二大怪獣 隊長を襲撃

よく晴れた放課後。私、美波 優子(みなみ ゆうこ)はいつも通り部活に顔を出す。そんな日常。

「いい加減立ち退きなさい!立ち退けって言ってるでしょ!」
「理不尽に潰されて堪るかアホ会長!」
「あ?毎度毎度先輩に対してどういう口の聞き方してんのよ!?」
「毎度毎度って聞くと、ゼアス思い出すな、優子君。M・Y・D・Oマーイドーって」
「いや隊長、それはなかなか無いと思います」

そしていつも通り、今日も今日とて、我らMATは解散の危機に瀕していた。
MATとは、"円谷(まるたに)女子高校・愛の・特撮SFチーム"の略であり、部室棟の最もプール寄りの一角を占める隊員数二名(ほかOG三名顧問二名)の団体だ。簡潔に言うとSF研究会だ。
何故解散の危機に瀕しているかだが、迷惑な事に円谷高校生徒会長の馬津都 瀬戸美(ばつと せとみ)先輩と、我らが隊長、楓 北代(かえで きたよ)先輩が犬猿の仲と書いて幼馴染と読む間柄だからと言う。
昨年九月、諸星 七菜(もろぼし なな)先輩の引退と入れ替えで楓先輩が隊長に就いてからというもの、私怨で部活を潰そうとする怪獣のような生徒会長に毎日襲撃され、毎回それを実力行使で退けている。まあ、部員足りないからって正当な理由もあるんだけど。
周囲の人々は我関せずで、彼女を止めない代わりに、この件に関しての協力者もいないのだ。
どっちにしろこんな状況を野放しにして、大丈夫なのか、ウチの生徒会は?

「それで隊長、どうするんですか?以前調達した一トンのコショウも、もう流石に効かないですよ」
ドアの隙間から、怪獣の角か触手を連想させるツインテールの生徒会長を確認しながら問う。
ここ数日ほどは隊長謹製のコショウ爆弾で対応してきたが、相手も水中メガネやハンカチで対応するようになり、宇宙刑事な名前のコショウが大量に余ってしまった。
自腹だからどうでも良いけど、どうして1トンも買っちゃったんだ、この人……原作再現か。



「ふむ。では鉛筆爆弾でも投げるかね?」
「それは最終回の香りがするのでやめてください」
「ぬう……そうだ!最近勉強した催眠術でお前にご乱心アタックをしてもらおう。エロ耐性のない瀬戸美なら、ちょっと特殊嗜好を見せつけるだけでトラウマになるさ!」
「嫌ですよ!私がヤバいじゃないですか!それに私はノーマルです!」
「なに、『会長がうるさくて換気できず、シンナーに当たりました』でオールオッケー。
実際に一時的に理性を失ってもらうから事故にできる、名付けて怪奇!狂○人間大作戦!」
「それ放送禁止ィィィィィィィィィィ!!」

荒唐無稽な作戦がぽんぽん出てくるのもいつもの事。だが、常に隊長の目は本気だ。
楓隊長は何でもこなすウルトラ超人なのだ。
成績は常に一位か二位で、スポーツテストも我が校陸上部のエース、全徒競走種目で国体出場予定の韋駄天 蘭(いだてん らん)と競っているそうだ。
そして、その高性能な頭脳と肉体、技術を持て余し、霊能力や超能力等うさん臭いスキルの取得に浪費しているのだ。

ともあれ。生徒会長を退けねば、活動ができない。せっかく買った大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説DVDが見れないではないか。
「ところで優子君、これを見てくれ」
「ん?それは確か、諸星先輩に誕生日に貰ってた……」
ピカッ。何か光った。先輩のブレスレットっぽい。

