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東京の核実験による放射性降下量と白血病・ガン患者数の相関関係

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私は「3丁目の夕陽」世代です。まさにあのマンガや映画の時代に東京で洟垂れ小僧時代を過ごしました。まったく当時はなぜか皆、青ッ洟を垂れていたような気がします(笑)。
 

当時のがき共の心配は、通信簿と「雨に当たるとはげる」という噂でした。それは核実験まっ盛りのアトミック・エイジだったからです。 

1950年代の半ばから、1980年代まで米ソ仏中が核実験をしまくりました。特に初期の核実験は大気圏内核実験といって空中爆発させる形式でしたから、地球全体が気流によってまんべんなく汚染されてしまったわけです。 

回数が何ともえぐい。いちばん多かった62年など実に年間178回です。年に178回ですぞ!この回数分原発が世界各地で爆発しているのも同然だったわけです。  

回数は図1をご覧ください。折れ線が核実験の回数です。 

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           図1 核実験回数とセシウム降下量推移

63年には、部分的核実験停止条約が締結されて実験回数は減りましたが、中国は締結には加わらず、国際世論を無視して執拗に地表核実験をウイグルで続けました。 

しかもやり方もあろうに、ウイグル民族居住区付近で無警告、しかも地表核実験です。彼らに大量の急性被曝が出たと言われています。この時の放射能も放射性黄砂となって日本に大量に飛来しています。

核爆弾というのは、意図的に放射性物質を核反応させるものですから、福島第1原発での事故など比較にならない高レベル放射線を出します。

放出される放射性物質もケタが違います。ビキニ環礁の核実験で放出された放射性物質は、甲状腺の内部被曝に換算するとこうなります。 

・ビキニ環礁・・・・・200グレイ
・チェルノブイリ・・・50グレイ
・福島県浪江町・・・5ミリグレイ
 

では、今から50年あまり前に東京に核実験時に放射性降下(フォールアウト)した放射線量はどのていどだったでしょうか。これは記録が残っています。(図2参照) 

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図2 核実験時代の東京への放射性物質降下とチェルノブイリ、福島原発事故との比較 

上図が文科省第48回環境放射能調査研究に掲載されたセシウム137の降下量グラフです。文科省は一貫してここでも平方メートル単位で被爆量を出しくれているので分かりやすくて助かります。 

もっとも核実験が多かった62年は約56万ベクレル/㎡です。これはなんとチェルノブイリにおける「永久管理区域」の線量に相当します! 

思わずビックリマークをつけてしまいました。週刊誌風にいえば、「東京はチェルノブイリだった!」ということになります。表現の妥当性はともかくあたらずとも遠からずです。 

東京はもう2回ほど10万ベクレル/㎡以上の放射能を浴びています。それが1986年のチェルノブイリ事故であり、そして今回の福島第1原発事故です。

62年の核実験時と奇しくもほぼ同じ56万ベクレル/㎡です。 

しかも核実験期が恐ろしいのは、これが一年で終わらずに延々と3万7000ベクレル/㎡以上の「汚染区域」レベルの線量を、55年から70年代初期までほぼ15年間続いたことです。 

私は当時小学校低学年でしたから、まさにもっとも被曝を吸い込みやすい細胞の成長期に「永久管理区域」で過ごしたことになります。(おーこわ)ちなみに、東京にはストロンチウムもプルトニウムの降下も観測されています。 

ではこの結果、私たちの世代を中心として白血病やガンの有意な増加は見られたでしょうか。それが図3です
(*図2図3は「福島原発の真実」より参考のために引用いたしました。ありがとうございます。)

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           図3 日本人のガン白血病患者数の推移

上図は50年から続けられた厚労省人口動態調査による日本人のガンと白血病の増加動態を示したグラフです。

これと図2のセシウム降下量を合わせてご覧くださることで、セシウム137と白血病・ガンとの相関関係を知ることができます。

図2をみれば、緑と赤のドット62年をピークにして右肩下がりに減少しているのがわかります。一方、白血病とガン患者数は等曲線で一貫して右肩上がりの線を描いています。

もし放射性物質降下とガン患者数が相関関係にあるのなら、70年代を境にして白血病は減少傾向を辿るはずでなければおかしいことになります。

放射性ヨウ素による甲状腺ガンは、チェルノブイリでは事故後4年の1990年頃から増加しました。白血病・ガンはやや遅れて8年や10年後と言われています。

ならば、日本の白血病・ガン患者は70年代中期から激増していかねばなりません。折れ線グラフで描けば急上昇トレンドの線を描かねばなりません。

しかし、白血病・ガン患者数は70年代から80年代にかけてたしかに増えてはいるもののこれは高齢化やほかの原因とも考えられます。

そしてもう一点注意していただきたいのは図2で突然セシウム降下量が増加した1986年、、つまりチェルノブイリ事故とその後です。放射性物質が蓄積して発症するまでの時間差が仮に10年内外だとして、1996年前後に特出した急増がみられるでしょうか?

