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[30107] [F/S/P]   プロット及び登場人物
Name: れり◆2f5973f1 ID:6d681fba
Date: 2011/10/12 15:30
プロット。

何をもって人間か?


アインシュタインの「我々人間は潜在能力の10%しか引き出せていない」。
この言葉の通りこの物語に出てくる人間の殆どの脳の機能は眠っている。
しかし突如としてその潜在能力(通称サーパシード)を自分の思うがままに引き出し使いこなす力に目覚めた人間が誕生した。
人は次の段階へ進んだ者達。通称following stage Persons
。略称FSPと呼んだ、このFSと言う人間の誕生により世界の構造は大きく変わる事となる。
政治、経済、戦争。今まで人間達が競い合い、争ってきた多くの事を、各国が所有するFSが様々な方法で競い合い、殺し合い、その戦いに勝利した国が主導権を握る。
無駄な血を流さず、倫理的に平和的に解決するシステムをFPSWと人は呼んだ。
一般人はこのFSPWシステムの事を一切知らず、今までと変わらない日常が続いているものと各国が隠蔽している為、FSPの存在を知る物はごく僅か。
国内間でのFSPWも日常的に行われており現在日本では1~7番隊までが存在している。国内FSPWは裏社会の賭博としても使われており戦いに勝利した部隊に配当金の
一部が支給され部隊の強化に繋がるシステム。


一度FSPとして覚醒した人間は、なんらかの事件、事故に巻き込まれ、実質死んだ人間として扱われこの世から全ての履歴を抹消される。
FSPはもはや社会を円滑に動かすただの道具になっていた。



設定、登場人物。


セービングスーツ

FPSに与えられる自己の潜在能力が肉体の限界を超えない為に力をコントロールする為の軍服。
部隊で統一されている物や個々のサーパシードに合わせたデザインなど見た目は様々。
防護服の役割も担っており、ミサイルの一発や二発直撃した所ではびくともしない。
しかしスーツにはセービング限度が有り一定量のダメージを蓄積するとこの効果は無効となる。

リミッターブレイク
    
FSPのサーパシードを肉体の耐えうる限界まで上昇させるセービングスーツの機能。
一度リミッターブレイクを発動させるとセービング限度を大量に消耗ししまう為FPSW戦闘の際に使用する事は稀。
リミッターブレイク中にセービング限度を超えると体に多大な付加が掛かってしまい最悪の場合再起不能になってしまう諸刃の剣でも有る。
           







箕寶 涼(ミタカラ リョウ)

年齢20歳 この物語の主人公。
わざと人に絡まれ損害賠償、示談などを持ちかけ、賠償金をふんだくる自称「たかられ屋」を営む青年。
ニートと言われるとキレる。
リスクとリターンを常に天秤に掛け他人との関係は全て利害関係の一致で判断する典型的自己愛性タイプの人間である。
世の中を鼻に掛けて笑っている所もありその為かルサンチマン思考が若干強い。
ひょんな事から真帆と出会いこの世界の本当の現実を知る事となり、涼自身もFSPとなる事となる。
そしてFSPWに彼自身も巻き込まれていくのだった。
真帆からは乞食ペラ男と呼ばれている。(彼の性格が真帆曰く薄っぺらく、FSPになる以前のたかられ屋を皮肉っての事)
FSPになる前は外の世界で好き放題やっていた彼だったがFPSになり部隊に所属してからは
真帆や戒から特訓と言う名のトラウマレベルの嫌がらせを受け、すっかりいじられキャラが定着してしまった。
因みに真帆のの容姿は彼のどストライクであり、正確は逆の意味でどストライクな為日々煩悩と葛藤中。
     
サーパシードは動体視力強化型。ブレ=イン特注のメリケンを両手に装備し、持ち前の動体視力を生かし相手との零距離でのインファイト形。
     
リミッターブレイク 自身の動体視力に関連する全ての器官を強化、相手の筋肉の動き、一瞬の動作等から次の動きを読み取り急所に強烈なカウンターを叩き込む
ストライクパーディクション
     


桐原 真帆(キリハラ マホ)

年齢17歳 メインヒロイン。
FSP日本支部直下の対FS徴兵6番隊副隊長。他人に対するディベートが多く口が悪いかなりのドS少女。
艶やかな長い黒髪に私服、戦闘服も何故かセーラー服。本人曰く一応理由は有る模様。セーラー服はブレ=インの特注でセービング機能が付いている。
戦闘時は自ら前線に立ち、尚且つ部隊の指揮も取る。格闘ゲーム好きで腕前もかなりのもの。
ただし対人戦で負けると台を破壊するゲーセンにとって恐怖の大王。
基本的にリミッターブレイクには名前など存在しないのだが真帆が勝手に付けている。その為か格ゲーの必殺技の様な名前になってしまっている。
加えてセンスが無く彼女自身が厨2病全快な為なんともいたたまれない。
涼とは犬猿の仲であり、口喧嘩が耐えない。(大抵の場合肉体言語で真帆が勝つ)
部隊員に変なあだ名を付けるのが趣味。
サーパシードは瞬発力強化型。戦闘スタイルは二刀の小太刀を手に一瞬にして相手の急所を付くヒットアンドアウェイ形。
    