「こんな事もあろうかと、貰ったブレスレットに催眠フラッシュ装置を仕込んでおいたのだ!」
な、何そのチートブレスレット。あああ頭がぼーっとする助けて助けて助け……


「ほら、あのツインテ娘、可愛いだろう、食べちゃいたいだろう……」
扉の覗き窓まで引っ張られ、逃げたいのに会長の姿を見せられる。

……や、やだ何これ!?可愛いよ!Baby Kyun Kyunだよ!!萌えタランガだよ!!!!!!!1
半年以上も鎬を削ってたからか、可愛いと同時にぶって縛ってむしゃぶりつきたい嗜虐的な気分にもなってきた。ヤバイ。会長ヤバイ。マジで会長ヤバイよ、マジヤバイ。
まずツインテール。もうツインテールなんてもんじゃない、金髪ツイン。
金髪とかっても、「染めた」とか、もう、そういうレベルじゃない。何しろ天然。スゲェ!
それに140cm無いらしい。ヤバイよ、140ないんだよ。だって普通は身長とか150越すじゃん。
だって身長無かったら困るじゃん。吊り革とか超高いとか困るっしょ。
年齢が上がっても、中一の時は子供服でも良かったのに、高三の時まで大人向け着れないとか泣くっしょ。
だから普通は5ap(服のサイズ。身長150cm対象)とか着れる。話のわかる服屋だ。
けど140未満はヤバイ。そんなのも着れない。小さすぎる。最も小さい末尾pp(身長142cm対象)とかでも余るくらい小さい。ヤバすぎ。以下略。

そして都合の良い事に、この部屋にはちょうど良い武器があった。
初代五人組の赤の武器、レッドビュートだ。殺傷力は低く、暴徒鎮圧にもSMにも適している。しかも二本。

「じゃ、後は頼むぞ、優子君。そうだな、こんな事もあろうかと、会長の後ろまでこの部屋から直通の地下通路がある。使いたまえ」
「行ってきます!ウルトラ作戦第一号、開始!」
いつの間に掘ったのか知らないけど、床板の下から伸びる通路に私は飛び込んだ。
上で先輩がTAC版ワンダバコーラスを流し、否応なくテンションが上がる。♪まーきばの緑が左右に分ーかーれー!


「♪ひかーるーマシーンがー現れるー現れるー現れるー」
テニスコートの隅の芝生が観音開きで開かれ、セルフコーラスする私が会長の背後に出た。中途半端に再現されていて、農業高校で無かったのが惜しくなる。
歌いながら現われた私に目を点にしている会長さんが、相変わらず可愛い。食べたい。

「む、いつもの失礼な後輩ねッ!貴女に恨みはないけど、北代の肩を持つなら容赦は……痛ッ!?」

何か喚いてるけど、とりあえず鞭でぶってみた。んー、マンダム。
良い声で鳴く会長に、もう一発。ぱしーん。これはハマる。

「キャッ!?ちょっと!これは冗談じゃ済まな……ひゃっ!?」
「どーしたゆーこーだいじょぶかー。あー、かいちょーのせーで窓が開けられなかったから、シンナーが充満してしまったのだー」
「何その白々しい喋り方!?あ痛ッ!?」
「えへへー会長かわいーもっとぶたせてー」
「め、目が逝ってる……イヤ、来ないで、来ないでーッ!?」

鞭が風を切る音が心を踊らせる。振り下ろした鞭が当たる度に気分が高揚し、ボルテージが堪ったのを感じる。
今だ吹っ飛ばし攻撃!ていっ!
「キャーッ!!」
「会長さーん!」

会長の矮躯を押し倒す。軽い。体重も40キロ無いんじゃ無かろうか。ちっこいからか、体温が高くてぬくぬく。超気持ちい。
地面に垂れた二条の髪が、緑の中で映えながら、千切れた草を絡ませている。
会長の体躯に対して明らかに大きいセーラー服の肩口が大きく開いてて、もうちょっと開くと鎖骨やブラ紐が丸見え。真っ白い肌が見え、もう我慢できなくなってきた。
誘われるように、私は会長の首筋を軽く噛む。

「ななななな何をやめひゃわああああああ!?」
「あむっ、ちゅぱ……かいちょーしゃんは可愛いし、美味しいなあ……ちょっと塩味がする」
「+※∃Φ≒☆≦Hё∬!!!!!!?」

顔真っ赤にしてテンパってる会長もすっごく可愛い。ちゅっちゅしたい。会長さんを押さえ込んだまま首を伸ばし、ぷにもえキュートな唇にちゅっちゅ。

「んー!!んんー!?」
「んー。ちゅっ、ペチャ、んれろ……ふふ、会長さん、どうですか?女の子に食べられちゃうのは……」

口塞がれたまま、背中とかペチペチ叩いて抗っちゃって、あーもう百合ってサイコーだね!リリンの生み出したry

必死に引き結んでる唇を、ねっとりと舐めあげる。その度に小さく震える会長さん。
小さいけど無くはない会長さんの胸が、私の鎖骨辺りを押し返す。これはこれで良い。
暴れる会長さんの口を思うがままに舐め回したら、最後は……ぬふふふふ、下のお口も頂いちゃいましょう。
身体を起こし、脚の方に重心を……

「う、うわあぁぁぁぁぁぁ〜っ!!!!」

ををっ!?
逃げ出そうとした会長さんが、仰向けから俯せにひっくり返った。そのまま這ってわたしの下から逃げようとするけど、許さない。背中にダイブ!