このふたつの図を見比べる限りありません。白血病・ガン患者数動態図は淡々と等曲線増加を示しているだけです。

むしろセシウム降下量は核実験が停止されるに従って右肩下がりになり、一方白血病・ガン患者数は右肩上がりになるという反比例関係が読み取れます。

もし、セシウム137の放射性降下と白血病・ガン発生が因果関係があるのならこのふたつの曲線は完全に同調していなければおかしいのではないでしょうか。

私は素人ですので、この不思議をどのように説明するのか皆目見当がつきません。

ただ当時幼稚園から小学校の期間を丸々チェルノブイリの「永久管理区域」と「汚染区域」ですごしていたような私としては因果関係が発見できなくてよかったなぁ、とは正直そう思います。

ただし、これだけをもってして低線量被曝と晩発性の白血病・ガンとの因果関係が証明されないと言うのは飛躍でしょう。

逆に、低線量被曝と晩発障害の関係が既に完全に実証された事実だというのも、いささか行き過ぎなように思われます。

このように100mSv以下の低線量被曝には未だ解明されていないことが多いのです。

当時、誰も放射能なんて気にもしていなかったし、雨に打たれるは、校庭で泥まみれになるはの少年時代でした。おそらく当時の私を線量計で計ったら、警告音が派手に鳴り響いたのではないでしょうか。

くわばら、くわばら、であります。

■写真 彼岸花は今が盛りです。田園は秋色です。

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コメント

えーと、低線量被爆に関しては正直解らないことばかりです。
また、計測の実用性に関しては5日前のエントリーでブログ主様がテーマにしている通りです。

子供や自分たちの安全を守りたいのは当然ですが、無闇に恐れるのは全く建設的でありません。
土や塵の自然放射線以外に、宇宙から降り注ぐ放射線に我々全員が曝され続けているのです。

因みに以前(80年代)に、私が学校の古びたガイガーカウンターであちこち測った時には、一番の発生源は時計の夜行塗料(現在のものはかなり低減されてますが)。
次いで空!とグラウンド表面でした。
室内に置いておくだけでも、かなりの割合でバチバチッて鳴るものでした。
その中で私達は生きてます。
我々が生きている現実世界とはそういうものなのです。

もちろんリスクは可能な限り低減すべきですが、ゼロリスクなどというカルト(あえて嫌な表現をさせて頂きました)には正直ついていけません。全く現実的ではないのです。
そして、最近になって文科省や農水省がようやくマップを公表し出したように、今回の惨事の汚染範囲にもたくさんの人々が生活し、可能な限りの除染や低減措置を取ろうと苦悩しているのです。
また、地質からの自然放射線は以前述べたようにユーラシアプレートの西日本のほうが遥かに高い現実があります。

セシウム134と137の関係で、自然低減を期待して目標設定しているとの考察は理解できます。私も「これはズルいなぁ」と。

カリウム/セシウムの置き換えに関しては、「窒素・燐酸・カリ」という植物の肥料三大要素の割合を学生時代に様々な組み合わせで実験した結果から、カリウム過剰投与は残念ながらちょっと無理です。

だからこそ、如何にして作物へのセシウム移行を低減するかの工夫が求められるのです。


20ベクレル/キログラム以下はNDというのが納得いかない方は、いくらなら納得されるのでしょうか?
柏市にオープンした980円からのセルフ施設に関しては、これも先日コメントしましたが明日1900時から再放送のEテレ「サイエンスゼロ」でも出てきます。
機械の画面には8ベクレルほどの表示が出てますが、番組中では詳しくは説明されていませんが20以下は誤差の範囲で実用的ではないのです。
また、いわゆる「専門機関」の計測に比べて精度は落ちます。

投稿: 山形 | 2011年10月12日 (水) 10時02分

>もっとも核実験が多かった62年は約56万ベクレル/㎡です。これはなんとチェルノブイリにおける「永久管理区域」の線量に相当します!

