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大阪パチンコ店放火殺人:死刑の違憲性が争点に

絞首刑の残虐性について証言後、会見するバルテル・ラブル博士=大阪市北区で2011年10月11日午後3時54分、西村剛撮影
絞首刑の残虐性について証言後、会見するバルテル・ラブル博士=大阪市北区で2011年10月11日午後3時54分、西村剛撮影

 客ら5人が死亡した大阪市此花区のパチンコ店放火殺人事件で殺人などの罪に問われた高見素直被告(43)の裁判員裁判で、争点の一つである「死刑の違憲性」の審理が11日、大阪地裁(和田真裁判長)であった。検察側の死刑求刑を想定し、弁護側は「絞首刑は残虐で違憲」と主張。弁護側証人として絞首刑が身体に与える影響に詳しいオーストリアの法医学者も出廷した。裁判員裁判の審理で死刑の違憲性が争点になるのは異例。

 地裁は、死刑が合憲か違憲かは裁判官だけで判断し、裁判員の審理参加を任意とした。午前の審理には6人の裁判員全員が出席したが、午後の審理では1人が欠席。また、補充裁判員3人のうち1人が欠席した。

 弁護側は、落下式の絞首刑は頭部の切断など法が予定しない死に方になる可能性があると指摘。残虐な刑罰を禁じた憲法36条に違反すると主張した。

 弁護側証人のオーストリアの法医学者、バルテル・ラブル博士は、絞首刑の死因について、頭部切断や首骨折など5種類あると指摘。米国の実験結果を基に「人の意識は首を圧迫されて血流が止まると同時に消失するものではない」「絞首刑は苦痛と身体損傷を伴う」などと述べ、絞首刑の問題点を挙げた。公判終了後の会見では「絞首刑の問題に対する研究が日本にない」と指摘。「こうした研究があれば、絞首刑について違った考えがあったかもしれない」と話した。

 最高裁判例は絞首刑について「他の方法と比べ、特に人道上残虐とする理由は認められない」として合憲と指摘。検察側はこれに基づき「新たな主張はしない」と述べた。

 12日の審理では、検察官として死刑執行に立ち会った経験がある筑波大名誉教授の土本武司・元最高検検事が弁護側証人として証言する。【牧野宏美】

毎日新聞 2011年10月12日 0時30分(最終更新 10月12日 1時17分)

 

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