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神谷千恵は一人、キャンパスを歩いていた。真っ黒い髪に真っ黒い目。ここ、アメリカでは珍しい色だが、そもそも多様な人種の混在しているこの国ではそのことを気にする者は少ない。しかし、飛び級で大学に入学した彼女を奇異の目で見る者は多く、自然、彼女の回りに関わってくる者はそんなに多くなかった。 勿論、例外はいる。しかし、その例外のせいで千恵に関わってくる人の数が減っているのは事実だった。 「チエ!」 後ろから声をかけられる。その声に振り向くと、そこには褐色の肌の男がいた。 「どうしたの、マイク?」 「ああ、探していたんだチエ。ちょっと来てくれ」 マイクと呼ばれた男はおもむろに千恵の手を掴むと走り出した。急に引っ張られた千恵は戸惑いながらマイクに尋ねる。 「どうしたのよマイク。そんなに慌てて!?」 「エリーが、エリーがまた変なことを始めたんだ。止めてくれ」 そんなマイクの言葉に千恵は頭が痛くなるのを感じた。そして、はあとため息を吐きながら、マイクの後を追っていった。 現場は既に野次馬達によって人だかりが出来ていた。 「ちょ、ちょっと通して」 千恵とマイクはその人垣の隙間を縫って中へ中へと進んでいく。その人垣は騒動の中心から一定距離離れて作られており、人垣を抜けた二人はぽっかりと空いた空間に身を躍らせた。 そんな二人の瞳には、目の前で金属バットを振りかぶっている金髪の美少女がいた。 「エリー!」 開口一番、千恵は叫んだ。その声を聞き、騒動の中心人物である金髪美少女エリカ・フォーテルが千恵の方を振り向いた。 「ああ、千恵? どうしたの、そんなに息を切らせて? あ、実験を見に来てくれたの? これ見てよ。人格変換バット。これで殴れば、殴られた相手は違う人格になるって言う新発明よ」 エリカはかんらかんらと豪快に笑いながら、ぶんと手に持ったバットを構える。まるで刀を値踏みするかの様にポーズをとったエリカを見て、千恵はハアと大きくため息を吐いた。そして、つかつかとエリカへと近寄るとおもむろにエリカからバットを取り上げた。 「没収」 「あーっ、ちょっと千恵! なにするのよ」 食ってかかるエリカを千恵はじろりと睨む。その視線にエリカは思わずたじろいだ。 「何するじゃないでしょ! こんな危ない物。当たったら痛いじゃすまないのよ! 人格変換バットですって? 当たり所が悪ければそりゃあ記憶どころか人格も変わるわよ。当たり前じゃない!」 千恵は一気にまくし立てるとバットをもって、すたすたと歩いていった。その後をエリカが慌てて追いかけていく。 「あ、ちょ、待ってよ千恵ー」 嵐の様な騒ぎは過ぎて、その場に残された人々は暫く茫然とした後、ぽつぽつと散っていった。 「まったく、あなたはもっと常識という物を持った方が良いわ」 千恵はすたすたと歩きながら、後ろに付いてくるエリカに言う。そんな千恵の言葉にエリカはぶーっと文句を言った。 「そんなもの私だって持ってるわよ。ただ、そんなの気にしてたら科学の発展は見られないわよ」 「・・・・わかった。私の言い方が悪かったわ。あなたはもっと常識を弁えた方が良いわ」 はぁとため息を吐きながら、千恵は言い換えた。くるっと向きを変え、千恵はエリカへと振り返る。 「科学の発展は結構。エリーの発想も凄いと思ってる。だけど、それは他人に迷惑をかけない様にしなさい。とりあえず、これは魔窟行きね」 「えー!? ちょ、ちょっとまってよ。それだけは〜」 まるで遊び道具を捨てられるのを止めようとする子供の様にエリカは千恵へと追いすがる。 「だーめ。こんな危ない物は放置しておけないわよ」 そう言って斬って捨てると、千恵はエリカと暮らしている部屋へと入っていった。そして、鍵付きのドアを開けるとごっちゃりと積み上げられたがらくたの上に金属バットを放りこんだ。 「あー」 千恵の後ろでエリカが落胆の声を上げる。そんなエリカの声を無視して、千恵はがらくた部屋――通称魔掘の鍵を閉めた。 「封印完了っと。ほら、もうこれで出せないんだからエリーも暇つぶしでこんな物作ってないで、ちゃんと自分の研究をしなさい。教授にレポート提出せっつかれてるんでしょ?」 