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――その日の夜。 「さ〜え〜こっ!ちょっとこっち来てみ」 「なんですか、旦那様?」 俺は、部屋に呼んだ冴子に向かって、昼間手に入れたディー・フォンを構える。 すでに、使用者は、俺に変更済みだ。 やっぱり、こういうのは、手に入れたら使いたくなるというのが人情だろう。 ――パシャ! これでよし、……ん?なんだ、冴子の情報が入ってこないぞ。 ――パシャ!パシャ! 「あ、あれ?」 「どうしたんですか、旦那様?」 ――パシャ!パシャ!パシャ! 「もう……旦那様ったら…」 ――パシャ! 「あれ?なんでだ?……て、おい!?なにしてんだ!冴子!?」 「私…旦那様のためなら…脱ぎます」 なに言ってんだよ?つうか、おまえ、いっつも俺のために脱いでるだろうが! 「どうですか、旦那様」 メイド服を脱いで裸になった冴子が色っぽいポーズをとる。 「お、おお〜!」 ――パシャ! 感動して、俺は思わずシャッターを切る。 「こういうのはいかがでしょうか?」 「お、いいよいいよ!」 ――パシャ! 「こんな感じは?」 「もうちょっと顔を下げて、上目遣いでこっちを見る感じで……そーうそう!」 ――パシャ! ……て、なにやってんだ、俺。 「ああ……旦那様……私…もう…」 冴子は、頬を染め、潤んだ目で俺の方を見つめてくる。 ……こりゃ、ディー・フォンのアプリも必要ないな。 うーん、恐るべし、エロ冴子の実力……。 「お願いします…旦那様…」 破壊力満点の上目遣いで俺の方を見上げてくる冴子。 「しかたがないな、いいだろう」 「ありがとうございます」 俺が許すと、冴子は嬉しそうに俺のベルトを外し、ズボンをずらす。 「あふ…ん……ちゅる……」 「くっ!んく!」 俺のモノに冴子の舌が絡みついてきたとたん、猛烈な快感が走り、俺の口から思わず声が漏れる。 「ふ…んふ…ん…ん…んちゅ…」 もともと、とんでもないレベルの舌使いが、ここ数年でさらにレベルアップしている。 「ん…ふ…ふ…ふ…じゅる……」 頭を前後に動かして、俺のモノをしごきながらも、舌先で、ペロ、と先走りをすくい取る。 「くっ!さ、冴子!」 「ん!んんん!…こく…じゅるる!…んん…ちゅる…はあぁ…」 射精と同時に、俺のモノを奥深く咥え込み、こぼすことなく精液を飲み干していく。 ……ここまで来ると、もはや名人芸だ。 「旦那様……私、もう……」 もじもじと、ももをすり合わせるように動かす冴子。 「ああ、こっちに来るんだ、冴子」 「はい、旦那様……」 俺は、冴子の手を取り、ベッドに上がる。 「んむ…んん……」 口づけを交わすと、冴子は、積極的に舌を絡めてくる。 「ん…あふう……」 唇を離すと、ふたりの間を、糸が引いていく。 俺は冴子をだき抱えると、冴子は、軽く腰を浮かせる。 「冴子……」 「はい…旦那様……あ!……んふう!」 冴子は、そのまま腰を沈め、俺のモノを飲み込んでいく。 「んっ!…はうん!……ああ…旦那様…」 ゆっくりと、冴子は腰を捻るように動かす。 「ん…あふ!…んん!…あん…」 腰の動きに合わせて、冴子のアソコ全体が俺のモノをねっとりと包み込むように蠢く。 「んふ……あっ!あふうんっ!」 たまらず俺が腰を突き上げると、冴子がしがみついてきて甘い声をあげる。 「あ!あんっ!ん!うんっ!ああん!」 俺が腰を突き上げる度に、短い嬌声をあげる冴子。 冴子は、髪を振り乱して頭を振り、辺りに大人の女の香りが漂う。 「んんん!はあんっ!ん!はあっ!あん!」 俺に抱きついていた手を離し、後ろ手に体を支えて、冴子は腰を押しつけるように動かす。 「ああん!はあんっ!ああ!だ!旦那様!」 「くっ!冴子!」 俺は、冴子の腰に手を伸ばして抱き寄せ、深く突き上げる。 「ん!んん!んむう!んんんんん!」 抱きついた勢いで俺の口を吸に吸い付き、体をビクビクと震わせる。 