放射線教育推進委員会概要
新学習指導要領において中学校理科「放射線」に関する内容が組み込まれることになりました。
約30年ぶりに復活するその指導内容は理科第一分野「科学技術と人間」の「エネルギー資源」に関わる項目において、「放射線の利用とその性質についても触れる」と表記されているものの、総合学習などで「エネルギー」に関する教育実践に取り組んだ中学校の事例を除き、現職の理科教師のほとんどがこの項目について実際の指導経験が無い状況にあります。
日本教育新聞社では教育現場にかかわりの深い以下の有識者のほか研究機関や研究会、学会などからのご協力をいただき、下記メンバーによる放射線教育推進委員会を結成し、「放射線」にかかわる教育の支援を同ホームページを通じて行って参ります。
放射線教育推進委員会構成員(敬称略)
| 監修 |
有馬 朗人 | (学校法人根津育英会 武蔵学園 学園長・公立大学法人 静岡文化芸術大学 理事長・ (財)日本科学技術振興財団 会長(非常勤)・科学技術館館長(非常勤)・元文部大臣) |
| 推進委員 |
清原 洋一 | (文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官) |
| 宮下 彰 | (前全国中学校理科教育研究会会長・中野区立第七中学校校長) |
| 網屋 直昭 | (川崎市教育委員会指導主事) |
| 飯本 武志 | (東京大学准教授) |
| 掛布 智久 | (日本科学技術振興財団) |
| 事務局 |
日本教育新聞社内
〒105-8436 東京都港区虎ノ門1-2-8虎ノ門琴平タワー8F
 |
東日本大震災により、犠牲になられた多くの方々に心より哀悼の意を表します。大きな被害に遭われた方々、そのご家族、学校・教育関係者の方々、憂慮されている多くの関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
当ホームページでは平成24年度より全面実施される中学校新学習指導要領において、理科(第1分野)の「放射線」に関する学習について、現在の中学校理科教諭に学習指導の経験者が少ない現状を踏まえ、平成22年度から教材研究の支援を目的に活動を展開させていただいております。
運営を担う「放射線教育推進委員会」は日本教育新聞社立案の当企画にご賛同いただいた教育現場に関わりの深い有識者、研究機関や研究会・学会などからのご協力のもと、理科教育に携わる方を対象に学習指導で利用可能な素材や情報のご提供を行ってまいりました。
平成23年度の当ホームページの活動方針といたしまして、引き続き文部科学省の提唱する学習内容・指導目標に基づき、現時点の研究で得られているデータや解析から事実関係に忠実な素材をご提供させていただくことで「放射線」に対する科学的な理解を深めていただくことを目標として活動させていただきます。
また、今年3月の東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所の事故の影響もあって、「放射線」についてさまざまな意見が交錯している状況にあります。
当ホームページおよび放射線教育推進委員会は教育支援を軸として中立中道の観点から「放射線」の学習および、教材研究の支援と情報発信を行っていく所存でございます。
平成23年7月8日
放射線教育推進委員会事務局
(日本教育新聞社内)
以下、文部科学省発行 中学校新学習指導要領より抜粋
新学習指導要領・生きる力第2章 各教科 第4節 理科
- 第1 目標
- 自然の事物・現象に進んでかかわり,目的意識をもって観察,実験などを行い,科学的に探究する能力の基礎と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め,科学的な見方や考え方を養う。
- 第2 各分野の目標及び内容
〔第1分野〕
- 1 目標
- (1) 物質やエネルギーに関する事物・現象に進んでかかわり,その中に問題を見いだし意欲的に探究する活動を通して,規則性を発見したり課題を解決したりする方法を習得させる。
- (2) 物理的な事物・現象についての観察,実験を行い,観察・実験技能を習得させ,観察,実験の結果を分析して解釈し表現する能力を育てるとともに,身近な物理現象,電流とその利用,運動とエネルギーなどについて理解させ,これらの事物・現象に対する科学的な見方や考え方を養う。
- <中略>
- 2 内容
- <中略>
- (7) 科学技術と人間
エネルギー資源の利用や科学技術の発展と人間生活とのかかわりについて認識を深め,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察し判断する態度を養う。
- ア エネルギー
- <中略>
- (イ) エネルギー資源
人間は,水力,火力,原子力などからエネルギーを得ていることを知るとともに,エネルギーの有効な利用が大切であることを認識すること。
- <中略>
- 3 内容の取扱い
- (1) 内容の(1)から(7)までのうち,内容の(1)及び(2)は第1学年,内容の(3)及び(4)は第2学年,内容の(5)から(7)までは第3学年で取り扱うものとする。
- <中略>
- (8) 内容の(7)については,次のとおり取り扱うものとする。
- イ アの(イ)については,放射線の性質と利用にも触れること。
【出典】
文部科学省 新学習指導要領・生きる力第2章 各教科 第4節 理科 以上
以下、文部科学省発行 中学校新学習指導要領解説(P.63~69)より抜粋
(7) 科学技術と人間
- (7) 科学技術と人間
- エネルギー資源の利用や科学技術の発展と人間生活とのかかわりについて認識を深め,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察し判断する態度を養う。
<中略>
- ア エネルギー
-
- (ア) 様々なエネルギーとその変換
エネルギーに関する観察,実験を通して,日常生活や社会では様々なエネルギーの変換を利用していることを理解すること。
- (イ) エネルギー資源
人間は,水力,火力,原子力などからエネルギーを得ていることを知るとともに,エネルギーの有効な利用が大切であることを認識すること。
- (内容の取扱い)
<中略>
- (イ) エネルギー資源について
ここでは,人間が水力,火力,原子力など多様な方法でエネルギーを得ていることをエネルギー資源の特性と関連させながら理解させるとともに,エネルギーを有効,安全に利用することの重要性を認識させることがねらいである。
日常生活や社会で利用している石油や天然ガス,太陽光など,エネルギー資源の種類や入手方法,水力,火力,原子力,太陽光などによる発電の仕組みやそれぞれの特徴について理解させる。その際,原子力発電ではウランなどの核燃料からエネルギーを取り出していること,核燃料は放射線を出していることや放射線は自然界にも存在すること,放射線は透過性などをもち,医療や製造業などで利用されていることなどにも触れる。
また,日本はエネルギー資源が乏しくその安定確保が大きな課題であること,化石燃料には長い年月の間に太陽から放射されたエネルギーが蓄えられていること,その大量使用が環境に負荷を与えたり,地球温暖化を促進したりすることなどから,省エネルギーの必要性を認識させ,エネルギーを有効に利用しようとする態度を育てる。
さらに,今後,環境への負荷がなるべく小さいエネルギー資源の開発と利用が課題であることを認識させるとともに,太陽光,風力,地熱,バイオマスなどのエネルギー資源の利用,燃料電池や新たなエネルギーの開発の現状や課題についても触れる。
<以下省略>
【出典】
文部科学省 中学校学習指導要領解説 より抜粋