い浮かぶ。

「えっと、じゃぁ――」
「ただし」

 うぇ、なんでしょう?

「お前とはペアは組まんぞ」

 どぼじて?

「ペアを組んだら、貴様と戦えんだろうが」

 …えーとこれは、ラウラさんなりの褒め言葉なんですか?
 有象無象じゃなくて、戦う足る相手だと?
 …そんな高度かつひん曲ったデレはいりません。
 もっとストレートにデレてください。

「辞退するなよ、あと私と当たるまで負けるな。それで今回の件は手打ちにしてやる」

 うう、機体が直るかも微妙なのに…どうしよう、誰と出よう…



(/ロ゜)/



 クラリッサに相談したのは正解だったな。
 言った通りになったな。
 任務では優秀な副官だったが…こういったことにも通じていたとは、道理で部下に慕われているわけだ。
 こんなことならもっと早く、いろいろと話してみればよかったな。
 悔しいがこうやってクラリッサと打ち解けたのも…奴のおかげか。
 戦闘では手加減しないが、普段は少しやさしくしてやるとしよう。
 しかし、クラリッサは何故あんなに興奮していたんだ?
 酔っ払っていたようでは無かったが…






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








 翌日の放課後、修理のため里帰りする箒星と一緒に、私も呼び出された。
 うう、なんだろう事情聴取かな。
 ペアはどうするか思案中だ。
 こんなことなら鈴ちゃんとセシリアさんにあんなこと言うんじゃなかった。 
 嗚呼後悔は先に立たず。
 悪いけど箒さんたマコトちゃんじゃ、ちょっとなぁ…


「とりあえず問題は無いね、改修前のパーツを保存してあるから、その気になれば、すぐに動かせるよ」
「良かったぁ…変な挙動してたんで、コアかフレームにダメージが入ったかと思いました」
「うーん、ダメージによる一時的な物だと思うよ、検査結果は異常なし」

 この人は木場さんと言って、開発室では古株の男性社員さんだ。
 義母さんの右腕が大塚さんなら、この人は義母さんのフットワークを支えている両足、縁の下の力持ちさんでである。
 まだ自分が男だと思っていた頃、憧れた人だ(変な意味じゃなくて、技術者、研究者としてね)。

「で、わざわざ馨君に来てもらったのは、そんな説明の為じゃないんだ」
「え?」
「箒星はこのまま、本社に戻すことなったんだよ」
「えーと、それは…」
「絵里さん提案の技術力のアピールはもう十分できたと思うんだよね、旧世代機の箒星が第三世代機相手に良く頑張ったと思うよ」

 確かにそうだ、白式相手のクラス対抗戦、乱入した謎のIS相手のガチバトル。
 その後も甲龍、ブルーティアーズ相手に模擬戦も結構したしなぁ。

「元々第二世代機用パーツのテストに残してる機体だからね、これ以上の無理はもう厳しいかな、改修したのも、新型のテストだったし」

 え?新型?

「聞いてないのかい?久々に新型を組んでデモをするらしいよ、本気でね」

 うわ、義母さんたら仕掛けてきたなぁ

「次の大きな企業向けトーナメントは、七月の七夕カップ?に出るんですか」
「そこには間に合わ無いだろうけど、年末の大きな大会…オリオンカップには間に合わせるって言っていたよ」
「ほぇ…」

 新型かぁ、また義父さん達の暗躍でMSモドキの形状になるのかしら?

「で馨君には替りあれを使ってもらう」

 はい?替り?なんの話ですか?
 ウチが保有してるコアは二基、一基は箒星で、もう一基は第三世代機用のパーツテスト機
 でも今新型を組んでるだから、あれは一旦解体されてるはずで、もう予備は無いですよね?

「ああ馨さんお疲れ様です、ISスーツは持ってきてますか?無いならこちらで用意しましが」

 大塚さんが現れた。
 えっとなぜISスーツが必要なのですか?

「あっと時間が押してますね、はいこちらへ来て下さい」

 がしっと大塚さんに手を掴まれ、そのままずるずる引っ張られていく。 
 わけわかめ。


 


\(゜ロ\)(/ロ゜)/







 まぁとにかく機体の問題は解決した。
 で次はパートナーだ。
 色々考えた結果、貴方が最強の相棒だと思うのよ。
 けして消去法じゃなくってよ?

「そんなわけで、君決めた!私と組もうよ、簪ちゃん」

 一年四組所属のメガネっ娘にして、日本国代表候補生。
 更識簪ちゃん!あなたに決めた!

「嫌…かな」

 Why?
 今なんと?
 Noと言いましたか?

「このままだとラウラさんが許してくれない、ってのは説明したよね?だからお願い簪さん!私を助けると思って」
「…や」

 可愛く言っても誤魔化されないから!

「どうして?私の事嫌い?ウザイ?キモイ?」
「そうじゃないけど…弐式は…未完成だから」
「こないだ機体は目処がついたって言ったよね?」
「う…でも武器がまだ…だから馨ちゃんの力には慣れない」

 ううむ、結構めんどくさい武装積むって言ってたっけ。
 箒星みたいにコンバットプルーフの有る既製品を使えば簡単なのに…

「じゃぁ誰と組むの?のほほんさん?」
「のほほん…?誰…?」
「ああ、一夏がそう呼んでるから、つい。虚仏さんだよ」
「トーナメント…休むから」

 いやいやいや
 機体が未完成とはいえ、仮にも代表候補生がずる休みはだめでしょう。
 トーナメントはクラス対抗戦と違って、外部からの見物も多い。
 当然日本政府の関係者もくる、未完成機で他国の代表に遅れをとるのも、マズイっちゃマズイが不参加が一番マズイ。
 だいたい全員強制参加のトナーナメントどうやって休むのさ?

「ま、そーゆー訳だから、ここにサインね」

 僕と契約して相棒になってよ!

「や」

 頑固だなぁ
 自分の為も有るけど、どうにもお節介虫が騒ぐ。

「組んでくれたら、聖闘士星○、BDリマスターBOXで貸しちゃう!」
「…」

 よしゆらいだな

「サムライ○ルーパーもつけてみるよ!」
「うう…」

 ちっ、これでもダメか。

「よしわかった超者ライ○ィーンでどうだ!」
「う、うう…しばらく考えさせて」
「締切りは把握してる?」
「うん」
「私は簪ちゃん意外と組む気無いからね?」
 
 去っていく背中に声を投げかけるが…返事はなかった。
 あんまり無理強いはしたくない、彼女も色々あるし。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「私を助けると思って…お願い…か」

 個人端末に届けれらたメール。
 簪は、ぼーっとしながらその文面を眺めていた。
 嶋野馨。
 趣味の合う友人。
 明るく、お調子者。
 自分を更識家の次女でもなく、楯無の妹でもなく、一人の個人として扱ってくれる。ただ一人の友人。
 本当は、うんと言いたかった。
 でも、遠目に姉が見えた、こちらに向けて歩いて来ていた。
 何故、逃げてしまったのか。
 これじゃいけない、なんのために自分は弐式を自力で完成させようとしているのか。
 わからない。
 制御できないぐしゃぐしゃの感情。

「一日だけ…考える時間を下さい」

 そうメールし、布団に潜り込む。
 明日、弐式のテストをして、調子が良かったら、馨とペアを組もう。
 自分では決めかねた簪は、それを天に任すことにした。

「(上手く…いくといいな)」





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







『さぁさぁ!毎年恒例、IS学園名物、6月の個人トーナメントもいよいよ佳境!
 一年生の部第四試合と相成りました!
 例によって実況は放送部のエース、二年三組蓮堂藤子。
 本日のゲスト解説者は三年生の部準優勝、ドイツ貴族の血を引きます「やんごとなきクリームヒルト様」こと、グートルーネ・ロートリンゲン先輩です!』
『はぁ…何故私がこんなことを』
『いやー準優勝おめでとうございます』
『優勝したわけでもないのに?嫌味?』
『専用機持ちのケイシー先輩相手に、あそこまで接戦を繰り広げた先輩はすごいと思いますよ?』
『あの面倒臭がりに負けたせいでここに座っているんだけどね…』

 怠惰は大罪よ、と毒づくグートルーネに藤子が「アハハ」と乾いた笑いをもらす。

『さてさて序盤のgdgd振りが嘘のように、面白くなっていた一年生の部ですが、いよいよ専用機持ち組が参戦となります。
 四回戦から参加というシード扱いは賛否ありましたが、先輩はどう思われます?』
『はっきりいって丁度いいのではない?一年生のヒヨコ同士の試合にヒヨちゃんが参戦してるのだから』
『先輩が「動○のお医者さん」を既読は驚きました』
『第四回戦まで戦い抜いた連中なら、番狂わせは厳しいかもしれないけど、来賓の皆さんを退屈させない試合になるでしょう』

 整備科が有り、しかも全員参加ではない三年生、二年生の試合は序盤から見物だが、一年の試合は序盤はお遊戯が泥仕合が多い。
 試合数の少ない三年、二年のトーナメント終了のころに一年が面白くなる。
 なかなか良く出来ているものだ。

『ふむ、先輩としてはまだ専用機持ちが有利と?』
『そりゃそうよ、見なさい揃い揃って専用機同士で組んで、鬼に刃物よ』
『いえそれは金棒です、混じってますよ、放送禁止用のアレと』
『そこに行くと訓練機と組んでいる、我がドイツの代表候補生は偉いわ、後で褒めてあげなきゃ』
『資料によるあの二人は唯一の抽選ペアですが…いえなんでもありません』

 睨まれた藤子が黙る。

『とはいえヒヨコ達も三回の試合を経て経験を積んでいるわ、専用機持ちといえど、油断すれば食われるわよ?』
『そうですか?』
『試合ってのはそういうものよ、ロードレースで一介のアシストがエースに化けるように、本番には魔物は潜んでいるものよ』
『含蓄の有る、深いお言葉ですね…さてそんな専用機組の先陣を切るのは日本代表候補生、更識簪選手&㈱SHIMANOテストパイロット、嶋野馨選手ペアですね、先輩はどうみますか?』
『どうも何も無いわ、データがまとも無いから二人とも、専用機ペアのダークホースね』
『一応嶋野選手の方はクラス対抗戦に一度だけ出場してますが…』
『相手が織斑一夏では参考にならないでしょう、まお手並み拝見ということね』
『はい…更識選手の機体は「打鉄弐式」未完成と聞いていましたが、試合に向けて仕上げて来たということでしょうね、一方の嶋野選手は傑作第二世代機とも言われた「箒星」専用機ではないですが一品物オートクチュールですよね?』
『そうね、旧世代機だけど、コンバットプルーフと言う観点では、下手な第三世代機が裸足で逃げ出すわね、ただ扱いきれるかしらね』
『そうですねぇ、されそろそろ選手入場です、前半の小話のせいで、対戦相手の解説の時間が足りませんが、それは試合中に…あれ?』

 Aピットから出てきた二機のIS。
 簪と馨側のピットから出てきたにも関わらず、そこにはあの特徴的な赤い機体がいない。
 替りに…陽光を反射する、眩しいほどにピカピカな…『金色のIS』がそこに居た。





加筆修正&分割しました。



[27026] ウチの義母さんは割かし天才だったりします。
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/09/12 09:47
『なんかキンピカの機体です!キンピカのISが現れました!』

 煽らないで下さい。
 会場がざわついてるわー。
 うわ笑っている奴多数。
 ISのハイパーセンサーなめんなよ、顔見えてんだからな・・・

「う~ん、やっぱり目立つね、このカラーは」
「恥ずかしく…無いの?」

 僕の横に居るせいで、同様に観客の視線に晒されている簪ちゃんは、ちょっと居心地が悪そうだ。

「いや、そんなには」

 無事このアリーナに立つまでの苦労に比べれば、機体のカラーが百○でも気になりませんよ。
 てかク○トロ大尉はこんなカラーのMSで戦場に立てたもんだね…まじ尊敬するよ。
 苦笑いを心中で浮かべれば、今日までの苦労が走馬灯のように浮かび上がってくる。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







数週間前

「そんなわけで彼女とペアを組んで出ます」
「そうか。悪くない判断だろう、他の有象無象よりは使えるぞ、こいつは」

 興味なしという感じでラウラさんは簪ちゃんを一瞥した。
 使えるとか、失礼しちゃうわ。
 ここは昼の学食。
 普段の昼は教室でパン派の簪さんだが、当分は親交をより深めるため一緒にお昼を食べることにした。
 あいかわらず一組ではぼっち状態のラウラさんが一緒なのはいつものことである。
 いや結構ラウラさんと一緒に食べたい子いると思うけどね、なかなか寄せ付けないラウラさんです。
 さて本日のメニューは?
 私はてんぷら盛り合わせ、かけうどん大盛り、ご飯どんぶり、豚汁大盛り、ゴボウサラダ。
 ラウラさんは日替わり定食にソーセージ盛り合わせ、ザウアークラウト、肉じゃが
 この肉じゃがにえらく感動したらしく、昼はいつも頼むラウラさん。レシピを調べて本国の部隊に送るとか言ってたな。
 どんだけじゃがいも料理に飢えてるんですか?
 三人がけのテーブルは二人で明らかに四人前はある料理に占拠されているが、簪ちゃんはきつねうどんだけなので、なんとか収まっている。
 なんだかラウラさんに怯えてるし、肩身は狭そうだけど。

「おい、馨、貴様テンプラをうどんに投入しないだろうな!」
「ひっ!」

 おっとラウラさんは後乗せサクサク派ですか。
 なんで簪ちゃんはラウラさんの剣幕に怯えてるの?

「私はお塩でいただく派なのですよ、ハイソでしょ?」
「塩だと、うまいのか?それは」

 たべてみる?

「はいあーん」

 半分くらいになったえび天を差し出したら睨まれた。

「食いかけを出す奴があるか」

 ちっ

「ではそのチョリソーと交換で、このかき揚げを差し上げましょう」
「よ、よかろう。等価交換だな」

 学食のチョリソーはメキシコ系で辛いから残してるくせに…可愛いなぁもう。
 ちなみに元祖チョリソーであるスペインのチョリソーは辛く無いんだって。
 スペインの植民地だったメキシコに伝わった際に唐辛子を入れるようになったんだけど、日本にはこのメキシコ料理としてのチョリソーが先に入ってきたんで辛いチョリソーが一般的なのだそうですよ。
 以上二組所属スペインから留学生アリシア・カハールちゃんよりの受け売りでした。

「簪ちゃんは後乗せサクサク派?しっとり投入派?」
「…きつねでよかった」←めちゃ小声

 あー投入派なんだ。
 残ったかしわ天をご飯にのせ、めんつゆをぶかっけて天丼でいただく、うんうまいね。
 べこまけた。

「さてさて本日のデザートは、じゃーん林檎のタルトでーす」
「…まるごと?」
「簪ちゃんはどれくらい食べる?今日は三人だからハーフじゃなくてまるごとだよ」
「普通で…」
「私は4分の1でいい」
「はいはい」

 周囲の女子の視線が痛い。
 殺意が篭ってる人がいるのが怖い。

「ご飯終わったら、早速弐式の調整と稼働データとらないとね、ところでラウラさんはペア誰?」
「知らん抽選だ」
「なんとも男らしい…よかったね簪ちゃん、私と組まなかったらラウラさんと組むことになってかもよ」

 耳元で囁く。

「ひっ」

 そんなに怯えなくても噛み付いたりしないよ?
 …たぶん。

「馨、お前の機体の方はどうなっているのだ」
「あ、うん週末…てか明日からだけど、本社で最終チェックして月曜日にはこっちに持って来るよ」
「そうか」

 うーん、心配してくれているのかなぁ?
 なんか違う気がする…

「折角だし簪ちゃんもこない」
「…え?」
「弐式の調整の参考になるかもしれないし、うんそうしよ。けってーい」
「いや…その」
「ついでに映画でもみっよか?まだGW公開の映画(日曜朝の戦隊物のお奴とかライダーとか)やってるところあるだろうし」
「う…」

 まぁそう言う事になったのですよ。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







 翌日。
 宣言通りちびっこ&おっきいお友達に紛れて映画を鑑賞、ちょいとお茶してから会社へと向かったのですよ。

「遅い!さては…寄り道したね?」

 お義母さまがお怒りです。やべぇ

「で、電車が事故で」
「見え透いた嘘は止めなさい」
「まぁまぁ夜子さん、いいじゃないですか可愛い女の子と街に出たんです、寄り道の一つもしますよ」

 おお、神フォローキター
 木場さんのとりなしでなんとか事なきを得て、改めて簪ちゃんを紹介する。

「か、可愛い…」

 木場さんのセリフで顔を真っ赤にして俯いてますが。
 あの人、素でやってるからなぁ…

「倉持にケンカ売ったていう、見所の有るお嬢さんだね、聞いてるよ」
「いえ…その…別に、そんなつもりじゃ」
「今日一緒に来たってことは、ウチに身を預ける気になったんだね?」
「えっ!…その!・・・」
「よし、じゃぁさっそく契約書作ろうか!」

 義母さん…

「夜子さん、ちょっと強引ですよ。絵里さんお願い」

 再び木場さんのフォロー。
 わらわらやってきた大塚さん他数名が義母さんを拘束して引きずっていく。
 義母さんも抵抗してるが…あの人基本的に女性にはあんまり強くできなんだよね、男(特に義父さん)には容赦ないんだけど…

「すまないね、更識さん、びっくりしたでしょう?」
「いえ…そんな」
「ラボの機材は自由に使って構わないよ、分からないことがあったら何でも聞いて。
 今日は馨くんに付き合ってくれてるけど、寧ろ時間が無いのは君のほうだろうし」
「あ、ありがとうございます…」

 ううむ、上手い…

「さて、馨くんも最終調整ね」
「はーい…」

 はぁ気が乗らないなぁ

「ほら、諦めて。先にすすまないからね」

 そうですね…

「もしかして…」

 僕の態度で察してくれたのか、簪ちゃんが表情を変える。

「うん…僕も専用機持ちになるんだってサ…整備科に進んだら皆のいいおもちゃにされそうだよ」

 実習の度に見本(いけにえ)として前に出され、皆にいじられちゃう!

「ふぅん…よかった…ね?」

 ちょっ!
 酷い!酷いよ!簪ちゃん!そんな目で僕を見ていたんだね!?

「え?…違ったの?」
「はは、なかなか良く見てるねぇ、結構かまってちゃんだから、馨くんは」

 木場さんまで…ヒドイ

「ほら、馨くんはスーツに着替えて来て」
「下に着てきました…」
「横着だなぁ」

 大きなお世話です。



(/ロ゜)/



 初期化と最適化に平行して、微調整がほどこされる。
 これは開発主任である義母さん手ずからの調整となる。
 一言で言えば、義母さんの調整は「繊細」だろう。
 普段の言動からは想像もつかない、ミクロン単位の誤差も許さないような、流麗で丁寧な調整。
 米粒に写経するような感じといえばいいだろうか。
 以前僕がセシリアさんとの試合の直前に、白式にやった調整とは大違いだ…
 当然その分時間は掛かる、既に30分が経過したが、一向に最適化が終わらない。
 横のブースでは一人で打鉄弐式の調整をしていた簪ちゃんが、ラボの皆さんのおもちゃにされていた。
 当初はわたわたしていた簪ちゃんだが、強引な大塚さんを筆頭に、ラボの女性陣が言いくるめて今は、ISスーツに着替えさせられ、機体に搭乗させられている。
 一応地力で完成させたいという旨だけは、頑張って主張したので、聞き入れられたようだが…
 皆よっぽどヒマなのかよってたかって弐式をいじくり倒している。
 一応木場さんがフォローしてくれてるから…大丈夫だろうけど。
 ううむ、当社開発ラボの良心木場さんの好感度が、簪ちゃんの中で急上昇中とみたね、惚れちゃだめだよ、奥さん子持ちだから、その人。
 ま、簪ちゃんには悪いけど、これも狙い通り。
 好奇心の塊のような技術者さんたちにしてみれば、未完成の第三世代機なんて、そりゃぁ猫にまたたび、カッパにキュウリ、キツネに油揚げだ。
 よし、これで弐式は、試合までには十分実用に耐えるレベルになるはずだ。

『謀ったね…馨ちゃん』
『…ふふ、君ならそう言ってくれると思ったよ簪ちゃん』

 君に恨みは無いが、君の姉上がいけないのだよ!(意味不明)
 僕の表情から、謀られたことに気がついた簪ちゃんから非難の秘匿回線プライベート・チャンネル&視線が飛んでくるが…ふふふ全然怖くないよ?寧ろ可愛い。
 保存保存っとこーゆー時、専用機はベンリだねぇ。

「ほら遊んでないでこっちに集中しなさい」

 ペシと母さんにオデコをはたかれたました。
 はーい。

「義母さん、これは結局どーゆー機体なんですか?」
「あんた第三世代機ってのがどーゆーものか分かってるわよね?」
「第三世代“兵装”を運用する機体って意味ですか?」
「そう、だからこの世代のISは基本的に、まず武装ありきで、その武装を運用する上で、まぁ適当な本体を用意している…」

 私はね、これが気に食わなかったのよ。と義母さんは毒を吐いた。

「だから私はね第三世代機ISには興味がなかったのよ」
「はぁ」
「でもちょっと面白い第三世代兵装を持ち込まれちゃってね…それを生かせる機体を作れるのは、私くらいだし。埋もれさすにはちょっと惜しいし…」

 義母さんが“面白い”とか思う兵装が積まれてるんですか…これは、やだなぁ。イテ
 またまたペシコンとおでこをはたかれたですよ。

「安心しなさい、この子はその兵装をテストするための機体で。現行の第三世代機“本体”の技術の粋を集めた機体よ、誰が使ったって最高の結果を出すわ」

 義母がそう言うと同時にリターンキーを押すと、機体の設定が全て終了。
 初期状態だった機体が、新の姿…僕の機体へと変貌していく。
 って…なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!



