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ばってん日記:塩おにぎりの味 /熊本

 新米の季節がやってきた。今年の作況指数は、県内も全国平均も「平年並み」だが、震災による東日本での品薄感のため新米の値段は1~2割高めという。ともあれ、熊本産米のうまさは全国の注目を集めつつある。

 10年産米の食味ランキングで、最高評価の特Aに、山鹿市菊鹿町産「森のくまさん」と菊池市七城町産「ヒノヒカリ」の2つが入ったのだ。全国117産地の自信作を、日本穀物検定協会が審査し、うち特Aはわずか20点だった。県別では山形4点、新潟3点についで2点の熊本は宮城、福島と並ぶ3位である。

 しかし以上は話の「まくら」に過ぎない。私が本当に言いたいことは塩おにぎりのうまさについてである。ご飯の食べ方には2つの方法があると思う。1つは「おかず」によって、ご飯のうまさを引き出す食べ方だ。

 おかずが塩ジャケや漬物なら、ご飯はいくらでも入る。生卵をかけた熱いご飯ほどうまいものはこの世にはないような気もする。だが、これらはおかずがあってこそのご飯である。おかずがなければ成立せず、おかずに支えられてのご飯である。つまりご飯は自立していない。主役はおかずで、ご飯は脇役である。

 一方、ご飯それ自体のうまさを味わう最高の方法を、私は作家の野坂昭如氏に教えられた。昨年12月の本紙読書欄で同氏は「好きなもの」について、こう書いている。

 「おにぎり。塩が少しあればそれで十分。具は特に要らない。炊きたてのご飯がうまいとありがたがられるが、本来ご飯は冷め加減がうまいのだ。おにぎりの方が米本来の味がする。体を動かして、お天道さまの下で食べるおにぎりは格別だが、台所の隅で貪(むさぼ)り食うおにぎりほどうまいものはない」。おにぎりには梅干しがつきものだが、塩だけの方がはるかにうまいと私も思う。それにしても秋は天高く、気持ちよく腹が減ってくる。<熊本支局長・大島透>

毎日新聞 2011年10月10日 地方版

 
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