|
「こんな店あったっけ?」 その店は、入り口は人ひとりがやっと通れるほどに狭かった。しかし、やたらド派手なネオンの看板には『魅惑の店 ムラタ』と、店の名前と思われるものが、そして、その下には「いけないもの あります」と小さく書いてある。 だから、何の店ですか? 店の周囲には大音量で鳴り響く軍艦マーチ。ひょっとして、パチンコですか?間口狭いけど。 つーか、この音量はないだろう、近所から苦情が来ないのかよ。と、俺が周りを見回しても、そんな気配はない。それどころか、道行く人は、まるでそこに何も無いかのように見向きもしない。いやいや、こんな怪しげなネオン掲げて、しかも、はた迷惑な音量でガンガン音楽かけてる店があるんですよ。普通気になるでしょうが。 そういや、俺もこんなに近くに住んでるのに、さっきまで全然気づかなかった。今日オープンしたばっかでも変だ。この音量なら、俺の部屋まで聞こえるはずだぞ。 いったい、何を売ってるんだ? あ、そうか、きっとエロDVDとか売ってる店だ!ちょっと騒がしすぎるけど、この看板のネオンの感じは、あの手の店っぽいし。看板にも、「いけないもの あります」とか書いてあるし、ひょっとしたら、もの凄い裏DVDとかあるかもしれない。うん、ちょっと覗いてみよう。 俺は、店の入り口に近づいて、中を覗き込む。すると。 「いらっしゃいませー!」 ん?今のは女の子の声じゃなかったか? 「さ、お客さまー、中にどうぞー!」 中から出てきて俺の手を引こうとするのは、なんだぁ、この三つ編みにでっかいリボンを付けたロリロリ娘は!? 「いや、俺はただ、うわ!」 体ちっちゃいのになんて力だよ、この子。 引きずられるようにして俺が店の中に入ると。ん、意外と広いな、ここ。 入り口の狭さからは想像できないほど広い店内で、まず目に付いたのは、テレビやミニコンポ、洗濯機などなどの家電製品。パッと見ただけでもちょっと型が古そうなものばかりだ。 リサイクルショップか? いや、それにしては変な物もあるぞ。何に使うのかわからないが、色とりどりの水晶玉みたいなの、ネックレスやブレスレット、指輪といったアクセサリーが無造作に置かれている。向こうに掛けてある、ヨーロッパの肖像画みたいなのも売り物なんだろうか。かと思うと、その横には種類を問わず、いろんな楽器が並ぶ。うーん、わけがわからん。よく見ると、手錠や鞭みたいなもんまである。 結局、中に入っても何の店かわからねぇ。少なくとも、裏DVDは置いてなさそうだ。 「ふぉっふぉっふぉっ、お客さん第一号じゃの」 不意に、聞こえてきた声。ん、さっきの女の子の声じゃないぞ。これは、どう考えても年取った爺さんの声だ。 俺が、声の聞こえた方を向くと、これまた古くさそうな椅子に座った、白髪頭に長く伸ばした白い髭の爺さんがいた。 「よう来たの。ようこそ、『魅惑の店 ムラタ』へ。ワシがここの店主じゃ」 「ようこそなのです!」 よく見ると、爺さんの後ろにさっきのロリロリ娘が立っていた。 「ええと、つうことは、お爺さんがムラタさんなんですか?」 「いや、違う」 「どないやねん!」 「いいか、若者よ、大人の世界というのは奥の深いものなのじゃ」 「全然奥が深くねえよ!それに、それのどこが大人の世界だ!」 「うむ、それが素人の浅はかさというものじゃ」 「いや、言ってることの意味が全然わかんないんスけど」 「ところで若者よ、この、『魅惑の店 ムラタ』には何を求めて来たのかな?」 「無理矢理話を本題に戻しやがったな。てか、何を求めるもなにも、ここは何を売ってる店なんスか?」 「うむ、魔法の品、とでも言っておこうかの」 「はぁ!?」 いや、マジで何言ってやがるんですか、このジジィ。 「この世界には、伝説のマジック・アイテムというものがある。この、『魅惑の店 ムラタ』で扱っているのは、つまりそういう品じゃな」 「えらい店の名前押すなぁ。いや、それはおいといて、マジック・アイテム?いや、あの、あそこら辺にある水晶玉なんかならともかく、そこのボロっちいテレビや洗濯機なんかも伝説のマジック・アイテムだっての?」 「もちろんじゃ」 「いや、テレビや洗濯機なんてどう見たって20世紀以降のもんでしょうが!それに、あのミニコンポも?」 「うむ、あれはカセットテープだけじゃなくて、CDも聴けるスグレモノじゃ」 「古いっ!今どきカセットテープなんてどこに売ってるんだよ!寝ぼけたこと言ってるんじゃねえぞ、クソジジィ」 「若者よ、老人は敬うものじゃ、クソジジィは感心せんな。ジジィと呼びたまえ」 「ジジィならいいのかよっ」 「うむ、それよりも、この店にあるものがいかに凄い魔法の品か聞きたくはないか、若者よ」 「あのー、俺、いちおう、ナカモト ケンイチって名前があるんスけど。漢字で書くと、こう、中本兼一と」 「うむ、ではナカモトケンイチよ」 「なんでフルネームで呼ぶんスか」 「ん、なんかつっこみに力がないぞ、ナカモト」 「いや、なんか、もうあんたのペースに慣れたというかなんというか、いちいち真面目につっこんでいたら疲れるだけなんで」 「なんと、最近の若い者は体力が無いのう」 「いや、もう、余計な話はいいから、商品の説明してください」 「うむ、それでは聞け、そして驚け」 「どっかで聞いたようなフレーズっスね」 「いちいちつっこむのはやめたのではないのか、ナカモトよ?