(/ロ゜)/



「…うわっ」

 簪ちゃんが引いた声が聞こえた。
 無理も無い。
 それまでは灰色だった機体の装甲は、いま眩いばかりの金色へと変化していた。
 某グラサン大尉の機体のようにワンポイントの黒すらない。

「義母さん…」
「一応それも兵装の一つなのよ、我慢しな」

 へぇーこの金色の装甲がですか…
 装甲のカラーを別にすれば、それは百○にはあまり似ていなかった。
 初期状態だからかと思っていたが、そうではないらしかった。
 装甲は全体に流線型で、例によって胴体や、頭部まで装甲がある、現行のIS主流をガン無視した形状。
 肩部が浮遊型の非接続型で無いのも珍しい。
 ISのパーツはこの肩部が、サブスラスター、シールド、武装などでやたらゴテゴテしていることが多いが、この機体はそうではない。簡素な装甲と放熱のためか?フィンのような形状のパーツが数本生えているだけだ。
 機動力を生み出すのは、背部、腰部、脚部のスラスター群。
 正面からの被弾面積が随分小さい、おおよそ正面の全幅は通常のISの半分程度だろう。
 飛行中な細かな姿勢制御はスラスターではなく、慣性制御で行なえということのだろうか?
 人間の露出が多く、パワードスーツ然とした現行のISに比べて、この子は「小型のロボット」っぽく見える
 まぁカッコイイことは確かだ、派手だけど。

掃星はばきぼしよ、可愛がってあげなさい」

 掃星、箒星同様彗星の和名だ。
 義母さんの苦笑めいた表情から、義父さん一派の介入があったことが伺える。

「ハバキには『剣』という意味と、掃うから転じて『祓う』も込めてあるわ、夜空を切り裂く刃。世界に蔓延する穢れを祓うとされた彗星。その名前に負けないように精進しなさい」

 …中二くせぇ
 ゴンッ!
 工具で殴らないでください!

「…あら25mmスパナがよかったかしら」

 お許し下さいお義母さま。
 それはISの装甲越しでも痛いと思います。

「さて、調整はほぼ完璧、武器は箒星で使っていたの流用するから、一通り使い方は分かってるね?」
「はい」
「じゃぁ量子変換インストールは自分でやんな」

 えー

「ほらほら!いつまで他社の機体構ってるんだい!仕事に戻りな」

 そう言って皆さんを追い払い…嬉々として自分が弐式に取り付いた。
 義母さん…
 ああ!何が「ちゃんと食べてんのかい?IS操縦者は体が資本だよ!」ですか!?ベタエタ触らないで!セクハラですよ!
 簪ちゃんが顔真っ赤にして恥らっててるじゃないですか!
 ……よし保存できた。うむよい画が撮れたな。





\(゜ロ\)(/ロ゜)/






「大変だったねぇ」
「…」

 もちろんそれだけではない。
 いかに機体が優秀でもISの性能は戦力の決定的な差ではないのは、周知の事。
 ましてタッグマッチとなればコンビネーションも重要だ。
 寝食を共にする勢いで、訓練に励み。
 なんとかトーナメントにこぎつけた。

 だが受難はまだまだ続いたのだ。



「期待してるよ、うん日本国の代表として、いい試合をしてくれたまえ」

 このヨッパのおっさん!僕は代表候補生じゃありませんが!?何か?



 トーナメント開催期間中、来賓の「おもてなし」を含めた「懇親会」が連日開催される。
 各国の関係者、メーカーの重役、etc...
 客寄せパンダとして出席が命じられた代表候補生&専用機持ち&他成績上位者数名&留学生、に混じって、僕もパーチーへの出席を命じられた。
 まぁ各国の代表候補生や留学生たちははさすがに隙が無い。
 ところがこのパーチー、出席者で一番多いのは当然開催地である、おうジャパニーズ!
 半分は日本人なんですよね。
 さて我が日本の代表候補生は?

「……………」

 ちょ!簪ちゃん!なんでそんなぶるぶる震えてるの?
 そう、引っ込み思案なメガネ少女さんですよ。
 いかん箒さん!箒さーん!

「…」

 うわ!すげぇ顔で出席者睨んでる!
 全力で「私は姉のことなんて知りません!」というオーラを発してるよ!
 一夏!一夏は

 女性の出席者にかこまれてちやほやされてる!
 いかん!ただでさえ機嫌の悪い箒さんの機嫌が!
 うわぁ!セシリアさんとかシャルルさんとか鈴ちゃんも微妙に表情が固いよ!
 いかん一夏は壁の押し花にでもしておかないと、色々危険だ!
 二年三年の先輩方は早々に試合が始まるため、序盤のパーチー出席は免除されている。
 居るのはいけ好かない(私怨)生徒会長くらいか。
 つまり…群がってくるオサーンの相手をするのは…あ、私ですか?
 ええい!
 ここでで引き下がっては男が廃る!
 で冒頭に戻ると。



(/ロ゜)/



 また、次か次へと政府関係者と、国内メーカーの人達がこっちに来るのだ。
 考えて見れば私と簪ちゃんは「国産機、大和撫子」コンビ。
 そりゃ期待するよね…

「次官、それ以上の接近は禁止です」

 唯一の救いは義父さんである、さっきからピッタリ僕に張り付いて、皆さんを牽制してくれてるコトだ。
 親馬鹿も大概にしろ、あと空気嫁、ってみんなが無言で言ってきてるけど、どこ吹く風。
 こんなに頼もしい義父さんは初めてだよ!
 親馬鹿さえなければかっこいい人なのだ。親馬鹿さえなければ…

「あ重田くん、握手はお断りしてるんで」
「嶋野さん…空気読みましょうよ」
「君だって!自分の娘がここにいたらそーするだろぉぉぉ!」
「当たり前でしょうがぁぁぁぁ!」

 男親って…



(/ロ゜)/



「ふぇ~ちかれた~」
「お、お疲れさんだな馨」
「お疲れ…馨ちゃん」
「食え、美味だぞ」
「うう、ありがとう…」

 とりあえず一夏&箒さん&簪ちゃんの問題児トリオへの防波堤はウチの義母さんが買って出てくれた。
 事情を説明したところ三人を独占し、誰も寄せ付けないでくれていた。
 業界における義母さんの立ち位置って…

「じゃぁ馨、私は少し友達に会ってくるか、あんたが防壁になりなさいよ」

 義母さん…私は疲れてここに避難してきたのですが…

「馨ちゃん!父さんがいるから大丈夫だ!おっと織斑くん、あまりウチの娘に近寄――」
「あんたも挨拶があるでしょう」

 青筋浮かべた義母さんが義父さんの襟首を掴んで連れて行ってしまった…おおモーゼの出エジプト記ばりに人垣が左右に割れている、どんだけ…

「パワフルな母上だな」
「うん…でもすごくかっこいいね、後また色々アドヴァイスしてくれた」

 こんなところでIS談義してたのですか皆して。
 すこしはパーチーを楽しめばいいのに。
 あ、ちらし寿司美味しい

「白式のデータ見てもらったらボロクソに言われたよ」

 ああ、まぁそうだろうね、白式みたいな特化型の特殊仕様って義母さんの嫌いなタイプの機体だし。
 シャルルさんのリヴァイブカスタムとか。
 第三世代機だと甲龍みたいな実戦モデルが一番タイプだろうなぁ、データ盗ってこいとかいってたし…やってないけど。
 あれで鈴ちゃんは割りとしっかりしてるので、機密レベルの高いデータは絶対に見せてくれないのだ。
 まぁ中国という国の体制を考えれば無理も無いけど。

「そういえば箒さんはラウラさんとペアになったんだよね、どう?」
「どうもこうもない、わかるだろう…」

 ちょっと恨みを込めた視線で箒さんがこっちを見る。
 まぁ一夏が速攻でシャルルさんと組、あたふたしているうちに僕は簪さんと組んで、気が付けば箒さんは誰とも組めないまま締め切りになってしまったそうだ。
 結果抽選…二人しかいないのに抽選もなにもないけど…であの二人が組むハメになったのだ。
 専用機(及び専用機に相当する僕の機体)持ちの代表候補生がペアを組みまくったので、さすがに運営委員も考えてしまったそうだ。
 入学二ヶ月の新入生が乗る訓練機では逆立ちしたって敵う相手ではない。
 これでは今後の指標となるデータもとれない。
 侃々諤々の争議の結果。
 織斑一夏&シャルル・デュノア
 セシリア・オルコット&凰鈴音
 更識簪&嶋野馨
 ラウラ・ボーデウッィヒ&篠ノ之箒
 の四組はシード扱いとして第四回戦からの参加となったのだ。
(どのみち全校生徒約120名60組だと2の乗数じゃないからシードによる調整は必要なんだけどね)
 ちなみにこの四組はブロック分けされ、準決勝まで当たる事は無い。
 …仕込みかよ。
 順当に勝ち上がれば準決勝は、「大和撫子」ペアvs「中英代表候補生ペア」
 と「男ペア」(まぁシャルルさんは本とは女の子だけど)vs「日独ツンツンペア」となる。
 下馬評一位は「日独ツンツンペア」である、なにせ対抗馬の「中英代表候補ペア」はラウラさん一人にこてんぱんにされているからね…
 でまぁ「男ペア」と「大和撫子」ペアは、あんまりデータが無いのでどっちも穴馬扱い。
 とはいえ代表候補生の前評判は、山田先生を翻弄させたシャルルさんの方が、機体が未完成(だった)の簪ちゃんより高い。
 逆に先月のクラス対抗戦の結果を見るに一夏と私では私の方が強い、だろう…とのこと。
 まぁペアを組む以上、予想外の展開はあるんだけどね。

「さてさて、どうなることやら…」

 まぁ勝たないとラウラさんのおしおきが怖いから頑張るけどね…





\(゜ロ\)(/ロ゜)/






 走馬灯のような今日までの受難(他にも色々とありましたよ)を振り返れば。
 金色の機体と、それを駆る僕への好奇の視線など可愛いものだ。


『えー、金色のIS、かなりセンスを疑うカラーリングですね』

 大きなお世話です。と解説の先輩につっこみを入れる。

『そう?私は好きよ?ナイ○・オブ・ゴールド』

 おおさっきから気のあいそうな先輩だなぁ

『先輩が日本のサブカルに詳しいのは良く分かりました…えー情報入ってきませんね、謎のISです』
『普通に考えて新型でしょう…やるわねぇ』
『?…えー専用機組はともかく、もう一組の選手の紹介をしましょうね!』
『杉野丹、大滝蓮の剣道部ペアね、機体は両名とも【打鉄】』

 そう実は四回戦の相手はマイソウルフレンドのマコトちゃんである

『ここまでの試合では、対戦相手の連携を分断し、タイマンに持ち込み、近接戦闘で圧倒する、という戦法で勝ちあがってきてますね』
『ISの制御はともかく、乗り手の実力が図抜けてるわね、打鉄の機体特性を良く引き出してるわね』
『先輩的にはどう思われます?』
『いかんせん専用機側が未知数すぎるわ、ただ近接戦闘になったら、わからないかもよ?』


ふぅむ。
 てか遅いな、蓮ちゃんは出てきたけど、マコトちゃんが…

『杉浦選手遅いですね…おっとみえ…あれ?』

 …
 ゴシゴシ
 うん間違いない。
 マコトちゃんのISが打鉄じゃなくて、箒星になってる。
 しかもあれは近接特化型パッケージを量子変換インストールしてるな。
 
『ねーマコトちゃ~ん、どゆこと?』
『あなたの想像通りよ』

 義母さんですね?
 理事特権でごり押しですか?
 あんまり横紙破りすると敵つくりますよー。
 と来賓席の義母さんを見る(ハイパーセンサーってベンリだね)
 うわ笑ってる・・・最悪。

 無情にも試合開始を告げるブザーが鳴った。











後書き。
お久しぶりです。
気長に待っていただいた皆様、本当にありがとうございます。
書いては消し、推敲しては消し。
でも良くなったのか?と言われると
自分ではイマイチ実感がつかめません。
特に「主人公がインターセクシャルであるという設定が生かされて十分に生かされていない。」
このご意見は今後の課題として精進していきたです。



[27026] Q:馨さんの好感度が上がらない理由は?【配点10点】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:bd863772
Date: 2011/09/12 09:48
前回投稿の最後の方を改稿してます。
戦闘シーンが上手くかけない作者です・・・







 試合開始と同時に。
 四機のISが一斉に動いた。
 近接戦闘を得意とする剣道部ペアが間合いを詰めようと加速。
 その動きに対し、専用機ペアは誰もが予想していた「距離を取る」ことはせず。
 何故か突撃した。

『簪ちゃんは蓮ちゃんを頼むよ』
『了解』

 薙刀型の近接兵装を構えた打鉄弐式が這うような低空で、大刀を構えた打鉄へと向かう。
 大刀を右肩にひっさげ、同じく低空で打鉄も突撃してくる。
 防御力の代償として打鉄は機動性に難が有る。
 空中を縦横無尽に飛び回り剣戟を演じるのは厳しい。
 それゆえ、打鉄は低空を進んでくる弐式とやり合うしか選択肢が無い。

 一方。
 掃星と箒星。
 この二機の兄弟機は、突撃しながらも高度を上げていった。
 箒星は近接特化型パッケージ通称「炎神」がインストールされている。
 武装は二本の近接ブレード。
 箒星の特徴とも言える、胸部装甲が無い、防御力を捨て、機動性を増した、超攻撃的なセッティングである。
 対する掃星も両腕に武装をコール。
 S&W社製IS用60口径ハンドガン「スマッシャー」
 人間用でもどこぞの変態企業が作った60口径ピストルというのは有るが。
 IS用のサイドアームとしてはベストセラーのハンドガンで、軍用ISで制式拳銃として採用している国も多い。 
 二機が互いの間合いに入るまで、一秒も無い。
 その前に、とばかり、馨がスマッシャーをダブルタップ。
 むき出しの胴部を狙うが、丹は踏み込むようにすっと高度を下げて銃弾を回避。
 さらに加速して、一気に掃星の懐へと飛び込んだ。

『速い!速いよ!マコトちゃん』

 馨が茶化すが、返事もせずに丹は刀を振るう。
 狙いは掃星の装甲の隙間、首と腰部の間接部分である。

『無視しないでよ~』
『…』

 右斜め上への側転という、トリッキーな三次元機動でその残撃を回避する馨。
 左腕のスマッシャーをダブルタップ。
 至近距離の銃撃を、僅かな横移動で回避する丹、回避ざまに刀が寸前まで掃星が居た空間を薙ぐ。
 回避し切れなかったその一撃だが、胸部の装甲がそれを受け流した。

『頑丈ね』
『ただ頑丈なんじゃなくて、僕が体ひねってうまく残撃を受け流してるんだよ?すごいでしょ』

 再び無言で丹が刀を繰り出す。
 突き、薙ぎ、払い、打ち下ろし、二本の刀が次々と馨を襲う。
 驚異的な運動性で、それを回避した掃星が、僅かに後退、出来た隙間に腕をねじ込み、銃撃、PICを使った強引な三連射。
 三発の銃弾の突撃を、丹は僅かな体裁きで回避する。

『も一発!』

 左腕のスマッシャーが火を吹く。
 丹の回避先を狙ったどんぴしゃの射撃だが、シールドを僅かに削っただけだ。

『ハンドガンじゃ私には勝てないわよ?馨』
『でも全中短剣道優勝者さんに剣で挑むほどドMじゃないし僕。それにわかってるでしょ?僕の役目』
『不本意だねけどね』

 優勢なはずの、丹の表情が歪む。
 その視界の片隅では、パートーナーである蓮が簪に圧されていた…



(/ロ゜)/




『いやー二年、三年の試合でもここまでハイレベルな近接戦闘はなかなか見られませんよ!』
『上空では杉浦が、地上では更識が押しているが・・・対する嶋野にしても大滝にしても、中々だな』
『特に嶋野選手のガン・カタはハリウッド映画みたいで見栄えがありますねぇ』
『…まぁ嶋野があの距離で戦闘してるのはワザとだがな』
『わざと…ですか?』
『ああ、奴の狙いは更識が大滝を倒すまでの時間稼ぎだ』
『確かに、シールドエネルギーの残数は、大滝選手残り役半分に対し、更識選手はまだ1/4くらいしか減ってませんね』
『その1/4にしても被弾覚悟で出した、苦肉のダメージだ。
 大滝が不利な点は三つある。
 一つは機体性能
 二つは武器の間合い
 三つは更識の方がISの制御に優れていることだ』
『はぁ』
『そして最悪なことに近接戦闘能力に大差が無い。
 大滝のできるのはできる限り粘って、少しでも更識を消耗させることだけだな』
『断言しちゃいますか…』
『残念だがな。
 そして嶋野の作戦は杉浦を2対1で圧倒することだ、それまでは杉浦の足止めに専念する』
『ずる…』
『ずるくもなければ卑怯でもないぞ、これはペアでのタッグマッチなんだからな』
『杉浦選手としてはどうすればベストなんでしょうか?』
『簡単だ嶋野を倒せばいい、それが分かっているから杉浦もあの距離から離れられんのだ』
『はぁ』
『箒星の性能には目を見張るものがあるが、結局杉浦の取れる手は近接戦闘しかない、今は7:3で杉浦が圧しているが、距離を取れば一気に一気に嶋野に流れが傾くぞ?』
『えーと気になるのは、なぜ嶋野選手はそこまでに2対1にこだわるんでしょう?普通に距離を取って戦えば…』
『それも簡単だ、他の専用機組に手を晒さないためだよ』
『は!?』
『あのペアはな、機体性能が未知数なんだよ、それは対戦相手への大きなアドバンテージだ。
トランプでジョーカーとエースが手札にあったとしようか?
エースで勝てる相手にジョーカーを切って、エースで勝てるか分からん相手のためにジョーカーを温存する。
当たり前のことだろう?』
『そんな難しいこと考えてトーナメントに参加したことないっす…』
『今年の一年は専用機持ちが多い、極めて妥当な戦略だよ。今頃他の専用機持ち共はイライラしてこの戦闘を見てるだろうな』
『なんか先輩楽しそうですね』
『実に面白い後輩だ、部活には入ってないのか?是非ウチの部に欲しい』
『ひっ…魑魅魍魎の巣窟と言われる「戦術研究会」に勧誘されそうだ!嶋野選手逃げてー!』
『おい…どうゆう意味だそれは』

 ドタンバタン
 ガチャ
 ブツ



(/ロ゜)/




『おや放送事故かな?』

 掃星と箒星、二機の至近距離でのド付き合いは続いていた。
 地上では加速度的に蓮の乗る打鉄が追い込まれシールドエネルギーを失っている。
 しかし、馨の掃星のエネルギーは1/3程度しか削れていない。

『まったく、おばさまの口車に乗せられて箒星まで持ち出したっていうのに…』
『悪いけどマコトちゃん、08じゃなくて07にした方が良かったと思うよ?ちょっと08はピーキーすぎて』

 ぼんやりした口調でいいながらも馨は丹の懐へ飛び込む。
 丹がさせじと刀を揮う腕を掴み止める。

『くっ!』
『残念パワーは掃星の方が上だよ』

 箒星の蹴りが掃星を強襲するが、それもあっさり脚でガード。
 バランスを崩した箒星の右腕を引っ張りこみ、そのまま両腕、両足を駆使して箒星に組み付いてしまう。

『ちょ!離れなさい!気持ち悪い!』
『ひどいなぁ…9歳くらいまでは一緒に寝た仲じゃん?』

 丹が馨を振りほどこうと、暴れるがまったくはがれない。

『さぁて、そろそろ蓮ちゃんは限界だね?あーでも弐式もセーブして戦ってもらったから、大分シールド削られちゃったなぁ』
『…バカにするのも大概にしないさいよ…馨!!』
『ふぇ?』

 ドスの効いた丹の声に反応するように、箒星の装甲色が変化していく。

<警告:炎神作動効率95%突破、装甲色変化を確認、離脱してください>

『げっ』

 赤から蒼へと全身の装甲が変化する一方で、両肩と頭部の装甲だけが、より深い赤…深紅へと変化していく。

『ちょっとちょっと丹ちゃん、ソレはマズイよ!』
『やかましい!一度あんたとは決着をつけなくちゃと思っていたのよ!』
『なにそのフラグ!』

 炎神というパッケージのモトネタはMS-08イ○リートというモビルスーツである。
 そしてイフ○ートといえば、あまりに有名なカスタム機が存在する。
 そのカスタム機が搭載したシステム。
 それを模した、超過駆動システム。
 エネルギーはもちろん、機体本体の消耗すら辞さないトンデモシステム。

<警告:炎神がエクスキューショナーモードに移行しました>

『戦略だかなんだか知らないけど…戦うなら全力を出しなさい!それがIS操者…いいえ人間として、対戦相手への最低限の礼儀よ!』

 リミッター解除による大出力で丹は組み付いていた馨を振り払う。

『いや、そんな武士みたいなこといわれても』
『天誅!』
『あわわわわ!』



(/ロ゜)/



『ちょ!先輩!なんか面白いことになってます!だからやーめーてー』
『…箒星の特殊兵装かしら?どうでもいいけど装甲色の変化とか無駄な所にかける、SHIMANOの情熱はハンパじゃないわね』
『ともあれ!一気に試合が動きました!杉浦選手の駆る箒星の動きが異常です!嶋野選手は必死に回避してますがー!ゴリゴリシールド削られてますねー!』
『…さて、ああでも残念ね、大滝が落ちたわ』
『ではここから嶋野選手の作戦通り、2対1ですが…これは作戦通りにはすすみませんかね?』
『そうねぇ…あの動きは本気を出さなければキツそうねぇ』






A、変態腹黒だから。

どうにも上手く書けず前回ラストをいじってこのような展開になりました・・・Orz

次回「逆襲の幼馴染」でお会いしましょう
(仕事が繁忙期に入ったので投稿時期は未定です TT)



[27026] 逆襲の幼馴染ダヨ
Name: madoka◆5b5f0563 ID:03a421bc
Date: 2011/09/15 04:26
「四回戦進出おめでとう丹ちゃん」
「…ありがとうございます。おばさま」

