季節は秋。
絶好のハイキングシーズンを迎え、神戸の六甲山では休日ともなると大勢の登山客でにぎわいます。
<登山客の男性>
「きょうはもう最高ですね」
<登山客の女性>
「さわやかです」
<登山客の女性>
「六甲山はいいですね 来やすいですから、1人でもね」

健康にいいと歩き始めたお年寄りに・・・
おしゃれな登山ファッションに身を包んだ「山ガール」とここ数年、老若男女問わずいろんな人たちが山を楽しむようになりました。
ところが・・・
山頂の賑わいをよそに、山の「麓」は大変なことになっていました。
休日の「阪急六甲駅」。
山への最寄り駅であるこちらから六甲山に向かうバスの乗り場に行ってみると・・
<記者>
「休日午前10時、阪急六甲駅前のバス停です。六甲山の麓につながる路線なのですが、ご覧の通りずらりと長い列ができています」
待ち受けていたのは、登山ルックに身を包んだ人たちの長〜い列。
エスカレーターの先まで、ぐるりと続いています。

<バス待ちの男性>
「多いですね・・ 1回で乗れるかな?と」
<バス待ちの女性>
「きょう初めてなんです。こんなに多いと思いませんでした」
<バス待ちの女性>
「こんなに待つんですか?ここは」
想定外の混雑ぶりに、並んでいる人たち自身も戸惑っている様子です。
そして待つこと10分。
ようやくバスがやってきたのですが・・
<記者>
「満員なんですかね。なかなか乗れずに、5、6人ほど乗ったところで店 あの方、乗り切れずに身体が半分ほど出てしまっていますね」
「大部分の方が、バスに乗れないまま走り去るバスを眺めています」
バスは到着した時点で、既に満員状態。

わずかな人数しかバスに乗れません。
学生時代、すぐ近くの別のバス停を使っていたという人たちは・・
<女の子3人グループ>
「いつもこんなやったっけ?」
「いやー、そんな感じでは無かったと思うんですけど」
「全然並んでるイメージがなくって、ちょっと驚いている感じですね」
中には心配になって、列の後ろから時刻表をのぞきに来る人も・・
<記者>
「バス(の時刻表)を今みてらっしゃいました?」
<バス待ちの男性>
「はい」
<記者>
「どう思われました?」
<バス待ちの男性>
「臨時が欲しいですよね・・ こんだけ(乗客が)いるんやったら」
そして、さらに待つこと15分、ようやく次のバスがきたのですが・・
<バス待ちの人たち>
「すごいなぁー」
またしても、バスは満員。
なんとか数人はのりこめましたが・・
<バスアナウンス>
「申し訳ございません。満員ですのでドアを閉めます。次のバスをご利用下さい」
<バス待ちの女性>
「かなしー!心おれる…」
列の先頭で、なんと既に1時間待ち。
せっかくの行楽気分も、山に着く前に台無しになってしまっているようです。

<「山ガール」3人グループ>
「1人1,000円でいける?ひとり」
<タクシー運転手>
「行けます。約束します」
<「山ガール」3人グループ>
「1人1,000円やったらいきます!」
<「山ガール」3人グループ>
「『タクシーで行った方が早いし安い』といわれて、3人やったら。そっちでいこうかなと。ここ並んで今みたいに乗れないんやったら(バスは1人200円)」
先ほどの「山ガール」たちはタクシーの運転手にうながされ、とうとうバスをあきらめてしまいました。
そのあとも列を外れて、タクシーに乗り込む人の姿があとをたちません。この混雑、なんとかならないのでしょうか?
そもそも混雑している阪急六甲駅前のバス停は、神戸の市街地と六甲ケーブルをつなぐ「市バス16系統」が通っています。
バスは阪神御影駅、JR六甲道、阪急六甲駅と3つのターミナル駅を経由して、大学や住宅街を通り抜けながら終点の六甲ケーブル下に到着します。

そして、乗り換えたケーブルからは四季折々の景色が楽しめる人気のコース。
六甲山上駅の展望台からは神戸の町並みを一望できるとあって、休日に観光客が集まるのは仕方がありません。
では問題のバス、いったいどこから混み出すのでしょう。
記者が始発の停留所から乗り込み、調べてみました。
始発の阪神御影駅では空席を残したままバスが発車。