「あんなの、一晩あれば終わるのに〜」 「その一晩がもう過ぎてるから言われてるんでしょ? いい加減にしないと単位落とすわよ」 「わかったわよぉ」 千恵の言葉にエリカは渋々と机に向かった。広げられたレポート用紙の上をかりかりとペンが走る。 そのエリカの後ろ姿にふうと肩を竦めると、千恵はエリカに向かって言った。 「エリー、晩御飯が出来たら呼ぶから、ちゃんと来なさいよ」 「はーい」 エリカは千恵の言葉に生返事で返す。そう言って、ちゃんと来たためしがなかった。千恵はそんなエリカの生返事にはあとため息をつく。 『千恵はエリーのお母さんだね』 とは、共通の友人の弁である。 千恵は祖国日本で並び立つ者がいないと称された天才で、飛び級で留学してきたこの地でエリカに出会った。エリカは千恵をして天才と言わしめるほどの天才で、事実、エリカは12で大学に入っている。しかし、天才とは迷惑なものなのか、エリカは大学に入ってからは常に騒動の中心にいて、騒動が起こると、とりあえずエリカが疑われるほどだった。 そんなエリカとルームメイトになってしまった縁というか、エリカに非常に気に入られてしまった千恵はエリカの起こす騒動の収拾をいつもつけさせられるのである。 「好きでお母さんをやってるわけじゃないんだけどなぁ・・・」 はあとため息をつく。 別にエリカが嫌いというわけではないが、毎度のように起こる騒動に千恵は辟易していた。エリカはルームメイトで研究パートナー。エリカの柔軟な発想と理論は目を見張るものがあり、そう言う意味では尊敬できる相手なのだが、柔軟すぎてもはや誰にもわからなくなってきている思考と有り余る行動力が起こす騒動はその収拾で自分の研究が進まなくなるため、千恵にとって悩みの種だった。 「エリー。御飯できたよ」 テーブルに御飯を並べ終えた千恵はその場でエリカを呼ぶ。しかし、エリカからの返事はなかった。 「エリー、エリー」 何度呼んでも返事がない。だが、エリカが何かに夢中になっている時は呼んでも返事をしないことなどざらにあった。 「・・・・まったく、また何かに夢中になってんのね」 はあと大きくため息をついて、千恵はエリカの部屋へと向かう。 「エリー、エリーっ」 コンコンとノックをしてエリカに呼びかける。それでも返事はない。それもそのはず、エリカの集中力は凄まじく、本気で集中している時は家が火事になっても地震が来ても気づかないと言われている程だった。 コンコン。 もう一度ノックするが、やはり返事はない。仕方がないので千恵は中に入ることにした。 「エリー」 ドアを開けた途端、千恵は顔をしかめる。つい一週間前に千恵が大掃除を敢行したにも拘わらず、寝床と机以外には何が何だかわからないくらいにいろんなモノがぶちまけられていて、足の踏み場もなかった。 また、掃除をさせなきゃと思いながら、千恵はエリカへと近寄っていく。机にかじりついているその肩をぐっとつかみ、千恵は叫んだ。 「エリーッ!」 「ああ、千恵。ちょうどいいところに」 くるっと椅子を回転させて、エリカは千恵へと向き直る。その手には真っ白いカチューシャが握られていた。 「ちょうど完成したところなの」 「没収」 エリカがカチューシャを掲げたところを有無を言わさず奪い取る千恵。そんな千恵にエリカはむぅと頬を膨らませた。 「どーして? まだ説明も何もしてないじゃない」 「どうせ、エリーが作るモノなんて変なモノなんだから、変なことが起こらないうちに没収しておくのが世のため人のためよ」 そう言って、千恵はエリカから取り上げたカチューシャを見る。何の変哲もない白いカチューシャだった。 「せっかく、千恵にプレゼントしようと思って作ったのに。それをいきなり没収なんてないんじゃない?」 「プレゼント?」 「そう、明後日、千恵、誕生日でしょ? マイクたちと千恵のバースディパーティーを開こうかって話してたんだ。で、それを誕生日プレゼントにあげようと思ってたわけ」 ピッとエリカは千恵が持っているカチューシャを指す。 「ほら、千恵ってしゃれっ気がないじゃない? だから、そう言うモノをつけてもうちょっとおしゃれしてみればいいんじゃないかってね。それを千恵は変なモノだなんて、心外よ」 「あ、そうだったんだ・・・ごめん。