 三回戦に勝利した直後の更衣室、そこに訪れた夜子と、丹はなんとも言えない表情で相対していた。
 将来義母となる予定のこの女性を、丹は苦手だった。
 尊敬に値する女傑である夜子だが、それが将来の姑となると、いささか気が重くなるもの無理はない、とにかく夜子はアクが強すぎる。
 その顔に浮かぶ妖しい笑みは、ストレートに「悪巧みをしています」と告げており。未来の嫁の勝利を祝いに来た雰囲気ではない。
 何か危険な空気を感じ取ったのか、パートーナーである大滝蓮は、引き攣った笑いを浮かべながら、早々に更衣室から逃亡していた。
 そんな蓮を恨めしく思いつつ、逃げられない身を嘆きつつ、丹はささやかな抵抗として、剣呑な光を宿した瞳で夜子を睨む。

「次は馨と当たるのね」

 明後日の四回戦からは、シードとなった専用機組が参戦する、一般生徒にとっては、彼女達と当たる事は、トーナメントの終了を意味していた。
 しかし、中には「専用機だろうが、代表候補生であろうが、戦う前から諦めてどうする」という負けん気と「相手は自分と同じ一年生だ」といういくばくかの自尊心をもって試合に挑もうとしているものも居る。
 丹もその一人だった。
 それゆえに、決意を込めて、夜子に告げる。

「ええ、全力を尽くして、勝ちに行きます」

 専用機組の中では馨と簪のタッグは、一般性とでも「あわや」と可能性が高い組だった。
 機体が未完成であり、代表候補生という立場も、姉の七光りだと噂される簪。
 親の七光りでテストパイロットに選ばれ、多少強力な機体を与えられているだけだと思われている馨。
 簪は兎も角、丹は馨がけして弱くないことは知っているが、自身とは絶望的なまでに実力差があるとは思っていない。

「確かに単純な戦闘能力なら丹ちゃんの方が高いものね。でも」
「でも、なんですか」
「武器がナマクラじゃ無理じゃない?」
「弘法は筆を選びません」

硬い声で丹は答えた。
しかし

「馨が使うのは箒星じゃなくて新型よ」
「知っています。でも使い慣れた箒星よりも、怖くないかもしれません」

 その言葉に夜子が首を振る。

「何がおっしゃりたいんですか」
「貴女が使うに相応しい剣が欲しくない?」

イブを誘惑する蛇のように夜子は甘い言葉を丹に吐いた。

「何を…」
「箒星を近接戦闘用に調整しているわ、貴方向きよね」
「そんな横紙破りは――」
「ねぇ丹ちゃん、私があの子をテストパイロットに選んだ基準は、ウチの馬鹿どもと違って、機密保持が完璧なのと、IS学園の生徒って二点だけよ?」

 格好の実験場である学園に所属する、絶対に機密を漏らさない身内。
 その条件は、SHIMANOの専務の娘である丹にも当てはまる。

「そう別に馨じゃなくて、貴方でも構わないわ…ねぇあの子ばかりずるいと思わない?」

 甘い甘い誘惑。
 それを振り払うように丹は怒鳴った。

「変なことを言うのは止めてください」

 丹は理解している、夜子はただ新型の慣らしに少しでも強力な対戦相手が・・・かませ犬が欲しいだけなのだ。
 目的のためなら手段は選らばない。
 生き馬の目を抜くIS産業業界で生き残るためならば、子供だろうと利用する。
 嶋野夜子は、それができる人間なのだ。
 
「いい子ねぇ丹ちゃんは、息子の嫁としてはすごく助かるけど…女の大先輩としては不合格をあげなくちゃだめねぇ」

 丹の心中に馨への妬心が無い、と言えば嘘になる。
 一歳年上というだけで、ほぼ同年代である以上、両者は容赦無く比較される。
 馨は昔から成績優秀で、人当たりも良い「いい子」だった。
 丹も成績は悪くなかったが馨に劣り、真面目ないい子であったが、それが行過ぎて煙たがられることもあった。
 唯一の救いは馨が(見た目は昔から女の子のようだったが)男だということだった。
 世間は女性優位の風潮に向かっており、それを丹自身は好ましいとは思わなかったが、悲しい優越感に浸る事はできた。
 だがそれは、三年前馨が実は女性と知れたことで、覆されてしまう。
 しかも、入院で留年し同級生となった馨は、丹同様にIS学園の受験コースに進んできた。
 つまりは限られた椅子を争うライバルである。
 当の馨は「マコトちゃんと同学年♪」などとはしゃいでいたが、丹の内心は穏やかではなかった。
 丹の懊悩をよそに、女性としての生活などに戸惑う馨は、臆面も無く丹に泣きつき、何かと丹を頼った。
 いっそのこと馨を嫌いになれれば幸せだっただろう。
 しかし馨から向けられる信頼と好意を無碍にするには、丹は人間が出来すぎていた。

「考えが変わったら直ぐに連絡を頂戴ね」

 丹の葛藤をよそに、夜子はあっさりと、その場は引き下がった。
 駆け引きというものを知り尽くしているのだ。

「う~~!」

 苛立ちを物にぶつけることすら、生真面目な丹には出来ない。

「えーっと丹?」

 タイミング悪く、恐る恐る更衣室に帰ってきた蓮が、ばつが悪そうに声をかける。

「蓮」
「はひっ!」

 冷え切った声音に、煮えたぎるような怒りが含まれている。
 内心で「ひいぃぃぃぃぃ」と悲鳴を上げながら蓮は、逃げ出したくなる本能を必死に押さえる。
 ここで逃げたら、今良いが、後々どんな目に合うか…想像するのも恐ろしかった。

「悪いけど、稽古に付き合って貰うわね」

 拒否は許されなかった。
 その日学園の剣道場には一匹の修羅が舞い降りた。



 結局の所、丹は夜子の提案を受け入れた。
 誘惑に負けたのも有る。
 使ってみれば、やはり箒星の性能は打鉄とは比べ物にならない。
 なにより
 頼むぅぅぅぅとすがりつくようなメールが父から来れば、嫌とは言えない。
 丹の母と夜子は仲が良く、杉浦家もまた嶋野家同様に、夫より妻が偉いのだった。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







 道化ね
 そう内心で丹は自嘲する。
 夜子の口車に乗り箒星に乗ったものの、機体性能だとか、戦闘能力とか、そう言った事とは別の次元。
 つまり戦術面で丹は馨に負けそうになっていた。
 そんな自分が不甲斐なく、情け無く、怒りを覚える。
 せめて眼前のふにゃふにゃした生き物が、もう少し真面目に戦闘してくれれば違った。
 丹は馨のことを良く知っている。
 あんな戦い方をしなくても、掃星の能力を全開にすれば、普通に戦えるはずなのだ。
 それをしない。
 望んでも誰しもが得られるわけではない力を持ちながら。
 それを振るわない。それは傲慢ではないか?
 押さえきれない苛立ち。
 逆恨みとも言える怒り。
 拭いされない嫉妬心。
 それが丹の堪忍袋の緒を切断した。
 三重のチェックを外し、近接特化パッケージ【炎神】の真の力。
 諸刃の刃であるシステムを起動する。
 
 搭乗者の保護と機体の保全を無視し、あらゆる性能を底上げするシステム。
 反則スレスレのこのシステムは起動すれば、ただ動くだけでシールドエネルギーを削り取って行く。
 稼働時間はもって五分が限界。
 だが、五分あれば今の掃星なら十分に落せる。
 もはや試合の勝利などどうでも良い。
 心の片隅に蓄積し続けた鬱憤を叩きつけるように、馨にぶつけた。
 組み付いていた掃星を無理矢理振り払う。
 システムメッセージが間接部の負荷を警告するが無視する。
 刀を振るえば、通常時の数倍のスピードと威力を持って、敵を襲う。

『あわわわわ!』

 周章狼狽する馨に、丹は体を襲うGの痛みすら忘れるような暗い愉悦を覚える。
 閃く二刀が掃星のシールドエネルギーを削り取っていく。
 頑丈な装甲に守られているので絶対防御こそ発動しないが、手ごたえで残撃の威力がシールドによって軽減されているのが分かる。
 装甲の隙間を狙うなどというまどろっこしいこともせず、力任せに刀を掃星に叩きつける。
 馨も必死に防御しているが、どうやら近接兵装を量子変換インストールしていないらしい、一撃でスマッシャーは両断され、必死に両手で攻撃を捌くハメになっている。

「(やればできるじゃない!)」

 襲い来る二刀を馨は良く捌いている。授業で習ったマーシャルアーツだ。
 しかし反撃する余裕は無い。

『マコトちゃん!すぐにシステムを切って!マコトちゃんも箒星そのこもタダじゃ――うわぁ!』
『あなたの口車には乗せられないわよ!』
『ちょ!ちがっ!』

 瞬間的な加速で背後に回った丹が馨の脳天目掛けて刀を打ち下ろす。
 振り下ろされた刀を、掴んだ掃星の装甲が火花を散らす!
 しかし全出力を出さない掃星が、ダメージを考慮しない箒星にぎりぎりと圧されていく。
 掃星のシールドエネルギーは既に一回でも絶対防御が発動すれば0になるレベルまで追い込まれていた。
 後三秒その状態が続けば箒星が押し切り、掃星のシールドエネルギーは尽きていただろう。
 しかし

『丹ごめん!』

 組み合う二機の元に飛び込んできた通信。
 それは簪に破れた蓮の謝罪の言葉だった。
 それで均衡が崩れた、蓮からの通信と同時に、丹は剣士の感とも言える、本能的な回避行動を実行。
 一瞬前まで丹の居た空間を荷電粒子の刃が切り裂いていた。
 蓮を下した、簪からの援護射撃だった。


(/ロ゜)/


 話は少し遡る。

 開幕早々の突撃。
 低空を這うように進んだ簪の打鉄弐式が、呼び出した薙刀型の近接兵装を振るう。
 蓮の構えていた日本刀型の近接ブレードとぶつかり合い火花を散らす。
 薙刀型とはいうものの、刀身の反りは浅く、先端は鋭い、槍に近い兵装である。
 日本刀というものが優れた近接兵装であることは事実ではあるが、古来から槍に勝つ刀は無い、とも言われる。
 まず間合いが違う。
 簪が繰り出した鋭い突きを、蓮は横に機体を流しながらも、踏み込み、簪の懐へと入ろうとする。
 しかし、それよりも早く、簪が引いた槍が再度蓮を強襲。
 慌てて蓮は大きく後退し、その攻撃を回避する。

「(くそっ…攻撃が届かない)」

 蓮は心中で罵りながら、刀を下段に構え、重心を落とす。
 簪はピタリとこちらの槍をつきつけ、万全の構えだ。離脱しようにも、機動性はあちらが上、到底敵いそうに無い。
 剣士の力量が槍使いの力量を上回れば、十分に刀で槍に勝つ事は可能だ。
 だが。
 簪の近接戦闘能力とISの制御技術。弐式の性能。
 それらは蓮の全中ベスト8(それも負けたのは優勝者である篠ノ之箒であるから、確実にベスト4クラス)の剣腕を持ってしても上回るのは難しそうだった。
 簪と蓮は互いに対峙し、じりじりと円を描きながら、互いの隙を探る形で、膠着状態となり。
 最終的には蓮が押し切られる形で、負けた。

 崩れ落ちる打鉄に、簪は詰めていた息を吐き、次いで大きく深呼吸する。
 無難な勝利に少しほっとしたのだ。
 機体性能で圧倒していたが、弐式はこの試合が初の実戦である。
 到底、全力を出すなど危なっかしくて出来ない。
 解説の先輩は、「作戦だ」などと言っていたが、実の所はそんな事情があった。
 そしてそれは相棒である馨の掃星も同様。こちらは量産機が相手だったが、あちらは旧式とはいえ一品物。しかも搭乗者の特性にマッチする近接に特化している。
 しかも状況は当初の作戦(ここから二機掛かりで圧倒)と違い逼迫している。
 馨から送られてきたデータで箒星が特殊なシステムを使い、一時的に機体性能を上げている状態だ。
 簪は、馨の救援に向かうべく、機体を飛翔させた。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







 一方の観客席、その一角に一夏達は陣取り、眼前で繰り広げられる、馨と丹の死闘に魅入っていた。

「箒星に乗ってる子、すげぇな」

 幼い頃、箒と共に剣を習っていた夏が感嘆の声をあげる。
 観戦しつつも、もし自身が対峙したならば、どう動くか、脳内でイメージして見るが、かなりの強敵と推測された。

「そうだな、杉浦は強いぞ」

 そんな一夏に対し、丹と同じ剣道部に所属する箒も、苦々しく言う。
 生身なら、丹に遅れを取る箒ではないが、果たして打鉄を纏った自分と、今箒星を縦横無尽に駆る丹ならば…悔しいが勝つのは丹であろう。
 専用機ではなくとも、一品物の特注機を駆る丹が、今の箒には酷くうらやましかった。

「知ってんのか?」
「…馨が良くマコトちゃんマコトちゃんと言ってる子だ」
「ああ、幼馴染の委員長タイプって言ってた子な、なぁ鈴同じクラスなんだろ」
「うるさい」

 話しかけた一夏の鈴がぴしゃりと返した。
 うぇ、と怯む一夏。
 一夏と箒以外の三人、セシリア、鈴、シャルの三人は、先刻から険しい表情で眼前の試合を食い入るように見ていた。

「だいたいにしてやり口が卑怯なのよ馨の奴ぅ…」
「そうですわ、何がメタゲームですか、やるなら全力を出しなさい、全力を」

 鈴とセシリアに至っては、さっきからブツブツと馨への呪詛を吐き続けている。
 はっきりいって怖い。
 
「なぁシャ――」
「ごめん、一夏ちょっと後にして、今はデータ収集に集中させて」

 三人は、馨と簪のデータを収集に余念が無い。
 専用機持ちの特権とでも言うべきか、普通なら専用の機材が必要な所だが、彼女たちは身一つでそれが可能だった。
 (ISを展開させずにデータ収集などという器用なことの出来ない一夏と、専用機の無い箒は蚊帳の外である)
 特に鈴とセシリアは、準決勝で当たるが馨達だけに、凄みが違う。
 優勝して一夏と付き合う、最大の障害はラウラだったはずなのだ。
 それが蓋を開けてみれば、馨が何食わぬ顔で新型に乗って現れ、しかもパートーナーは日本代表候補生である更識簪である。
 未完成と聞いていた簪の機体も、十分に実用に耐えるレベル。
 自身の特訓に忙しかったとはいえ、そんな情報は事前にまったく出回っていなかった。
 無論、馨が隠匿したからだろう。
 そういった馨のやり口が、気に食わない。
 脳裏に浮かぶのは、しまりの無い馨のへらりとした笑顔である。
 しかも、試合内容は、量産機を駆る一般生徒相手への“手抜き”と言われても反論できないような内容。
 これではまともにデータが取れない。
 三年生の「わざとだ」「情報戦だ」という解説も、二人の怒りへ油を注ぐ。

「こりゃぁ準決勝は血の雨が降るな」
「まだ馨が勝ったとは決まらんだろう、随分圧されているぞ」
「うーん、でも馨が勝つぜ?」
「何故言い切れる?」
「箒星は元々馨の機体で、それを操縦してるのは幼馴染。この条件で馨が負けるはずねぇよ」

 箒は、眉根を寄せる。
 何の論拠は無い、だがその言葉に説得力があった。
 嶋野馨とは“そういう奴”なのだ。
 だが…

「おもしろくないな」
「なんか言ったか?」
「なんでもない」

 まだ知り合って数ヶ月の馨のことを、まるで十年来の友人のように、一夏が理解している、それが箒には面白くなかった。
 急に不機嫌になった箒。
 会話を漏れ聞いてたシャルルまで、なぜかよそよそしい雰囲気になる。
 鈴とセシリアは…もうなんかイロイロマズイ。

「(あれ…なんか雰囲気悪いなぁ、俺なんかまた変なこと言ったのかな…)」

 不機嫌な女子達に囲まれて、一夏は冷や汗が急に噴出してきたのだった。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「やっと面白くなってきたわね」
「(相変わらず酷い人だ…)」

 ゲスト用の特別席よりも、ある意味特等席である管制室。
 そこに乗り込んできた夜子を、詰めていた千冬は、面倒なので、礼儀正しく無視することにした。
 が、頭痛が酷い。

「ちょっと麻耶ちゃん、ぼーっとしてないでデータ集めて、胸揉むわよ」
「やめて下さい!これ以上大きくなったらどうするんですかっ!」
「男誘惑すんのに使いなさい。千冬みたいに嫁き遅れるわよ」
「ちっ」

 思わず舌打ちする千冬、大きな世話である。

「さぁて、どうでるかしらね、うちのバカ娘は」
「嶋野も考えてのことでしょう、身内である貴方が邪魔をして…」

 管制室のモニターには掃星の状態が映し出されているが、それは事前に提出された掃星のスペックからみて、明らかに低い。
 慎重な馨の性格から、初の実戦で「慣らし」をしているのだと千冬は見抜いていた。
 もちろん馨の普段の言動から「情報戦」と他者に誤解させるのも作戦なのだろうが、よくよく頭の回る奴だと感心していた。
 それをぶち壊してくれたのが母親なのだが。
 ちょっぴり馨が哀れに思えた千冬は「少しは優しくしてやるか」と同情さえしている。
 しかし

「バカいってるんじゃないわよ、それじゃウチの技術力のアピールにならないでしょう?
これが掃星のお披露目なんだから、どーん!と世間様のめん玉ひん剥かせるような試合内容じゃないと!」

 悲しいかな、夜子の言は正しい。
 本気で馨が可哀想になってきた千冬だった。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







 残りシールドエネルギー21。
 ちょっと攻撃がかすっただけで0になる可能性のある数値まで掃星は追い込まれていた。

『馨ちゃん、大丈夫?』
『助かったよ簪たん、愛してる、結婚しよう』
『…大丈夫そうだね』

 冗談は出るが、余裕は無い。
 何とか危機を脱した掃星は逃げに掛かった。
 既に全力出せないとか戯言いっている場合ではないので、押さえていた出力も全開にして、派手な鬼ごっこを箒星と繰り広げている。
 ハンドガンを喪ったので、実のことろ掃星にはまともな兵装が無い。
 初期装備プリセットと、グレネードのような副兵装は有るが、今欲しいのはサブマシンガンかライフルだった。
 鬼ごっこに参加しているのは簪の打鉄弐式もだが、荷電粒子砲は残念ながらさっきから命中していない。
 三菱製のこのビームライフルはとても優秀だが、炎神を全力稼動させ、なおかつ回避の上手い丹が駆る箒星に命中させるのは容易ではなかった。
 防御力が低く、システムの稼動でシールドエネルギーを消耗している今ならば、攻撃力は低くとも、銃弾をばら撒ける実銃の方が有利だが…無い袖は触れない。
 逃げる掃星を追う箒星を弐式が追うという、二重の追撃戦は、見た目にも派手で、観客席は沸いている。
 実況の二年生もようやく仕事とばかりにしゃべりまくり、逆に解説は単調な内容「つまらん」とふて腐れている。

『こりゃダメだ、プランCで行こうか簪ちゃん』
『いいの?』
『まぁこうなった以上は速めに終わらせて、データを取らせないようにしようか』

 観客席でこちらを睨んでいる(データを集めている)中英代表候補から意識を逸らし(あまりに怖かったので)馨は言う。

『わかった』
『10秒後に攻撃開始するよ』

【打鉄弐式とのコンタクト成功しました。リンク開始、シンクロ率10%】

 システムメッセージが流れる。弐式にも同様のシステムメッセージが流れているはずだ。

【シンクロ率95%…同調完了しました】

『いくよ!』

 簪の掛け声と同時に、弐式のスピードが落ち、変わってコールされたミサイルランチャーが両肩と両脚に出現する。

【打鉄弐式がミサイル発射態勢に入ります、マルチロックオンシステム起動、サポートに入ります】

『ほぉALM社の二連M・M・Lマルチミサイルランチャーだな』
『強いですか?』
『小学生みたいな質問だな…最高傑作とも言われてるベストセラー商品だ、特にFCS…ロックオンシステムが優秀でな』
『さようですか!』
『おい』

 四つのランチャーから二発のミサイル…計八発が一斉に発射。
 それらは緩い弧を描いて眼前の箒星に殺到する。
 丹はそれを気にはしなかった。八発程度ならば、回避は容易い、馨を追い詰める片手間でも十分だった。
 だが

『あの程度の数では…馬鹿な分裂ミサイルだと!』

 解説が叫ぶと同時にミサイルの外殻が割れ、そこから四発の小型ミサイルが飛び出す。
 8×4…合計32発ものミサイルが文字通り驟雨のように箒星へ襲い掛かる。

『くっ』

 いきなり四倍に膨れ上がったミサイルに、さすがに丹は回避行動に入らざるを得ない。

『…未完成と聞いていたが、あの数のミサイルを制御するとは見事だな』
『すごいんですか?』
『優秀とは言え、あの半分が精々だ元々のロックオンシステムではな』

 観客席でも、専用機持ちの三人娘達が言葉を失っていた。

「ありえませんわ…」
「手動で補助したって精々20が限界よ」
「そうだね…僕もそれぐらいが限界かな」

 素人の悲しさで、三人が深刻な理由が分からない、一夏がのほほんと質問する。

「じゃぁ残りの12発はどうやってんだ?オートか?」
「だから無理だっていってるでしょう!馬鹿一夏!」

 怒鳴られた一夏はとりあえず口を噤むことにする。

「まさか…」
「お、なんか分かったのかシャルル?」
「たぶん、嶋野さんが制御してるんだ」
「あ、そうだな一人で無理なら二人でってわけか」

 得心が言った様に一夏がぽんと手を叩く。

「それこそ有り得ませんわ!他人の発射したミサイルですわよ!」

 セシリアが悲鳴のような声でシャルルの説を否定する

「掃星に特殊なシステムが搭載されてるのかもしれない」
「仮定そうだとしてもよ?見なさいよ!馨の奴、丹の回避を邪魔するように飛び回っているじゃない!」

 鈴の言うとおりだった。
 大量のミサイルを制御するべく、停止し空中に浮かんだコンソールを二つ使いミサイルの軌道を制御している簪と違い、馨は飛行を続けており、複雑な機動を取り丹の邪魔をしている。
 十発以上の他人の発射したミサイルを制御しながらあんなマネは出来ない。

