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フィリピン:ギャンブル大国 庶民熱中、違法「フエテン」 売り上げ「合法」の数倍

 ◇政治家が事実上運営 警察も関与 告発、持ち逃げは殺人で報復

 カジノやくじなどは法律上、全て国や自治体の管理下にある。国が設立した協会や自治体が運営し、売り上げの一定割合を政府や地方自治体に納め、慈善事業に充てなければいけない。一方、違法ギャンブルは胴元が全て分配を差配できる。

 「違法ギャンブルの実際の運営者は政治家だ。警察も抱き込んでいるので、摘発もされない」。違法なフエテンの実態を議会で暴露したクルス司教は、そう指摘する。カネの移動も、仮名・借名口座を巧妙に使い、証拠が残らないようにしているという。

 今は司教の協力者となった女性(50)が取材に応じた。かつて女性は毎週、自分の銀行口座に振り込まれた100万ペソ(約180万円)を引き出し、警察幹部に届けていた。幹部から手数料として毎回、2万5000ペソ(約4万5000円)を受け取っていたという。

 一度だけ、この警察幹部から「多忙だから、代わりに金を運んでほしい」と言われ、胴元とみられる国会議員に金を届けた。司教と共に議会で暴露しても、関係者はしらを切り、司法省は「金の出所の証拠がない」と取り合わなかった。

 金を持ち逃げしたり告発したりすると、報復が待っている。警察が関与しているので、殺人も闇から闇に葬られる。クルス司教は物証の不足を突かれ、名誉毀損(きそん)で80件の訴訟を起こされている。この女性も訴訟のほか、何度も殺害の脅迫を受けたという。

 フエテンの起源は、スペインがフィリピンを植民地化した400年以上前にさかのぼる。農村では、行事のたびに、集落ごとにギャンブルをして、賭け金の一部を行事費用に充てていた。その後、地域の有力者が複数の集落を束ねて運営するようになり、今のシステムに発展した。

 スラム地区では今も、住民が死んだ際の葬儀費用を捻出するため、近所の人がギャンブルを行う風習が残っている。喪主は賭け金の10%を受け取る決まりだ。ギャンブルにのめり込み、犯罪に走るケースを当たり前のように聞く。クルス司教は「違法ギャンブルの犠牲者は貧しい人たちだ。大統領が禁じるといえば、それで済むことなのだが」と話した。

 先のブラカン州でフエテンの抽選会場に案内してくれた男は「私は日本人の友達がいるから、お前が書いた記事は後で分かるぞ」と、笑ってピカピカの四輪駆動車に乗り込んだ。銃を隠し持っているのか、男のズボンの後ろ側が膨らんでいた。

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毎日新聞 2011年10月10日 東京朝刊

 

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