安倍晴明(3)
<2011.10.12>
晴明の母は、晴明に命を注ぐだけの役目だったかのように、晴明を生むとすぐに亡くなったのじゃ。彼女は、晴明の父・安名に信田森で道に迷った時に助けられたのだが、いつ知れず、信田の森の葛の葉狐の化身と言われるようになる。このように人々に云わせられるくらい晴明には、世を見抜く力があったと云う事だぁ。
こちらで永らく過ごすと、今の世より昔の世の方が素晴らしく思える。
人の事ばかり気にする今の世の人達より、自然界を感じ取る力と虫魚鳥獣の啼き声で、それらの生き物の言葉が分かる力の方が、どれ程凄いかが。あの時代にはこのような力を多く持つ人々が生きていた。
だがなぁ、あの時代でも能力を持つ者達に近付こうとして術を知りたがり、様々な手法が生まれて来るが、あの頃にはすでに中国から陰・陽で見る陰陽道と云うのが入って来て、あの晴明も天性の力に、陰陽家の賀茂忠行・保憲父子から手解きを受けたが、すぐに二人の上を行く働きをしおった。
陰陽道とは、五行の思想に基づく考え方で、天文・暦数、それと占いを術と呼び、今も信じる者が多い世界ぞぉ。
日本に於いても、大宝令では中務省に陰陽寮なるものが設けられたくらいだからなぁ。だからと申して、今の世にこの陰陽師が誕生するかといったら、難しいと答えておこう。晴明の事を呪術師と思う向きも多い事だろうが、呪術師と云うより、自分の肉体と心、すなわち魂と一体化する力はまさに、神技と云える。
今回皆に話したき事は、己の肉体と心をひとつにする動きをとれと申したいのだ。肉体があっての心、心あっての肉体。己が考え、思い、感じる全ては、肉体の隅々まで動かす。それ故に今、己が肉体をどの様に動かしているかを分かる事から始め、一身一体になって物事を見る事が、いずれ我が身を守る事になると云う事を教えたかったのだぁ。