「まさにダークホースだね」

 三人の代表候補生達の目つきが代わる。
 いまいち何が凄いのか分からない一夏と箒だけが置いてきぼりで、きょとんとしていた。



(/ロ゜)/


「(山嵐だったっけ…これはなかなかむずかしそうだなぁ)」

 大量のミサイル攻撃というのは弐式に搭載予定の兵装を模したものだ。
 というか基本的に弐式の兵装は、荷電粒子砲にしろ、薙刀型の近接兵装にしろ、弐式に搭載予定の兵装を、既製品で再現してあるのだ。
「良く似た兵装の使用を“経験”するのはいいことだよ」と馨が簪に勧めたのだ。
 とはいえいかに最高傑作と称されるものでも、既製品にはこの数のミサイルを制御するは不可能だった。
 しょげる簪に対して馨は言った。

「まぁ一人で無理なら二人でやればいいんじゃない?ヒーロー物の王道おやくそくだよね?」

 実の所シャルルの推測は当たっていた。
 簪が手動も含めて制御しているミサイルは二十発。
 残る十二発は馨の掃星が制御していた。
 掃星搭載の特殊なリンクシステムによるものである。
 通常のFSCリンクとは違い
 ハイパーセンサーともシンクロし、情報を共有するこのシステムを起動すれば、他人の放った誘導兵器のサポートはもちろん。視覚などの感覚の共有すら可能となっている。
 今馨は掃星のハイパーセンサーが知覚している情報と、簪の弐式が知覚している情報を持っている。
 元々後方も“視える”ハイパーセンサーだが、弐式の視覚を共有しているため、自身を俯瞰するような、例えとしては正確ではないがTPS…サードパーソンシューティングの画面のように、自身を見て“も”いる状態だった。

「(やっぱこれ気持ち悪いなぁ)」

 脳の方の処理が追いつかないのだろう、機体が補助してくれているが、初めてハイパーセンサー越しに世界を捉えたような気持ち悪さが襲ってくる。
 長くは続けられないな、と思いつつ制御化にあるミサイルコマンドを送る。

『簪ちゃん、対閃光防御よろしくー』

 馨の制御可にあったミサイルの内四発が自爆。
 強烈な閃光を周囲に撒き散らす。

『目がー!目がー!』
『うるさいぞ実況』

 実際問題として、その閃光は観客達にも相当眩しかった、一応アリーナのシステムが感知してシールドにフィルターをかけているのだが、それでもかなり眩しい。
 当然、最大の被害者はシールドの内側に居る丹である。
(ハイパーセンサーで試合を見ていた約数名も似たような被害にあっている)
 すぐさま箒星のシステムが防御したが、一瞬視界が真っ白に染まる事は避けられない。

【警告:対閃光防御によりセンサーの感度が一時低下します】

 箒星の警告。
 丹にできるのは、精々飛び回って攻撃が当たらないようにすることしかない、センサーによって増幅されている感覚は、丹を熟練の剣豪に変える、視界程度はハンデとしては小さい。
 しかし馨はさらに八発のミサイルにコマンドを送る。
 コマンドを受け取ったミサイル達はそれぞれ赤、黄、青、白のカラフルな煙幕を吐き出しながらアリーナ内を飛び回り始めたのだ。

【警告:ジャマー型ナノマシンを感知、センサーの感度を増幅します】

『馨!』
『ごめんねマコトちゃん』

 閃光による目潰しと、煙幕によるジャミング、あくまで正面から戦うつもりのない馨に丹が怒りの声を上げる。

【警告:】

 箒星の警告が完了するよりも早く、丹の全感覚を激しいノイズが襲う。

【警告:対電子戦防御オートスタート、センサーをセーフモードで再起動します…掃星をロスト警戒してください】

 センサーは打鉄弐式を感知していたが、馨の掃星を見失っていた、ステルスを発動したのだろう、先日の実習で教官を翻弄したいた姿が思い浮かぶ。
 あの時は「またバカやって織斑先生に叱られるわよ」程度にしか思っていなかった。
 しかし、自身が自分がやられるとひどく堪えることを丹は実感していた。
 敵がまったく見えない恐怖は、一度ハイパーセンサーの超感覚を享受した身にはあまりに辛かった。

【警告:外部より不正アク―――】

 唐突に掃星のシステムが沈黙する。
 エラーを告げるシステムメッセージがディスプレイを埋め尽くす、恐怖に駆られ体を動かそうとしたが、既に箒星は強化甲冑パワード・スーツではなく、まるで拘束衣ストレイト・ジャケットのように、重く丹の体を縛り付ける枷と化していた。

「チェック・メイトだよマコトちゃん」

 通信では無く生の馨の言葉が耳を打つと同時に、最後の砦だった操縦者保護システムがエラーを吐き出した。
 後100少々残っていたシールドエネルギーがいきなり0になった。
 同時に試合終了を告げるブザーが無情にも鳴り響く。
 アリーナのシステムが箒星のシールドエネルギーが0になったことを感知したのだ。
 未だ煙幕がアリーナ内を覆っており、外部からは状況は分からないが、アナウンスはこの試合を馨・簪組が制したことを告げると、会場がどよめく。
 
『ピカっと光った後に、試合場が煙幕に包まれ、さらに機材にノイズが走って、わけがわからないうちに試合が終わってしまいました…』
『面白い戦い方だったわね』
『一人で納得してないで解説をお願いします』
『まず閃光ね、視界を殺すというよりは、ISの自動防御システムが、センサーの感度を落すのを狙ったのね。
 続いてスモーク、あれはただのスモークじゃなくて、センサーへのジャマー効果のあるナノマシン入りスモークね、レーザー兵器の防御にも使えるタイプ』
『はぁ』
『スモークへの対抗としてセンサーの感度を上げて敵を捉えようとしたところ、人間で言えば目を凝らして耳を澄ましたところに、止めののEA、強力なジャミング攻撃ね、機材がノイズを吐いたのはその余波よ』
『ほうほう』
『一言で言えば、目元をひっぱたかれた直後に、更に目突きをくらって、とどめに眼球を抉り出された感じね』
『最悪ですな』
『見事にエロい作戦ね』
『どこにエロスがあるんでしょうか!』
『ばかねぇエロティックって意味じゃないわ、えげつない、ろくでもない、いやらしい、の頭をとって「え・ろ・い」よ』
『あの…褒めてるんですか?』
『もちろんよ、十年に一人の逸材ね、絶対に我が部に入れるわ』
『はぁ…そうですか、さて気になるその嶋野選手のISですが…あ情報が今入りました、やはり新型のようですね登録名は【掃星】はばきぼし箒星同様彗星の和名の一つですが、それ以外は不明です』
『第三世代機だろうけど、試合からはどんな第三世代兵装を搭載してるのかさっぱりわからなかったけわね』
『いやーこれは準決勝が楽しみになってきましたね』
『その物言いは他のペアに失礼よ、まだ第五回戦もあるのだから』
『おっとこれは失礼しました、皆さんがんばってね?』
『まったく…』

 そんな実況と解説の漫才を聞き流しながら、馨は動けなくなった箒星を抱えてピットへと戻っていた。
 簪は同様に蓮と打鉄を抱えて反対側のピットへ向かっている。
 機体を床に下ろし、丹が降り易い様にと、馨は掃星の腕部を伸ばし踏み台にする。
 そんな馨に対し、ずっと俯いていた丹が、顔を上げて怒鳴る。

「どうしてよ!」

 湿り気を帯びた声。
 その目じりには堪え切れない涙が浮かび、頬を伝い落ちてゆく。
 それを見てしまった馨が狼狽する。
 
「ど、どうしたの?どっか痛いの?すぐに医務室に――」
「違うわよ!バカオル!」
「バ、バカオルってなにー!」
「なんで、ちゃんと戦ってくれないのよ!できるでしょう?」

 握り締めた丹の拳が馨の顔面を襲う、ひぃっと悲鳴を上げて馨が首を逸らす。

「よけるな!」
「むちゃいわないでよぉ」
「だって!だって!」

 泣きじゃくり始めた丹を、馨はそっと箒星から引きずり降ろし、自身は掃星の展開を解除して、そっと丹を抱きしめる。
 その胸をドンドンと無遠慮に丹が叩く。
 ぐえ、と蛙のつぶれたような声を上げながらも、馨はやせ我慢しつつ丹の背中をさすってやる。

「ごめんねぇマコトちゃん、でもさぁ」

 ばつが悪そうに頬をかきながら、馨は言う。
 あまり褒められた戦い方でない、という自覚は馨自身にもある。
 だが…

「僕、女の子を殴ったりとか出来ないし」

 丹の足が、思い切り馨の足を踏みつぶす。
 ぐりぐりと容赦なく捻ってくる。

「イタイですマコトさん」

 誤魔化したわけでもなく、馨は本気だった。
 このフェミニストは直接的に女性を攻撃することができないらしい。
 長い付き合いの丹はそれ理解できる。
 理解はしたが、納得はしがたい。
 銃で撃ったり、こちらの脳みそをフライにするようなジャマー攻撃はいいのかとなじる。

「あんまり良くないよね…だから僕は整備科志望なんだって…一夏なら平気なんだけど」
「準決勝はどうするのよ、鈴とセシリアさんでしょう?」
「まぁ頑張るよ、まだ掃星は全力全開ってわけじゃないからね」
「最後のアレはハッキングよね、どうやったの」

 起動中のISにどうやってそんなことができたのか、普通は無理である。

「あれはぶっちゃけると、箒星のシステムにバックドアを仕込んであったから」
「へぇ」

 まるで狙ったように、最悪のタイミングで夜子がピットに現れた。

「オ、オカアサマナンノゴヨウデショウカ?」
「玄人向けの試合をしてくれたわねぇ馨」
「オホメニアズカリキョウエツシゴク」
「たっぷりとご褒美をあげなきゃねぇ…」
「アハ、アハハハハハ、ケッコウデス」

 蛇に睨まれた蛙の如く、がくがくと震えながら、抱きしめていたはずの丹に逆にすがりつく馨。

「あのおばさま」
「丹ちゃんはさっさと医務室にいきなさい?ちゃんとアイシングしないと酷い目にあうよ?」
「はい」
 有無を言わさぬ様子で夜子が命じる。

「僕もアイシング――」
「お母さんが手伝ってあげるから、あんたはこっちねぇ」
「いやぁぁぁぁぁぁ、たすけてまことちゃぁぁぁぁぁぁん」

 そう叫びながら馨はアリーナの暗い廊下の先へと消えていったのだった。
 合掌。
 





\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「いや別に普通にバックドアの件だけ怒られただけだよ?ほんとだよ?」
「私の目を見て話しなさいよ」
「ホントダヨ?」








後書き:お久しぶりです、えらく難産でした。
(八月中は仕事が忙しかったのもあるのですが)
次回は準決勝、鈴&セシリア組との試合になります。



[27026] いよいよ準決勝!
Name: madoka◆5b5f0563 ID:6be04712
Date: 2011/10/07 05:06
「まずいですわ」
「まずいわね」
「碌なデータが取れませんでしたわ」
「相変わらずやり方汚い奴…」

 第五試合も終わり、いよいよ明日からは準決勝である。
 大方の予想通り、準決勝に駒をすすめたのはシードの四組。
 その記録データを持ち寄り検討していたセシリアと鈴は思わず唸った。
 二人は優勝(一夏とつきあえる)に向けて猛特訓をしていた、もちろん仮想敵はラウラである。
 他の有象無象など眼中になかった。
 お世辞にも相性は良くない二人だったが。そこは代表候補生である、徹底したコンビネージョン訓練を積んだ結果、二人のペアは強かった。
 実際第四試合、第五試合の相手など一切寄せ付けず勝利している。
 一方のラウラ・箒組は、ひどいものだった、コンビネーションも何も無い、一対一を二組でやっているだけ、速攻で対戦相手を下したラウラが、箒に横槍を入れ、あっさりと試合は終了していた。
 一夏とシャルルのペアは逆に中々のコンビネーションを見せていたが、これは一夏にシャルルが合わせているだけ、と直ぐにわかった。ならば付け入る隙は有る。
(そもそもこのペアと戦うのは、この二人がラウラに勝った場合だ。)

 問題は馨と簪だった。
 第四試合の衝撃も覚めやらぬ第五試合。
 どんな戦いを見せるのか、何か別の意味で期待して観衆をさっくりと裏切り、開幕の全力奇襲(ジャマー&フラッシュ→ミサイルの雨)、一瞬で試合を終わらせやがった。
 結局データは取れなかった。

「そちらのお国の方はなんと?」
「時間とデータが足りないって」
「…同じですのね」

 本職の分析官からしてこの有様だけに、二人もお手上げだった。

「あ、そうだ」
「なにかいい方法がありまして?」
「聞けばいいじゃない、実際に戦った連中に」



(/ロ゜)/



「それは負け犬である私への嫌味かしら」

 自室に二人を迎えた杉浦丹は、冷めた目で二人を迎えた。
 長身(身長170cm)の丹からは、自然見下ろす形になる。
 剣道の有段者が放つ、静かな威圧感に思わずたじろぐ二人。
 しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。

「お願い丹!あんた以外に馨と五分に張り合った奴はいないんだもん!」
「お家の事情はわたくしも理解しておりますわ!機体の機密などといいませんから、なにか攻略のヒントを!」
「嫌よ、私はそんなに安い女じゃないわ」
「けちっ!」
「鈴さんっ!」

 思わず叫んだ鈴を、セシリアが嗜める。
 こちらは教えを請う側なのだ。

「直接カオちゃんに聞いたら?可愛らしくねだったり、色仕掛けすればあっさり教えてくれるわと」
「それが出来たら苦労は有りませんわ!」
「あんただって知ってるでしょ!馨はボーデウッィヒと同室なんだから!」
「何を言われるか、わかったものでは有りませんわ!」

 そんなこと知らないわよ、と丹は冷たく切って捨てた。
 その様子に、ベッドでゴロゴロしながら、カ○リーメイトを齧りつつ、剣道日本を読んでいた、ルームメイトの大滝蓮が助け舟を出す。

「まぁまぁ丹、こんなに一生懸命頼んでるんだから、少しくらい――」
「蓮」
「はひっ!」

 底冷えのする声で丹が蓮の名を呼ぶ。

「ベッドで物を食べるのは止めなさいって言ってるでしょう」
「ごめんな――」
「ゴキブリ出るわよ」
「やめてぇ!ゴ…とか言わないでぇ!」

 蓮はあの黒いニンジャ蟲が大の苦手だった。
 助け舟あえなく撃沈。布団をかぶってガタガタ震え始めました。

「…私はこれから独り言を言うわ」
「へ?」
「貴方たちは図々しくも、人の部屋で作戦会議を始めた。それを聞いた私は、独り言を言うわ、それをどうとるかは貴方達の自由よね」
「えっと、いいの?」
「私にもねプライドってものがあるのよ、それをズタズタにされた、意趣返しくらいしても、罰は当たらないでしょう?

 剣呑な光を宿す丹の瞳と、地獄の底から響いてくるような暗い声に、恐怖を覚えた鈴とセシリアが思わず抱き合う。

「さぁて、まずは傾向と対策からいきましょうか?」

 藪を突付いて蛇を出す。
 そんな感じの事態になった。








\(゜ロ\)(/ロ゜)/








『学年別個人トーナメント、一年生の部も、い~よ~い~よ準決勝です!
 第一試合、更識簪・嶋野馨の国産・大和撫子コンビVSセシリア・オルコット・鳳鈴音の中英代表候補生コンビの対戦開始まで、後五分となりました!
 実況は放送部のスーパールーキー、一年三組有川響が努めさせていていただきます!
 解説はすっかりお馴染みとなりましたグートルーネ・ロートリンゲン先輩です!』
『ところで次の試合は別の者が解説らしいが、どういうことだ?ドイツの代表候補生の試合なのだがな』
『だからですよ、身内贔屓の解説されても困るんで』
『ちっ』
『えー舌打ちする姿もお美しい先輩。この試合はどうなりますでしょうか?』
『知らんよ、結局の所、嶋野の掃星の実力が未知数すぎる。そこをひよこの中ではベテラン中のベテランである代表候補生コンビがどう料理するかにかかっている』
『左様ですかー』
『私だ。次の試合の録画の準備は大丈夫か?貴様はラウラたん担当だ、ヘマをしたら…分かっているな?』
『先輩、真面目にやって下さい』
『私は真面目だぞ』
『…えー、先輩が各ペアの立場でしたらどんな戦術を取られるかだけでも』
『そうだな、極めてオーソドックスにいく。対戦相手の弱い方を落として、二機掛かりでもう一機を仕留める』
『タッグマッチの王道パターンですね』
『ああ、代表候補生ペアなら更識に凰をあてる』
『ほう、その心は』
『機体相性の問題だ。まだ調整中のオールレンジ・スピードタイプの【打鉄弐式】は。実戦仕様のクロスレンジ・パワータイプの【甲龍】と相性が悪い』
『なんとなくわかります』
『一年にしてはよく勉強しているな。オールレンジタイプというのはよくも悪くも器用貧乏だ。そしてスピード重視のため防御力に劣る。そこに近接パワー型に張り付かれたら…ジ・エンドだ』
『しかも弐式はまだ未完成で不安定なのに対し、甲龍は安定性や燃費がすこぶる良いわけですもんね』
『加えて衝撃砲という厄介な兵装も積んでいる、ただの近接型だとスピード型に追いつけず翻弄ということもあるが、この見えない砲撃はそれをひっくり返す良い手札だからな』
『なんというか中国さんはソツが無い機体なんですね』
『爆発力では劣るんだがな。この場合はオルコットがいかに嶋野を足止めできるかに掛かってるが、これはやってみないとわからんのはさっきも言ったとおりだ、掃星のデータが足らん』
『はい、で日本人ペアとしてはどうしたらよいのでしょうか?』
『まぁそのパターンに嵌らないようにすればいいので、割と選択肢は多いぞ。
 更識が踏みとどまり、嶋野がオルコットを先に倒すパターン。
 ルコットに更識が、嶋野が凰を抑えてそのまま一対一の形に持っていくという手もあるな』
『相手が代表候補生である以上、楽勝というパターンはなさそうですね』
『そうだな、ただ私としては取れるオプションが多い方が楽しくて好きだがな』
『そうですねー織斑君みたいに、なんとかして近接して切りつけるしかないとか、可哀想ですよねぇ』
『単純ゆえにおくが深いのだぞ。ブリュンヒルデはそれでモンド・グロッソに優勝している』
『ははは、一緒にしちゃ可哀想ですよ』
『おまえさらっと酷いことを言うな』





\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「弐式の調子はどう?」
「…問題無い…かな?」
「良かった、今日はハードな試合になるからね。弐式にも頑張ってもらわないと」

 そういって馨は弐式を優しく撫でる。
 グートルーネの解説を聞き流しながら、馨達はアリーナで対戦相手が出てくるのを待っていた。
 第四、第五では抑えていた各出力や、隠しておいた兵装も、相手が相手だけに出し惜しみをする余裕は無い。
 最近では、授業で山田先生に翻弄され、ラウラにこてんぱんにされていた二人だが、学園では最強の一角であることに変わりは無いのだ。
 キチンとコンビネーションを取れば、近距離型と射撃型で互いの足りない所を補う、強烈な組み合わせだ。

「でも…本当に作戦通りでいいの?」
「心配してくれれるの?優しいなぁ簪たんは」

 最近周囲の女子が優しくない馨は「うっうっう」と妙な泣きまねをする。

「凄く怒られるとおもうけど…」
「まぁ大丈夫、慣れてるから」

 やっぱドMなんだ、と内心では酷いことを思いつつ、簪は事前に決めた作戦の「ヒドさ」に躊躇いを覚える。
 ただ、そうでもしないと勝てない相手だ。
 政府関係者からも、「日本代表候補生が中国代表候補生にあっさり負けては困る」ということがやんわりと言われている。
 そのクセ「勝っても困る」という意見もあるのだから度し難い。その辺を汲んだ作戦を馨が立案したが…つくづく馨とパートナーで良かったと思う簪だった。
 そんなことを考えていると、対戦相手の二人がピットから出てくる。

「馨!」
「なぁに鈴ちゃん?」

 少々険の有る声音で鈴が呼びかけてくる。

「負けなさい!」
「堂々と無茶言わないで」
「わたくしたちには負けられない事情が有るのですわ!」

 それ代表候補生だから、というよりも「優勝したら一夏と付き合える」の方に重きをおいてますよね?
 目が乙女だ。

「えー私も勝たないとラウラさんに嫌われちゃうんで、負けられませんよ?」

 ラウラの名前を出された、二人の顔が怒りで引き攣る。
 激昂しそうになり、はたとこれが馨の作戦だと気がつく。
 二人は平常心、平常心と念仏のように唱えながら、馨を睨む。 

「だからお互いに正々堂々と良い試合をしましょ?観客の皆さんを沸かせる素敵な試合をね」

 大げさな仕草で観客にアピールする馨。
 会場のスピーカーへと、わざと音声を流している。
 傍目には美男子であり、成績優秀、社交性もある、と一見して完璧臭い馨は、その性格ゆえに、案外とっつきやすく、生徒の好感度はけして低くない。(まぁ好きなお笑い芸人、程度の感覚なのだが)
 観客がわっと沸き、馨を応援する声が上がる。
 観客を味方につけるパフォーマンス。正々堂々が聞いて呆れる行為である。

「くっ」

 表情をゆがめたセシリアが、すぐさまそれを笑顔にかえ、優雅に観客にアピールする。
 キャーと黄色い歓声が上がる。観客の大多数である日本人は妙に欧米人…金髪美人に弱いのだ。
 セシリアはその大人っぽい容姿で、同級生の一部から「お姉さまになって欲しい」というファンも居る。