すいません、グラフの単位は、ミリベクレル/平方メートルなのではありませんか?
とすると56万ミリベクレル/平方メートル=560Bq/平方メートル。計算が間違っているように思います。また、降下量というからには、1ヶ月の降下量なのか、1年の降下量なのかちゃんと表示しないと意味が12倍違うように感じます。

このグラフを管理人さんが持ち出されたのは、前にもあったと思いますが、この方の計算をお読みになってみてください。

http://gabasaku.asablo.jp/blog/2011/05/30/5889912
現在の放射能汚染状況が「1960年代と同水準」は明らかな間違い ―

グラフの引用元
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2007Artifi_Radio_report/Chapter5.htm
環境における人工放射能50年:90Sr、137Cs及びプルトニウム降下物

引用元の図1のタイトルと本文を読めばすぐわかりますが、横軸は、西暦の年。縦軸は、毎月の降下量で単位は、ミリベクレル/平方メートルです。


このグラフ自体、管理人さんのつくったものではありませんからせめて、引用元をリンクさせておくか、表示するのが最低限の礼儀だと思います。

投稿: 転載 | 2011年10月12日 (水) 11時27分

濱田様と同年代の私も同じ状況で育ってきました。
小さな頃同じ様に「雨にあたると危ない」と言われた記憶があります。
気にしないで遊んでいましたが・・・・


「潔癖症」なんて言葉も聞いたこと有りませんでしたが、「潔癖症」のタレントが「あかしや・さんま」の番組でも見る事があります。

時代と共に様々な人々が現れてきます。育った環境の変化がもたらしたものでしょう。
コンクリートとアスファルトに囲まれ、「土」そのものを見る事が難しい都会では尚更ですね。

そんな人たちに「植物が育つには、微生物が豊富にいる土が重要なんだ」なんて言ったら、何も食べなくなるのかな?
スーパーに「土」が付いた野菜なんて無いのだから、
植物(農産物)がどうやって育ち、収穫されるのかも知らない子供たちも大勢いるのでしょう。
輸入品なら信頼し安心出来るのかな?

投稿: 北海道 | 2011年10月12日 (水) 11時34分

https://spreadsheets.google.com/spreadsheet/pub?hl=en&key=0AjgQ0pwrXV8YdGJORHAzdi1qMlFldUMwRkl4V3VfN0E&hl=en&gid=1
放射性物質降下量の表

管理人さんの図2をクリックして拡大すると、今回の福島の事故における東京でのセシウム降下量の実測値が比較としてプロットされています。
3/21 5,300,000
3/20  560,000

放射性物質降下量の表の単位はメガベクレル/平方キロです。
メガベクレル=100万ベクレルですから
1メガベクレル/平方キロ=100万÷1000÷1000=1ベクレル/平方メートル=1,000ミリベクレル/平方メートル

3/20  560(MBq/km^2)=560,000ミリベクレル/㎡
3/21 5300(MBq/km^2)=5,300,000ミリベクレル/㎡

私の計算まちがってなさそうです。

管理人さんは、この3/21の「黒い雨」なんて、チェルノブイリや核実験時代と比較してたいしたことない、、とおっしゃりたいのでしょう。しかし、グラフ2の理解からして大きな誤解があるように感じます。
上のグラフの縦軸がいつもと違います。目盛りが一つ増えると値は、10倍になります。2目盛り違うと100倍違い。
ちょうどミリベクレルで、「,」が1000倍ごとについているので、非常に計算しやすいのですが、核実験が盛んだった頃は大体毎月10ベクレル/平方メートルくらい、多かった時でも毎月100ベクレル/平方メートルくらい。1990年代以後は、毎月100ミリベクレルつまり1年間で、1ベクレル/平方メートル程度しかセシウムは降下していなかったわけです。
で、東京の降った「黒い雨」は、、というと、たった24時間で、
5300ベクレル/平方メートル。そもそも「毎月」のグラフに1日分の値を入れること自体が、30倍数値を少なく見せるのに、1日でも核実験時代の最高月あたり降下量の10倍も降下しちゃった。縦軸の目盛りが指数目盛りだからたいしたことないように見えますが、事故前にくらべたらべらぼうな汚染です。
ちなみに、同じ日に茨城県のひたちなか市では、1日で1万ベクレル/平方メートルも降下したのが、2日続きました。

私の計算はおかしいでしょうか?


核実験時代と同じ被曝量だったから、核実験とおなじように影響がないという主張は成立しなくなると思います。

投稿: 転載つづき | 2011年10月12日 (水) 12時19分

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