リミッターブレイク セービングスーツの一部をパージ(夏服になる)し瞬発力を極限まで強化し超高速での戦闘を可能にする 影羽瞬絶(ゼツウシュンゼツ)
     


ブレ=イン

年齢不詳 FSP日本支部の局長を務めている謎の少女。経歴、本名、実年齢全てが謎。
一日二時間しか睡眠を取らないらしく、日々研究、FSP専用兵器等の開発をしており基本的に研究室に閉じこもりっぱなし。
基本的に食事は甘い物しか取らず、言動が見た目に反して老人口調な為、真帆から影でロリババと呼ばれている。
FSの能力制御が不完全な涼にセーブアーマーを与え真帆の部隊に配属。
今後FSとして覚醒する可能性がある者を24時間体制で監視しており、涼に真帆を接触させたのも、涼がFSPとして覚醒するきっかけを仕組んだのも全て彼女。
サーパシード不明。


吉良坂 戒 (キラサカ カイ)
     
年齢23歳 真帆の上官。FSP徴兵6番隊隊長、武士道精神を尊重する堅物な性格。
FSP能力のセービングが非常に優秀でブレ=インの対FSP戦闘兵器を一切使用せず自身の拳のみで戦う武等派を超えたもはや脳筋。加えて戦闘狂。
鍛え上げられた肉体にはいくつもの古傷が残っている。
戒の性格故融通が利きづらく、戦闘となると独断専行、作戦無視は日常茶飯事な為、実質部隊の指揮は真帆が取る形になってしまっている。
極度のロリコンであり12歳以上は女性として認めないらしい。ブレ=インにぞっこん。
幾度と無く彼女の入浴を覗こうとしたり夜這いをしようとしたりして返り討ちにあっている。因みに体の古傷は全てその時の物らしい。
本人曰くこれは愛の証であり男の勲章だそうだ。
真帆からは偽赤軍曹ロリペドと呼ばれている。   
サーパシードは肉体強化形。戦闘スタイルは頑丈な自身の肉体を盾とした近接戦闘。
     
リミッターブレイク 自身の体全身の筋肉を爆発的に強化し圧倒的な破壊力で敵を殲滅する マーダーエクスプロージョン




花苑 佐久耶 (ハナゾノ サクヤ)

年齢15歳 どこからどうみても女の子にしか見えない、いわゆる[オトコの娘]
引っ込み事案で中々本音を言えず、嫌な事も中々断れないため真帆には良く女装をさせられ、お人形にされている。
そんな彼だが自由奔放に思ったまま自分の意思を行動に移せる真帆に人知れず憧れ想いを寄せている。
が、当の本人は全く男としては見ていない。
いつか真帆に認めてもらえる立派な[漢]になる為に日々精進している。
因みに入隊当初彼と初対面した涼も彼を女の子だと思い込み、何気なく発した言葉が彼の心に響き慕われる事に。
年下の可愛い女の子(ではないが)に好意を持たれていると感じた涼はウハウハだったが真帆の仕組んだある悪戯により佐久耶が男だと知る事となる。
同時にかなりのトラウマを植えつけられる事にもなる。しかし事が起きてからも二人の関係は良好。
サーパシードは脚力強化形。戦闘スタイルはありとあらゆる格闘技の足技を取り入れた[花苑神脚](真帆が勝手に付けた名前)
     
リミッターブレイク 自身の両足を限界まで強化し1秒当たり役100発の蹴りを相手に叩き込む ワンシークミリオンショット





[30107] 第一話 「箕寶 涼 職業[たかられ屋]
Name: れり◆2f5973f1 ID:6d681fba
Date: 2011/10/12 15:35
第1話  「箕寶 涼 職業[たかられ屋]」


とあるカフェで俺は友人……と言えるかどうかは解らんが人生論について談笑をしていた。
まぁ俺が勝手にやってるだけなんだけどな。


「つまり人間の本質は悪だ、と思うわけよ」
「へ?何いきなり哲学的な事言っちゃってる訳よ~?」
「まぁ言ってみりゃ必要悪って奴だな。弱者は強者を妬み、人は常に高みを目指そうとする」
「う~ん……俺っちそう言う難しい話はさっぱりだ~」

こいつの名前は砂原綾堵。俺の仕事仲間。いわば相方。
相方と言っても俺のおこぼれに群がるハイエナみたいなチャラ男で、分け前はギャンブル、キャバクラ、風俗とかに使い込んじまっていつも金欠。
絵に描いたようなダメ人間だわな。おまけに素人童貞。
まぁ……俺も人の事は言えないけどな。だが金が無いからと言って、人の家にタダ飯食う為だけに来るのは辞めて欲しいもんだ。