「やるねセシリアさん、さすがだ」

 セシリアと馨に促され、鈴と簪も無理矢理観客に愛想を振り撒かされる。

『ふむ、中々エンターテイメントというもの分かっているではないか、一年坊主にしては』
『そうですねー。また皆美人さんなので華があります』
『金髪ドリル、ツインテロリ、メガネっ娘、ボーイッシュと中々に壷も押さえているしな、どこのギャルゲーだ?』

 グートルーネの言いように鈴が「ロリで悪かったわね!」と怒鳴り、また会場が沸く。
 笑顔を振りまくセシリアも内心穏やかではない。
 全てはこちらの平常心を煽る心理戦。とんだ場外プロレスを仕掛けてくる馨に、きりきりと胃が痛む。
 先月のクラス対抗戦で見せた馨の「口プロレス」も警戒しなくてはならないし、普通にIS戦闘してくれない敵がこんなにも厄介だとは、想像以上だった。

「さて後30秒で開始だね…お姫様方、僕と一緒にダンスを踊ってくれますか?」

 馨のセリフが終わるのと同時に試合開始のブザーが鳴った。

「お断りよ!」

 試合開始のブザーと同時に、鈴はグートルーネの予想を無視し、低空を這う様に馨目掛けて強襲をかける。

「馨ちゃんは、バカだから女の子を殴れないのよ」

 昨夜の丹の独り言。
 馬鹿馬鹿しいと思いつつも、先月のクラス対抗戦の際、散々模擬戦をした鈴には、思い当たる節があった。
 あの時は箒星を使っていた馨だったが、近接戦闘用のパッッケージを量子変換した際も、一度たりとも、鈴に近接兵装を叩き付けたことは、確かに無かった。
 馨の近接戦闘能力は決して低くはない、こと防御に関して言えば、1ランク上の実力がある。

「バカだよね」

 女の子を殴れない。
 何が馨にそうさせるのかは鈴には理解出来ない。
 だが、いかにも馨らしい。

「だからって遠慮はしないんだからねぇ!」

 低空を行く鈴とは逆に、セシリアは高度を取る。
 スターライトmkⅢ、を構え、鈴の突撃を援護する。
 二人は共に、馨の電子攻撃に備え、機体の対電子攻撃防御能力を最大に設定してある。
 少ないデータからでも、掃星の電子戦能力が高いこと、馨がそういった絡め手を好むことが分かっていた。
 丹の「馨が女性にたいして直接的な攻撃手段を好まない」といった助言もあり、パートナーである簪に攻撃役を任せることは容易に想像がついた。
 だが。
 対する馨の行動は、残念ながら、二人の予想とは少々違った。



(/ロ゜)/



 開始のブザーと同時に、馨は掃星を打鉄弐式を庇うように、隠すように、その眼前のに立ちはだかる。
 センサーをシンクロさせる特殊システムは既に起動済み。
 弐式は両肩、両脚、両椀、計六基ミサイルランチャーをコールする。
 各ランチャーから二発ずつ放たれた大型ミサイルは、即座に四発の小型ミサイルに分裂、合計四十八発のミサイルが嵐の様に、鈴とセシリア目掛けて殺到する。

「ミサイルくらいで!」

 甲龍の衝撃砲「龍咆」が音も無く、しかし猛烈な威力を持って放たれる。
 わざと収束を甘くし、ショットガンのように拡散して放たれた衝撃が、甲龍に向かって来たミサイルの群れを容赦無く蹴散らす。
 セシリアも、スターライトmkⅢの持続射撃モードでミサイルを薙ぎ払う。
 長大なレーザーの刃のように、振るわれた火線に触れたミサイルは目標に迫ることも出来ず、次々と爆発していく。
 どやっ!と言わんばかりのセシリアの表情が、機体からの警告で一変する。

【警告:大気中にジャマー型ナノマシン、レーザー撹乱幕の形成を検知】

「しまっ」

 先日の試合で見せた派手な煙幕とは違うが、ミサイル爆発の煙に紛れ、薄い靄のような物が試合場を覆っていく。

「あんたは本当にこうゆうのが好きなのねっ!」

 靄を突き破り、甲龍が掃星に迫る。

「有効な戦法だからね」

 てっきり接近されないように距離をとるかと思われた馨は、その場で鈴を迎え撃った。
 とはいえ、近接兵装をコールするわけでもなく、両腕を構え(ウルト○マンのポーズ)ただけだ。
 何故距離を取らないか。不気味に思いつつ、鈴は連結型青竜刀<双天牙月>を馨の脳天目掛けて振り下ろす。
 PICを使った、スウェーバックで大振りの一撃を馨は回避する。
 カウンター気味に拳を突き出そうとする馨の機先を制し、さらに鈴が畳み掛ける。
 双刃という特性を利用し、大型武器の欠点である、ストロークを最小に保った、連続攻撃。甲龍の得意パターンである。
 完全に甲龍のレンジであるクロスレンジに囚われた掃星は、防戦一方になる。

「そんなにくっついたらセシリアさんが援護できないけどいいのー?」

 連撃をなんとか回避しつつも、馨は気安い口調で鈴の話し掛ける。
 鈴は馨がそこに留まった理由を察していた。
 機体が打鉄弐式をロストしたことを警告する。
 周囲に展開したジャマー煙幕に紛れて、弐式がステルスモードに入ったのだ。
 上空のセシリアが必死に探索しているが、結果はあまり芳しく無いらしい。
 掃星が強烈なジャマーを垂れ流し続けているからだ。

「(あたしの攻撃を回避しながら、電子戦…掃星って電子戦型なのかしら)」
「鈴ちゃーん、おしゃべりしようよー」

 相変わらず馨は、防御は上手い、内心で舌打ちしつつ、鈴は返事はしない。
 口プロレスなどと言われる馨の口撃、本当は遮断したいところだが、この距離では通信するまでもなく、肉声で声が届くのでどうしようもない。
 できるのは平静を保ち、無視することだけだ。

「無視はひどいよ」

 はんべそのような口調で言いながら、僅かな連撃の切れ目を突いて離脱しようとする掃星に、鈴は龍咆を叩き込もうとした。
 乾いた電子音がエラーを告げ、衝撃砲のロックオンが外れる。
 かまわず鈴は見えない砲弾を放つが。直撃はしない。
 僅かに掠ったようだが、頑丈だと聞いていた掃星の装甲に損傷は見られない。

「ロックオンジャマー!?」
「ぴんぽーん」
「くっ」
「丹ちゃんから入れ知恵されたみたいだけど、そのことが分かってれば対処の使用はあるんだよ?」

 こちらの戦法がばれれば、あちらの取るべき行動は予測しやすくなる。
 丹の口から、馨が近接戦闘を避けることが分かれば、鈴が馨を抑えに来るのは想像がつく。
 それは確かに正しいの戦法なのだが、一つ問題が有ることを失念している。
 馨が仕掛けた情報戦に焦るあまりの、ちょっとしたミスなのだが。
 鈴が馨を抑えるとなると、必然セシリアの相手は簪がすることになる。
 万能型の弐式は、射撃型に偏っているブルーティアーズにとって、けして相性が良くないということを。

「なんで知ってんのよ」
「うーん、二人が丹ちゃんの所にいくかなーって思ったから、予め蓮ちゃんを買収しておいたの」

 カロ○―メイト十個分で。
 あの時、ベットで齧っていて丹に叱られたアレか――
 学園の購買では一箱150円、十箱で1500円、安い。

「いちいちやることがセコイのよ!」

 抑えがたい怒りのあまり、鈴が怒鳴る。
 元々鈴は、怒りの沸点が低い方だ、理性は「平常心、平常心」と叫んでいるが、どうにもならない。
 そこへ――

『りりり鈴さん!ヘルプミーですわ!』

 ステルスモードの弐式から奇襲を喰らった、セシリアの泡を食ったような通信が入る。
 先日の授業で恥をかいたというのにかかわらず、相変わらず近接戦闘への切り替えが遅いセシリアに、イライラが増す鈴。

『無理よ!今後を見せたら馨に何されるかわからないわ!』
『そうですけど!』
『あんたも代表候補生なんだから!そのくらい何とかしなさいよ!』

 鈴は素早く作戦を考える。
 セシリアが粘る間にまず馨を下す。
 機体の相性を考えれば弐式相手に自分が遅れをとることは無い。

「(問題は馨をいかに早くリタイアさせるか!)一般生徒と同じ作戦で勝てると思わないことよ!」
「タッグマッチでは基本的な戦法だと思うけど?」
「うるさい!」



(/ロ゜)/



 怒鳴りつけてきた鈴に苦笑しつつも、馨は次の一手を打つタイミングを計っていた。
 鈴が予想した通り、掃星は電子戦などを得意タイプISである。
 一対一が基本の競技用ISとしては非常に珍しいタイプだった。
 元々SHIMANOで防衛省からの要請があって試作していた軍用第三世代型機、色々あってお蔵入りした機体…ということになってる。

「(本当はどうなってるんだか…)」

 鈴の攻撃に耐えながらも、センサーリンクで簪とセシリアの戦闘の推移を注意深く観察する。
 弐式の薙刀が閃き、一基、また一基とビットが破壊される。
 やはりブルーティアーズは接近されると苦しいようだった。
 小剣型の近接兵装<インターセプター>で致命的な一撃こそ防いでいるが、セシリアが圧されている。
 一方でこちらはといえば、甲龍の猛攻を凌ぎきれず、シールドエネルギーは1/3近くまで減らされている、だがまだなんとかなる。

「やっぱり鈴ちゃんは強いねぇ」
「おだてても手加減はしなわよ!」

 本心からの言葉だったので、すこし馨はしょぼん、とする。
 そして、攻撃を開始した。
 脳裏でトリガーを引く。
 別に銃を撃ったわけでも、ジャマーを発したわけでもない。
 ただ通信を送っただけだ。

『鈴さん!後ですわ!』

 秘匿回線プライベート・チャンネルでセシリアが警告してくる。
 何事と後に意識を向けたが、そこには無いも無い。

『ちょっとセシリア!』

 意識を向けたセシリアの動きが、一瞬完全に停止する。
 ぽかん、と間抜けな顔をしたセシリアに簪の一撃が突き刺ささる。
 寸での所で、引き上げたインターセプターで防御、しかし撥ね上げられた弐式の薙刀によって弾き飛ばされ明後日の方向に飛んでいく。
 武器を失ったセシリアの顔から血の気が引いていく。

『セシリア!何をぼっとしてるのよ!』
『だって一夏さんが!』
『何を言ってんのよ!』

 怒鳴ってもどうすることも出来なかった、かろうじて拮抗していた天秤が、弐式へと傾く。
 鈴は冷徹にセシリアを切り捨てることを決めた、セシリアが悪あがきをしている間に、馨を落とさなければこちらが負ける。

「馨あんた何をしたのよ!」

 セシリアが完全に動きを止めた一瞬。そして不可解なセシリアからの通信。
 何かを馨が仕掛けたのだ。

「こうしました」

 楽しげな声で馨が言うのと同時に、再びの秘匿回線プライベート・チャンネル

『鈴、好きだ』

 囁くような一夏の声。
 鈴がフリーズしたのは言うまでも無い。
 その隙を突いた掃星が甲龍に組み付く。

「いまのは…」
「合成した一夏の声だよ、そっくりでしょ?」
「ふ」
「ふ?」
「ふざけんなぁぁぁ!」

 怒り狂う鈴が暴れるが、残念ながら甲龍は完全に掃星によって拘束されていた。
 器用なことに、馨は掃星の腕部をPICで保持したまま、生身の腕で鈴に抱きついてくる。

「は、放しさいよ!」
「女の子は殴りたくないから近接戦闘は苦手だけど…女の子とくっつくのは嫌いじゃないんだよね」

 すすすと馨の手が鈴の頬と腹部を撫でる。

『なんかエローイ!ことになってます!』
『いいぞ、もっとやれ』

 実況よ解説もなにやらヒートアップしていた。

「放せ!放しなさいよぉ!」
『嫌だ!鈴から…放れたくない!』

 なにやら熱烈な一夏のセリフ、しかし現実を考えれば、虚しいばかりである。

「乙女の純情弄ぶなぁぁぁぁぁ」

 半泣きで叫ぶ鈴。

「やだ弄ぶなんて、鈴ちゃんのエッチ」
『鈴のエッチ』

 波状精神攻撃に、鈴のMPがゴリゴリと削られていく。

「コロス…ゼッタイニコロス」

 正気を失った鈴は散々暴れるが、どうやっても掃星が引き剥がせない。
 見れば、掃星の装甲の一部がまる液体のように溶け出し、甲龍を拘束しているのだ。
 さらに触手の様なものが伸び、甲龍の各部へと侵入していく。
 どうやらケーブルのような役目を果たしているのか、有線接続された甲龍のシステムに対して馨が攻撃を開始する。
 甲龍のシステムは外部からの不正アクセスを警告するが、その間にも、馨のお触りと一夏の囁きが繰り返され、鈴にはなす術も無い。

『なんというか外道ですね』
『エロイな』
『ああえげつないとかいう』
『いや普通にエロイだろアレは、おオルコットが、がんばるようだぞ?』

 多少鈴を巻き込んでもやむなし、甲龍に張り付く掃星を引き剥がそうと、ブルーティアーズのビットが掃星に照準を据える。
 それも四基全て、セシリア本人は簪の猛攻を防ぎながら、入学当初には出来なかったビット全基と機体の同時制御に成功していた。

『鈴さんをお放しなさい!』

 ほぼ完璧な奇襲。
 精密狙撃は、甲龍には掠りもせず、四条の光線が掃星に突き刺さる。
 単純に火力という意味では白式の雪片弐型に次ぐ、四基同時攻撃。
 普通ならば、大ダメージを受けてしかるべき、一撃。
 だが、まるで何事も無かったのように、掃星はその攻撃を受け止め。そして平然としている。
 変わりに、まだシールドエネルギーの残っていたはずの甲龍の敗退が告げられる。
 摩訶不思議な光景に、誰もが思わず首を傾げる。

『先輩!今のは一体何事でしょう!』
『…なるほど、あれが掃星の第三世代兵装か』
『え、納得してないで説明をプリーズです!』
『さっきから気になっていたんだが、見ろ掃星の装甲が溶け出したように、甲龍に絡みついているだろう』
『あ、はいなんか水銀みたいな感じですね』
『まさしくそれだよ。掃星は装甲表面を流体金属で覆っているんだ』
『流体…金属』
『特殊な液体金属をナノマシンで制御してるんだろうな、生徒会長の【霧の淑女】の水の装甲に良く似ている』
『あー日本人なのにロシアの国家代表だっていう生徒会長さんのISにですか』
『オルコットのレーザー攻撃もだが、外部からのダメージを流体金属全体に伝播させることで「受け流して」いるんだな、古臭い全身装甲はそれが目的か…』
『ほえー』
『良く見れば放熱用のパーツらしいものの周囲に陽炎も見える』
『なんか反則臭い頑丈さですね』
『そうだな、現行のISでは最強クラスの防御力を持ってるはずだ、シールドと併用すれば、装甲では受け止め切れないダメージもコントロールできる』
『ところで甲龍がリタイアしたのは』
『接触している部分からオルコットの攻撃で受けた熱量を流し込んだんだろう、絶対防御が発動したんだな』
『うわズル』
『お、オルコットが落ちたな。別に凰もオルコットも弱くは無いんだが、相手が悪すぎたな』
『そうですねぇ』
『さて、私はラウラたんの試合に供えてアップを開始するのでこれで失礼する』
『…』

 とにかく試合は馨達が勝った。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/







「カオルゥゥゥゥ!」「馨さん!」
「ひっ!」

 試合終了後、更衣室に襲撃を掛けた鈴とセシリア。
 簪は、二人の殺意に怯え、ロッカーの陰に隠れ震える。

「あ、二人とも乙カレー!どったの?」
「どったの?ではありませんわ!」
「カオル…コロスゥゥゥゥゥ」
「きゃぁ♪」

 フォ○スの暗黒面に落ちた鈴がヤバげである。
 馨に飛び掛り首を絞めようとする鈴の両腕を掴んで、馨はうれしそうな悲鳴を上げて戯れている。

「正々堂々とか言って置いて、なんですのあの試合は!あとあの一夏さんの音声はどうしましたの!」
「コロスコロスコロス…」
「あれはトーナメントで使おうと思って、前から用意しておいた、特性ボーカ○イド『織斑イチカ』です、トークソフトだから歌は難しいけどね」
「お幾らなら売ってくれますの!」

 迷わずブラックカードを取り出すセシリア。

「セシリアァァァァァ!」
「きゃぁぁぁぁ!」

 抜け駆けをかましたセシリアに、鈴が矛先を変える。
 じゃれる二人を馨が羨ましそうに、指を加えて見ている。

「ちょ!馨さん、見てないで!助け!」
「欲しければ、あげますよ?」

 あっさりと言った馨に、鈴の動きが止まる。

「後で部屋に来てねー、ところでそろそろ一夏達の試合が始るけど、早く行かないと席が無くなっちゃうよ」

 はっとした二人。

「う゛~」

 鈴がきつい表情で馨を睨む。

「鈴さん!わたくしは先に行きますわよ!」
「くっ!待ちなさいよセシリア!抜け駆けするなー!」

 復讐よりも、一夏の試合の観戦の方が大事と判断したのか、ばたばたと観客席に向かう。

「やれやれ、さて僕らは機体の点検に行きますか」
「試合はいいの?」
「モニターで十分じゃないかな、それよりも明日の決勝に備えないと」
「ありがとう」
「どういたしまして」

 ちなみに『織斑イチカ』は、調教しないと本人そっくりにはしゃべってくれないなど知る良しも無い、鈴とセシリアだった。





[27026] (/ロ゜)/マクアイ
Name: madoka◆5b5f0563 ID:6be04712
Date: 2011/10/02 12:17

 うーむ。
 無事第準決勝には勝ったんだけどねぇ
 一夏&シャルルさん組VSラウラさん&箒さん組の試合で、事故が発生、大騒ぎ。
 なんか、いいところは全部一夏に持って行かれちゃった気がするんだよなぁ。
 ちぇー。
 三位決定戦と決勝戦は全て中止だし、トーナメントもこのまま続けられるかどうか…
 今、先生方が会議しているところだ。
 そんなわけだから、各国各企業の関係者へのケア(という名の対外工作)は、生徒会長を中心に、専用機持ち&代表候補生の仕事となり(つまりパーティで客寄せパンダしてたメンツね)。
 やたらと神経を使う仕事に辟易しました。
 皆して、ラウラさん件とか掃星の話聞いてくるし。例によって義父さんバリアーが発動して助かりました。
 ようやく開放されて、学園に戻ってきたけど、さすがに今日は風呂でゆっくり手足を伸ばしたい気分だね。
 ラウラさんは大丈夫なのかなぁ。と思いつつ寮へ向かう。

「馨!」

 うお箒さん、なんですか?なんで帯刀してるですか?真剣マジ
ですか?

「万が一トーナメントが続行されて!お前が優勝したら…わかるな?」

 でなくば斬る!
 と言わんばかりの迫力。
 というか鍔に手をかけるのやめて下さい、先生ぇ!ここに危険人物がいますぅ!
 はぁ…
 ふざけて一夏とつきますぅ、とか言いそうに見えるんだろうか、僕は。
 てか、簪ちゃんが一夏と付き合うと言い出したらどうすんですか?
 ま現状ではそれは無いか。
 弐式の一件で二三発殴られっても一夏は文句言えない立場だしね。
 興奮する箒さんを適当にあしらって、自室に戻る、さっきのでどっと疲れが増したよ…

「あ、ラウラさん、体はもう…て、なにしてんの?」

 ラウラさんが、端末に向かってなにやら百面相している。

『そうです隊長!そこで熱い接吻キスを!』

 通信画面の美人なお姉さんは、どちらさまですか?

「せ、接吻!だと…!?」
『そうです、これで織斑教官の弟君は隊長の「フラオ」です!』

 え?今、嫁とか言いませんですたか?

