ソウル中央地検公安第1部(イ・サンホ部長)は5日、北朝鮮の偵察総局から指令を受け、脱北した反北朝鮮運動関係者らを暗殺しようとした疑いで、南北経協社の元理事アン容疑者(54)を拘置・起訴した。
対南(韓国)工作の総司令部に当たる偵察総局は、1990年代に脱北し韓国に暮らしていたアン容疑者を取り込むため、北朝鮮の特別収容所にいるアン容疑者の家族が平壌で暮らせるようにしてやるとして懐柔し、アン容疑者に事業支援を約束、工作資金1万2000ドル(現在のレートで約92万円)の支援も行っていたことが分かった。
検察側が発表したところによると、アン容疑者は今年4月、事業の関係でモンゴルに駐在していた北朝鮮の人物と接触した際、偵察総局の工作員に取り込まれ、故ファン・ジャンヨプ氏と共に亡命した元ヨグァン貿易代表、金徳弘(キム・ドクホン)氏の暗殺指令を受けた。
しかし韓国側が金氏の身辺警護を強化したため、偵察総局は、暗殺の対象を「自由北韓運動連合」の朴相学(パク・サンハク)代表など、脱北者出身の反北朝鮮団体代表らに変更した。
韓国側当局は、アン容疑者の検挙現場で、偵察総局が暗殺用の武器としてアン容疑者に提供した万年筆型・懐中電灯型の毒銃2点、万年筆型の毒針1点、毒薬のカプセルなどを押収した。万年筆型の毒銃は長さ130ミリ、重さ57グラムで、キャップを回して銃口を開けた後、キャップを強く押すと弾丸が発射される。
毒銃の弾丸には針が付いていて、この針が人体に刺さると、弾丸の中にある臭化ネオスチグミンという毒物を人体に注入する構造になっている。この毒物は、わずか10ミリグラム程度人体に入っただけでも呼吸が止まり、心臓まひで死に至る。検察は、毒銃の有効射程距離は10メートルと発表した。
北朝鮮の工作員が暗殺用の武器として所持する毒針や毒銃が公安当局に押収されたのは、97年に摘発されたチェ・ジョンナム夫婦スパイ事件以来、14年ぶりのこと。