まあ聞くがよい。例えば、このネックレスは、身につけていると、過去の失敗をやり直すことができる」 「本当っスか?」 「ただし、1回やり直すと、体の骨をひとつ失うがの」 「はい?」 「これを使って、1回過去の失敗をやり直すたびに、体の骨がどれかひとつ無くなる。まあ、人間には200個くらい骨があるというから、200回は使えるということじゃ」 「その前に死んでまうわっ!だいいち、そんなの最初の一回で背骨一個持ってかれたら、即、半身不随じゃねえか!」 「うむ、だからワシも恐ろしくて使ったことがない」 「そんな物売るなよ、ジジィ」 「で、ホレ、その横にあるブレスレットはな、身につけると指先から強力な破壊光線を出すことができるようになる」 「いや、たしかに凄いことは凄いですけど、そんな物持ってても、いち大学生が使うことないっスから」 「いやいや、持っておくと護身用に役に立つかもしれんぞい。まあ、これは、使うたびに、着ている物が全部消し飛んでしまうがの」 「なんだよ、それ!しかも、それもどっかで聞いたような話だぞ」 「さらには、その状態で1時間カクテルライトが当たり続ける特典付きじゃ」 「要らねえよ!てか、この店にはそんな物しかないのかよ!」 「まあまあ、短気を起こさずに聞くがよい。この、『魅惑の店 ムラタ』では、他には、人の心を変化させたり操ったりする道具が充実しておるな」 「人の、心を、操る道具?」 「うむ、人の心を自分の思い通りにする、これは、ある意味、人間がはるか昔から追い求めてきた力といってよいな。それこそ3丁目のノンくんから古の覇王までな」 「なんか、えらい人間の幅が広いんですが。てか、誰ですか3丁目のノンくんって?」 「なんじゃ、知らんのか?野比○び太くんのことじゃ」 「いや、それ以上言うとなんかまずそうな気がするんスけど。つーか、彼、3丁目に住んでたんですか?」 「知らん」 「……ジジィ」 「ともかく、そうやって人を自分の思い通りにする道具は、人間が追い求めた究極のマジック・アイテムといってよいのではないか」 「あんた、時々そうやって強引に話を戻すよな」 「ともかくじゃ、うちには、そういう道具がいっぱいあるでな。どうじゃ、ナカモト、お主、おなごを操って、やりたい放題したいとは思わんか?」 「まあ、否定はしません」 「正直に言わんと、これ以上説明してやらんぞ」 「はい!むしろ積極的にしたいです」 「そうであろう。そういうことができる道具がここにはあるのじゃ。ナカモト、どうせお主、童貞であろう?」 「余計なお世話だ!」 「まあ、そう言うな。しかし、落ち込むことはないぞ。ワシもお主くらいの頃には童貞じゃった」 「いや、全然嬉しくないんスけど」 「そこでじゃ、ここにある道具があれば、脱童貞などたやすいこと」 「はあ」 「それに、この手の道具は、使い方によっては、さっきのネックレスやブレスレットのようなリスクが少ない」 「というと?」 「たとえば、あそこの楽器コーナーにあるシタール。あれは、その音色で人の心を操る事ができる。あのタイプのシタールは、7本の主弦に12本の共鳴弦があるから、それを駆使すれば、より細やかに人を操ることも可能じゃ」 「ほう」 「まあ、シタールを弾くことができる奴なら、今すぐにでも使えるぞい」 「できるわけねぇだろが!だいたい、日本にシタール弾ける奴何人いるんだよ!」 「いや、結構いると思うがの。それに、ナカモト、お主が寄りかかっておるその洗濯機も、人の心を変える魔法の品じゃ」 「え、これが?」 「うむ、そうじゃ。まあ、本当に人の心を変える、という程度で、思いのままに操る、とはいかんがの」 「これで?どうやって?」 「そら、洗濯機じゃからの、洗濯をするに決まっておるわい」 「はぁ、洗濯する?」 「そうじゃ」 どこか人を喰ったような顔で頷くジジィを見ていて、俺はハッと気づいた。 「ふっ、そうか、そうだよな!」 「どうしたんじゃ、ナカモト?」 「すっかりあんたのペースに乗せられちまった。どうせ、全部嘘なんだろ。洗濯で人を操るって、そんなもんあるわけないだろ」 「何を言うか」 「いや、もういいって。ジジィ、あんたの話ちょっと面白かったけどな。ああもう、すっかり騙されたぜ。もう、俺帰るわ」 そう言って、俺が店から出ていこうとすると。 「あ、た、竹下」 「こんなところで何してるの?中本くん?」 入り口への通路を塞ぐようにして立っていたのは、同じゼミの竹下沙紀(たけした さき)だった。 「いや、こんなところに新しい店ができてたから、ちょっとな」 「ふうん、やっぱり新しい店なんだ。でも、あんたが邪魔で通れないんだけど、そこどいてくれない?」 「あ、ああ」 「まったく、こんなところで会うなんて、テンション下がるわね」 細い通路では行き違うこともできず、やむなく俺はまた店の中に戻り、竹下を通す。 俺の前を通って奥の方に入る竹下の視線が冷たい。 大学で、ガラにもなく英文科なんてとこに入っちまったもんだから、うちのゼミは8割方女子だ。で、バラ色の学生生活かというと、全然勉強ができないのと、いままでずっと男子校だったノリで、空気も読まずに下ネタ連発したりという俺の本性があっという間にばれて、今じゃ、俺はほとんどの女子に完全にバカにされている。