「ふむ、よしだいたいたわかった、ありがとうクラリッサ」
『隊長のお役に立てて何よりです』

 いや、ちょっと待った。
 なんでラウラさんはデレを通り越してデレデレになってるの?
 あと通信画面の向こうのお姉さん、あなた何か日本のサブカルに関して何か間違った理解を――

「馨」
「何でしょう?」
「私は一夏を『嫁』にするぞ!」

 頬を赤らめ、そう主張するラウラさんはたまらなく可愛い。
 もう嫁でも婿でも手篭めでも好きにしてください。

「時に馨、お前は一夏の友人だと言ったな、や…奴の好みのタイプというのはどうなのだ?」

 ひとことで言うと「千冬姉」
 つまりシスコンですね。

「私も教官は大好きだ!相思相愛だな!」

 何を素敵理論を展開してるのですか…あーあ、ツンツンなラウラさんが(泣)
 まぁライバルには若干出遅れ気味ですから、スタートダッシュくらいはサポートしますかねぇ…いやもうあいつらは放っておこうかな、もげろ。
 しばらくは皆に平等に介入して、一夏が混乱するのを見て楽しもうかな…

「よし、明日一番でキメるぞ」

 あー明日は朝から血の雨の降るな、降水確率100%。
 お風呂入ってこよ。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「おやまぁ二人さん、仲のよろしいことで」

 男子入浴中ということだったけど。
 まぁ一夏ならいいかと、風呂場に侵入したら。
 一夏とシャルルさんが一緒に風呂に入っていた。
 うむ、やはり素敵なおっぱいですね?シャルルさん。
 80台のCカップと見た。
 セシリアさんに負けず劣らずの美乳だ、うむ眼福。
 私にもご利益があるようにと拝むことにする。

「かかかかかか」

 おや、一夏が壊れた。

「はいはい、悪かったですね貧相で」

 もう疲れたし、さっさと風呂入って寝よ。
 ちゃっちゃと体を洗って、ざぶりと湯船に浸かる。
 はぁ~生き返る。

「ししししし嶋野さん!はしたないよ!」

 どの口でそんなこと言うのです貴方は。
 外国では公衆浴場で水着ってのは普通のことなんだけど、国際色豊かな学園の寮は、大浴場にちゃんと水着が備えてあるのです。
 まぁ大半の生徒は自前で用意するけどね、セシリアさんとか。
 貴方、一夏と一緒に入るのになんでゼンラーなんですかゼンラー。

「ちゃ、ちゃんと一夏にあっちむいてもらってるもん!僕は!嶋野さんだって」

 私は日本人ですから、水着を着て風呂に入る習慣はねーのですよ。

「はいはい、ちゃんと下は隠しますからね、これで勘弁勘弁」
「上も隠そうよ!」
「隠すほどのものじゃないのですよ、貴方と違って」
「いや隠せよ!」

 うるさいなぁ一夏は。

「事情聴取のあった君らは免除されたかもしれないけど、あの事故の話題をそらすために、パーチーで見世物になってきたんだ、疲れてるんだよ」

 だから静かにして。

「えーとお疲れさん」

 はいどうも。

「う゛ー嶋野さんのエッチ」
「そろそろ名前で呼び合う関係になりません?ねーシャルロッテさん?シャルロットさん?それとも全然違う名前なのかな?」

 おやおや可愛らしい膨れっ顔して。そっぽを向きましたよ。
 お姉さんのサディスティックな部分がそそられるなぁ。

「頑張らないとライバルは多いですよー?(あっさりラウラさんも陥落しちゃったし。)味方は多いほうが良いと思うけどねぇ」

 耳元でそっと囁く。

「来月の臨海学校が楽しそうだねぇ」
「りんかいがっこう?」
「日限定空間におけるIS運用のうんたらかんたらって奴ですよ。
 一日目は自由行動、ま、ようするに水着でビーチでやっふーね。
 箒さんやセシリアさんの水着が楽しみなだなぁ」
「みずぎ…」

 お、悩んでる悩んでる。

「一夏は誰の水着が見たい?」
「しらねーよ!てか俺もう出てもいいか?」
「気兼ねしなくていいじゃない。一夏は僕の“事情”は知ってるんだし、シャルルさんには説明した?」
「人のプライヴェートをペラペラ言うわけ無いだろ!」

 それ以外だと割と口軽いじゃん。

「ふーん」

 あ、シャルルさんがふくれっつらでこっちを見てる。
 一夏と僕の秘密が気になるんだね、恋する乙女だねぇ
 しかし、可愛いなぁこの生き物。
 あー久々の大浴場はいいねぇ。
 本当は毎日でもいいんだけどねぇ。

「し、嶋野さん、その・・・」

 シャルルさんの視線が腹部を向いている。
 やっぱりお湯に浸かるとくっきり浮かんできちゃうなぁ

「ちょっと小さいときの事故でね。昔の傷だから成長して段々大きくなっただけだよ。気にしないで」

 とはいえ、下腹部から胸元近くまでの裂傷跡だ、見ていて気持ちの良い物じゃない。
 大浴場は人の少ない時間に短時間しか入れないし。
 水着はワンピースじゃないとダメだし、結構面倒なんだよねぇ。

『あれ…三人入ってる、だ、誰ですかー!』

 おやこの声は

「げ!山田先生」
「あ」

 何しに来たんだあの人は。
 うーん、うっかり風呂上りの一夏とばったり→いやん。みたいな?
 あー、それっぽいとこあるなぁ
 シャルルさん、ちゃんと下着は制服の下に隠してきた?
 ところで男物の下着履いてるんですか?

「それどころじゃねぇだろ!」
「はは、そうだねごめんごめん、借り一ってことで」

 湯船を出て、とっとこと脱衣場に向かう。
 あら馨さんたら男前。

「しししししし嶋野さん!」
「山田先生、一夏達が入ってるんだから侵入するとマズイですよ」

 てか本当に何しに来たんですか?

「ああああああ貴方はどどどどどどの口でそそそそそんなことを」
「大丈夫ですよ、ちゃんと下は隠しましたから。疲れたんでお風呂に入りたかったんです」
「上も隠してください!」
「いいじゃないですか、先生の十分の一もないんだから、ちょっと分けてくれますか?」
「それが出来たらどんなに――セクハラですよ!」

 はいはい
 そんなこんなでその日の夜は更けていった。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








「あー協議の結果、トーナメントは最後まで行なうことになった。本日10:00より三位決定戦を、続いて決勝戦を行なう。いいな凰、嶋野」
「「Yes,Mamm!」」

 とある理事とその派閥が強行に(以下略)
 …前にもあったよね、こんなこと。
 やっぱり、ラウラさんと箒さんペアは負け判定か。
 一夏とシャルルさんかぁ、さてどうやって
 あ―――
 今女子制服を纏ったシャルルさんが一組に入っていった。これは素敵ングなことになりそうだな。

『ねぇねぇ鈴ちゃん』
『なによ、今どうやってあのドイツ――』
『これ、隣のライブ映像』

 鈴ちゃんの机の端末に、一組の防犯カメラの映像を送る。
 掃星の処理能力を持ってすれば、この程度の不正アクセスはお茶の子さいさいである。
(注:犯罪です)
 専用機って面倒だけど便利だよね。

 シャルロッテさん衝撃のカミングアウト(なんか違う)
 一夏がそこのことを知っていたことバレ
 一組に突撃する鈴ちゃん。
 セシリアさんと箒さんも立ち上がる
 そこにラウラさん登場!
 そしてキス!キャー
 続いて「嫁」宣言。
 なぜか一夏に攻撃を開始する皆。
 (もちろん私が煽ったのは言うまでも無い)

 よし、これで勝ったな。ふぅ
 
 この騒ぎでボロボロになった一夏は敵じゃなかった。
 シャルルさんも頑張ったけど、実質二対一、優勝は僕と簪さんのペアになったのですよ。
 やれやれこれで、義母さんに叱られることも無いな。
 ただ一つ不気味なことがあった
 織斑先生から「場外プロレスは“ほどほど”にしておけよ」と、忠告・・があった。
 はて、ばれた以上てきっりお仕置きされると思ったんだけど…まさかついにデレ――へぶんっ!

「つけあがるな」

 ごめんさい。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








 頭を抑えながら、半べその表情で退出する嶋野。

「しかし…戦域支配型ISとはプロフェッサー夜子も相変わらずですね」

 二組の担任であるジェニーが、机にコーヒーの入ったカップを差し出す。
 職員室のコーヒーは酷くまずいんだがな…
 とりあえず受け取って礼を言う。

「ガキのおもちゃには分不相応だな。その辺は頼む」
総合優勝者様ブリュンヒルデのご要望とあれば」
「頼んだぞ部門優勝者殿ヴァルキリー

 端末には嶋野の専用IS【掃星】の全データが映し出されている。
 学園に関わる荒事の元締めである私に、夜子さんが送ってきたものだ。
 戦域支配型。
 一機当千と言われるISの中でも、最も戦争に適した、軍用ISだけに見られるカテゴリ。
 単体の攻撃力は、量産型に毛が生えた程度、本体のスペックも第三世代として十分なものがあるが、特化型に比べれば全体的に大人しい。
 だが、トーナメントでも散々見せ付けられた電子戦能力は、機械化、電子化された現代の軍隊にとっては天敵ともいえるだろう。
 通常の電子戦を受け付けないISにすら通用する電子戦能力なのだから。
 さらには強力な情報戦能力。
 あっさり稼動中のISのシステムを攻略するハッキング・クラッキング能力。
 おそらく学園のシステムも嶋野がその気になれば、攻略可能だろう。
 実際防犯カメラの映像をあっさりと拾っていたしな。
 このタイプは配下にISや機械化・電子化された兵器がいればいるほど真価を発揮する。
 現在学園に配備されている訓練機と専用機、全てを統括下に置けば・・・EUの先進諸国ぐらいなら、普通に戦争ができるな。
 だが、このISの本来の目的は、そんな下らないことではない。
 さすがに夜子さん。
 諦めの悪い人だ。
 表向きは、確かに凶悪なISに見えるが、このIS本来の目的は、大気圏外での活動を主眼に置いたもの。
 つまり宇宙開発用IS、その雛形。
 その象徴が尋常ならざる防御力を見せ付けた流体金属装甲。
 スペースデブリの直撃に耐え、シールドとの併用により大気圏への突入すら可能となっている。
 情報集能力にしろ、通信管制能力にしろ、掃星一機でその十数倍の量の機材を代行できる。
 嶋野の奴は知っているのか…?
 端末を操作し、嶋野の各種データを呼び出す。
 座学に関しては言う事は無い、これだけなら今すぐ三年に飛び級させても問題はないだろう。
 だが。
 実技に関して言えば、凡人の域をけして出る事は無い。
 ISへの適正は並、さらには単純に身体能力が低すぎるのだ。
 幼少時、父母と死別する切っ掛けとなった事故で負った怪我の後遺症。
 加えてインター・セクシャルという特殊な生まれ。
 ISを纏えば、そういった不利な点は全てISが補ってくれる。
 ISの性能を十全に引き出すのは上手い。だからIS性能が同等か、勝っている分にはこいつは強い。
 今回のトーナメンと優勝にしても、掃星の性能と、タッグマッチという試合形式に拠るところが多い。
 整備科志望か…
 賢い選択だろう。
 嶋野はどう足掻こうと操縦者として“高み”に至れない。
 舌先三寸の話術も、変幻自在の戦術も、足りない物を補うための、必死の努力の結果。

「難儀なことだな」

 それをぶち壊しにしてくれたのが夜子だ。

「まぁプロフェッサーの身内である以上は」

 ジェニーが肩を竦める。
 この業界で「博士」といえば篠ノ之束。
 「教授」といえば嶋野夜子である。
 特徴はトラブルメーカーであること。
 夜子は束のように超俗的(真性の天才)ではないが、きちんと世間の常識を知っていて、その上でそれを無視するから性質が悪い。
 束は「空気が読めない」夜子は「空気を読んだ上でぶち壊す」
 結果的に周囲にとんでもない被害を撒き散らす。
 ここ数年大人しくしていた夜子が急に色々と動き始めた。
 ロクでもないことになりそうだな
 海人さんと少し話をしておく必要が有るな…
 夜子の夫である、あれはあれで色々と問題のある人物のドヤ顔を思い浮かべつつ、コーヒーを啜る。
 やはりマズイ。

「織斑先生!ジェニー先生!また嶋野さんに~」

 山田先生が半泣きで教務室に飛び込んできた。
 やれやれ…



[27026] モヒトツマクアイ\(゜ロ\)
Name: madoka◆5b5f0563 ID:6be04712
Date: 2011/10/07 04:06
【引越しにまつわる悲喜交々】



「今…なんて?」

 ガタガタ震えながら、傍らにいたラウラさんに抱きつく。
 「うっとおしい」とか言われるけど気にしない。

「ですから、お引越しです、嶋野さんは直ぐに準備を」
「いやぁぁぁぁぁ!ラウラさんと離れたくないぃぃぃぃぃ」

 首をぶんぶん振りつつ悲鳴を上げる。

「うるさい。耳元で喚くな」
「デュノアく…さんが女性と判明した以上、織斑くんと同室というわけにはいきません。とにかく緊急措置ということで、嶋野さんとトレードします」
「そうだな、嫁とフランス女が同室など認められん」
「せめて他の部屋にしてぇぇぇ、ゾフィーたん(米国)でもアイリスたん(ベルギー)でもミーシャたん(ロシア)でもいいですからぁぁぁぁ」
「一人で寮生活している子には、宗教上など色々理由がありますのでダメです」

 うわぁぁぁぁぁん!
 なんだよー山田先生のくせにー、シャルルさんが女の子だなんて1mも疑ってなかったくせにー

「それとこれとは関係ないじゃないですかぁ!」
「お前気がついていたのか」
「二日で気が付きましたよ…だいたい織斑先生も気がついてたんでしょう?」
「ノーコメントだ」
「ずるっ!大人ってずる―アウチっ!」
「教官への批判はゆるさん」

 いたっ!痛い!経絡秘孔のツボでも突いてるんですか?すごくいたいです。あでもちょっと気持ちいいかも、あっ、らめぇ!

「教官」
「先生と呼べと言っているだろう」

 何?ラウラさんに名案あり?僕と離れたくないってこと?

「私が変わりに嫁と同室というのは如何でしょうか?」
「うわぁぁぁん、ラウラさんが自分の欲望に忠実になってるぅぅぅぅぅぅ」
「いいかげん離れろ、たたでさえ日本はしめっ――ぐっ!」

 僕とラウラさんの頭上に織斑先生の鉄拳制裁が降って来た。

「いいかガキ共、私はこれから下らんパーティーに出て、アホな大人連中が今回の事故の件でグダグダ言わんよう、睨みを利かせにかねばらん」
「う…申し訳ありません」「お勤めご苦労さまです姐さ――いたっ」
「誰が姐さんだ、馬鹿者。…もう私が何を言いたいか分かるな?」

 これ以上私の手を煩わせるな、ですね。わかります。

「…Ja」「は~い…」

 これ以上ごねるとさすがにマズそうだ、命の危険を感じる。
 僕が承諾したので、先生達は引き上げていく。

 さようなら楽園パライソの日々。さようなら僕の妖精さん。

「馨」
「なんですか?ラウラさんも寂しいですか?」

 荷造りを開始したところでラウラさんが話しかけてくる。

「お前なら、嫁が欲情することもあるまい。嫁の世話を任すぞ、妙な虫がつかんようにしろ」

 ううう、ひどい。
 コンコンとドアがノックされた。

「開いてますよー」

 入室してきたのは荷物を持ったシャルルさんと、その手伝いの一夏だった。
 とりあえず雰囲気が重い。
 まぁいきなり態度を変えて「嫁」とか言ってファーストキスを奪ったラウラさんに、さしもの一夏もどう対応していいか、わからないみたいだ。
 シャルルはあんまりラウラさんとは仲良くなかったし。何より恋敵だもんなー
 ラウラさんも、トーナメントではシャルルさんに止めを刺されてるしなー

「えーと、よろしく」
「よろしくだ」

 お、案外素直に返事を返した。
 やっぱIS戦で負けたってことで、シャルルさんのこと一定以上に評価してるのか…ふーん。

「一夏」
「なんだ」
「悪いけど、荷物多いから、荷造りできたのからドンドン持っていってくれない?とくにそこのダンボールは全部研究論文だから、クソ重いんで。よろ」
「え、あ」
『女の子同士の込み入った話をするから出てけっていってんの。アンダスタン?』
『あー了解』

 やれやれ、相変わらず鈍いな。

「さてと、シャルルさん…いやシャルロッテさんだっけ?」
「発音的にはシャルロット…かな」
「シャルロットさんね、えーとラウラさんと共同生活する上での注意点をいくつか」
「おい、なんだそれは」

 基本的に一般常識に疎いこと。
 裸で寝るので気をつけること。
 何かあったら、織斑先生の名前を出せば何とかなること。
 言うたびにラウラさんが噛み付いてくるのが可愛らしい。
 その様子にシャルロットさんも胸キュンしたらしい。
 だってラウラさん可愛いもんね、人に懐ききって無い子猫ちゃんって感じで。

「ふー!」
「痛い!痛いってば!噛み付かないで!」
「あはは」

 存分に最後のスキンシップを楽しんでいる内に、ある程度二人は打ち解けてくれたようだ。
 シャルロットさんは、性格も良いし(案外嫉妬深いけど)ソツも無いから大丈夫だろう。
 名残惜しいけど引っ越すか…あーあ、このまま三人で暮らしたいなぁ(泣)

「よし、じゃぁまたねラウラさん」
「嫁を任せたぞ」
「はーい…そうだ、二人とも次の休日、外出許可を取っておいて」
「「?」」
「二人の歓迎会をしようよ、もちろん一夏達も呼んで」

 僕ってば気が利くよね(自画自賛)



(/ロ゜)/



 そんなわけで帰ってきました。元の部屋に。

「はぁ…また一夏と同棲かぁ」
「おい人聞きの悪いこと言うなよ…」
「はいはい、まぁいいことも一つあるんだよね」

 なんだよ?って一夏が怪訝な顔をしている。
 馬鹿だなぁ一夏は

「シャルロットさんが使ってベッドを存分に堪能できることに決まってるじゃない!」
「待て」

 ル○ンばりのダイブを慣行しようとした僕を一夏が羽交い絞めにする。

「何をする!放せぇ!」
「ふざけんな、そんな変態発言を聞いてスルーしたらシャルに申し訳が立たないだろう。俺がシャルのベッドを使う」

 なん…だと?

『皆聞いてよ!一夏が酷いんだよ!僕がシャルロットさんのベッドを使うって話しになったら、だめだ俺が使うとか変態発言を――モガー!!』

 各専用機持ちさんたちと箒さんの携帯に通信を送る。

「わー!お前は何を言ってるんだ!」
「モガー!」

 ドドドドという足音が響き。部屋のドアがぶち破られる。

「一夏ぁ!」「一夏!この不埒者が!」「見損ないましたわ!一夏さん」「嫁の浮気を正しに来たぞ」「一夏のえっち」

 鈴ちゃん、箒さん、セシリアさん、ラウラさんが怒り心頭で殺到する。
 一夏の表情がみるみる青ざめていく。

「ちちちち違う!これは」
「なんで馨に抱きついてんのよ!」「成敗!」「どうせならわたくしに…」「おいイギリス」「一夏のバカ…」
「わぁまて、話せばわかる!」

 ふっチョロいな…

【警告:複数のISよりロックオンされています】

 え?
 なんで掃星が警報を――

「準決勝の恨みぃ!」「あのソフトちゃんと動きませんのよ!」「いつまで一夏にくっついているんだ!」「そうだ嫁から離れろ!」「…」

 ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ飛び火したぁぁぁぁぁぁぁぁ

「うるさいわよ専用機組」

 制裁まで後3秒。
 といったあたりで、救いの女神が舞い降りた。
 丹ちゃんである。
 その姿を認め、まず鈴ちゃんが止まる、続いて箒さんだ。

「織斑先生に報告されたくなかったら、静かにしなさい」

 織斑先生の名前が出たので、ラウラさんも舌打ちする。
 とうぜん割と外聞を気にするセシリアさん。
 基本的には常識的なシャルロットさんも矛先を下げてくれた。

「まったく、何かと暴力に訴えるのは女子としてどうかと思うわよ?」

 うんうん、まったくその通りだよね。暴力反対!

「説教すればいいでしょう、説教すれば」

 え…

「ああその手が会ったわね」「よし二人ともまず正座だ」「わたくしが紳士・淑女というものがどういうものか教えて差し上げますわ」「嫁の心得を聞かせてやろう」「二人ともちょっと反省が必要だよね」「あ、馨は私に任せてくれないかしら」
「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」」

 お説教は一時間に及んだ…



(/ロ゜)/



「まったく酷い目にあったぜ」
「うー、シーツも布団も枕も全部持っていっちゃったよ…残り香が」

 自業自得だろうが…黙ってりゃわかんないのに、コイツは基本ツッコミ待ちなんだよな…

「あ、一夏、次の休み、皆でラウラさんとシャルロットさんの歓迎会するから、外出許可取っておいてね、朝からでOKだから」
「それは名案だけど、外でやるのか?」
「うんカラオケボックスで」
「なんでカラオケなんだよ」
「歌は良いよ?人類の作った文化の極みだよ?ヤックデカルチャー」
「はいはい」

 カラオケか、久々だな、何歌おう…



(/ロ゜)/



【スキャン終了>室内に盗聴器の存在を確認しました、数2】

 ついこないだ駆除したのにまた増えてるよ。まぁ一夏の部屋だから仕方ないんだろうけど。
 掃星は流石だな、以前は一々機械を駆使しなくちゃならかったのに、一発スキャンだし。
 全部録音型だし回収して「織斑イチカ」のサンプルデータに使うか。
 ダミーはまた、一夏の親父ギャク詰め合わせだな。
 しかしこないだは間一髪だった、一夏達がいないタイミングを狙って掃除に来たらシャルロットさんの女バレ→告白だったし。
 無線型の盗聴器が生きてたらやばかったよなぁ。
 まぁベッドの下に潜ってたのはそうゆうことなんですよ。
 別にエロ本取り戻しにきたわけじゃないんですよ?
 って誰に説明してんだ僕は…






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








【千冬さんにも頭が上がらない人が居ます】



 学園の個人トーナメント期間中に連日連夜開催された懇親会。
 VTシステム暴走事故などのトラブルもあったが、なんとか全日程を終え、最後の懇親会は無事開催された。
 会場には学園の生徒の姿も有る。
 成績優秀者が招かれ、企業等のスカウトと会話する機会が設けられているからだ。
 ただ一年の姿は無かった、事故の当事者も居る事から学園側が配慮したのだろう。
 だが会場は全体的に和やかな雰囲気で、暴走事故など、まるでなかったかのようだった。
 学園側からの圧力も有ったが、決定的だったのは“教授”嶋野夜子が、三年の部準優勝者、グートルーネ・V・ロートリンゲンと、事故発生後、速攻で逃げ出した人間に代わり、新たに派遣されたドイツ政府の人間を伴って会場入りしたことだった。
 終始笑顔で二人と会話する夜子。
 政府関係者(女性)は馨の優勝の祝いを述べ、グートルーネも馨を褒める。
 VTシステムが発表された際「存在そのものが気に食わない」というヒドイ理由で噛み付き、規制と全廃の急先鋒だったのが夜子だ(もちろん色々と問題の有るシステムであったが故に結果として禁止されたシステムだったわけだが)
 そんな彼女がドイツの関係者と談笑する。
 その意味を理解しない者は、幸い会場にはいなかった。