「ふぎゃっ!?」
「あ、ごめんなさい。でも、逃げようとした会長が悪いんですよ」
「は、離せーっ!?」

ジタバタ暴れる会長を完封しつつ、もう少し体力を弱らせる為、セーラー服の脇から手を入れ、胸をまさぐる。
暫く格闘してからじゃないと、大技の光線は効かないものだからね。
可哀相にかなり隙間のあるブラの間から手を入れ、直接乳をもみほぐす。
小振りで自分のと比べてあまり柔らかくないけど、スベスベの肌の感触が殺人級に気持ちいい。あ、さきっぽ見つけた。摘んであ・げ・る。

「や、だ、だめぇ!ふにゃあああ!?」

皮膚の薄いそこを強めに擦ってあげると、未だにもがき続ける会長さんの抵抗が弱くなってくる。ひんぬーは敏感という都市伝説は本当だったのか。むにむに乳首を苛めていると、段々先端が尖ると同時に、会長さんの叫びが途切れていく。
ゼイゼイと荒い息を繰り返し、
「痛っ!!」
やがて全身の力が抜けると、頭から地面に突っ伏した。

「はっはっは、良きかな良きかな。優子君、とどめを刺そうじゃないか」

部室の扉から、隊長が現われた。ちょっと先輩、会長さんは私が食べるんですよ。

「何、ちょいとこれを見てくれたまえ。瀬戸美も優子もな」

すると、ダウンしている会長さんの顎を持ち上げながら、誕生日に諸星先輩に貰ったブレスレットを指す。
ん?ブレスレット……?


ピカッ!




カメラのフラッシュを見た後の、虹色の残光が目に残っている。
えっと、今は……な、何で私、生徒会長に跨がってるの!?
ってああああああ思い出した!催眠術かけられて会長襲ったのかああああああ!?

「催眠状態はどうだったかな?目は覚めたかな?この催眠フラッシュは一発で強烈な催眠状態にできるのと、即回復させる効果があるのだ」
「じょ、冗談じゃないですよ!!」
「だが、ちゃんと人を操れる結果が出たからな、いい実験データになった」

檄昂して文句を言ったのだが、隊長は表情一つ変えない。
先輩とはいえ、怒る時は怒って良いよね?こっそり近くのレッドビュートに手を伸ばす。

「別にファーストキスという訳でもないだろう。それよりだな、瀬戸美に暗示を掛けようじゃないか。ほーら、瀬戸美は私に二度と逆らえな……痛ッ!!」

なんと!今までグッタリしていた会長が、隊長の脚に噛み付いているではないか!
怒りに燃える会長の眼。心なしか赤いのは、ただ泣いたとかでは無さそうだ。

「ああ痛い、目に草が入って……助かっちゃったわ」
「な、何だと!?」
「ふふふふふ……今日という今日は許さないから……」

会長の背後に般若が見える。凄い怒気。この時、初めて会長と気持ちが同調した気がする。
会長が隊長を睨み、気が逸れている隙に私は鞭を手に取る。そして、隊長に向けて振り下ろした。

パン!

「へあっ!?」
「隊長!流石に今回は見過ごせないですよ!みっちりお仕置しますからね!」
ビクリと肩を竦ませ、うろたえる隊長。
「ま、待て、落ち着くんだ優子、私は仮にも先ぱ……でゅわっ!?」
言い繕う先輩を鞭で黙らせる。
「今日はちょっと会長さんには逆らえないかなー。ところで会長さん、ご無礼のお詫びに何かお手伝いしましょうか?」

声を掛けると、会長さんは口を離してユラリと立ち上がる。

「勿論、そこのお馬鹿の躾を手伝いなさい!」
「はい!鞭を一本お貸しします!」
「は、はははは話せば分か…………じゅわーっち!!」

断末魔の悲鳴を上げる隊長に容赦ない鞭打ちを続けながら――
脳裏に「二大怪獣 隊長を襲撃」なんてタイトルが、思い浮かぶのでした。

《了》


保管庫へ戻る