でも、それはあなたの日頃の行いが悪いからよ。オオカミ少年の話知ってる?」 「むぅ・・・・何よ千恵。それじゃ私がいつも変なモノを作ってるみたいじゃない」 「事実作ってるでしょ。さっきの変なバットだってそうでしょ。みんなに迷惑かけて。せめて、自分を実験台にしなさいよね」 むぅ、とエリカは千恵を睨むが、千恵はそんなエリカの視線を軽く受け流した。 「まあいいや。何にせよばれちゃったなら仕方ない。ちょうどできたところだし、ちょっと早いけど誕生日おめでとう」 「ありがと」 千恵はエリカの言葉ににっこりと笑みを浮かべて、手に持ったカチューシャを頭につけた。 瞬間、ビクンと千恵の身体が震える。千恵の頭についたカチューシャはみるみるうちに黒く変色し、ぴょこんと同じ色の猫の耳がカチューシャから飛び出した。 「どう? 似合うかにゃ?」 数秒間、その場に沈黙が走る。 千恵は自らの発した言葉に目を丸くした。 「にゃ? にゃに? にゃんで?」 どうしても「にゃ」と言ってしまう千恵。そんな千恵にエリカはにこにこしながら鏡を千恵に向けた。 「よく似合ってるよ。千恵」 千恵は鏡に映った自分の姿を見て硬直する。そこには髪と同じ色の猫の耳を生やした自分の姿が映っていたからだ。 「にゃ、にゃによこれーーーーーっ!?」 千恵の絶叫が木霊する。そんな千恵をにこにこと見ながら、エリカはカチューシャの説明を始めた。 「千恵って猫好きだったじゃない? だから、自分も猫になってみれば楽しいと思ったんだ。で、それを作ったの。そのカチューシャはつけると装着者のDNAを解析して毛髪の色に変色、そして、同色の毛色を持った猫の耳をカチューシャに生成するの。それだけじゃなくて、猫の習性も装着者にインプットするの」 嬉々と説明をするエリカ。しかし、千恵はエリカの説明を全く聞いておらず、必死に頭についているカチューシャを外そうとしているが、何度試してもカチューシャを外すことができない。 「くぅ、この、にゃんで外れにゃいのよっ」 それでも必死にカチューシャをつかむ千恵に向かい、エリカはにこにことしながら言った。 「ほら、猫って顔を洗うでしょ。その時に外れないように装着者には外せないようにインプットしてあるの」 「にゃんですってーっ」 軽い感じで言われたその言葉に千恵はエリカへと詰め寄った。 「エリー、にゃんだってそんにゃもの作るのよ」 「だから、千恵への誕生日プレゼントだって」 「いいから、これを外しにゃさい!」 「むぅ〜。せっかく千恵のために作ったってのになんだってそんなこと言われるかなぁ。そんな千恵はこうしてやる」 そう言って、エリカは机においてあったモノをとった。 「これなーんだ」 エリカはにやりと悪そうな笑みを見せ、手に持ったモノを千恵に見せつける。それを見た瞬間、千恵の顔が恐怖に歪んだ。長い茎の先にブラシのような毛の長い穂が生えている。単子葉植物、イネ科エノコログサ属の一年草。狗尾草――猫じゃらしだった。 千恵の脳裏に先程のエリカの言葉が蘇る。 『猫の習性も装着者にインプットするの』 確かにエリカはそう言った。それはつまり―― 「ほーら、ほら」 エリカは千恵の目の前でふるふると猫じゃらしを揺らす。それを見た瞬間、千恵の身体は硬直した。千恵の胸の中になんだかもやもやしたものがわき上がってくる。その衝動は猫じゃらしを見るたびに強くなっていった。 「ほらほら〜」 エリカは猫じゃらしを千恵の目の前へともっていく。その瞬間、千恵の中の衝動が一気に弾けた。 ひゅっ。 小さな呼吸音とともに千恵の手が猫じゃらしへと放たれる。それをエリカが躱した瞬間に千恵は自分が何をしているのかに気づいた。 「にゃっ!?」 しまったと言いたげに気まずそうな顔をする千恵にエリカはにやにやと笑みを向ける。そして、まだまだという風に再び千恵の前で猫じゃらしを揺らした。 「ちょっ、エリー。やめにゃさいっ」 口ではそう言うが、千恵は目の前の猫じゃらしに向かって手を伸ばすのをやめられない。 「ふふ〜ん、千恵がやめればいいじゃない。ほ〜ら、こっちこっち〜」 にやにやとした表情のエリカは千恵に向かって猫じゃらしを揺らすのだった。 その動きに千恵は反応してしまい、手を出しては避けられるというのを繰り返す。