もう、俺が教室に入っただけで、ブリザードが吹きまくっている状態だ。 その、うちのゼミのリーダー的存在が、この竹下沙紀。その美貌は、うちのゼミ、いや、大学の中でも群を抜いている。普段は栗色の髪の清楚なお嬢様然とした美少女で、笑うと、大きな瞳がクリッとして、可愛らしさと美しさを兼ね備えるという化け物だ。もし、ミス・キャンパスコンテストに出れば、まあ、間違いなく一位か一位か一位には入るだろう、といわれている。しかも、明るく社交的な性格で頭もいいときたもんだ。 まあ、うちの男どもは、一度は必ずこいつの裸を想像して夜のおかずにしたことがあるだろうという完璧な美人。しかし、その無邪気そうな笑顔に男どもの多くは騙されているが、俺は知っている。こいつは、性格がかなり悪い。この、我がキャンパスのアイドルは、女子のご多分にもれずきっちり俺のことを見下していて、しかも、人目のないところでは、俺をゴミムシ並に扱っている。 「へえ、なんか、変わった物があるのね」 俺が、ちらっと横目で窺うと、竹下は物珍しそうに店の中を物色している。 「ほほう、この店に、一日でふたりも来るとはのう。しかし、娘さん、あんたは冷やかしの客だ、ワシにはわかる」 「ねえ、中本くん、このお爺さん何言ってるの?」 竹下が、俺の方を向いて尋ねてくる。その視線は、シベリアの永久凍土よりも冷たい。 「いや、この爺さんの言うことを真に受けない方がいいと思うぞ、俺は」 「ふぉふぉふぉ、何を言うておるか、まあ、見るだけでも、ゆっくりと見て行くがよい」 「はい!お茶をどうぞ!」 ふと気づけば、あのロリロリ娘が、竹下にお茶の入ったカップを差し出している。 「あ、どうも、ありがとう」 一瞬ためらった後、カップを受け取る竹下。そりゃそうだろう、この店に、いや、あのジジィに似合わぬ女の子がいるんだから、不審にも思うわな。 「つうか、ジジィ!俺のときにはそんなサービスなかったじゃねえか!」 思わず、さっきまでの調子でつっこむと、俺の方を見たジジィと目が合う。なんだ?今、なんか、思わせぶりな目配せしなかったか?黙って見てろ、とでも言うのかよ? 「それでは、この店にある物じゃがの、ほれ、そこにあるのが…」 ジジィが店の商品について説明を始める。魔法の、「ま」の字も出てきやしない。ごく普通の骨董品的な話をしている。その流れで、そこのボロテレビや洗濯機の説明をどうするのか、ぜひ聞きたいものだ。 店の商品を見る振りをしながら、俺がそんなことを考えていると、竹下のいる方から、カララ、という音が聞こえた。 「ん、なんだ?て、おい!竹下!?」 見ると、竹下が床に倒れている。 「大丈夫ですの、割れないようにカップはプラスチック製ですから!」 なに見当違いのこと言ってんだ、このロリロリ娘は? 「いや、そういう問題じゃないだろ!」 「ふぉっふぉっふぉっ、まあ、見ておるがよい」 「見てろって、何を?」 「うむ、もうそろそろじゃの」 「だから何が?って、え?」 俺が見ていると、倒れている竹下の体から、何か浮かび上がってくる。これは、竹下がもうひとり!? 「なんじゃこりゃ!て、えええっ?」 竹下の体から浮かび上がってきた、もうひとりの竹下の体は、俺の見ている前で、空気の抜けた風船みたいにぺしゃんこになっていく。 「ど、どういうことだよ、ジジィ?」 「さっき、お主が洗濯機のことを信用してなかったからの。ちょっと使って見せてやろうとしたまでじゃ」 「なんだって?ていうか、これはいったいどういう状況だよ?」 「そりゃ洗濯するために決まっておる」 「せ、洗濯って?」 「いくらなんでも人間をそのまま洗濯するわけにもいかんじゃろ。じゃから、こうして人間の心を布状にしてから洗濯するんじゃ」 「はい?」 「今さっきこの娘に飲ませたお茶には、分離剤が入っておってな」 「ぶ、分離剤?」 「うむ、それを飲ませると、こうやって、体と心を分けることができるんじゃ。で、体から離れた心は、こんな風に、布みたいなるから、それから洗濯するんじゃよ。おい、くるみ」 「はい!店長」 この子、くるみってのか。 俺が見ている前で、ロリロリ娘が、ぺしゃんこになった布状竹下を台の上に拡げていく。それを、検分するようにじっくりと見ていくジジィ。 「ふむ、これは。ナカモト、お主たしかフルネームはナカモトケンイチじゃったの」 「そうだけど、それが?」 「お主、この娘に嫌われておるようじゃな」 「え?」 「ほれ、ここを見てみんか」 と、ジジィが布状竹下の、胸のあたりを指さす。 「えーと、あ、ここになんか書いてありますね。赤い字で、優紀ねぇ、って」 「違うわ!その下じゃ!」 ジジィの指さしたそこには、青い字で俺の名前が書いてあった。 「これは?」 「うむ、このあたりには人の好き嫌いが書いてあっての。好きな人間は赤い字で、嫌いな人間は青い字で書いてある」 「はあ」 「そこで、これじゃ」 「なんスか、それ?」 「スティック洗剤じゃ。これでこうして、この娘のお主の名前のあるところを擦ってな。よし、いいぞ、くるみ」 「はいなのです!」 ロリロリ娘、くるみが、布状竹下を丸めて、洗濯機に放り込み、スイッチを入れる。 「うわっ、何して?え?すぐ使えるの、それ!?」 「うむ、見てみよ。