「ま、そんな世の中におれは若干うんざりしてる訳よ」
「そしてニートになった…」
「俺はニートじゃない!!」
「冗談だって、[たかられ屋]だって立派な仕事じゃ~ん」


苦笑いを浮かべながら彼なりのフォローを入れたようだ。
まぁ良しとするか。
大体お前みたいな明日にでも野垂れ死にしそうな奴が誰のおかげで……これ以上話したら原稿用紙一枚分あっても足りないのでこの位にしておこう。

そんな事を考えていると綾堵の携帯が鳴る。

「おっと、ちょいと失礼」


綾堵が電話をしている最中俺は、ぼ~っと考え事をしていた。
まぁ前述した通り俺は人間が、そしてその人間達が動かしてる社会自体が嫌いだ。
でもそういった思想が文明を発展させた訳だから批判はするが否定はしない。
俺も人間だしな。
笑った顔で誤魔化して腹の中では相手をどうやって蹴落とすか考えている。そもそも人間なんて殆ど利害関係で繋がってるようなモンだ。
友情。愛情。善意。人間が行うこういった行動は大抵自分に理がある場合か己に酔いたいだけだと俺は思っちまう訳よ。
なんでそんなに皆良い人を演じたがるかって?多分人に嫌われたくないんだろう。大体法律なんて物は人の欲を抑える枷みたいなものだ。
ある日突然見も知らない奴に殺されたくないだろ?だから人は殺しちゃいけませんよって事だろう。
そんなわけで俺は人のそういった負の感情を飯の種に生活している。
ま、そんな俺も昔は正義のヒーローに憧れてた可愛らしい時期も有ったんだけど……なんてな。


「おまた~、涼。今日時間有るよな?」
「人様が汗水たらして働いてる午前中に、カフェで呑気にお茶してる時点で察しろ」
「だよね~、んじゃこっちの手筈が整い次第連絡するわ。んじゃ、ばいちゃ~」

伝票を放置したまま綾堵は去っていった。
軽く殺意が沸いたが仕方なく綾堵の分まで会計をすることに。
本当に良識に掛ける奴だとつくづく思う。


カフェを出て俺は自宅に戻る。



季節は冬。
俺はコタツに入り横になりながらゴロゴロしていた。

携帯が鳴る。眠気まなこを擦りながら携帯を取る。
どうやら眠ってしまったらしい。

「おう……手はずは整ったか?」
「おいおい、どうしたんだよ?棺桶に片足突っ込んだ老人みたいな声だぜ?」
「ほっとけ……寝起きなんだよ。んで、いいカモは見つかったか?」
「おうおう、この綾堵様の情報網を舐めてもらっちゃ困るぜ~、今から駅前のロータリー来れるか?絶好のカモがいてよ~」

ふぅ、こう言う自分は人より出来ますってタイプの奴はどうも好きになれん。加えてチャラ男でなにかと馴れ馴れしい。
利益を生む有益な情報を寄こしてくれるから組んでるだけで、そうでなけりゃお前が逆に俺のカモだよ。ハァ…

「ふーん、どんな感じよ?」
「いきがっちゃってる今時の、不良な俺カッコイーっ!系の奴らだな~、人数は三人」
「今までカモにしてきた奴らと大体同じか。因みに確認しとくけど条件は全部クリアしてるか?」
「そこはご安心を~。今日もガッツリ稼ごうぜ~」

こういった不良的思考を持たず、ファッションで悪党気取ってる奴らが俺のお客様。
今俺達がやろうとしている事は「たかられ屋」だ。
え?そんな職業聞いた事が無い?そりゃそうだ。だって俺が考えたんだもの。
簡単に説明すると綾堵がユダになってターゲットを俺に差し向ける。
そんで俺が被害者になってターゲットに示談や慰謝料を吹っかけて金をせしめる。勿論吹っかける金は大金だ。
もちろんそんな奴らだ。払える金なんて用意できやしない。
用意できなきゃそれ相応の所に連れて行って金を用意させる。
ま、美人局の応用みたいなもんだ。
示談に応じなければ民事で告訴をすりゃあ良い。現実無理な話でも、ちょっとお得意の悪徳弁護士がいてな。
こう見えて元有名大学の法学部だったもんでね、その時の腐れ縁って奴だ。ま、中退だけどな。

え?現実的に不可能だし穴だらけだって?
まぁ今後の展開を見てから言ってくれ。


「解った。すぐ行くからそいつらに接触しとけ」
「了~解っ!さ~て、今日はキャバでパーッと使うぜ~。彩華ちゃん暫らく指名してなかったから今日は同伴してあげて、そんで……ムフフ」
「お前の無駄話はどうでも良い。とにかくカモを逃がすなよ」
「あいよ~」