自分がしていることの恥ずかしさはわかっているのにどうしてもやめられない。やめたい、やめたいと思っていても、目の前で猫じゃらしが揺れると、どうしてもそれをはたきたくなってしまう。それがエリカの思うつぼだとわかっていながら、千恵はやめることができなかった。 「ほ〜ら、千恵〜」 やや遠目の位置で揺らされる猫じゃらしに、千恵はバッと跳ねるように飛びかかる。先程と同じように猫じゃらしは避けるが、千恵のいる位置はエリカの懐だった。 「千恵、つーかまえた」 嬉しそうに言って、エリカは千恵を抱きしめる。そして、それをふりほどこうとする千恵の顎をなで上げる。 「あ・・・・・」 途端に千恵の身体から力が抜ける。千恵はもっと撫でて欲しそうに顎を突き出し、気持ちよさそうに目を閉じた。 「顎の下を撫でると幸福感が出るようにしてあるんだよ」 そう言いながら、エリカは千恵の顎下を撫で続ける。 「え、エリー・・・はにゃっ、はにゃしにゃ・・さい」 自身の恥ずかしい格好。それとエリカに対する怒りから、逃れなければと思う千恵だが、溢れ出る幸福感に流され、思うように身体を動かす事が出来なかった。 「ん〜、千恵かわいい」 エリカは満面の笑みをたたえて千恵の頭を撫でる。先程の怒りや猫じゃらしを追った動きはどこへやら、千恵はおとなしくエリカの手を受け入れていた。 「千恵気持ちいい?」 「ん〜〜〜」 エリカの質問に千恵はうなるだけで答える。その表情はとても気持ちよさそうだった。 「素直でいいね。そんな素直な千恵にとっておきのプレゼントをあげましょう」 エリカはどこからか取り出した袋を千恵に見せつけた。 「じゃーん。千恵、これは何でしょう?」 お守り大の小さな袋。そこからかすかに漂ってくる香りに千恵はふっと意識を引っ張られる。エリカは袋を開くと、中に入っているモノを手のひらに落とした。ころんと飛び出してきた梅のような実に、千恵の瞳が釘付けになった。 「そ、それっ」 顎下を撫でられる事による幸福感は既に途切れているが、千恵はエリカの掌にのっている果実から目が離せない。自身ではよくわからない香りなのに、その香りをかいでいると頭がぼうっとなり、どうしても何かを考える事が出来なくなっていった。 「Actinidia・・・polygama・・・」 「ご明察。学名Actinidia polygama。マタタビだよ。確か、日本には『猫にマタタビ』っていう諺があるんだよね」 そう言って、エリカはマタタビの実を握り潰す。ギュッと握り込まれた手の隙間から汁が零れ落ちていく。漂ってくる匂いに千恵の意識は朦朧としだしていた。エリカは軽く手を振ってこびりついた果肉を落とすと、ふらりと揺れる千恵の顔をがしっと抑える。汁から発せられる匂いに千恵は朦朧とさせられていた。 エリカはフラフラと揺れる千恵を支えながら、ベッドへと導く。千恵ははあはあ荒い息を吐き、くねくねと身体をくねらせていた。そんな千恵の身体につうと指を這わせる。その感触にビクンと身体を震わせ、千恵は熱い吐息を吐いた。 「え、えりぃぃぃ・・・やめ・・・にゃさい」 「ふふっ、千恵。可愛い」 くすりと笑い、エリカは千恵の身体をなぞっていく。伝わってくる刺激に千恵はビクンと身体を震わせた。 「ほら、千恵の身体はもっと欲しいって言ってるよ?」 そう言いながらエリカは千恵のスカートに手を差し込み、ショーツを脱がす。そして、ひくひくと動く千恵の膣をどこからともなく取り出した小型カメラで撮影を始めた。 「発情時のデータ。欲しかったんだよねぇ。私のデータだけじゃ足らないし。みんな取らせてくれないし・・・」 きらきらと子供のように目を輝かせて、エリカは小型カメラで千恵の秘裂の縁をなぞっていく。びくっびくっと身体を震わせながら、千恵は弱々しく首を振った。 「やぁっ・・・めっ・・・にゃぁっ」 ビクンと千恵の身体が大きく震える。力の入らない身体を何とか動かし、エリカを引きはがそうとするが、そんな抵抗は何の障害にもならなかった。 「ほーら、もっと気持ちよくなって・・・いろんなデータを頂戴ね」 エリカは小型カメラで秘裂を弄りながら、片手で器用にブラウスのボタンを外していく。そして胸を守っているブラジャーをずらすと、その中に隠されていた胸の先にまたもどこからか取り出した棒状の物体を押しつけた。 