「んむむむ!んん!んはああああああっ!」 しかし、すぐにまた体を反らし、大きく喘いで絶頂に達する。 「はああぁ……ああ、旦那様ぁ…」 余韻を味わうように大きく息をする冴子。 「……旦那様、薫ちゃんのこと、よかったですね」 コトの済んだ後、俺に体を寄り添わせながら冴子が言う。 「冴子…おまえ、知ってるのか!?」 「いえ、何があったかは知りませんが、今朝はあんなに沈んでいた薫ちゃんが、さっきは見違えるほど晴れ晴れとしてましたもの」 「そうか、おまえも気づいてたのか」 「だって、私はこの家のメイド長ですもの。家族のみんなに気を配るのも仕事のうちです」 「すまないな、冴子、そんなことにまで気を使わせて」 「そんな…私、とっても幸せなんですよ、旦那様。みんなと楽しく暮らせて、そして、こうして旦那様に愛してもらって……」 そう言うと、冴子は俺の方を見て微笑む。 ……操ってそうさせておいて、こんなことを言うのは欺瞞かもしれないが……心が救われた気がした。 それが気恥ずかしくもあり、心地よくもある。 俺は、悪魔のはずなのに……。 「ありがとうな、冴子」 「旦那様、感謝は、言葉ではなくて、態度でお願いしますね」 「というと?」 「もう一度…よろしいですか?」 冴子が幸に負けず劣らずの妖艶な笑みを浮かべる。 とりあえず、うちの連中は、揃いも揃ってエロ過ぎるのが難点だな。 8割がた俺のせいではあるんだが……。 もし俺が悪魔じゃなかったら、とうの昔に体が保たなくなってるぞ。 翌朝、目が覚めたときには、すでにベッドの中に冴子の姿はなかった。 夜の間、どれだけ乱れていても、うちのメイド長としての仕事はおろそかにしない。 ……本当に感心な奴だ。 2階の寝室から下に降りると、もう朝食の準備はできていた。 「あ、おはようございます!」 「おう、おはよう」 幸、薫、冴子、梨央……うちのファミリーの面々……そして、 「おはようございます、大門さん」 「ああ、おはよう、綾さん」 相変わらず、眼鏡に何の反応はない。 しかし、辺りに漂う雰囲気がだいぶ柔らかくなったような気がする。 「昨日…生まれ育った街に行って来ました…知ってる人もいないし、住んでいた家すらなくなってましたけど……」 「そうか…」 「でも、なにか心の区切りがついたような気がします。これからどうするかは、まだ決めていませんが」 「まあ、ゆっくり考えたらいいさ。やることが決まるまで、ここにいても別に構わないし」 「ありがとうございます、これも大門さんたちのおかげです」 「別に、そんなたいしたことはしてないさ。たまたま助けて、寝泊まりするところを提供しただけだから」 たまたま…か、なにかスッキリしないが、こいつからは嫌な感じや気配はしないし……。 それよりも、俺の身の回りで、2日続けてディー・フォンがらみの事件があったことの方が気になる。 あの会社、どんだけ売りさばいてるんだか……。 その日、出社すると、俺は仕事の合間に、ディー・フォンを取り出す。 冴子にディー・フォンが効かなかったのは、おそらく、俺の操作を受けている冴子にプロテクトがかかっていたからだ。 いちおう、開発に直接関わった者として、それくらいのことはわかる。 問題は、薫に起こったことの方だ。 これは、あいつが使っていたディー・フォンだから、薫に変なメールを送ったアプリかなんかが入っているはずだ。 ……これは?<マインドハッカー>だって? ※植春愛那の解説コーナー <マインドハッカー>は、倭文さまが作ったディー・フォンアプリで、これを使うと、他人の洗脳下にある相手をディー・フォンに取り込むことができます! 詳しい理屈と使い方は、『黒い虚塔』第2話を見てね! ん?今なんか聞こえなかったか?……まあいいか。 お、操作マニュアルもあるぞ。 ……ふんふん。 ………なるほど。 …………おいおい!? ……………なんだって!? …………………………ブチッ! なんちゅうアプリ作りやがるんだよっ! おかげで俺が迷惑するじゃないかっ! しかも、何だよ!