しばらく乗客数に大きな変化は見られないまま進みます。
ところが・・
<記者>
「JR六甲道駅前です。沢山の乗客の方いらっしゃいますね」
JR六甲道駅で乗客をのせたところで、バスはほぼ満席になってしまいました。
そして、問題の阪急六甲駅では・・
<バスアナウンス>
「もう少し前のほうまで詰めていただけませんか?お願いします。後ろの方にもお詰めしてもらえませんか?申し訳ないですけどお願いします」
<乗客>
「超満員だなこのバスは・・」
既に満員だったため、長い列を残したままバスは出発してしまいました。
さらに混雑はつづき、住宅エリアの停留所では待っていた高齢の女性が、他の乗客に助けられて何とか乗れるという場面も。

満員状態のまま、バスは終点の六甲ケーブル下に到着しました。
この混雑に臨時便を出さないのか、営業所に電話をしてみると・・
<記者・電話>
「臨時便とかは出ないものなのですか?」
<神戸市バス 魚崎営業所担当者・電話>
「そうですね。特に臨時便というのは出していないですね」
<記者・電話>
「休日、かなり多くのかた並んでいらっしゃったので、可能であれば臨時便をと思うのですが?」
<神戸市バス 魚崎営業所担当者・電話>
「おっしゃるとおりですよね。そういうご要望のお電話があったということは上司のほうには報告させていただきますけれども」
ところで、地元の利用者は観光客による週末のバスの混雑をどう見ているのでしょうか。
平日に改めてバス停を訪れてみました。
<記者>
「平日午前10時、阪急六甲駅前のバス停です。休日とはうってかわって5人ほどでしょうか、並んでいらっしゃいますけど… 列はずっと短いですね」
利用者は地元の人が中心で、目立った混雑はありません。

<通勤利用の女性>
「週末とかだったらお客さんも多いので、1本,2本見送ることはありますけど・・」
<記者>
「予定通りにいかなかったり?」
<通勤の女性>
「はいありますね。すごい焦りますね」
<帰宅途中の女性>
「(休日は)六甲ケーブルにいらっしゃる方がたくさん乗られますから。だから、あまりもうこちらには出てこないように。もし出てきたらもうバスは使わない」
しかし、なぜこれほどまでに平日と休日で混雑に差があるのでしょう?
<帰宅途中の女性>
「お休みは少ないでしょ、バスが」
そう、休日はバスの本数が極端に少ないのです。
時刻表を見てみると、午前10時台、平日は1時間に10本以上あるのが、休日はなんと1時間に4本と3分の1程度に減ってしまうのです。
では平日の便を休日に回せばいいのかというと、そうでもないようです。
<バス利用者の女性>
「神戸大学があるから、学生さんが登校するときには並びます、すごく」
<記者>
「乗れなかったりすることも?」
<バス利用者の女性>
「 ありますよ、いっぱいで・・」
<バス利用者の女性>
「朝とかもすごい混むので、原付(ミニバイク)に変えようかなと思ってるぐらいで・・」
経路には神戸大学のキャンパスがあり、通学時間と重なる10時前まではやはり乗客が乗り切れない状態が起きていました。
混雑を繰り返すこの路線、神戸市は本数を増やすつもりはないのでしょうか?
<神戸市交通局市バス運輸サービス課 野田晋哉課長>
「ダイヤっていうのは、一年を通してのものですから、ピークに合わせてすべてのダイヤを走らせるのは非常に困難ですので」
とはいえ、バスの終着点である六甲ケーブルは、混雑に応じて臨時便を出しているようです。
バスも休日だけでも対応できないのでしょうか?
<記者>
「週末の状況は明らかにバスの便数が足りていない気がするが?」
<神戸市交通局市バス運輸サービス課 野田晋哉課長>
「もしも足りていないということであれば、担当営業所からも情報があがってきますし、お客様からの苦情もたくさん来ると思いますので、それについては対応していきたいと思いますけれども・・」
<記者>
「そういった声は届いていない?」
<神戸市交通局市バス運輸サービス課 野田晋哉課長>
「個々のお客様からまだ私どもの所には入ってきていないんですけれど・・」
記者をはじめ複数の人が営業所に要望を出していますが、交通局には届いていないようです。
登山客に学生、住民。
みんなが利用するバスだからこそ、神戸市はもう少し柔軟に対応することは
できないものなのでしょうか。
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