「こっちはね、温度計兼心電図のセンサーなんだ。冷たくて気持ちいいでしょ?」 そう言いながら、乳首を弾く様にセンサーを動かしていく。ヒヤリとした感覚、乳首を走る刺激に千恵はブルッと身体を震わせた。 「にゃっ・・・ぁっ・・・え、えりぃ・・・」 力なく首を振る千恵の身体を起こし、エリカは千恵の後ろへと回る。そして、後ろから包み込むように抱きしめるが、身長差があるせいでエリカが千恵におぶさってるようにしか見えなかった。 しかし、エリカはそんな事は気にせずに千恵の身体を弄っていく。そこから伝わっていく快感に、千恵の身体が震える間隔が短くなっていった。 「にゃぁっ・・・・ぁぁっ・・・ぁっ・・・」 ピンと乳首を弾かれて千恵は身体を仰け反らせる。その口からははぁーっはぁーっと熱い吐息が零れ、秘裂から溢れ出た液体はスカートだけではなく、シーツにまでも大きな染みを作っていた。 そんな千恵の姿を観察し、エリカはにやりと笑みを浮かべた。 「ほら、千恵のイク時のデータを頂戴」 そう言って、乳首とクリトリスを同時に捻る。その瞬間、千恵はビクンと身体を震わせた。 「にゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」 脊髄を通り抜け脳に溢れかえる快感に、千恵は大きく仰け反らせ、身体を硬直させる。その一瞬後に脱力し、ぐらりと後ろへと倒れ込んだ。 「あ、ちょっ、ちっ、うあああっ」 脱力しきった千恵の身体を受け止めきる事が出来ず、エリカは千恵の下敷きにされる。倒れ込んだ勢いでカチューシャがぽろんと外れ、ベッドの下へと落ちる。カチューシャは千恵の頭から外れた瞬間に耳が引っ込み、色も元の白へと戻った。 「ちょっ、千恵。重いっ」 脱力した千恵の身体をどかし、エリカが這々の体で這い出してくる。はあはあと肩で呼吸をしながら、机の上のモニターへとかじりつく。 「やった。いいデータが採れてる。マタタビをかがせた時のデータ。興奮時のデータ。イッた時のデータ。これでまた一歩進むわ」 タタタタタと凄い勢いでキーボードを打ち、様々なウィンドウを画面に表示させていく。それを片っ端から見ていくエリカの顔は今日一番の輝きがあった。そして、天才特有の類い希なる集中力がエリカの墓穴を掘る事になった。 「へぇ〜。結構いろんなデータが採れたのね。うぁ、こんなになっちゃうの。自分では見たくないなぁ」 「そお? 私はデータだったら自分のでも他人のでも大丈夫よ。 データはデータにゃんだもの」 「その辺は流石エリーって所なのかな? エリーは全然気にしないものね」 「当然よ。自分のでも、他人のでも、データには変わりにゃいん――」 そこまで言って、エリカは自分の言葉の違和感に気づいた。慌てて頭へと手を伸ばす。その指の先にカチューシャの硬質の感触と猫耳の柔らかい毛の感触を感じた。 「にゃーーーーっ!?」 自分に起こっている事を把握したエリカは素っ頓狂な声を上げる。そして、恐る恐る後ろを振り向いた。その視線の先では千恵がにこにこと笑っている。 「へぇ〜こんなになるんだ? 確かにこれは可愛いわ」 千恵はにこにこ笑いながら、ピコピコと動く金色の猫耳を指でちょいちょいと触れた。自分がつけてた時には気づいていなかったが、それはどうやら神経まで通っているようで、エリカはくすぐったそうに千恵の指から逃げる。そして、恐る恐る千恵に聞いた。 「ち、千恵・・・・怒ってる?」 「何が? 私は全然怒ってないよ。猫になるなんて貴重な体験をさせてもらったんだから」 にこにこと笑みを絶やさず、千恵は言う。しかし、その笑みが逆にエリカの恐怖をかき立てるのだった。 「やっぱり怒ってるぅ〜」 「何言ってるのよ。だから、全然怒ってないって。猫じゃらしでもてあそばれたり、マタタビを化がされるのも気持ちよかったよ。エリーも試してみればわかるよ」 そう言って、猫じゃらしとマタタビを持ち出す千恵。 「にゃ、にゃぁぁぁぁーーーーーーーっ!」 その日は一晩中エリカの悲鳴が盛大に響き渡っていた。 後日、カチューシャが魔窟に封印されたのは言うまでもない。 < 了 >
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