金融機関から不良債権を買い取り、処分する整理回収機構が、暴力団など反社会的勢力が絡んだ不良債権の買い取りを強化することが分かった。反社会的勢力が関係している債権かどうかや買い取り価格は、金融庁が11月にも設置する第三者委員会で認定・審査する。財務状況に問題がない金融機関からの買い取りも積極化する方針だ。反社会的勢力と金融機関との関係を絶ち、債権の流動化を促す狙いもある。
回収機構が買い取りを強化するのは、暴力団や総会屋など反社会的勢力が債務者だったり、暴力による回収・競売妨害が見込まれる「特定回収困難債権」。回収機構は現在、預金保険機構から委託を受け、主に破綻した金融機関から不良債権を買い取る業務をしており、10年度は約1000億円の債権を取得した。今後は特定回収困難債権と判断すれば、健全な金融機関からも買い取りを進める。
金融庁は、回収機構の買い取り業務を進めるため、有識者による第三者委員会を11月にも設置。過去の不良債権処理で蓄積した情報などを基に、債務者と反社会的勢力とのかかわりの有無など「特定回収困難債権」かどうかを認定し、買い取り価格を審査する。
暴力団などが関与した取引では、金融機関に対して実体のない企業に融資させる詐欺事件や、債権回収時に競売入札を妨害したりする事件が毎年のように発生。不良債権が発生しやすくなり、金融機関の経営や金融システムに影響を及ぼす懸念がある。
回収機構や金融庁が反社会的勢力の排除を進めることで、金融機関への影響を遮断し、資金源を根絶すると同時に、金融機関の財務の健全化を図る。
金融庁や警察庁は、暴力団などが不良債権の処理などで資金を稼ぐことや、マネーロンダリングなどを防ぐ対策を強化している。金融庁は07年12月、金融機関に対し、反社会的勢力との関係を断ち切るための体制整備を促す監督指針を整備した。【田所柳子】
毎日新聞 2011年10月12日 2時32分(最終更新 10月12日 3時54分)