「正直助かりました」
「お互いバカな身内が居ると苦労するわね、カティア」

 礼を述べるドイツ政府関係者…カティアに対し、夜子は自嘲気味に返す。
 脳裏浮かぶのは、旦那を筆頭とした会社と各企業のバカ共である。

「プロフェッサーの所の皆さんは、皆優秀なエンジニアではありませんか、ドイツでもSHIMANOの製品は高く評価されておりますよ」
「その教授ってやめてくんないかなぁ…一応まだ大学に籍は残ってるけど、研究室は実質ウチのラボに横滑りしちゃったしさ」
「それでも私にとっては貴方は恩師ですので」
「まぁ教え子のピンチとあれば幾らでも協力するわよ、ロハで」
「男の教え子だと随分と無茶な要求をすると聞きますが」
「いいじゃない、大体私の教え子の男共なんて皆マゾばっかりなんだから、こっちが無茶突きつけてあげるのサービスよサービス」

 ヒドイことをサラリと言う夜子に苦笑するカティア。
 本当のことだからどうにも困る、懐かしい学生時代に思いを馳せ…
 酷い思い出ばかりが浮かんで、内心でちょっと悲しくなる。

「しかし新型も随分と面白い機体ですね」
「色んな所と協力して作った機体よ。内装はウチ、フレームは三菱、流体金属は三・住、システムは足立っていう技研さん」
「まだ諦めてはいらっしゃらないんですね」
「勿論よ、あたしにとってISは最初から、そして今でも宇宙開発用の物よ。今はまだ兵器として扱われているけどさ、元軍用品なんて物は腐る程あるでしょう?」
「はぁ…おやブリュンヒルデですよ」

 会場入りした織斑千冬が、まっさきにこちらへとやってくる。

「カティア、今回の件、そちらで色々動いてもらえて助かった」
「こちらこそ、色々と迷惑を掛けました」
「ほらほら!二人して辛気臭い話はしない!千冬まずは駆けつけ三杯よ」
「勤務中です」

 グイっとビールの入ったグラスを突き出す夜子に、千冬が渋い顔をする。

「プロフェッサー、グートルーネ嬢が、あまり質のよろしくないのに絡まれていますので、少し失礼します」
「お貴族様のお守も大変ね、いってらっしゃいカティア」

 カツカツとヒールを慣らして、グートルーネの元に向かうカティアを夜子と千冬は見送る。

「どうやらボーデウィッヒの件が出ないのは、夜子さんがカティアを侍らせていたせいのようですね」
「別に深い意味は無いわよ?元教え子と楽しくお話して何が悪いの?ところで本当なら優勝したウチの娘を見せびらかす予定だったのに、余計なことをしたのは誰?」
「ノーコメントです、それより、随分と面倒なISを送り込んでくれましたね」
「何が言いたいのよ」
「嶋野の性格を考えると、危険すぎるオモチャだと言いたいのです、余計なことに首を突っ込んだら――」

 真剣な表情の千冬に対し、夜子がニヤニヤとした笑顔を浮かべる。

「夜子さん、真面目な話をしているのです」
「あんた、しっかり“先生”してるのねぇ…会ったばっかりの頃は鞘を捨てた日本刀って感じだったに」
「昔の話です」

 最初にISが宇宙開発用プラットフォームとして発表された際。
 世間的には見向きもされなかったそれを、評価した数少ない人物。
 それが嶋野夜子だった。
 千冬とのつきあいもその頃からのものだ。
 女だてらに東大教授という地位にあった夜子は、宇宙開発、機械工学、航空力学等複数の分野のエキスパートであり、所謂天才と呼ばれる人間であった。
 すぐさま束とコンタクトを取った夜子は、初期からのIS開発に携わった人物だ。
 束や千冬のような、最初からISの開発に係わっていた人間を除けば、世界中で最もISを理解しているといっても大げさではない。
 実の千冬、一夏、箒以外は両親すらうっすらと認識していない束が「すぐにブツ怖いおばさん」というレベルで夜子を認識していることからも、その凄さが伺える。
 実際に、束の常人には理解しがたい思考を、翻訳し世間に広めたのは夜子だった。
 教授の二つ名が指し示すように、東大で彼女に「IS学」を学んだ生徒が非常に多いし、特にゼミ生ともなれば、完全に親分子分の関係である。
 IS学園が作られてから数年間は、当然のように教鞭をとった、現在の教員でIS学園の卒業生はほぼ夜子の教え子、特に整備科担当の教諭は完全に子分である。
 さらにはモンド・グロッソの際には、ナショナルチーム付き整備主任。
 千冬にとっても【暮桜】の機付長である。
 ISデザイナーとしても優秀であり、彼女が設計した、あるいは関与した機体は名機と呼ばれる機体が多い。
 まさに業界の女ドン。
 まぁあんな性格なので敵も多いのだが…

「大丈夫よ、馨は騒いだり、バカなことをして叱られるのは好きだけど。“悪い”ことするのはダメないいこちゃんだからね」
「何を訳の分からないこと」
「その話はまた今度、ゆっくりお酒でも呑みながらね」
「はぁ」
「ほら、眉間の皺やめないさい、若いうちはいいけど、年取ったら皺取れなくなるわよ」

 千冬の眉間を人差し指でぐりぐりと押す夜子。
 周囲が「ブリュンヒルデを子供扱い…」「織斑先生可愛い…」とかザワザワしている。

「余計なお世話です」

 やんわりと夜子の指をのける千冬、その表情はクールを装いつつも苦々しい。

「もう可愛くないわねぇ。さて私も若い子に唾つけてくるから、また今度ね千冬」
「当分は結構です」

 去って行く夜子の背中を見送り、溜息を吐く千冬。
 仕事中だが、正直酒の一杯も呑みたい気分だった。

「お、千冬君じゃないか」
「嶋野社長、ご無沙汰しています」
「仕事中なのかい?硬いなぁ、昔みたいに海人でいいのに」
「ちょ、嶋野さんは織斑さんとお知り合いだったんですか!紹介してくださいよ」
「ごめん佐々岡くん、重田くん頼むよ」

 はいはいと応えた佐々岡という人物が、重田なる人物を引きずって去って行く。

「二人とも某企業のIS関連の取締役に見えましたが」
「うん、馨ちゃんの専用機の件では色々お世話になってね、同志だよ」
「(ロボットマニア仲間か…)あの掃星というISですが――」
「凄いでしょ?いやー夜子さんが、大気圏に突入可能なISを作ると言われた時は嬉しかったねー、あの装甲も――」

 だめだこの人は…ちょろ過ぎる。
 頭痛を覚えた千冬が、思わずこめかみを抑える。

「あれ?頭痛?IS学園の先生大変?確か結構責任の有る立場だったよね?きつくなったらいつでもウチでポスト用意するよ?」
「(変わらないなこの人は、マイペースでお人よしで優しい人だ)いえ大丈夫です」
「そう?」
「正直、嶋野はあまり操縦者向きではありません」
「あ、うん。それは知ってる」
「本人も整備科を志望していましたし、専用機を与えるのはやりすぎかと思います、いらぬ危険が」

 次の瞬間、海人がポロポロと泣き出した。
 大の男が公衆の面前である。
 周囲もギョっとしたし。千冬も軽くパニックなる。

「う、海人さん、すみません言葉がキツ――」
「ううん、違うんだよ千冬くん」

 取り出したハンカチで涙を拭いながら海人が首を振る。

「僕はね、ちょっと感動しちゃったんだよ。会ったばかりの頃は抜き身のナイフみたいだった千冬くんが、生徒を思いやる立派な先生になっていてね」
「いえ、その…」

 先刻の夜子と同じようなことを言っている。
 完全に子供扱いされたことのなど、何年ぶりか分からない千冬も、どうしていいかとっさには思いつかない。
「嶋野さんが織斑さんに泣かされてる、うらやましいぃぃぃぃ」とかいう太い男の声はとりえず無視することにしてもだ。
 このままだと――

「あらぁ千冬。なんでウチの旦那泣かしてるの?」

 来た。こんな騒ぎを見逃す夜子ではない。
 慌てて逃げ出そうとした千冬をガシっと掴む。

「ねぇ夜子さん、千冬くんは立派に先生をやってるんだねぇ、僕はも嬉しくて思わずね。
年取ると涙腺がゆるくなってダメだよね、ちょっと泣き系のアニメ見ると直ぐ泣いちゃうし」
「最後でブチ壊しね」
「え?何が?」

 なにやらイチャイチャし始めた嶋野夫妻。
 そろそろいつもの自分のペースに戻さないとマズイ。
 生徒からも「織斑先生いつも雰囲気違うね」「なんか可愛い」とか聞こえてきている。

「勤務中なのでそろそろ失礼してもいいでしょうか」
「あ、引き止めてごめんね。それから馨ちゃんの事は心配しなくても大丈夫だよ。いつだって僕らは最高性能のISを用意する準備ができてるからね」

 いえ、そういうことではないのですが…技術屋らしくズレた所も相変わらしい。

「へぇ…それはどういうことなのかしらね、ア・ナ・タ」
「いや!違うんだよ夜子さん!今のは意気込みをね、千冬くんに聞かせただけであって、色々とパッケージとかイコライザとか夜子さんに内緒で企画したり、用意してるわけでは――」

 しどろもどろに、泥沼に嵌っていく海人。
 あちこちからは「あれが業界名物の嶋野夫妻の夫婦漫才ですか」「いやー安定のクオリティですね」という囁き声が聞こえる。
 その日の夫婦(ドツキ)漫才も好評をはくしたそうである。



(/ロ゜)/



「大変でしたね織斑先生」
「ああ、まったく夜子さんにも困ったものだ」
「ほんとですよ!胸の話ばっかりで――」

 帰りの車中。
 そんな会話をしながらも、千冬の内心は穏やかだった。
 嶋野夫妻の「子供扱い」が、昔からけして嫌ではない千冬なのだった。



[27026] 乙女心は雨のち雨【複雑怪奇】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:6be04712
Date: 2011/10/12 10:15
夕焼けに染まる放課後の教室。
誰もいない教室で二人。
一夏と僕は、臨海学校のしおりを作っている。

「悪いな手伝ってもらっちゃって」
「気にしないで」
「でも皆と街にいくって話だったんだろ?」
「うん、でも…」

しおりを折るふりをして、顔をしたに向ける。
オレンジ色の教室でもはっきりわかるくらい、顔が真っ赤になっているのが、わかる。

「一夏と…好きな人と二人きりの方が愉しいから…」
「えつ!?」

蚊の啼くような小声だったけど一夏に聞こえてしまったらしい。
恥ずかしさに耐えきれず、発作的に席を立ち、教室から逃げようとする。

「ごめんっ!」
「待てよっ!」

そんな僕の腕を一夏が掴む。

「あっ!」

つんのめりそうになった僕を一夏が抱き寄せる。
ごつごつした、男の子の体に包まれると、一夏の匂いがする。

「いちか…」
「逃げるなよ…」
「だって…」
「告白されて、答えないままとか、ないだろ?」
「いちか、ぼく…」
「俺もシャルが好きだ」

ぎゅぅっと痛いくらいに強く僕を抱き締める一夏。
不自然な姿勢なのに、二人の顔が唇が………

「例えお前が男でも、もう我慢出来ない」

え?

……

「あ…れ?」

ぼぅっとした頭で、周囲の状況を確認する。
ここは寮の自室のベッドの上で、今は朝。

「はぁ…」

思わず漏れるため息、あと十秒あれば…
って僕は何を考えてるんだ、教室だし。男同士だし。
昨日の馨さんが持って来た薄い漫画本のせいだよ…
僕(♂)と一夏が男同士なのに…

「夢かぁ…」

自分を偽ることを止めた先月末、あれからもう大分立つのに、一週間に二回くらいは、願望とも、妄想ともつかぬ甘い夢を見てしまう。
そして、隣のベッドに、つい一夏の姿を探してしまう。
目が覚めてしまうと、甘い夢の感触は急速に覚めていき、胸には虚しさだけが残る。
だいたい、現実の一夏があんな行動にでることはまずないし。
それにしても、今日の夢は生々しかった。
腕に抱かれた感触が残って――

「うにゅ」
「!」

感触があるのは当たり前だ。
今僕はベッドに潜り込んだ誰かに抱き締められているんだもの。
同室のラウラではない。
こっちらをすっぽりと懐に納める長身。
女性らしい柔らかさに欠ける、痩身。

「馨さん…」

ああ、そういえば昨日は一日雨で、夜になっても止んでいなかったな…
馨さんの以外な弱点、雷がダメらしい。
そんな夜は一人では眠れないらしく、事情を知っている人のベッドに潜り込むのが習性なのだそうだ。
先日朝起きたらラウラのベッドで馨さんが寝ていて、何事と思った僕にラウラが教えてくれたんだよね。
まぁ…一夏のベッドに潜り込まれても困るしな…

「むにゅ」

幸せそうな顔だなぁ。
普段の言動から、これ幸いと胸やらお尻を触ってくるかと思ってたけど、そんなことはない。
ただこちらを抱えて幸せそうに眠っているだけだ。
子供の頃、母さんに抱かれて眠ったのとは少し違う感じがする。
まるで男の人のような体つきのせいだろうか。
僕も男装がまかり通るくらい中性的な顔立ちだけど、あくまで「かわいい男の子」でしかない。
体型だって特性のコルセットで誤魔化してたし。
そこをいくと同じ中性的でも、馨さんは「綺麗な男の人」に化けれると思う。
体つきも、丸みに欠けるし、胸もまっ平らだし。
だからだろうか?

「父親に抱かれて眠るってのはこんな感じなのかなぁ」

生憎婚外子である僕にはその経験がないから、比較することはできない。
…とりあえず嫌じゃない。

「まだ六時か」

もう少し、この心地良さに包まれて微睡んでいよう。
もしかしたら夢の続きも見られるかもしれないし…
そういえばラウラはどこへ行ったのだろう?
隣のベッドにはその姿はおろか、昨晩使用した痕跡すら無い。
まぁいっか。
目を閉じると、意識が急速に遠退いて行く。

「おやすみなさい…」
「ひゃい」



(/ロ゜)/



雀の鳴き声と、カーテン越しに差し込んでくる朝日が、はよ起きろや、と言っている。
だが、断る。
この朝の微睡みほど心地好く、幸せなものはそうない。
この至福の時間を楽しまない奴はちょっとおかしい。断言する。
入学当初はやたら朝の早い箒に叩き起こされたが、その後は馨が超絶朝に弱いこともあって、この時間を邪魔する奴はいない。
はずだった。
ふにゅ
まさにそんな感じだろうか。
俺のベッドの中に異物が有る。
すわっ!また寝惚けた馨か!とも思ったが、馨にしては、柔らかすぎる。
俺の右腕に絡み付いてくる柔らかい感触。
ぎぎぎぎぎと言う感じでそちらを覗き込むと、長い銀髪が見えた。

「ら、ラウラ!」

左手で布団を跳ね上げる。
ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデウィッヒ。
千冬姉を「教官」と慕う、というか心酔する軍人娘。
転校初日にクラスの皆の前でぶったかかれ、…トーナメントの最終日には同じクラスの皆の前で俺のファースト・キスを奪いやがった、問題児だ。
問題は、何故こいつは俺のベッドにもぐりこんで寝ているか?とこいつの格好だ!
馨が譲ったと推測される肌襦袢(見覚えがある)。
まったくサイズが合ってない上に、着方もなってないせいで、はだけるなどという生易しいものではない。
辛うじて体に絡み付いている、と言う感じで、白い裸身を隠す用をなしていない。
たぶん全裸よりも扇情的な格好だろう。

「なんだ…もう、朝か?」

朝か?じゃない。なんでお前は俺のベッドで寝てるんだ。

「こうやって起こすのが日本の伝統だと聞いた」
「お前に間違った日本を教えてる奴は誰なんだ…」
「馨も『うん、大筋で間違ってないよ(二次元世界では良くあること)』と言っていたぞ」

奴とは一度きちんと話をする必用がある。

「だが効果はてきめんだろ」
「そうだな」

この状況で目が覚めない奴は脳みそ腐ってるわ。

「ほら、ちゃんと着ろ」
「いいではないか、お前と私の仲だ」

どんな仲だよ!

「夫婦とは包み隠さぬものだろう?」
「親しき仲にも礼儀ありだよ!この場合は!」
「そうか、だが正しい着方がわからん、馨は『だいたいでいいよ』とほざいて教えてくれなんだ」

 うん。という感じでラウラが俺の方を向く。
 俺に直せっていってんのか、おい。
 くっそー
 ラウラの裸を直視しないよう顔を逸らしつつ、襦袢の前を合わせて、とりあえず腰紐できちんと縛る。

「ご苦労。まだ朝食までは随分あるな」

乱れていた髪を一度束ねて、後へ流す。
見事な銀髪が朝日を受けて、ひどく綺麗だ。
先月のトーナメントでの事故以来、ラウラは180度態度を変えた。
俺のことを「嫁」呼ばわりし、食事は同席は当たり前、着替え中に更衣室に乱入してきたり、先日は入浴中に堂々と入ってきやがった。
向こうは馨の入れ知恵だろう、辛うじて学園指定のスクール水着を纏っていたからよかったが、こちらは全裸だ、思わず悲鳴を上げて騒ぎになってしまった。
脱衣所で馨が笑い転げていて、本気の殺意が湧いたぜ。
いかん、このままエスカレートすると何をしでかすかわからんぞ。
なんとかしなくては――

「おい」
「なんだよ」
「そんなに見つめるな、私にも「恥ずかしい」という感情はある」

目の前にうそつきが居ます。
だが頬を染めて視線を逸らし恥らうラウラは、悔しいが可愛い。かなり可愛い。

「だいたい鍵はどうしたんだ」
「馨が空けてくれた」

おい

「馨は」
「今頃シャルロットのベッドの中だろう」

おい、まて

「昨日は土砂降りだったからな、許してやれ」
「?なんの話だよ」
「女同士の話だ、いかに嫁といえど友人のプライベートをペラペラとはしゃべれん」

まぁそれはそうだけどな。
そいえばあいつ天気の悪い日は、誰かの部屋にご厄介になることが多いな。
なんだ雷がダメとかか、意外と可愛いと――

「痛っ!何すんだよ」
「他の女のことを考えていただろう」

 これが切っ掛けで、取っ組み合いに発展したり、箒が乱入してきて一悶着があったりして、とにかく大変だった。
 具体的に言うとものすげぇ怖い笑顔をした杉浦さんが注意にやってきた。
 
「織斑くん、ほどほどにね」

 汚物を見るような目でこちらを見ないで下さい。






\(゜ロ\)(/ロ゜)/








その日の放課後。
朝遅刻しそうになってISを使った罰掃除も終え、例によってアリーナでの自主練習に勤しむ俺たち。
先月のトーナメントからは、ちょくちょく四組の更識さんと、馨の幼馴染の杉浦さんも週一くらいで参加するようになった。
専用機持ちが、俺、馨、鈴、セシリア、シャル、ラウラ、更識さんで七名。+特注機の箒星で八機。
(IS抜きの)大抵の軍隊となら正面から戦争が出来るメンツだそうだ。

「今年の一年ヤバクない?」
「専用機持ち七人+αって…どこと戦争するつもりよ」
「マジ○チ、バロスw」

と自主練している上級生の皆さんの呟きをハイパーセンサーが拾う。
うん、なんなんでしょうね…

で今俺はどうなっているかというと、箒に追い詰められていた。
1on1の練習試合。
普段はここまでキツイ事態にはならない。
専ら打鉄の基本装備である大刀での近接戦闘を主とする箒、それは近接特化型の白式にとっては同じ土俵で殴りあう、ある意味やり易い相手だった。
もっとも箒本人の剣の技量が俺より上な、機体性能は俺が上、で勝率は五分・・・だったんだがなぁ

「どうした一夏!打ち込んでこないか!?」

くっそー調子に乗りやがって…

「きゃー箒さんステキー!頑張ってー!」

馨うぜぇ!
今俺が追い詰められている理由、それは箒が何時もの打鉄ではなく、箒星を使っているからだ。
箒が箒星を使う。

「今、下らないことを考えたな?」

【警告!>電磁ワイヤー接近!】

うぉ!アブねぇ
ラウラのシャヴァルツェア・レーゲンが搭載しているワイヤーブレード。
それに良く似た感じのワイヤー型の装備が、真横を掠める。間一髪で回避できたが、危なかった。
白式のシステムが告げる所によれば、それは絡みついた対象に高電圧攻撃を仕掛けるワイヤー(というか鞭?)らしい。
今の箒星は、普段馨が使っている基本型でもなければ、トーナメントで杉浦さんが使っていた二刀流装備でもない。
蒼く変化した装甲色。右腕にブレード(刃の部分はビーム、切っ先と峰側は実体刀という特殊なブレード)左腕には複合シールド(マシンガンとさっきのワイヤーが仕込まれている)
つまりあれだ「グ○」だ。

「箒さん!箒さん!ザ○とは違うのだよ!ザ○とはぁ!って言ってー」

うるさいぞ!バカ

「余所見をしている場合か?」

くそっ、下手に距離を取ればワイヤーとマシンガンが、至近距離でも箒の調子が良いせいか、圧倒されっぱなしだ!
こうなればいちかばちか――

……

「はい箒さんの勝ち~」

負けた…
鮮やか抜き胴を食らった。
装甲に覆われてない部分だったからあっさり絶対防御が発動して負けた…Orz

「箒星は動きが機敏だな…もうとても打鉄には乗れん」
「あれはあれで安定感があって良い機体だよ?柔道経験者の人は打鉄が好きって人が多いんだよ」
「それはそうかもしれんな、ただ私の剣術に有っているのは機動型らしい」

くそ…和気藹々と会話しやがって

「さて篠ノ之さん、約束だから、きちんと剣道部に顔を出してね、放課後はこちらに来たいと言うなら朝練だけでも出ること」
「わかった」

そう箒の奴、杉浦さんに頼み込んで箒星を借りたらしい。
代償はサボり気味の剣道部へ顔を出すことらしい。
そうまでして俺に勝ちたかったか…?
ちなみにてっきり箒星を専用機にしたかと思った杉浦さんだったが。

「コアに拒否されたのよ」

と言っていた、そんなことあるのか?