ちゃんと水道とつながっておる」 「あ、ホントだ、て、水道水でいいのかよ!?」 「うむ、しかも従来の製品より使用する水の量が30リットルも少ないエコタイプじゃ」 「なんだよ、エコタイプって!つーか、その従来の製品ての見せてみろよ!」 「いやいや、細かいことは気にするな、ナカモトよ」 「いや、さっきから気にするところ満載なんスけど。そもそも、客にこんなことしてもいいのかよ?」 「さっきも言ったじゃろう、この娘は冷やかしの客じゃと」 「そういえば、そんなこと言ってたような」 「よいか、この店は全ての人間に見えるわけではない、それは店がかけてるおる曲も同様じゃ」 「あの軍艦マーチが?」 「曲の内容などどうでもよいのじゃよ、ナカモト。要は、この店を見ることができて、中に入ることができる者は限られておる、ということじゃ」 「はあ」 「それでじゃな、この店に入ることができた者は、つまり、ワシと縁があったということじゃ」 「縁、ですか?」 「うむ、そして、ワシと縁があった者は、この店の商品を手に入れることができる。場合によっては、タダで譲ることもある」 「どういう商売してんだよ」 「まあ聞け。それでじゃな、たまに、ワシと縁がないのに、この店を見つけることができる奴がおる」 「それが、竹下だと?」 「そうじゃ」 「いや、だからって、こんなことしていいって理由には」 「まあそう言うな。これはお主にとっても悪い話ではない。それに、洗濯するといっても、別にこの娘の記憶が無くなるとか、性格が変わるとかいったものではない。消えるのは、スティック洗剤で擦った部分。つまり、この場合は、この娘がお主を嫌う気持ちだけじゃ」 俺が、ジジィの説明を聞いていると、洗濯機のブザーが鳴る。 「店長!脱水が終わりましたのです!」 「そうか、じゃあ、こっちに持ってきてくれ、くるみ」 「了解なのです!」 くるみが、くちゃくちゃに丸まった物を洗濯機から取り出し、台の上に丁寧に拡げていく。まだ濡れていて、ところどころ皺があるが、たしかに布状竹下だ。 「ほら、見てみるがよい。ここにあったお主の名前が消えておるじゃろう」 「あ、ホントだ」 「そして、これからこうするのじゃ」 ジジィは、赤いペンのような物を取り出し、布状竹下の胸のあたりに、俺の名前を書いていく。 「これでよし、後は、乾燥させるとこの字が定着する」 「乾燥って?」 「うむ、この洗濯機の乾燥機能を使うんじゃ」 「うそ!この、どう見ても二世代か三世代は前の型の洗濯機に乾燥機付いてるんスか!?」 「何を言うか、こう見えても最新鋭機じゃぞ」 「見えねぇ!どう見てもそうは見えねぇ!」 「まあよい。ところでナカモト。お主、この洗濯機を使いこなしてみんか?」 「はい?」 「お主にこれを譲ってもよいと言っておる」 「つーか、これ、幾らするんスか?」 「言ったじゃろうが、ワシと縁がある者にはタダで譲ることがあると」 「そういや、そんなこと言ってたっスね」 「ワシはお主のつっこみが気に入った。だから、これはタダで譲る」 「そ、そう言われても。ていうか、気に入ったのってつっこみかよ!」 「どうじゃ、この洗濯機は、人間の心だけじゃなく、普通に洗濯物も洗えるから一石二鳥じゃぞ」 「やっぱりこれただの洗濯機でしょ!凄いのはさっきの分離剤とかスティック洗剤とかで!」 「そんなことはない。ホレ、ここにちゃんと人間用と洗濯物用の切り替えスイッチがある」 「あ、ホントだ。て、そんなスイッチ付けるなよ!」 「まあ、たしかに、分離剤や洗剤が無くては、この洗濯機ではなにもできん。しかし、この洗濯機でないと、人の心の洗濯、乾燥ができんのも事実じゃ。分離剤も、あれがなければ人の心を布状にできぬが、あれはまた洗濯とは別でな。洗濯、乾燥をせずとも、いったん分離した心と体は時間が経てば元に戻る。まあ、分離させてすぐでは、心も生っぽくて、うまく体にもどらんので、少し干してからの方がよいがな」 「ナマって。それに干すって、どういうことだよ」 「まあ、そんなことはこの際関係ない。ワシはこの洗濯機に、分離剤、スティック洗剤、それに赤ペン青ペンも付けてお主に進呈しようと言うのじゃ」 「青ペンって、使うことあるのかなぁ」 「何を言っておる、これは重要じゃぞ。この青ペンを使って、恋のライバルを蹴落とす!それでこそエロ道は成るのじゃ!」 「そんなにリキんで言うことスか?それに何だよ、エロ道って?それにしても、やっぱり、タダで俺にくれるってのがわかんねぇなあ」 「縁じゃ、と言うたであろうが。それとも何か?ワシがお主を陥れようとしている悪人に見えるのか?」 「いや、こんなもん持ってるくらいだから、普通の人じゃないんでしょうけど。まあ、たしかに悪人には見えないスけど、あんたの場合、人間がいい加減そうでいまいち信用が」 「何を言うか!そこまで言うのなら、誓約書だろうが契約書だろうが証文だろうが表彰状だろう挑戦状だろうがなんでも書いてやるわい!」 「いや、いいですって!つーか、なんか変なの混じってたし」 「で、どうなのじゃ?要るのか、要らんのか?」 「はいはいはい!有り難くいただきます!」 「うむ、よろしい。ナカモト、おまえの家はどこだ?」 