東日本大震災の被災自治体で、地域再生のビジョンを示す復興計画の策定が進んでいる。今後、住まいや集落の再建につながるまちづくりの議論が本格化。兵庫県も阪神・淡路大震災を経験したコンサルタントの派遣事業を始めた。しかし、住宅の高台移転、浸水区域の土地利用など課題は多く、住民合意の困難も予想される。11日で震災発生から7カ月。兵庫の専門家らも手探りの支援となりそうだ。
446人の死者・行方不明者(9月29日現在)が出た岩手県大船渡市。今月6日、神戸大の塩崎賢明教授(都市計画)が委員長を務める委員会が復興計画案をまとめた。住宅の高台移転や復興住宅の整備など約230事業を盛り込む。
「地区懇談会で、住民意見も取り入れられた。その点では、神戸の経験が生かされた」と塩崎教授。今後は、地区ごとに住居区域や商業区域、居住に適さない津波危険区域などの土地利用方針をまとめるという。
ただ、被災地では、復興事業の裏付けとなる国の補正予算編成がずれ込み、計画づくりが遅れたことへのいらだちもある。地盤沈下が著しい沿岸部で、仮設店舗を建てた鮮魚店の男性(61)は「この土地がどうなるか、早く決めてもらわないと商売も何も前に進まない」と不満を漏らす。
9月に復興計画を定めた宮城県女川町に派遣されている宝塚市の職員も「元の土地に住宅を建てられるのか、という相談が多い。阪神・淡路との大きな違い」と話す。
兵庫県は、住民議論を支えるコンサルタントの派遣事業を9月に開始。神戸市中央区の建築コンサルタント野崎隆一さん(68)は同月中旬、宮城県気仙沼市で住民と意見交換した。
同市は復興計画を策定。住民有志による話し合いが始まりつつあるが、集落移転の対象地区では、神社の扱いや伝統行事の継承など不安が大きい。住民の2割が転居した地区もあるという。
阪神・淡路では、発生2カ月後に土地区画整理事業などの都市計画が決定。早急すぎる決定が住民の反発を招いた。野崎さんは「大手企業のコンサルタントが計画づくりを進めれば、住民の思いとは違う町になってしまう」と懸念。まちづくり協議会の設立を促し、意見集約していく考えだ。(岸本達也、大月美佳)
【特集】東日本大震災
(2011/10/10 12:50)
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