俺は家を出る時に誓った。
綾堵が金欠になっても米一粒すら恵んでやらん。と。

「…いけね。あの人に連絡しとくの忘れるところだったぜ」





涼が駅へ向かう途中、彼をビルの上から見つめる謎の少女の姿があった。
彼女は携帯を手に誰かと連絡を取っている。

「ブレ=イン。本当に彼なの?」
「う~ん…世の中100%と言う事は無いからのう。じゃが箕寶 涼がFSPとしての因子を持っている可能性はきわめて高い」
「はぁ…どう転ぶかも解らない事の為にこの寒空の中。小汚い青年の監視をアタシは続けなくちゃならないって訳ね」
「まぁまぁ、これもFSP足る物の責務じゃ、辛抱してくれ」

そう言うと電話は切れた。

「FS因子者の監視くらい下っ端の豚にでもやらせなさいよねっ。このロリババア!」
彼女は通話の切れた携帯に向かって罵声を浴びせる。

「っと!いけない、いけない。彼の監視を続けないと」
そう呟くと彼女は涼の後を追い始めた。






「うぅ…寒ぃ。ったく、この仕事儲かるのはいいが野外活動中心なのが玉に傷だぜ」

今この寒空の中寒さに耐えながら仕事をしている方々全員を敵に回した様な気がしたので謝罪をしておこう。一応。
この寒い空の下、汗水たらして俺の半分も行かない年収で頑張って生活している方々ゴメンなさい。
こんなもんでいいだろう。そんな事を考えていたら綾堵がカモをつれてやってきた。

「よう兄ちゃん。さっきこの人から聞いたんだけどよぉ、あんた最近羽振りいいんだって?」
「ちょっと俺らにも分けてくれよ」
「つーかよぉ。綾堵さんだっけ?コイツホントにそんな金持ってんの?どう見てもパンピーなんですけど~?」

ッチ…綾堵の奴、毎回毎回、釣り方が下手糞なんだよ。俺の服装を見てみろ。何処をどう見たら羽振りがいい様に見える?
ったく!今度もう少し良い釣り方教えなきゃだな。

俺は綾堵の眼を見てサインを出す。
まぁちょっとしたアドリブだ。奴が着いてこれるか心配ではあるが。

「いやいや、つい最近宝くじに当たりましてね、ほんの三千万ですが。おや?そちらにいらっしゃるのは先日宗教勧誘に来られた、え~と…」
「砂原綾堵だ。テメーのせいで今月のノルマ挙がんね~んだわぁ。そんだけ金持ってんだ、ここはちょっと恵まれない俺達にお布施していけや、きっとご利益があるぜ」
「いやぁ…、宝くじが当たったのは嬉しいですが、まさか当選者の個人情報が流れてるなんて。今の情報社会は怖いですねぇ」

よし。まぁ完璧じゃないにしろ、この馬鹿共には十分だ。
宗教勧誘を断られた腹いせにカツアゲ仲間を誘った。こんな感じに聞こえただろう。
そういや綾堵の奴。お気に入りのキャバ嬢を落そうとトークスキルを磨くとかなんとか言ってたっけか、キャバクラ通いもたまには役に立つじゃんか。
まぁキャバ嬢は客になびく振りはするが、落せる事は稀だ。お前の努力は無駄に終わるから安心しろ。

「そう言う訳でちょっと顔貸せよ、涼さんよぉ、なぁにケツの毛まで毟り取るような事はしねぇからよ」
「解りました。なるべく穏便に済ませてくださいよ…」

そんなやり取りの後俺達は人気の無い駅の高架線下に場所を移した。

「さて、と。まず財布の中身全部出しな」
「…はい」

そう言うと俺は綾堵に財布を手渡す。

「素直で結構、結構。ほいじゃま、失礼してと。いち、に、さん、し」
「ウヒョ~!すっげぇ~!綾堵さん!30万は有るんじゃないすか!?」

金勘定をしだす綾堵とそれを見ながら目を輝かせている馬鹿三人。
これからその目が絶望に染まる瞬間が楽しみでしかたない。


「んじゃ、有り難くこの金頂くぜ。ほら、お前ら取り分」
「ヒャッホー!」

砂糖に群がる蟻の様に綾堵の周りを一斉に取り囲む三馬鹿トリオ。
俺はまた綾堵に目でサインを出す。
小さく綾堵が肯く。


「え~と、俺らの取り分は15万だから…15割る3は…」

本当に救いようが無い馬鹿共だ。小学生でも出来る暗算すら即座に出来ない。
まぁお前らみたいな馬鹿が居るから俺らは食って行けてるわけだから感謝しないとな。
その光景を傍観しながら俺は綾堵にサインを送る。
その瞬間不意に綾堵が携帯を取り出し三馬鹿のアホ面と、その手に持った金をしっかりと写メに収めた。