「このちょっと先の、国道との交差点のところの角にある3階建てのボロアパートですよ」 「ああ、あの明治の頃から建っていて、つい先日、都の文化財に登録されたという、あのアパートか」 「いや、誰もそこまで言ってませんって。だいたい、その時代にアパートってないでしょうが」 「ジョークじゃよ、ジョーク。で、部屋は?」 「あー、203号室だけど」 「わかった、では、後で届けさせよう」 なんか、結局ジジィのペースにはめられたような気がする。まあ、金は取らないって言うし。普通に洗濯機として使えるんなら貰っておくか。 「店長!乾燥も終わりましたです!」 「うむ…よし、ちゃんと赤字が定着しておる。よいか、ナカモト。人の心は変わるものじゃ。自然に浮き出た字なら、感情の変化によって赤から青に、または青から赤に変わることもある。しかし、このペンで書いて乾燥にかけた字は、ずっと変わることがない」 「と、いうことは?」 「うむ、この娘はずっとお主のことが好き、という事じゃ。まあ、見ておるがよい」 そう言うと、ジジィは、すっかり乾いた布状竹下を、床に転がる竹下の体に、ファサ、とかぶせる。すると、布状竹下は見る見る体の方に吸い込まれていき。 「ん、んん」 「おい、竹下!」 「あ、あれ、中本くん?」 起きあがって、俺の方を見る竹下。心なしか、その視線のシベリア寒気団が消えているような気がする。 「私、いったいどうしてたの?」 「あ、ああ、なんか、急に倒れてな。体調悪いんじゃないのか、竹下?」 「いや、そんなことは無いはずなんだけど」 「ま、まあ、今日は家に帰った方がいいんじゃないか?」 「うん、そうね」 「あ、じゃあ、俺送って行くわ」 そう言って、俺はちらっとジジィの方を見る。ジジィは、俺たちの方を見てニヤニヤと笑っている。ホントに竹下の奴、俺のこと好きになってるんだろうな? 「じゃあ、そういうことで、またな、ジジィ」 「ふぉふぉふぉ、いつでも来るがよいわ」 俺と竹下が店の外に出ると、相変わらず軍艦マーチがやかましく鳴り響いている。本当にこれが俺たちにしか聞こえないってのか? 「大丈夫か、竹下。家まで送ってやろうか?」 「ううん、もう大丈夫みたい」 「そうか、おまえの家って、どっちだっけ」 「ええっと、こっちの方」 「そうか、じゃあ、方向同じだからそこの角まで一緒に行ってやるよ。まあ、俺ン家はすぐそこだけど」 「ねえ、中本って」 「ん、なんだ?」 「バカで下品で最低な奴だけど、結構いい奴じゃん」 なに、それ?俺褒められてんの?「バカで下品で最低な奴だと思ってたけど」じゃなくて、「バカで下品で最低な奴」前提で、いい奴なの?てか、俺のこと好きになるって、その程度? 「あ、それじゃ、俺ン家もうそこだから」 「え、どこ?」 「そこの角の、3階建てのアパートが見えるだろ。あそこの2階の、手前から3番目の部屋」 「ふうん、あ、じゃあ、ここまででいいわよ」 あ、別に俺の部屋に寄ってくってわけじゃないのな。 「じゃあ、また」 「おう、学校でな」 俺は、交差点で手を振って竹下と別れる。そうだよな、そんな、ネットのエロ小説みたいなことあるわけないよな。たしかに、あのジジィが竹下の心を布状にして洗濯したのには驚いたけど、そうそう、人間の心なんてコロッて変わるもんじゃないよな。まあ、竹下の中で、俺が、「いい奴」になっただけでもよしとするか。 「ふう、なんか、妙に疲れたな」 部屋に戻った俺を、妙な疲労感が襲う。きっと、あのジジィにつっこみ疲れたに違いない。とりあえず、水でも飲もう。 俺が、コップに水を注ぎ、口を付けようとしたとき、部屋のベルが鳴った。ボロアパートだから、インターホンなんてものじゃない。本当にただのベルだ。 誰だ?まさか、竹下か? 俺がドアを開けると。 「毎度ありがとうございますなのです!洗濯機をお届けに上がったのです!」 そこに立っていたのは、三つ編みに大きなリボン、フリルのたっぷり付いた衣装の、あの、くるみとかいうロリロリ娘。で、その横にはあの洗濯機が。 「なに、もう来たのかよ!つうか、おまえひとりで!?」 「はいなのです!これくらい、くるみには朝飯前なのです!」 そう言うと、くるみは洗濯機をひょいと持ち上げる。こいつ、化け物か? 「で、これはどこに置いたらいいのですか?」 「あ、ああ、たしかベランダに洗濯機置くスペースがあったはずだ」 「了解なのです!」 俺が部屋の奥に行ってベランダへの戸を開けると、くるみは、洗濯機を抱えたまま後からついてくる。いや、もう、あの店に関することでいちいち驚いちゃいられねえ。 「なるほど、ここですか。じゃあ、取り付けますね!」 くるみは、ベランダに洗濯機を置くと、手際よく水道と繋げる。 「はい、これで完了なのです。あ、それとナカモト」 「俺は、おまえに呼び捨てにされる筋合いはない」 「なに言ってるんですか。くるみとナカモトの仲じゃないですか!」 「そういう仲になった覚えもない!で、なんだ、いったい?」 「そうそう、これです。これが、分離剤。こっちがスティック洗剤。で、赤ペン青ペンなのです」 くるみが取りだしたのは、さっきジジィが使ってた道具一式。 「使い方はさっき店長がやってたの見てたからわかりますよね。いちおう、マニュアルも置いときますです。あ、そうそう、分離剤は無味無臭ですけど、お茶とかに混ぜて飲ませて使うのですよ」 「お、おう」 「それにしても、ナカモトの部屋、ボロいくせに、バス、トイレ、キッチンに、部屋がふたつもあるのですね!」 