通夜が行われた中村芝翫さんの自宅前で取材に応じる右から中村勘三郎さん、中村橋之助さん、中村児太郎さん=10日夕、東京港区、西本ゆか撮影 |
人間国宝の歌舞伎俳優・中村芝翫さんの通夜が行われた東京都港区の自宅には10日、歌舞伎や日本舞踊の関係者ら弔問客が次々と訪れた。自宅前では同日夕、次男の中村橋之助さん、長男・福助さんの長男で孫の中村児太郎さん、婿の中村勘三郎さんらがインタビューに応じた。
京都・南座に出演中の橋之助さんは、妻の三田寛子さんが芝翫さんの耳元に添えた携帯電話を通じ、息を引き取る間際まで京都から声をかけ続けたという。「親不孝な息子で申し訳なかったが、父はしっかり舞台を務めることを一番喜ぶ」と橋之助さん。「幼くして父を亡くした人だから、息子に孫、ひ孫に囲まれ幸せだったと思う。今頃は大好きな六代目のおじさん(菊五郎)に会ってますよ」と、かみしめるように語った。
新橋演舞場で8月に共演したが千秋楽の日、「こりゃだめだなあ」と珍しく弱音を吐いたという。「僕は正月ごろから覚悟を固めた。9月の入院中、一時は退院の話も出るほどだったが、父は医師に『退院するならリハビリして(舞台が)できるようにならなきゃだめだ』と話したと聞きました」。勘三郎さんの長男・勘太郎さんの勘九郎襲名を待ちわび、新しい歌舞伎座に「一日だけでもいいから口上に出たい」と話していたという。
「やり残したことはいっぱいあると思うが、父は僕の中にいてくれるし、精神は僕と兄(福助)とで引き継ぐ。でもね、今朝、南座でおやじのことを思い、涙出るから悔しいやと鏡を見ると、(父に)似てるんですよ。忘れよう、と手を見るとまた似ている。今日は鏡を見るのはやめました」