「ちょちょっ!いきなし何するんすか!?」

予想外の綾堵の行動に同様を隠せない三馬鹿共。

「ップ…ククク、アッハッハッ!いや~、メンゴメンゴ。お前ら嵌められちゃったんだわぁ」
「っつ!どっどう言う事だよ?あぁ!?」

さて、ここからは俺の仕事だ。
本日のお客様にサービスのご説明タイムっと。

「いいか?お前らの馬鹿な頭でも理解できるように解り易く説明してやっから、よ~く聞いとけよ?」
「んだと?ゴラァ!!」

弱い犬程良く吼えるとはまさにこの事だわな。
まぁ後数分後にはお前ら全員奈落の底だ。


「まぁ黙って聞けって。俺と綾堵はグルだ。お前らみたいな馬鹿を嵌めて警察に突き出さない代わりに示談金を頂く」
「逆カツアゲって奴?なんちゃって~」

綾堵が口を挟む。お前の寒い冗談で今、日本中の気温が-3℃下がった。
日本の皆さんに謝れ。特に北の方に住んでる方々に謝れ。

「お前は黙ってこの馬鹿共が逃げない様に壁になってろ」
「へいへ~い」

「さて、と。お前ら。今から三人で50万用意しろ。それで示談にしてやる」
「はぁ!?んな大金無理に決まってんだろ!大体そんな金有ったらこんな話乗らねぇよ!!」


掛った、思った通りだ。
そもそも示談金っーのは日常生活に支障を来たす精神的苦痛、肉体的な被害を被った場合に双方が交渉するもんだ。
さっさとその金その場に置いて、逆に警察に通報すりゃ俺達が詐欺で捕まるのに…人間ってのは思いもよらない事態に遭遇すると自分の置かれた状況が正確に把握できねぇ。
こう言う世間知らずの馬鹿は特にな。


「おい綾堵、こいつらの情報何処まで集まってる?」
「んー、こいつら一回恐喝で捕まってるね」

まぁこれも既にリサーチ済みなんだけどな。

「ならもう一回警察に捕まれば良くて検察、運が悪けりゃ実刑だわな。さて、どうするよ?」
「…へっへへへっ!コッチは三人居るんだぜ?テメェらボコって金も頂戴して…」
「だ~か~ら~。そうなった時の為の写メと…」

不意に綾堵がポケットからレコーダーを取り出し再生しだす。
そこにはやり取りの全てが録音されていた。

「勿論俺の音声は編集加工して証拠として提出するけどねん♪因みに俺は、第一発見者権被害者その2にでもしとくか♪」
「テメェら汚ねぇぞ!!」

汚いのはお互い様だ。
人から金を巻き上げ様って思った瞬間、自分達も同じ立場に立ってる事に気付け。

「さて、三馬鹿トリオ。どうするよ?」
「……俺達は50万も用意出来ねぇよ!」
「はぁ…しゃ~ね~な。ちょっとそこで待ってろ」

そう言うと俺は携帯を取り出しある人物に電話を掛けた。

「どうも、照さん。カモ三人引っ掛けました」
「えぇ、はい。予想道理って感じですかね」

「おい!?誰と連絡取ってやがんだっ!」

綾堵が口を挟む。

「まぁまぁ、それは後のお楽しみってことで~」




「え~と、今上田駅の高架線下です、後は手筈通りって事で。では」


暫らくするといかにもな車が俺達の前に止まる。


「ちょ!なんだよ?俺達に何する気だよ!?」
「いや~、お前ら金用意出来ないんだろ?だから親切で優しい人達が格安でお金を貸してくれるようお願いしてやったんだよ」
「っつ!ふっざけんな!!それって闇金じゃねぇか!!」
「いやいや、冷静によく考えてみろよ、お前らこれから前科2犯で実刑食らったら仕事も限られてくるぞ?」
「べっ別にっ、そんなのカンケーねぇよ!そっ、そもそも、俺らまともに働く気ねぇしっ、なっ!?」

こう言う時、馬鹿な奴ほど開き直りやがる。いい加減イライラしてきたが…
ま、追い込まれた人間程怖い物はねぇからな。後は照明さん達に任せよう。

「オラ!シャバ増共さっさと車乗りやがれ!こっちは印鑑押させりゃいいだけなんだ、別に五体満足じゃなくてもいいんだぜ?」


どこからどう見てもヤーさんにしか見えない人達が車から降りて来て三馬鹿を取り囲む。
三馬鹿共、可愛そうに…半泣きじゃんかよ。ま、全然可愛そうとは思わないけどな。
つーか照明さん…この状況何処のVシネっすか?


そんなやり取りを涼達がしている最中。
高架線上から彼らを見下ろす先程の少女の姿があった。


全く…何をするのかと思えば下っだらない。共食い程醜い物は無いわね~、あんなのが同属になるなんて信じられないわっ!
でも…今のやり取りを見る限り、そこそこ起点は効くし状況判断能力、作戦の立て方、人の心理を読む力は人並み以上に有る。
まるっきりグズって訳でも無さそうね。
フフッ、もし彼がFSPに覚醒したらアタシと同じ部隊に入るんだっけ?
今の内に名前でも決めておこうかな?そうだ!あいつから漂う薄っぺらい雰囲気と、今やってる、…え~と「たかられ屋」。だっけ?
人にたかる乞食で薄っぺらい男。略してっ!
「乞食ペラ男」にし~よおっと♪