「まあ、ボロい分家賃が安いからな。って、てめえ、ケンカ売ってんのか!?」 「いえいえ〜、ちょっとした社交辞令ですよ!」 「どこがだ!」 だんだんわかってきた。こいつもあのジジィと同じ人種だ。 「えーと、おまえ、くるみとか言ったよな?」 「そうです」 「ちょっと聞きたいんだが」 「なんですか、ナカモト」 「だから呼び捨てにするな!…いや、あのジジィ、いったい何者だ?」 「それは秘密なのです〜!」 「いや、秘密って」 「謎や秘密が多いほど、店長のカリスマ性が高まるのです!」 「あのジジィにカリスマ性なんてねえだろうがっ!」 「そういうのもひっくるめて、全てはミステリーなのです!」 もういい、相手にすると疲れるだけだ。 「ああ、わかったわかった。もう訊かないから。用がすんだらさっさと帰れ」 「あ〜、なんかナカモト感じ悪いのです!」 「だから呼び捨てにすんな!」 「冗談なのです〜。それでは、今後とも『魅惑の店 ムラタ』をよろしくなのです〜!」 いちおう俺にお辞儀をして、くるみが部屋を出て行く。なんか、疲労感が倍増してるんですけど。 「はあ、なんなんだよ、いったい」 俺は、こめかみを押さえながら椅子に座り、くるみの置いていったマニュアルをめくる。まあ、基本的には普通の洗濯機と使い方は変わらない。つうか、本当に乾燥機能付いてるんだな、これ。 そうして、2時間ほど経っただろうか。また、部屋のベルが鳴った。 「ん、また誰か来たのか?」 一瞬、くるみの奴が頭に浮かぶ。なんだ、なんか忘れ物か?そう思って、俺がドアを開けると。 「え、竹下?」 そこに立っていたのは、大きなバッグを持った竹下沙紀だった。 「中本くん、ここに泊めて」 「はい?」 「家出て来ちゃった。だから、ここに泊めてちょうだい」 「はあ!?」 「私も、なんでこんな事しちゃったのかわからないの!中本くんは、バカで、ろくに授業も出てないし、単位落としまくってるって噂になってるし、いっつもくだらない駄ジャレや下ネタばっか言ってて下品だし、目つきも悪くてスケベそうだし、服のセンスも悪いし、ゾウリムシ並の知能のくせにしぶとさだけはクマムシ並にありそうだし、品性下劣、性行不良、破廉恥で犬畜生にも劣る女の敵で、でもそのくせきっと童貞で、二次元世界にしか恋人のいない変態で、人間としてサイテーで、絶対にカレシにはしたくないタイプで…きゃあ!どうしたの、中本くん!?」 だ、ダメだ。もう俺は立ち上がれない。俺の心は瀕死の重傷を負ってしまった。 「大丈夫!?中本くん!?だからね!私が言いたかったのは、そんな中本くんを私は好きなの!」 くそう、あのジジィやっぱり騙しやがったな。そうだよ、竹下が俺のこと好きなるわけないじゃないか!そんなわけ!って、え?今、竹下の奴なんて言った? 「た、竹下。い、今、なんて?」 「だから、そんな、サイテーな中本くんのことが好きなの!」 「いやいやいや、どうやったらそういう結論が出てくるんだ?言ってることが完全に破綻してるぞ、竹下。おまえの論理には整合性が全く見られない。て、何やってるんだ、竹下?」 「中本くん、熱でもあるの?なんか、頭の良さそうなこと言ってる!そんなの、私の知ってる中本くんじゃない!」 そう言って、俺の額に手を当てる竹下。つうか、何でそこまで言われなきゃならねえんだ? 「竹下っ!てめえもケンカ売りに来たのか!ナメたこと言ってるとどつくぞ、コラ!」 「そうそう!そういう中本くんを好きなのよ!」 「わけがわかんねぇ!」 「そういうわけで、泊めてちょうだいね、中本くん」 「いや、だから!」 「なによ、学校のアイドルの私が泊めてって言ってるんだから、ゴミムシの中本くんはおとなしく私を泊めたらいいのよ!」 「だから言ってることのわけがわかんねえよ!」 「だから、そんなゴミムシの中本くんが好きって言ってるじゃない!」 「うがあっ!」 状況が理解できず、俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。 「あれ、食べないの、中本くん?」 結局、なぜか俺の部屋で、差し向かいで飯を食う竹下と俺。 「うん、ちょっと食欲がな」 「え〜、そんなぁ。繊細ぶるなんて中本くんらしくないよ」 もうつっこむ気も起きねぇ。どうやら、竹下が俺を好きになったのは間違いないようだ。しかし、問題なのは、相変わらず竹下が俺を見下したままで、しかも、俺を好きな理由というのが、まさにそこにあるという点だ。 「それにしてもここ、ホントにボロアパートで、部屋の中も汚くて、私の想像通りでもう最高」 「ああ、さいですか」 「やだ、中本くんのくせに拗ねてるの?」 そう言って、手を叩いて笑う竹下。間違いない、たしかに、俺の目の前にいるのはあの竹下だ。それが、見ているだけで目眩がしそうなほどの笑顔を俺に向けている。でも、言ってることは無茶苦茶だ。 「さてと、ご飯も食べたし、お風呂に入ろっか?」 「おう、じゃあ、先に入ってこいよ」 「え、なに?一緒に入りたくないの?」 「いや、それはまずいだろ。いいから先に入ってこい」 「やだ、なにいい人ぶってるの、中本くん?」 「うわっ!そんなところで服脱ぐな!