今夏発表されたレジャー白書によると、2010年の囲碁人口は610万人だった。日本の囲碁人口は、1982年の1100万人をピークに年々減少。漫画「ヒカルの碁」ブームで一時的に増えたことはあっても、長期凋落(ちょうらく)傾向にあった。ところが、09年、640万人といきなり前年の250万人から倍以上に伸びた。いったいなぜ?【金沢盛栄】
レジャーの多様化などにより、年々減少する囲碁人口。これからもじり貧だろうと思っていたところに、09年の急激な増加。誰もが首をひねった。神奈川県藤沢市で囲碁クラブを経営する佐々木慶一さんは「バブルが崩壊する95年ごろがお客さんの数のピークでしょうか。今は最盛期の半分くらい。この調査結果は実態を反映していないと思う」と話す。
大きな要因の一つと考えられるのが、調査方法の変更。09年から、各戸訪問の留め置き、回収方式から、モニター登録している人へのインターネット調査方式へと変わったのだ。
これまでは、囲碁といえば碁盤を挟んで対局するのが基本だったが、インターネットの普及と共に、ネット上で楽しむ人が急増。囲碁の総本山、日本棋院のネット対局室は約1万人の有料会員数を誇り、無料会員を含めると、今も増え続けているという。インターネット調査に変更したことにより、こうしたネット囲碁愛好者を一気にすくい取ったと考えられる。
実際、同白書は特別リポートとして、「進むレジャーの『デジタル』化」と題し、「囲碁」「将棋」「麻雀(マージャン)」などのゲーム系種目は「ネット上での対戦などのデジタル参加が、大きな部分を占めている」と報告。囲碁については、38%のデジタル活用度だったとしている。つまり、5人のうち2人はネットを通して楽しんでいるということだ。
さらに面白いのが、使った金額の推移だ。囲碁人口は一気に増えたのに、使うお金は逆に減少。1年間に使った平均費用は、08年の1万100円に対して、09年は4100円、10年は3500円となっている。ネット上には多数の無料囲碁サイトがあり、お金をかけることなく、囲碁を楽しむことができるのが原因と考えられる。街中の囲碁クラブなどがはやらないわけだ。
そうした傾向は囲碁以外のレジャーにも表れており、レジャー市場自体が縮小傾向にある。今回の調査結果は、世知辛い世の中を反映したものといえそうだ。
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■ことば
公益財団法人日本生産性本部が、1977年以来、年1回発行。日本人の余暇の過ごし方についての統計調査報告を行っている。2010年は、全国の15~79歳の男女を対象にネット調査(有効回収数3728)。あるレジャーについて、1年間に1回以上の活動を行った人を参加とカウント。参加率に日本の人口数(15~79歳)を掛け合わせた数字から、参加レジャー人口を推計している。
2011年10月11日