2011-10-10
■[就職][経営][行政]日本最大のブラック就職先を知る私が教える、本当のブラック企業の見分け方
話題になっていたので、ブラック企業を見ぬく為のたった5つの方法|1級身体障害者が法律家を目指すブログを読みました。
つーか、この私怨くさい支離滅裂な見分け方はなんだよ。こんなの真に受けている感想欄の連中はいつブラック企業に絡めとられても全く不思議はないっつーか、ブラック企業の人事部に「鴨リスト」として提出していいくらいの代物だと私は思います。
このブログが挙げる5条件がいかにいい加減か。たとえば。私はこの条件のほとんどを満たす、ある日本最大級の雇用主を知っています。それは「国家公務員」。
(怪しい条件)【1】契約書ではなく、誓約書だった。
国家公務員は、採用時に、誓約書を提出する法律上の義務を負います。
(服務の宣誓)
第九十七条 職員は、政令の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。
国家公務員法
もちろん、国家公務員には労働契約書などは存在せず、一部の例外を除き就業規則もありません。
(怪しい条件)【2】契約書の内容に、遅刻に対する罰金規定があった。
国家公務員の雇用条件は、そもそも契約書は存在しないブラックな法体系ですが、ちゃんと罰金規定はあります。
(懲戒の場合)
第八十二条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法 又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項 の規定に基づく訓令及び同条第四項 の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
国家公務員法
(怪しい条件)【3】勤務地は福岡なのに訴訟時の裁判所の指定が東京
裁判の管轄に関する規定はないようですが、どこの裁判所であれ訴えを裁くのは国家公務員である裁判官。使用者の指揮監督に属する人です。どこの裁判所でも見るのは地獄だぜヒャッホー!
(怪しい条件)【4】契約書の枚数がやたら多い
5枚の契約書なんてマジ甘いっす。国家公務員法だけで何ページになるんだか。それに加えて国家公務員給与法とか人事院規則まで入れれば、分厚い本が出版できます。
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(怪しい条件)【5】一方的に労働者に不利な内容
もはや公務員の勤務条件に関する分厚い六法を読んで、それが労働者に不利なのかどうか常人には判断すらできません。が、一つだけ言えるのは、公務員は、労働三権を剥奪された一方的に労働者に不利な労働関係の下にいます。これは、どんなブラック企業の社員よりも権利が劣っていることを意味します。少なくとも形式的には。
以上証明終わり。
というか、いかに最初の5つの条件が甘いか、ということです。これに一つも該当せずにブラックな会社もいくつもあるし、該当しててもホワイトな勤め先もいくつもある。だいたい、一方的に労働者に不利かどうかなんて、読んでみたってふつうは分からないし、こんな5カ条を信じる頭の緩い人たちならなおさら。契約書の枚数の話なんて、契約書の条項は少なければ少ないほど書かれている条件が少ないということでもあり、書かれている条件が少なければ、使用者の一方的な判断の余地も大きくなろうというもの。私は以前仕事で某電力会社の労働協約を見たことがありますが、信じられないほど分厚かったですよ。こんないい加減な5カ条でブラック企業を見てとれるなんて、信じるほうが馬鹿を見ようってものです。
というわけで、そんな私が考えるブラック企業の見分け方5項目。まあブラック企業という概念自体がいい加減といえばいい加減なんだけどそこはさておいて…
1.社員の平均年齢が若い。平均勤続年数が短い。
社員が長く勤めていない会社は、それだけで、ブラックを疑うべきです。平均年齢25歳以下、勤続3年未満であれば、真っ黒と疑ってよいです。これらが公表されない場合もありますが、その場合は、全社員数に対する新規採用数の比率をみれば代替できます。
もちろん、急成長している企業であればこれらの数字はブラック寄りに出るものですが、それは会社の設立年月日を見て補完しましょう。
つまり、アルバイト・パート労働や、期間雇用的労働に依存している度合が高いことを意味します。労働力は使い捨てだと言わんばかりの雇用政策。いかにもブラック。正社員で勤めればアルバイトとの関係に疲弊し、アルバイトで勤めれば正社員みたいな仕事をさせられます。
もちろん、飲食業や小売、運送業など、業態全体としてパート労働に依存しているものもあるので、同業他社との比較は欠かせません。
3.退職金制度がない
退職金制度は、要は、給与の一部を後払いする仕組みであり、社員にとっては長期勤続へのインセンティブになります。逆にいえば、この制度がない企業の経営者は、社員が長くいてもらっては困ると思っている可能性が高いです。会計上、退職給付引当金の関係で退職金制度をなくすことが流行った時期もあり、名だたる大企業でも流行に乗って退職金制度を一部廃止した所もありますが、それでも、入社時に選択制だったり、一定以上の年齢の社員には退職金制度があったりしますので、これが全くない会社は、経営者の長期雇用に対する態度を疑ってよいと思います。
4.時間外労働に対する支払いがない/弱い
みなし残業とか裁量労働制とか、いろいろ理屈をつけて、時間外労働に対する支払いをできるだけ値切ろうという仕組みがある会社があります。こうした会社にいると、長時間労働の割に給与がちっとももらえない、といった事態が当たり前になります。長時間労働の温床です。似たようなものに、なんでも管理職、という仕組みもあります。どんなに残業しても時間外労働への対価がない仕組みでは、無限の労働時間を経営者に要求されます。
5.社員募集のアピールに「若くても責任ある仕事」、「実力主義」、「独立・起業のチャンス」が謳われている
これらの言葉が社員募集に際してアピールされているということは、要は早い時期から使いつぶして、少しでも数字が上がらなければ干されて、で実力があって給与が高くなった社員は追い出して独立させて下請けに回すということを意味します。特に最後の独立起業は何かの罠で、イベント系とかIT系によく見られます。仕事ができる社員に別会社を作らせて、雇用契約ではなく請負契約で使いつぶして人件費を節約するやり方です。
まあ本当は「労働組合が存在しない」とか書こうと思ったのですが、これを書くとかなりの数の上場企業もブラックくさくなってしまうのが今の日本の現状ということで、無難な5条件を書いてみました。常夏島日記のような過疎ブログのこのエントリを読んでいただいたありがたい皆様は、くれぐれも冒頭のエントリのようなあやふやなものを信じてはいけませんよ!
大事なことなので繰り返します。ブラック企業を見分ける5条件。
1.社員の平均年齢が若い。平均勤続年数が短い。
3.退職金制度がない
4.時間外労働に対する支払いがない/弱い
5.社員募集のアピールに「若くても責任ある仕事」、「実力主義」、「独立・起業のチャンス」が謳われている
(番外)労働組合が存在しない
まあ、どんなに制度が整っていても、中小企業だと、社長の一存で、「君、来月から来なくていいから」で首になったりするんで、ブラック企業を見分けるのは大変なんですけどね。
というわけで、冒頭のブログで唯一同意できるのはここ。
普段から、自分でも労働基準法・契約法・労働者派遣法などを学び、しっかりと自己防衛して欲しいと思います。
そして、自分では手に負えそうに無い場合には、法テラス、労働弁護団、その他法律の専門家(認定司法書士・特定社会保険労務士 など)達に迷わず相談することをお勧めします。初回無料で相談に乗ってくれるところも多いです。
ブラック企業を見ぬく為の たった5つの方法|1級身体障害者が法律家を目指すブログ
(参照エントリ)
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