「竹島・慰安婦」具体的戦略なし 首相訪韓 大きなリスク
6日の玄葉光一郎外相と韓国の金星煥(キム・ソンファン)外交通商相との会談で、野田佳彦首相の18、19両日の訪韓を正式合意したが、李明博(イ・ミョンバク)大統領が来日する順番を覆した性急な訪韓はリスクばかりが大きく意味合いは乏しい。
「十二分に結果が出てないのではないかという指摘もあるが、かなりのところまで詰められた。いずれ分かる…」
玄葉氏は7日、ソウル市内で記者団に自らの訪韓の意義を強調した。とはいえ、日本が再開を求める経済連携協定(EPA)締結交渉などでの進展は得られず、韓国が不法占拠する竹島(島根県)問題も平行線に終わった。
首相の訪韓が唯一の成果だといえるが、日本側が朝鮮王室儀軌(ぎき)の引き渡しを決めたにもかかわらず韓国側は李大統領の国賓としての来日を引き延ばしたままだ。日本側は「大統領が来ないと言うから首相が行く」(外務省幹部)と説明するが、日韓で合意した年1回の「シャトル外交」の原則を崩すことになる。
しかも、韓国側は、閣僚が相次いで竹島を訪れ、竹島付近の日本領海内で「海洋科学基地計画」を打ち出すなど挑発行為を続ける。8月1日には自民党国会議員3人が韓国に入国拒否される問題も起きた。
慰安婦問題でも金外交通商相は賠償請求権を確認するための協議開始を改めて要求した。ソウル市が日本の大使館前の路上の慰安婦に関する記念碑建立を認めた問題も浮上している。
首相は訪韓へ強い意欲を示しており、海洋での軍事的プレゼンスを強化する中国や北朝鮮への対応で連携を密にしていきたいと考えているというが、具体的な戦略は乏しい。
そもそも首相はニューヨーク訪問中の9月21日にすでに李大統領と初会談を行っている。この際、李大統領は慰安婦問題に触れなかったが、自国での会談となると状況は変わる。首相は慰安婦の賠償請求権に否定的だとされるが、明確に反論できなければ韓国側に不要な期待感を抱かせる結果を招きかねない。
「首相の訪韓を楽しみにしています」
李大統領は6日に玄葉氏の表敬訪問を受けた際、にこやかにこう語った。このしたたかな李大統領と対峙(たいじ)する覚悟はあるのか。首相の外交手腕が問われる。(ソウル 杉本康士)
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