食料自給率:10年度は39% 猛暑で生産減

2011年8月11日 14時30分 更新:8月11日 18時25分

 農林水産省が11日公表した10年度の食料自給率(カロリーベース)は前年度より1ポイント低い39%になった。猛暑による国内農業生産の減少などが背景だが、11年度も東日本大震災や福島第1原発事故の影響で国内生産は減る恐れがあり、20年度までに50%を目指す政府の目標達成には黄信号がともっている。

 食料自給率はかつて80%近かったが、国民のコメ離れなどで食料輸入が増え、先進国最低の水準まで低落。93年度はコメの大凶作で37%に落ち込み、06年度にも39%となった。その後は輸入穀物の値上がりなどでコメ消費が増え、08年度の41%まで回復したが、再び2年連続で下落した。

 10年度は、カロリー換算で大きなシェアを占める小麦、テンサイ、イモ類の生産が大幅に減少。同じくウエートの大きいコメは今年3月の震災発生後に消費者が買いだめに走り、1人当たり年間消費量が59.5キロと前年度より1キロ増えたが、他の下落要因を打ち消せなかった。生産額ベースの自給率も乳製品の輸入増などで1ポイント減の69%となった。

 篠原孝副農相は11日の記者会見で「(自給率下落は)天候不順が大きく、農業者戸別所得補償制度などの政策で向上を図りたい」と述べた。しかし、11年度も震災や原発事故、7月の新潟福島豪雨で農業生産の減少が見込まれ、環境は厳しい。

 また、カロリーベースで50%を実現するには、40万ヘクタールに上る耕作放棄地を解消し、二毛作の奨励などで耕地利用率(農地面積に対する延べ作付面積の割合)を09年の92%から108%に上げるなど困難な条件を満たす必要がある。政府の「食料・農業・農村基本計画」も「我が国の資源をすべて投入して初めて可能な高い目標」と難しさを認めている。

 食料自給率は天候による作柄変動や海外の農産物市況などさまざまな要因に左右される「結果」に過ぎず、単純な数値目標を追求することが妥当かどうかも検討する必要がありそうだ。【行友弥】

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