「前の操縦者がよっぽどお気に入りだったんじゃない?たまにあるらしいわよ」と鈴、そんなものなのか。
「初期化してないのならありえますわ」とセシリア、ふーん。

ちなみに箒は現在馨と飛行訓練・・・という名の鬼ごっこ中だ。
馨がきゃーきゃー言いながら逃げ回ってる、模擬戦だといつもあんな調子なんだよなぁあいつ。

「それにしても無様だぞ嫁」

上空を眺めながら「どちらとやっても楽しそうだな」という感じで、獲物を見定める猛禽のような表情のまま、ラウラが俺を詰る。

「分かってるよ…」
「貴様の機体は基本的に教官の【暮桜】と同じだ、つまりもっと教官の試合の動きを見て勉強しろ」

それも分かってるよ…ただ世界の強豪相手に雪片だけで勝ち上がった千冬姉の真似は、ISにのってまだ3ヶ月の俺には難しいんだよ!

「丁度いい、私の所に秘蔵の試合映像が有る、一緒に――なんだ、おい」

セシリアと鈴がラウラを引きずっていって何か会議をしている。女子会か?
抜け駆け…とかなんとか?
聞かないのが礼儀だよな。
あ、ちなみにさっきからシャルはずーっと、心ここにあらずだ。
とても幸せそうだ。
いいことでもあったのだろうか?茶柱立ったとか?いやそれは無いか。
邪魔しちゃ悪いし、そっとしておく、けして時々ニヘラっという感じに顔が崩れるのが不気味だからじゃない。
あくまで邪魔しちゃ悪いからだ。
せっかく買い物に付き合ってくれる約束したのに、機嫌を損ねておじゃんになってもつまらんしな。
あ、箒が馨を捕まえたらしい。
何故か機体の展開を解除した馨が箒に抱えられて降りてきた。

「箒さんにお姫様だっこされちゃった、ぽっ」
「このまま握りつぶしてやろうか?」
「いやーん、箒さんこわーい」

…無性にイラっとするな。
戻ってきたラウラと鈴もそうらしい。

「「「馨、次は俺」あたし」私とだ!」
「えっと、なんで三人とも怒ってるの?」
「「「怒ってない!」わよ!」ぞ!」
「箒さん、なんか三人とも怖い、たしけて」
「そうだな、どうせなら三対三でやるか?おいシャルロット…なんだあの腑抜けた面は」
「なんか幸せな世界にいっちゃったみたいだね」
「ではセシリア」
「その言い方、人数あわせのようで納得いきませんわ!
 ですが、このセシリア・オルコットがチームに加わわるならば、負けはありませんでしてよ?」

胸元に手を当ててえっへん。というセシリアお得意のポーズを披露する。

「まぁなんでも良い」
「箒の奴、ちょっと良い機体にのってるからって調子に乗ってない?」
「そうだな、嫁がハンデだが、私が居れば問題なかろう」
「ハンデ言うな」

確かに専用機組によるペナントレース一位のラウラと、三位の鈴(ちなみに二位はシャルだ)がいるんからな。
まぁ俺と箒と馨は何時もビリ争いで忙しいんだがな!
そっちのトップはぶっちぎりで四位のセシリアじゃないか、ならばこの勝負勝った!

「悪いけど、そこはちょっと譲ってもらえるかな?」

全員が凍りつく。
声の発生源は俺たちの真後ろ。
全員がISを纏っていたというのに、そこまで接近されてもまったく気が付かなかったのだ。

「おや生徒会長。なんの御用です?話題の新米達にご挨拶ですか?『俺がこの学園のボス猿だいい気になんなよ、あ?』みたいな?」

生徒会長…?この人がか?更識さんに顔立ちなんかが良く似ている、姉妹なのかな?
ただ、なにやらやたら刺々しい口調の馨が気になる。
誰にでもニコニコと接する馨だけに、全員が驚いている。

「相変わらずだね君は」
「いつも言ってるじゃないですか。キャラが被ってるんだって」
「君みたいな色物枠と一緒にされては困るな」
「ははは、自覚が無いなんて手遅れですね」

二人の間にバジッ!というかんじで火花が散る。
仲悪いのか・・・?

「トーナメントでは簪が世話を掛けたね」
「と・も・だ・ち、として当たり前の事をしただけですわ」
「お礼をしようと思ってね」
「なんですか?その胸の堕肉を揉ませてくれるとか?」
「はははは」
「はははは」

こ、怖い。二人とも笑ってるけど怖いぜ。
二人の間に発生してる圧力に、俺を含めて全員がちょっとずつ、二人から離れ始めた。
動物的な本能が告げてる、近くにいると危険だって。

「生徒会長直々にISの実技指導をしてあげるよ、最高のご褒美だろ?このクサレドM」
「お礼はお礼でも、お礼参りのお礼ですか、どこのヤクザですか?嫉妬は醜いですよ?このシスコン」
「「……」」
「「死ねっ!」」

怒号と共に二人が激突した、一体何が始まったんだあぁぁぁぁ



[27026] 【閑話】皆でカラオケに行きました。
Name: madoka◆5b5f0563 ID:6be04712
Date: 2011/10/12 10:34
幕間が三つも続くとアレだったので、一話空けて投降しました。
時系列的にはまだ6月の話です。





「では~転校生ズの歓迎を込めて、かんぱ~い」
「かんちゃんとかおかおの優勝祝いも兼ねてかんぱ~い」
「いや~ん、ほんちゃん、ありがとー」
「か、乾杯」「はいはい、乾杯乾杯」

 陽気というかハイテンションな馨の音頭に、のほほんさんが、のほほんと返し。
 (なぜのほほんさんが居るのか不明だ)
 小声で馨のパートナーの更識さんが、いかにも義理でという感じの杉浦さんが続く。

 ただ残りのメンツは複雑だ。

 鈴は「あんな卑怯な勝ち方して、なによ」とか
 セシリアも「一対一なら負けませんわ」とか言ってる。いやセシリアは機体相性最悪だろ。
 なんかシャルも顔を紅くしてブツブツ言ってる。決勝戦で馨になんかされたみたいなんだよな。
 俺は朝の騒動でもう生身も機体もボロボロだったから、終始更識さんに翻弄されて、粘ることもできなかったしなぁ

「ふん。負け犬の遠吠えだな」

 あーラウラが火に油を注ぐようなことを…

「一夏に負けたくせに」
「シャルロットのは少々遅れをとったが、嫁には負けていないぞ」

 あー、うん確かに。
 ぶっちゃけラウラのペアが馨だったら勝てなかった気がすんなぁ

「みんな元気ないなー。どうしたの?タマ落とし―へぶっ!」
「か、かおるちゃん!?」

 某軍曹のごとき下品なセリフを吐こうとした馨の脇に杉浦さんの強烈なチョップが叩き込まれた。
 うむナイスつっこみだ。幼馴染み、というものは皆つっこみが上手いものなのだろうか?
 鈴と箒を見ると、鈴は「何よ」というかんじで睨み返してきたし、箒はそっぽを向いた、なんだよ機嫌悪いな…

「このバカは、バカだけど、バカなりに、貴方達に楽しんでほしいと思って、バカらしく一席もうけたのよね。
 何が言いたいかって?お義理でもいいから、他人の好意には返礼することよ。それが人間としての最低限のラインだからね。
 改めて乾杯」

 一回のセリフで馨を 四回バカって言った!
 ただ、あまりにも全うな言い分と、有無言わせぬ威圧感に、 全員が若干ひきつった声で「乾杯」と返す、返さざるを得ない。

「さー皆飲み食いの分は昨日ロト6当たってた僕が持つから、遠慮せずにガンガンやって!」

 更識に泣きついていたはずの馨が復活。はぇな、おい。
 ここは市内のカラオケ屋。ちなみにコート○ジュール。
 南仏のバカンス地だっけ、シャルが首を傾げてたな。

「私は歌っちゃうよー、皆も曲いれないと馨さんのリサイタルショーになっちゃうよー」

 マイク離さないタイプかこいつ、最悪だな。
 大人数だったので、小さなステージのある部屋だ。
 早速壇に上がった馨は、自前の端末を操作して曲を予約する、リモコンアプリをインストール済みか、手慣れてるなぁ。
 皆の視線が歌詞モニタに向かう。
 歌手名と曲名が表示された。

「…」

 中島み○きの「悪女」だ。俺は迷わず演奏停止ボタンを押す。

「あぁ!何すんのさ一夏ぁ!」
「カラオケパーティの一曲目に中島み○きの『悪女』を歌うやつがあるか!」
「さんを付けろよデコ助!私の十八番にケチつけんな!」
「馨、言葉遣い」

 杉浦さんの鶴の一声で、馨は「ごめんなさい」と謝罪した。すげぇよ杉浦さん!

「じゃぁ、こっちで…」

 俺は演奏停止ボタンを押した。

「あぁ!また!?」
「こんどは『わかれうた』かよ!」

 悪化してどーすんだ!?

「どうしろっていうのさ!」
「『地上の星』とかあるだろ!?」
「私は、女の情念が篭った系の曲が好きなのよ!」
「馨」
「はい、別のにします」

杉浦さんすげ(ry

「一夏」

 なにやら馨がマイクを差し出して、くいくいと挑発的な手まねきをしている。
 なんだよ。

「そんなに言うなら、どっちが上手いか勝負だよ」

 曲は「空と君との間に」か、いいだろう吠え面かくなよ。



(/ロ゜)/



 天然でやってるのか、計算ずくなのか…
 織斑くんと歌っている馨を見やりながら、グラスのオレンジジュースを飲み干す。
 ごく自然に織斑くんを壇上に上げ、共に歌う。
 まっ先に馨がそれをやれば、ハーレムの面々も織斑くんを誘いやすい、あの五人の誰かが最初に言い出せば「抜け駆けした」と遺恨が残るし。
 ついさっきのやり取りを思い出す。

・・・
・・・・・・

 受付で手続きを終え(馨個人じゃなくて。会社の法人会員券使っていたあたりソツがない)
 部屋へと向かう。
 そこで、織斑君の隣を虎視眈々と狙う五名を察知した馨が、まず織斑くんを(トイレへ行けと)追い出した。

「はい、では一夏の隣席二つに座りたい人お手上げ」

 ばっ!とハーレムメンツが手を挙げる。

「は~い私も――えーかんちゃん何ー」
「空気読みなさい本音」
「?」

 まぁ妥当な判断よね、更識さんが虚仏さんを自分の横に座らせた。

「はい、ここでケンカされると施設の破壊等の心配があるので公平な手段で決めます」

 全員が内心で舌打ちをした…気がする。いい加減にしてよ専用機持ちが四人も居るんだから…

「じゃんけんでいいんじゃない?」
「…!そうですわね」
「ああ、そうだな」

 鈴の提案にオルコットさんとボーデウィッヒさんが即返す。
 何かしら、妙に自身があるわね。

「はい、だめー。何でハイパーセンサーだけ部分展開してるのかなー?ハ○ター×ハ○ターじゃないんだからー超人じゃんけん禁止ー」
「なっ!貴様ら卑怯だぞ!」

 唯一専用機持ちじゃない篠ノ之さんが叫ぶ。こいつら…

「というわけでくじで決めようねーちゃんと作っておいたからねー」

 さっきから割り箸で何かしてたのはコレか…相変わらずねぇ

・・・
・・・・・・

 壇上では二人が熱唱している。
 たしかこれは前世紀の終わり頃に流行ったドラマの主題歌。
 歌詞の内容は、一言で言うと一途な男の歌。って感じね。
 内容が内容で織斑くんが歌ってるから、皆歌詞の中の「君」に自分を重ねてるわね。
 ぽーっとしちゃって。
 今時あんな男いないわよ、バカらしい。

「かおかおもおりむーも歌うまいねー、かんちゃんは何歌う?」
「考え中(馨ちゃんと一緒ならアニソンでも大丈夫か…な)」
「(えーっと、確か一夏が好きな歌手はこの辺かな…)」←鈴
「(英語、英語の曲で何か一夏さんでも知っていそうな曲はありませんの!)」←セシリア
「(歌など心得がない。…とりあえずクラリッサに相談するか)」←ラウラ(それはどうかと)
「(良い歌詞だなぁ)」←シャル(妄想中)
「(二回一夏が席を立ったら席替えだったな…次こそは)」←箒(あまりカラオケに興味なし)

 まぁ折角だし、ストレス発散も兼ねて、私も思い切り歌わせてもらいましょうかね。



(/ロ゜)/



 まず俺と馨が歌った。
 次は鈴が入れていて…何故か俺も指名されて歌った。
 次は馨と更識さんが歌った。俺たちが子供の頃流行ったヒーロー物の主題歌だ。意外と更識さんがノリノリだったな。
 次はまた鈴で、また俺を指名した。
 次は杉浦さんがソロで、一緒に歌おうとした馨は一睨みで退散した。
 杉浦さんは非常に歌が上手い。しかも美空ひばりとは渋いな。
 次は箒で俺を指名した。
 さっきから皆やたら俺を指名してくるから喉がカラカラなんだが…

「はい、一夏ジュース」
「お、サンキュ」

あれ?さっきと俺の隣が変わってるのは気のせいか?
最初はラウラと鈴だったはずなんだが…

「シャルは歌わないのか?」
「フランス語の歌はあんまり無いし…一夏知らないだろうから一緒に歌えないし…」

 なんか後半小声で聞こえない、馨ちょっとボリューム落とせよ!

「一夏さん、何か英語の曲で歌えるのは有りまして?」

 あー、ウィーアーザワールドなら歌えるぜ。
 中学の授業で習ったからな。

「では次はわたくしと是非」
「あ、ああ」

 ま、またか…
 今は馨が「三年目の浮気」を歌っている、一人デュエットで。
 音域が広いんだなぁ、ちゃんと声色変えて歌ってる、器用な奴。

「この男最低ですわね」とセシリア
「まったくだな」とラウラが続く
「無責任にも程があるわよね」まぁ鈴の言うとおりだな
「本気じゃなくて遊びってのがヒドイよね」シャル、笑顔が怖いよ
「日本男児の風上にも置けんな」箒さん、なんでエア素振りしてるんですか?
「死ねばいいのに…」更識さんぼそっというのやめてー
「男なんてこんなもんよ」杉浦さんは達観してらっしゃいますね
「おりむーも気をつけないとー」どーゆー意味ですか?のほほんさん

 というか

「なぁ…俺の方を見て言うのやめてくれないか?」

 全員が溜息を吐いたり、舌打ちをしたり、首を振ったり、じとーとした視線を送ってきたりする、なんだよ…唯一の男子だからっていじめかよ。
 いじめよくない!
 しかしラウラもすっかり皆と打ち解けたみたいだな。
 普通に会話に参加してる。
 一月前、いきなり俺の横っ面を張り飛ばしたのが嘘みたいだな…

「よし、だいたい分かった。嫁、次は私とだ」
「つ、次はわたくしですわよ!」

 おいおい順番なんかでケンカしないでくれ。
 ここは学園じゃないんだから、建物が吹き飛んだりしたらニュースになっちまうし。
 千冬姉に…殺される、マジで。

 とまぁ、大きなトラブルもなくカラオケパーティは終了したんだ。
 珍しく。



[27026] 設定資料というなのメモ【ネタバレもあるよ!】
Name: madoka◆5b5f0563 ID:6be04712
Date: 2011/10/09 11:36
別名を設定厨の自己満足。

登場人物の身長はイメージを掴みやすくするため。
体重とバストサイズはプライベート保護のため
記載なし&ぼかした表現をしております。
血液型は深い意味はありません。サイコロで決めました。
髪型は変わることもあります。


嶋野馨(しまのかおる)
身長:175cm
血液型:AB型
誕生日:6月20日
バストサイズ:無
髪の色:黒(ショートカット)
瞳の色:黒

㈱SHIMANO社長夫妻の養女。
幼少時に事故で両親と死別、親戚中をたらい回しの末嶋野家に引き取られる。
(馨の母方の祖母と夜子の祖母がいとこ違いという、ほぼ他人に近い親戚)
同社テストパイロットとなり、特注機【箒星】の専属をへて専用機【掃星】に乗ることとなる。
本人は整備科志望で将来的には研究者になるつもりだった。
インターセクシャルであり、13歳までは男として生活していた。
そのことと偶然部屋がブッキングしたこともあり一夏と友人となる。
女の子大好き。なおばかさん。
女性化手術で一年休学しているため、一夏達より一歳歳上。
座学、論理的なISの制御に関してはその一年間のアドバンテージもあり
(家庭教師が元代表候補生だったこともあり)
同学年の代表候補生、上級生にも引くけをとらない。
実技は凡人の域を出ないが、駆け引きや戦術を用いての戦闘で五分に持ち込む。
イメージボイス:緒方恵美(ありがち)

杉浦丹(すぎうらまこと)
身長:170cm
血液型:A型
誕生日:9月24日
バストサイズ:通好み
髪の色:黒(セミロング)
瞳の色:黒

馨の幼馴染み。
㈱SHIMANO専務の娘で家ぐるみで嶋野家と付き合いが有る。
馨の義兄とは生まれたときからの婚約者。
短剣道の全中優勝者で、CQCにかけては達人レベルの腕前。
竹刀剣道の範囲ならば箒と五分に渡り合える。
生真面目な性格のリアリスト。
イメージボイス:水樹奈々

嶋野夜子(しまのよるこ)
身長:162cm
血液型:B型
誕生日:1月17日
バストサイズ:禁則事項
髪の色:茶(白髪染め・ボブカット)
瞳の色:黒(メガネ)

馨の義母であるマダム
㈱SHIMANO副社長兼開発主任。
ISが発表されて以降の初期IS開発に関わった女傑。
恐い人。
ISデザイナー、エンジニアとしては束に次ぐ天才。
ISの宇宙開発用機の推進に熱心でジャクサとナサにぶっといパイプが有る。
現行の兵器としてISが開発されていることは将来への布石として割りきっている模様。
イメージボイス:久川綾

嶋野海人(しまのうみひと)
身長:180cm
血液型:O型
馨の義父なナイスミドル
重症の親バカ。
技術屋としては非常に優秀な部類にる。ただしガノタ。
人間としてはとてもいい人である。それだけに色々と残念な人
初期のIS開発にも技術屋としてかかわっており、千冬らとも面識がある。
イメージボイス:大塚芳忠


嶋野カツ(しまのかつ)
馨の祖母な女傑。
豪放磊落な馨の祖母。
典型的なツンデレ。
愛読書は菊地秀行というとんでもないおばあちゃんである。


嶋野陸(しまのりく)
馨の義兄
本編未登場。
現在は大学院生。


大滝蓮(おおたきれん)
身長:165cm
血液型:O型
バストサイズ:寂しめ
髪の色:黒(ショートカット)
瞳の色:黒

一年二組所属で剣道部のホープ。丹のルームメイト。
中学からの馨、蓮の友人。
丹にやたら懐いている。
全中ベスト8の剣腕の持ち主で、箒が相手でなければベスト4は確実だったらしい。


ユージェニー・スミス
身長171cm
血液型:B型
バストサイズ:巨
髪の色:ブルネット(ロングヘア)
瞳の色:グリーン

一年二組担任、もっぱら愛称のジェニーと呼ばれている。
元米国代表
過去のモンド・グロッソではキャノンボール・ファスト部門で優勝者している。
プレイボーイにグラビアが乗るほどの美人でナイスバディであるが。性格は一言でいうと軍人。
授業内容は完全に女ハートマン軍曹。
もとUSアーミー大尉。父親が米軍のお偉いさんで、親の干渉を嫌がって退役→IS学園という経緯がある。
緊急時に使用するISは専らファントム・イーグル


グートルーネ・V・ロートリンゲン
身長165cm
血液型:B型
バストサイズ:最適
髪の色:くすんだ金髪(ドリル系)
瞳の色:グレー

三年一組所属、ドイツからの留学生(代表候補生ではない)。
実家は貴族の血を引くという名家らしく「やんごとなき」の二つ名で呼ばれる。
(三年の上位陣10名には全員二つ名があるらしい)
日本のサブカルにやたら含蓄がある。(本人曰くルームメイトの影響だとか)
ISを用いた戦術・戦略を研究する部活「戦・研」の部長。
魑魅魍魎の集う魔窟とか言われているが、実際は主にロボットアニメをみてたべっていることが多いとかw
使用するISは打鉄。曰く「フランス製のISなど乗れるか」とのこと。
ドイツ騎士団流剣術の達人で、打鉄登場時はデフォルトの大刀では無く、特注のブレードとシールドを使用する。






オリジナルIS設定

箒星(ほうきぼし)
初期第二世代IS・特注機。
見た目はシャ○専用ザ○を模したネタIS。
と見せかけた、オールレンジ対応万能型IS。
作中では、性能を準第三世代機クラスまで引き上げられているが、恐ろしくピーキーな機体となってしまっている。
パッケージがやたら豊富に有る。
攻撃力B(武装によって変化)
防御力B+(シールドエネルギーが旧世代機なので低め)
機動性A-
特殊能力B

掃星(はばきぼし)
第三世代IS・専用機
キンキラに輝く素敵なIS。
丸みを帯びた外観と金色の装甲。まさかゴールド○モー?
といいたい所ですが、モビ○スーツに良く似た機体は居ません。
頭部装甲とセンサーは百○を模しています。
強力な電子戦能力、管制能力を持つ戦域支配型IS。一般兵器にとってはまさに鬼門とも言えるタイプで本来は軍用。
設計者の夜子は宇宙開発用のISの雛形として設計したため、デフォルトの火力が実は低め。
攻撃力B-
防御力A+
機動性A-
特殊能力S

ファントム・イーグル
米国製第二世代機・軍用高級量産機
高機動・火力型IS
高い電子戦能力を誇り、比較的初期の第二世代機だが、突出した性能を誇る、ただしコストが異常に高く、米軍以外で配備している国はない。
IS学園には一機だけ配備されているが、ピーキーすぎて一部の物好きな生徒(と米国からの留学生)とジェニーくらいである。
攻撃力A-(ただし白兵戦闘はD)
防御力C
機動性B+
特殊能力B+

(ステータスはラファールリヴァイヴをオールBとしてイメージしています)


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