「ご苦労さん。おら、お前らの手取りだ。追加報酬が出たらいつものお前の口座に振り込んどく。また宜しく頼むぜ」

金の入った茶封筒を照明さんから受け取る。
そんなこんなで本日の「たかられ屋」の仕事は終了だ。
今回は人数が多少多かったから封筒も分厚い。
あ、因みにヤーサンが言ってた追加報酬ってのは今回の客が新たな利益を生み出した場合三割が俺達の所にバックされるって仕組み。
闇金に足突っ込んだ人間からどう搾り取るかはご想像にお任せする。

「どもっす」
「今後ともごひいきに~」

あの3馬鹿の末路は、ヤーさんに鉄砲玉として売られるとかそんな所だろう。
良くてマグロ漁船で素敵なクルージングとか?
はい。こうしてお客様三名の人生は近い未来ひっそりと幕を閉じる訳だ。
これが「たかられ屋」の足の付かない理由の一つ。死人に口無しってね。


ヤーサン方さん方を見送り、二人で報酬を分けた後、綾堵は意気揚々とキャバクラへ。
たっぷりとお気に入りのキャバ嬢に貢いで来るといいさ。
だがもう飯の世話はしてやらんからな。

「さて、俺も帰るか」


そう呟き駅のロータリーに戻ろうと歩き出した瞬間だった。
バールの様な物が風がを切る音とともに、俺の後頭部に人生サヨナラホームランが打ち込まれる。
あぁ……これが因果応報って奴か……
薄れていく意識の中でそんな事を考えながら俺は力なく地面に倒れこんだ。
























[30107] 第2話 「ドS少女と知らない世界」
Name: れり◆2f5973f1 ID:6d681fba
Date: 2011/10/12 15:37
第二話 「ドS少女と知らない世界」



今がおはよう御座いますなのか、こんにちはなのか、それともこんばんわなのか、誰か教えて欲しい。
なんせ俺はついさっき運命劇な死を遂げてしまった。
ついでにもう一つ教えてくれ。ここは天国ですか?地獄ですか?
まぁ今まで散々人を地獄に落としてきた俺だ。これから閻魔様に謁見でもするんだろう。
舌を抜かれないように、尚且つなるべく罪は軽くして頂きたい。
確か彼の好物はこんにゃくだと誰かが言っていた。
そういや昨日の「使い古し」のこんにゃくが生ごみとして俺の家にあった筈だ。
真ん中に切れ込みを入れてある奴な。
まぁそんなもの献上したら間違いなく問答無用で畜生道に落とされるだろうけどな。


「お~い、生きてるー?」

遠くから少女の声が聞こえる。
見りゃ解るだろ。死んでますよ。

「おーいってばぁ」

頬に痛烈な痛みが走った。
謁見の前の拷問か?

「早く起きないと顔の形が変形するまで往復ビンタし続けちゃうぞー?」

謎の少女の声と共に俺の頬をリズミカルに叩く音まで聞こえてくる。
人って死んでも痛覚は残るんだな。まるで現実のようだ…って!!

「痛ってぇーーーーーーーっ!!」

余りの激痛に俺は飛び起きた。
赤く腫上がった頬を摩りながら俺は辺りを見回す。
そこは生活観の余り無い真っ白な壁に覆われたどこかの一室だった。

「おっ?起きたおきた。気分はどう?」
「どうもこうもあるか!頭はズキズキするわ、頬は痛てぇわ、最悪だよ!」
「それだけ元気があれば大丈夫。はぁー良かった。人に向けてセービング使うの初めてだったし、いくら呼んでも起きないから、殺しちゃったかと思って心配したわ」

そこにはセーラー服を着た小柄な少女が立っていた。ぱっと見中学生くらいの年齢に見える。
話から察するにコイツが俺の後頭部に「人生サヨナラホームラン」をブチかました張本人らしい。
俺が今までカモった奴の彼女か?いわゆるお礼参りって奴?最近の若者は怖ぇわ。

「おい、女子中学生。未成年だからってなにしても許されると思ってんじゃねーぞ、お前のやった事は殺人未遂だ。たっぷりと慰謝料絞り取ってやるからな!」
「だーれが女子中学生じゃー!」

そう彼女が発すると同時に俺の頭の上に隕石が落ちてきた。
いや、正確にはこの女のゲンコツな訳だが。


「痛ってぇーーーーーーーーーっ!お前俺を殺す気か!?」
「大丈夫よ、ちゃんとセービングシステムは働いてる。死にはしないわ、そ.れ.に!アタシは女子高生!……まぁ複雑な事情で辞めちゃったけど」
「あ、因みに今のは上段ガード不能のシューティングメテオ。入力コマンドは236強Pだから覚えときなさい」

それは女子高生とは言わん、ただのニートだろう、それと…その後の言動。シューティング…なんだって?
どうやらこの女、可愛そうに重度の厨2病患者の様だ。
突っ込み所満載だが俺はその気持ちをグッとこらえた。
理由は単純。これ以上彼女を刺激したらマジであの世への片道キップがプレゼントされそうだからだ。
それにしてもこの女。こんな華奢な体の何処からあんな力が出てくるんだ?

