【モスクワ大前仁】ウクライナの首都キエフの地区裁判所は11日、在任中の職権乱用罪に問われた野党政治家のティモシェンコ前首相(50)に対し、禁錮7年の判決を言い渡した。野党や欧州連合(EU)は「政治裁判」と批判しており、国内の混乱や対外関係が冷え込むのは必至だ。
裁判所は前首相が09年1月にロシアと天然ガス購入合意を結んだ際に内閣の承認を得ないで、国営ガス企業に不利な合意を強要した結果、15億1600万フリブナ(約150億円)の損害を生んだと認定した。賠償も命じた。前首相側は控訴するとともに、欧州人権裁判所へ提訴する方針を示した。
前首相は判決後、「裁判は憲法と司法制度を踏みにじった。ウクライナを専制から守らなければならない。皆さんに闘いを呼びかける」と訴えた。約2000人の前首相支持者は裁判所付近に集まり、抗議活動を展開しており今後、国内各地に広がる可能性もある。EUのアシュトン外務・安全保障政策上級代表は11日に声明を発表し、「対ウクライナ政策を考え直す」とし、ウクライナとの間で年内締結を目指した安定連合協定にも影響するとの考えを示した。
ティモシェンコ氏は04年の大統領選でユーシェンコ前大統領を当選させた民衆運動「オレンジ革命」の立役者で、前政権で2度にわたり首相を務めた。10年2月の大統領選でヤヌコビッチ現大統領に小差で敗れた。
毎日新聞 2011年10月11日 20時30分(最終更新 10月12日 1時35分)