ディー・フォン購入1周年記念の特典って!? こんなもんタダで配ってんじゃねぇっ!! 「局長、どうかなさいましたか?」 すっかり立ち直って、いつものクールな秘書モードに戻った薫が、俺の顔をのぞき込む。 「いや、なんでもない。ちょっとむかつくことがあってな。うん、大したことじゃないんだ。あ、薫、コーヒー淹れてくれないか?」 「……?かしこまりました」 返事をして、部屋付きの給湯室の方に行く薫。 あいつ、今、一瞬首傾げてたよな……俺がこれ持っていること気づかれたか? いや、薫はディー・フォンそのものは見てないはずだから大丈夫のはずだ……。 しかし……あいつがこれを使ったってことは、少なくとも、一度は写真を撮って薫を取り込もうとしてたってわけだな。 くそ、考えただけでも腹が立つ。 つうか、メールで送ってきたってことは、薫のメールアドレスしか知らなかった……ていうことか? 薫の携帯の番号を知られていたらやばかったじゃないか。 なんてこった、こんなの持った奴らが、あと何人いるんだよ……。 「局長、コーヒーを……局長?」 コーヒーを運んできた薫が、頭を抱えている俺を心配げに見ている。 「あ、ああ、ありがとう、薫」 俺は、笑顔を作って、薫が机の上に置いたカップを持ち上げる。 薫に気づかれるのはまずい……こいつに余計な不安を抱かせたらダメだ。 昨日みたいなことが、またあるかもしれないなんて……。 「ただいま」 「あ、お帰りなさい、大門様」 帰宅すると、いつも通り出迎えが……ん?大門様?そんな風に俺を呼ぶやつって……? 俺が顔を上げると、そこには、白銀の髪をしたメイドが立っていた。 「あ!綾さん!?」 「はい、幸さん…いや、奥様と冴子さんに相談して、ここでお世話になることになりました」 いやいやいや!ちょっと考えたら、この家普通じゃないってわかるでしょ!? それを、操作されてもいないのに、好きこのんで自分から飛び込んできます? うーむ、幸のやつ、前々から素質があるとは思っていたが、ついに洗脳の能力が開化したか?……て、そんなわけないか。 だいいち、やっぱり眼鏡に何の反応もない。 眼鏡が壊れてんのか?……うん、他の連中には反応しているな。 「大門様?」 「あの…いいんですか、綾さん?」 「はい!とは言っても、私、家事は全然できないので、まだまだ見習いですが。それと、大門様」 「は、はい?」 「今日から私もここの使用人ですので、私のことは、綾さん、ではなくて、綾、って呼んで下さい!」 「はい……」 なんか、わけのわからん事になりつつあるな……。 「あ!ご主人様!今、ニュースでやってたんですけど、怪物が出たらしいですよ!」 居間に入ると、梨央が興奮して飛びついてくる。 「はあ!?どこに?」 「東京ですって」 と、これは幸。 「冗談か?」 「いえ、本当らしいですよ。ただ、夜中にちらっと見かけたっていう話だけなんですけど。なんでも、コウモリの翼に、蛇の尻尾を持った大男がいたらしいです」 横から冴子も口を挟む。 「は、ははは、きっと見た奴が酔っぱらってたかなんかじゃないか?だいたい、そんなのがいるわけないだろう」 と、言い切れないところがつらい。 つうか、そんなの、魔界に行けばいくらでもいる。 どっかのバカが地上に出てきたのか? 最近の魔界の事情は、俺にはわからないし……。 そういえば、魔界には銀髪の女悪魔もいくらでもいる……まさか? ……いや、綾からは悪魔の気配は感じられない。 それに、よく考えたら、人間界でむやみと本性現す悪魔がそうそういるとも思えない。 きっとガセだよな……というか、これ以上面倒そうなことは起きて欲しくないんだが……。 脳裏にかすめた嫌な予感が、杞憂であることを俺は切に願った。
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