聞きたい事は山ほど有るのだが俺は少し黙って様子を見ることにした。
とりあえずこの女、俺がもしも神様だったら真っ先に二次元に葬り去ってやりたい。



沈黙が部屋の中を包む。
暫らくして謎の少女が俺を殴った拳を見つめ俺に向かってこう言った。


「ちょっと。アンタの薄汚い頭を殴ったせいで少し手の甲擦りむいちゃったじゃない。アタシの右手に土下座しなさいよ」
「生憎だが…人を後ろから撲殺しようとした上、監禁し拷問まがいの事をされた挙句、その張本人に向ける謝罪の言葉なんて俺は持ち合わせてないんだよ!」

俺は頭を摩りながら彼女に言った。
痛てて…コブ出来てら。


「なんですってぇ!?サルの分際で生意気なのよ!乞食ペラ男!!」
「は?誰だそいつ」
「今日からアンタの新しい名前よ。この文武両道、成績優秀、才色兼備の桐原 真帆様が付けてあげたのよ?滝の様な涙を流して喜びなさい」

その言葉を聞いた瞬間、俺は生まれてこの方、初めて人をぶっ殺したと思った。
このガキ。人が下手にでてりゃあ調子に乗りやがって。しかし相手は人の皮を被ったメスゴリラだ。
まともにやり合ったら確実に三途の川を渡る羽目になるのは間違いない。
とにかく今は自分の置かれている状況を把握しねぇとな。


「で?文武両道、成績優秀、才色兼備の桐原 真帆ちゃんにお尋ねしたいんだが、俺を誘拐した目的はなんだ?それとここは何処だ?」
「あら?少しは口の利き方が解ったみたいじゃない。ここはね、FSP日本第六部隊支部の一室よ」
「は?FS…日本…なんだって?」
「だ~か~ら。FSP日本第六部隊の…って、ペラ男は今まで普通の生活してたんだっけ、じゃあ知らなくて当然よね」

なんだ?FPSって。新手のテロ組織か?てか俺の呼び名はペラ男で決定なのか!?
…まぁどちらにせよ俺の身の安全の保証は何処にもないことだけは解った。


「おい。一つ質問いいか?」
「何?」
「FSPってなんだよ?新手のテロ集団か何かか?」
「まずはそこから説明しなきゃなのね、あー面倒。良い?一度しか説明しないから一字一句聞き逃さず有り難く聴講しなさいよね?」

そう言うと真帆は部屋の片隅からホワイトボードを引っ張り出して来た。
マジックペンでホワイトボードに図のような物を書き始める。
暫らくして一通り書き終えたのか俺の方を振り返り真帆が尋ねてきた。

[これ。なんだか解る?]

何がなんだか全く解らない。
何故ならホワイトボードに書かれた物。
それは図だとか絵だとかのレベルでは無く、もはや芸術の域に達していたからだ。

[ピカソの絵か何かか?]
率直な感想を述べた俺の頭にまたもや隕石が落ちる。

[痛ってぇーー!]
[アンタ。一度眼科に行って来たら?どこからどう見ても人間の頭の断面図でしょ]

…どこからどう見ても子供がチョークで道路に書いた意味不明な落書きにしか見えないが、今はそう言う事にしておこう。
その彼女曰く人の頭の断面図に数字で10%と書き込み真帆は言った。

[これが普通の人間、で…]

さっき書き込んだ10%を消し今度は50~80%と書きこむ。

[これがあたし達FSP。解った?]
[解らん]

彼女は軽く舌打ちをして俺を睨みつける。
解る訳がないだろう。大体その10%だの50%だの、数字の意味だけでも説明しろよ。
あれか?正常な人間とお前の頭が発している電波指数の差か何かなのか?だったらそこは%じゃなくHzとでも書き込んでおけ。
そんな事を考えているとため息混じりに彼女が語り始めた。

[ペラ男はアインシュタインの「我々人間は潜在能力の10%しか引き出せていない」って言葉聞いたこと有る?]
[ん?なんとなくだけど。後…ペラ男って呼び方いい加減辞めろ。俺には箕寶 涼って列記とした…]
[要するにあんた達人間の脳の殆どの機能は眠ってる。って事、ここまでは理解できる?ペラ男]

まぁ何となく理解はできた。こいつとは一生会話のキャッチボールは出来そうに無いって事が。

[ちょっと、聞いてるの?]
[ん?あぁ]
[何その空返事。こっちが真剣に説明してるっていうのに、いい?これから返事は「はい」か「いいえ」で答えなさい]

もう我慢の限界だ。
自称女子高生。社会的に言えば中卒ニートの電波女にここまで言われてニコニコ笑って居られるほど寛容な精神を持ち合わせている人間は真性のドM位だろう。
俺は心に白装束を纏って彼女に言った。

[おい。いい加減にしろ、この中卒電波女!人様を撲殺しようとした挙句、こんな訳の解らない所に拉致監禁しておきながら、意味不明なことをさっきから…]

言葉を言い終える前に何かが風を切る軽快な音と共に俺の頭の横を翳めた気がした。
銃器でもぶっ放されたのかとおもい、思わず仰け反り反射的に言葉を返す。

[ちょ!?お前、俺に何しやがった!?]
[見えた?]
[は!?]
[質問を質問で返さないで。見えたの?見えなかったの?]

