原発事故で広がった放射性物質を取り除く除染について、環境省は、年間の被ばく線量が5ミリシーベルト以上の地域で行うというこれまでの方針を見直し、1ミリシーベルト以上の地域に対象を広げる新たな方針案をまとめました。費用についても国が負担するとしていますが、除染で出た土の保管や処理などについては具体案は示されませんでした。
除染についての環境省の新たな方針案は、10日に開かれた専門家による検討会でおおむね了承され、今後、政府内での調整を経て来月上旬にも国の基本方針として閣議決定される見通しです。それによりますと除染が必要な場所について年間の被ばく線量が1ミリシーベルト以上の地域とし、先月、環境省が示した年間5ミリシーベルト以上とする方針を見直しました。5ミリシーベルト未満の地域がある福島県内の市町村からの反発を受けて対象を広げたもので、費用についても国が財政措置をして負担するとしています。そのうえで、放射線量が高い警戒区域や計画的避難区域の除染は国が行い、そのほかの地域は市町村が計画を立てて実施するとしています。今後の目標も示され、年間の被ばく線量が20ミリシーベルト未満のところでは、2年後の平成25年8月末までに住宅街などでの被ばく線量をことし8月末と比べておおむね半減させ、さらに学校や公園など子どもが生活する場所での被ばく線量についてはおよそ60%減らすことを目指すとしています。一方、20ミリシーベルト以上のところは、そうした地域を段階的に速やかに縮小するとしています。また、警戒区域や計画的避難区域の中でも比較的線量が低いところについては、3年後の平成26年3月末までに住宅や道路の除染を行うことなどを目指すとしています。このほか、除染によって放射性物質で汚染された土や廃棄物が相当量出ている都道府県では、国の責任で、土などを保管する中間貯蔵施設を確保するとしていますが、設置する場所や時期など具体案は示されませんでした。環境省の試算によりますと、被ばく線量が年間5ミリシーベルト以上の地域で除染をした場合、取り除く土の量は最大で東京ドームおよそ23杯分に当たる2870万立方メートル余りに上ります。今回、環境省が方針を見直し、1ミリシーベルト以上の地域にまで対象を広げたことで、除染を行う場所は、福島県以外の東北や関東にも及び、取り除く土の量は大幅に増えることになります。除染で出た土や廃棄物は、警戒区域など国が除染を行う地域を除いて除染を行った市町村の仮置き場に運ばれ、汚染濃度が高いものは国が設置する予定の中間貯蔵施設で一定の期間、保管されることになっています。しかし、放射性物質に対する住民の不安などから多くの市町村で、仮置き場の設置が難航しています。さらに、中間貯蔵施設については、設置する場所や規模、それに保管する期間など国の具体的な方針は示されておらず、保管や最終的な処分のめどは立っていません。また、環境省は、被ばく線量が年間5ミリシーベルト以上の地域を対象とした場合、除染に1兆1400億円以上がかかると計算していました。対象を広げたことで、必要な費用はさらに増えると見られます。費用は、国がいったん負担したうえで、最終的に東京電力に請求することになっていますが、費用が大きく膨らんだ場合、東京電力にどこまで負担させることができるのか不透明な状況です。