風呂はあっちだからとっとと入ってこい!」 「はいはい〜」 はあ、どういう状況だよ、これ。まさか、竹下が俺を好きになるってのがこういうこととは。もうここまでくると、性格が良いのか悪いのかすらもよくわからんが、いや、決して良くはないが。 ジジィ、竹下のこの性格もどうにかしてくれ。 「じゃあ、今日は中本くんと一緒に寝るね」 「は?」 「だって、ベッドも掛け布団もひとつしか無いじゃない」 「いや、毛布があるし、俺は隣の部屋で」 「なによ〜、スケベの中本くんらしくない。それとも、童貞でオクテ過ぎて、一緒に寝るのが怖いの?」 いくらなんでもひどくないか?性格悪いのは前から知ってたけど、ここまで無茶苦茶言う奴じゃなかったぞ。それとも、口に出さなかっただけで、心の中ではそう思ってたのか? 「もう、私が一緒に寝てあげるって言ってるのよ。スケベ童貞の中本くんとしては願ったり叶ったりじゃないの。さあ、早くこっち来て」 しかも、時折見せるこの女王様気質ときたもんだ。 「うふふ、中本くん」 灯りを消した真っ暗な部屋の中、俺に体をすり寄せてくる竹下。 「なんだよ、おとなしく寝ろよ」 「ね、中本くん、エッチしよ」 「な、何言ってるんだよ!?」 「またまたそんなあ〜。中本くんもしたいんでしょ?」 本来なら、あの竹下と同じベッドで寝てるんだから、童貞卒業の好機であるはずだ。しかし、今日起きたことがあまりに現実離れしていて、俺の中でまだ消化しきれていない。 「もう〜、スケベな中本くんらしくもない〜。まあ、童貞なんだからしょうがないよね」 その気になれない原因のもうひとつはこれだ。俺は、もっと甘々なのが良かったのに。あのジジィ、道具で女を操って好き放題って言ってたけど。これは全然俺の好き放題じゃないだろ。 「ほら、やっぱりこんなに大きくなってる。もう、中本くんのスケベ〜」 「うわ、おい!竹下!」 竹下が、トランクスの中に手を伸ばして俺のチンポを握る。しかも、俺に密着した竹下の体の感じ、裸じゃねえか? 「た、竹下、おまえ、いつの間に服脱いで!?」 「だって、これからエッチするんだもん、当たり前じゃない」 「て、こら」 「ああ〜、そうかあ、中本くん童貞だからやり方わからないんだよね?大丈夫、私が教えてあげるから」 そう言って、竹下は、俺のチンポを手で扱き続ける。 「ほらぁ、どんどん大きくなってる。じゃあ、そろそろいいかな」 俺に体をくっつけていた竹下が、起きあがる気配がする。そして、俺の腰を、竹下のふとももが挟む感触。 「あ、ちょ、竹下」 「じゃあ、いくね、中本くん」 俺のチンポが、また握られると、チンポの先が、何かに触れる。 「ん、あふぅ」 そして、俺のチンポが、暖かくて湿ったものに包まれ、俺は、自分の童貞が旅立ったことを知る。 さらば青春の光、じゃない、さらば俺の童貞、もう二度とおまえに会うことはないだろう。まさかおまえも、キャンパスナンバーワンの美人に逆レイプされて旅立つことになるとは、想像もしなかっただろうに。 「ぐ、あ、た、竹下!」 「あん、中本くんの、大きいっ」 俺が童貞喪失の感慨に浸っている間も、竹下が俺のチンポを奥まで飲み込んで、ズンズン動く感触が伝わってくる。お、女のアソコってこんなに気持ちいいのか?なんか、暖かくてヌメッとしたものが俺のチンポ全体を刺激して、とんでもない快感が走る。 「ああ、いいよっ、中本くんの、すごく大きくて気持ちイイっ!タクヤのよりも、マサルのよりも、ショウタのよりも、ノリアキのよりも、ヒロトのよりも、タカシのよりも、コウヘイのよりも、ずっとずっと気持ちイイのっ。ん?あれ?ちっちゃくなってる?どうしたの、中本くん?気持ち良くないの?」 いや、竹下、おまえのアソコはとても気持ちいいよ。でも、俺を萎えさせたのは、おまえの言葉だ。つうか、どれだけやりまくってんだよ、おまえ? 「ねえ、中本くん、私も頑張るから、中本くんももっと頑張ってよ」 俺の腹に竹下が手をつくのがわかる。すると、俺のチンポへの刺激が、どんどん強くなっていく。童貞卒業若葉マークの哀しさで、俺のチンポはまたどんどん大きくなっていく。 「んふう、あ、また大きくなってきてるっ。中本くんも気持ちイイのねっ。わ、私も気持ちイイよっ。あんっ」 「んっ、くうっ、ああ、竹下!」 俺のチンポが限界まで大きくなり、竹下のアソコの中の感触がダイレクトに伝わってくるような気がする。暖かい襞が俺のチンポを包み込むような感触。そこには、俺の知らない世界があった。童貞卒業若葉マークなんて言ってすみません、俺はまだ仮免教習中です。路上に出たばっかりです。まだひとりではどこにも行けません。 「ぐあっ、た、竹下!」 「ああっ、イキそうなのね、中本くんっ。いいよっ、来てちょうだい」 哀しいかな、俺はあっという間にイってしまう。 「あんっ、中本くんのがいっぱい出てるっ、ふああっ、あああっ」 思いっきり中に出してしまったことに一抹の不安はあるが、そもそも、その選択権は俺にはない。 「あ、んん、ちょっと早かったけど、すごくいっぱい出て、よかったよ、中本くん」 俺の体に、柔らかいものがのしかかってきて、俺の耳元で、竹下が囁くのが聞こえる。 「まあ、童貞だったんだから、早いのはしょうがないよね。でも、それは、これから私とたっぷり練習しようね。