[福島・甲状腺検査]長期的な支援が必要だ

2011年10月11日 09時18分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録
(26時間16分前に更新)

 東京電力福島第1原発事故を受け、福島県は、今年4月時点で18歳以下の県民全員を対象とする甲状腺検査を始めた。

 約36万人を生涯にわたりチェックするという世界的に例のない規模の調査であり、大がかりな検査体制が長期にわたり必要になる。未来を担う子どもたちを守るため、国も責任をもって対応すべきだ。

 今回始まった検査は、同事故に伴う県民健康管理調査の一環だ。甲状腺に異常がないか超音波で調べ、病変の恐れがあれば、詳細検査する。2014年3月までに一巡し、その後は2年ごと、20歳を超えると5年ごとにチェックする仕組みである。

 放射性ヨウ素は、食物などを通し体に取り込まれた後、甲状腺にたまりやすく、がんを引き起こす恐れがある。子どもの場合リスクが大きいとされ、保護者の不安は切実だ。

 チェルノブイリ原発事故では、事故の5年後ごろから甲状腺がんになる子どもが増えた。汚染された牛乳などの摂取が原因だとみられる。福島の原発事故では、原乳などをいち早く出荷停止したため、発症する可能性は低いとみる専門家もいる。

 だが、国と福島県が3月下旬に実施した15歳までの子ども約千人を対象にした調査では、約45%が甲状腺被ばくを受けていたことが明らかになった。ほとんどは毎時0・04マイクロシーベルト以下の微量だったとはいえ、将来への不安を払拭(ふっしょく)できないのは当然だろう。

 今回の検査の目的や方法を、当事者である子どもたちに分かるよう説明し、理解を得ながら進めてもらいたい。

 ただ、課題は少なくない。

 例えば、子どもの甲状腺検査に対応できる専門医の養成が急務だ。

 県外へ避難した子どもたちも多い。今は故郷にとどまっていても今後、進学や就職などを機に県外へ転居する可能性がある。このような場合でも必要な情報が確実に得られ、近場で検査が受けられる態勢を早急に整えるべきだ。

 さらに検査結果は当事者に還元されなければならない。長い年月を経て健康被害が表れる状況に備え、国内外の専門機関と連携し、医療体制の充実が求められる。

 いずれも県だけの対応には限界がある。国には財政面にとどまらず積極的な支援を求めたい。併せて、福島の人たちが心ない差別で苦しむことのないよう、国民が放射性物質を正しく理解するための情報発信に努める必要がある。

 運動会シーズンまっただ中。福島では、子どもたちが土に触れないようブルーシートを敷いて玉入れをしたり、昼食も秋空の下ではなく校舎内で取るなど、窮屈な運動会を強いられる学校もある。

 校舎や校庭、通学路などで放射線物質を取り除く除染が進む。だが、子どもたちにとって安全な学びや遊びの場を取り戻したとは、まだ言えないのが現状だ。

 原発事故からやがて7カ月。ひとたび起きてしまえば、当たり前の生活を土台から崩し、全てをがらりと変えてしまう。その事実から目をそらしてはならない。

« 最新のニュースを読む

写真と動画でみるニュース [一覧する]