見える見えない以前の問題だ。何をされたのか全く解らなかった。
真帆自身さっきまで俺と会話をしていた位置から動いていない。

[ま、見えなくて当然か]
[だから!、何のことだよっ!?]
[今さっきペラ男の側頭部ギリギリ目掛けてパンチをお見舞いしたわ]
[何かが俺の横を掠めた気がしたが…、それがお前のパンチだって!?]
[そうよ]
[ありえねぇだろ。大体人の動体視力で追えない程のパンチをその場所から身動きもせずに打ち込むなんて、無理に…]

言葉を言い終える前に、また「何かが」俺の横を掠める。

[ほら。無理じゃないわよ?]
[……]

言葉が出てこない。取りあえず俺の常識では理解出来ない事が今この瞬間起きている事だけは理解出来た気がする。

[解った。取りあえずお前は役2m離れた距離から、人の動体視力の限界を超えた音速パンチが出せる、トンデモ人間って事にしておこう]
[解ればよろしい]
[で?そんなトンデモ能力とさっきからお前の話してる事との関係性は何なんだよ?]
[本当に鈍い男ね。ペラ男って彼女居ない暦=年齢でしょ?簡単に説明するとさっきアタシがやった事は、人間の脳の潜在能力をちょっと引き出しただけ]

なんでこの女の言葉には必ずと言って良いほど罵声が一言入るんだ?
それに潜在能力をちょっと引き出しただけだって?
どこぞの格闘漫画じゃあるまいし人間にそんな芸当出来る訳が…って目の前で二度も実演されてるんだよな…
現に真帆の両手は空手。銃器らしき物も見当たらないし。

[人はあたし達の事を次の段階へ進んだ者達。通称following stage Persons
って名前を付けた。略してFSP]

この会話音声だけ聞いたら只の女子中学生がノートの切れ端にでも書いた痛い設定としか聞こえねぇな…
まぁ今は話を進展させたい。俺は話に乗っかってみる事にした。

[で?そのFSPと俺が今拉致監禁されている事に何の関連性が有るんだ?]
[ペラ男がFSPになり得る因子を持っているから、だそうよ]

[俺はいたって普通の人間だ。少なくともお前よりはな]
[「今は」ね。少したとえ話をしましょう。ペラ男はビルの上から空を飛ぼうと思って飛び降りる人間が居ると思う?]
[常識的に考えて有り得ないだろ]
[何故?]
[何故って、俺達人間は空なんて飛べる訳が…]

[それよ。飛べる訳が無い。出来る訳が無い。そういった常識って言う脅迫概念が、人の脳を縛ってるの]
[要約すると出来ると思えばなんでも出来るって事か?]
[当たらずとも遠からずって所ね。勿論物理的に不可能な事もあるわ]


まぁなんとも非科学的な話だが、理解は出来た。
で、俺もそのFSPだっけか?それになり得る資質があって今此処に拉致監禁されていると。

[で?俺はこの先どうなる?悪の秘密結社に改造でもされるのか?]
[馬鹿じゃないの?何処のバッタ男よ、ペラ男はこれからFSPの因子を覚醒させる為に此処で訓練を積んで貰うの]
[断固拒否する]
[今のアンタに拒否権なんてあると思うの?]

…この女。本当に一々勘に触る喋り方をする奴だ。
携帯の電話帳はきっと父、母のみの寂しい奴だ。間違い無い。

[拒否権も何も、俺が行方不明になったら警察が動くだろ]
[この期に及んで楽観的な考え方ね。有る意味羨ましいわ。それはアンタが現実で「生きている事」前提の話でしょ?]
[は?何言ってんだ?現にこうして生きてるじゃねぇか、ちゃんと足もあるぜ?]

ため息混じりに真帆は部屋のテレビを付けた。
ニュース番組にチャンネルを合わせ指を指す。

そのニュース番組で取り上げられている内容に俺は驚愕した。
どう説明したらいいのか解らない。どうしてこんな状況に陥ってるのかも解らない。
ただ一つ言える事は桐原 真帆が俺に放った「人生サヨナラホームラン」は確かに命中していた。
俺という名のボールを現実と言う名のスタジアムから、あの世と言う名の場外へぶっ飛ばしていた。


「事件の被害者「箕寶 涼」さんは、後頭部を鈍器によって強く殴打され、発見された時には既に死亡していた事が…」


淡々とニュースを読み上げるキャスターの声が無機質な部屋の中に響いていた。
俺はその場で頭を抱えて、ただただこれが悪い夢で有る事を祈るばかりだった。


























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