ん、くちゅ」 「んむむ!」 俺の顔が、竹下の手に挟まれ、口の中に何か暖かい物が入ってくる。噂には聞いていたが、これが舌を入れるってやつか? 「ん、ちゅ、んふう…それと、中本くん」 童貞喪失の次は、唇の純潔も失った俺に、竹下が甘く囁く。 「た、竹下?」 「中本くんのこと、ケンちゃんって、呼んでいい?」 「ケンちゃん?」 「だって、中本くん、兼一でしょ?だから、ケンちゃん」 「あ、ああ」 「じゃあ、ケンちゃん、私のことは沙紀っ呼んで」 「竹下?」 「ダメ、沙紀って呼んで」 「沙紀?」 「んふ、ケンちゃん。ほら、ケンちゃんのここ、また大きくなってるよ。これでもう1回できるね」 「さ、沙紀?」 「もう、タクヤもマサルもショウタもノリアキもヒロトもタカシもコウヘイも、みんな1日に2回や3回は軽くしてたんだから、ケンちゃんもできるって!」 いや、だから、そういう比較やめてくんないかな。 「ほら、ケンちゃん。ん、あふう」 俺のチンポがまた暖かい物に包まれていき、竹下の喘ぎ声が聞こえてきたのだった。 翌朝。 「ん?」 目が覚めた俺の目に飛び込んできたのは、女神のような竹下の寝顔。 「ん、んん!?」 そして、視線を下に向けると、本当にギリシャの女神像のように、何ひとつ身につけていない。昨日は部屋が暗くてよくわからなかったが、その、ほっそりとした体に不釣り合いな、大きめの乳房に、なめらかそうな肌。昨日の、俺の体に触れたあの柔らかな感触が甦る。しかも、その胸の上にあるのは、いかにも無垢な乙女のような寝顔。 こんなものがこの世にあっていいのか?いや、少なくとも、俺の部屋にあっていいわけがない。きっと、これは夢だ。そうだよ、昨日あったことは、どれもこれも現実離れしすぎている。きっと全部夢だ。もう一度寝て、目が覚めたら、俺はひとりでこの部屋に寝ているんだ。もちろん、童貞喪失なんかしているわけがない。よし、もう一度寝よう。 俺は頭から布団を被る。 「ん、起きたの、ケンちゃん?」 なんか、竹下の声が聞こえたような気がした。いや、しかし、これは夢のはずだ。 「ねえ、起きてるんでしょ、ケンちゃん」 声とともに、俺の体を揺さぶる感触。しつこいぞ。これは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だ。 俺は、なんとか寝ようとする。 「もう、ケンちゃんったら」 なにか、ごそごそ動く感触。そして。 「うっ」 俺のチンポに刺激が走る。アソコほどではないが、かなりの快感だ。おもわず、俺が掛け布団をどけると。俺のチンポをしゃぶっている竹下と目が合う。 「あ、おはよ、ケンちゃん」 「な、何してるんだ?」 「ケンちゃんがすぐ起きないから悪いのよ」 「た、竹下?」 「もう〜、沙紀って呼んで」 「さ、沙紀?」 「ちょっと待って、先にこっち終わらせるから」 そう言うと、竹下はまた俺のチンポをくわえ込む。 「あっ、さっ、沙紀!?」 「んっ、んふ、くちゅ、じゅる、ちゅ」 竹下が大きく頭を動かして俺のチンポを口で扱く。さっき、アソコほどではないといったが訂正しよう。こいつの口は、アソコ並に強烈だ。 「んんっ、ちゅるる、んふ、んっ、んっ、んっ」 「あっ、あああっ!沙紀!」 「んんんんっ、ん、くちゅ、こくん…ふう、ケンちゃん、ホントに早いよね」 またもやあっという間にイってしまった俺の精液を、竹下は喉を鳴らして飲み込む。 「あ、沙紀…」 「でも、今まで飲んだ誰のよりも、ケンちゃんのは濃くて美味しいよ」 だから、リアルにげんなりすることを言わんでくれ。 「ほらほら、ケンちゃん、学校行くよ〜」 服を着た竹下が、俺を促す。 「あ、んん〜」 おれは、まだいまいちこの新しい生活のリズムに慣れていない。つうか、昨日の今日で慣れるわけがない。 「なあ、沙紀〜、もうちょっと後でもいいんじゃないか?」 「もう、そんなんだからケンちゃんは単位落としまくるのよ。バカでダメ人間でゴミムシでも、留年するとめんどくさいんだから。ほらほら、早く服着て」 やっぱり目線はそうなのな。そうだ!早めに出て、竹下のこの性格をなんとかするようにジジィに文句言ってやろう。どうせ、昨日のジジィのあの目、あれは確信犯の目だ。あのジジィ、こんな事になるのがわかってたに違いない。 「ほらほら、ケンちゃん早く」 「わかったわかった。すぐ行くよ、沙紀」 そして、学校に行く途中でジジィの店の前を通ると、あの看板はもちろん、店の入り口さえもなくなっていた。 「な、なんじゃとう!?」 「どうしたの、ケンちゃん」 「いや、おまえも昨日いただろう、ここにあったあの店、跡形もなくなってる!」 「あ、そういえばそうだね。でも、あんまり流行ってなさそうだったし、潰れちゃったんじゃない?」 「いや、昨日の今日だぞ、そんなわけあるか!?」 だいいち、あの店は流行らないから潰れるとか、そんな店じゃない、絶対に。 逃げやがった。 あのジジィ、こうなるのがわかってて、逃げたに決まってる。 「くそうっ!出てきやがれっ、ジジィッ!」 俺は、店のあったあたりに立ち、大声で叫ぶ。 「なにやってんの、ケンちゃん?ホンットにケンちゃんて、バカで変人だよねぇ」 「くそーっ!ジジィーッ!」 俺の叫び声と、手を叩いて笑う竹下の笑い声だけがあたりに響いていた。
|