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T 広告活動―2010年度に実施した公共広告キャンペーン
2010年度の活動もそろそろ終盤に入りかけた矢先に、東日本大震災という未曾有の大惨事に見舞われました。前年の総会で審議・了承いただいた事業を粛々と推進してまいりましたが、3月中旬よりいくつかの方針変更をいたしましたので、ここにご報告いたします。
社団法人ACジャパンとして再出発して2年目となる2010年、公益社団法人申請をすませ、年明けの2011年1月に認定の答申をいただきました。これにより2011年度4月から、あらためて公益社団法人としての活動をスタートしております。今後は気持ちも新たに、組織の拡充を目指してまい進します。
2010年度キャンペーンでは、引き続きヒューマニティに訴えるキャンペーンを展開しました。「共感という鍵で、心の扉を開こう」というスローガンのもと、23のキャンペーンを全国各地で展開、テレビ、グラフィック広告のすべてに「民間の広告ネットワーク ACジャパン」というCIをつけ民間組織であることを強調しました。
2011年3月11日、2011年度のキャンペーンのための全国審議会が銀座電通ビル8階会議室で開催されました。そのさなかに、大地震は勃発したのです。すぐに一般の広告は姿を消し、メディアにはACジャパンの広告が溢れました。この異例な状態の中で、ACの広告に対するさまざまな苦情が電話・ファクスで寄せられるようになり、大混乱となりました。
【全国キャンペーン】
本年度の全国キャンペーンでは、3つの広告を展開いたしました。前年に引き続きオリエンテーション段階でテーマ設定をあえてしませんでした。クリエイターが普段問題として捉えていることを提案してもらい、表現的にも訴える力があると判断された以下の提案が選ばれ、メッセージが全国に届けられました。
全国キャンペーンの「あいさつの魔法」キャンペーンは、子どもに訴えるスタンスが功を奏して幼稚園、小学校からの素材貸し出しの引き合いが多く、久々に手ごたえがありました。「見える気持ちに。」についても同様に、教育の場で引用したい旨の相談が多くありました。これらの全国キャンペーンに対しての非難は比較的数少なく、4月の時点では中断という事態は免れています。
- 挨拶の励行
- あいさつの魔法
- 思いやりの気持ち
- 見える気持ちに。
- 子どもとのコミュニケーション
- あなたの手当て
【地域キャンペーン】
キャンペーンテーマは地域が独自に設定します。今年度も地域色豊かなキャンペーンを8地区で展開しました。このうち、古典相撲の精神を取り上げた中四国の「思いやりも、日本の国技に」は日本相撲協会の不祥事により、一部のメディアが自主的に取り下げました。
- 北海道/ 北海道のためにできること
- 見方を変えよう。
- 東 北/ 地域活性
- 誇ろう! ふるさとの元気。
- 東 京/ コミュニケーション
- こだまでしょうか。
- 名古屋/ 生物多様性を知ろう
- 里山のばっさまに学ぶ
- 大 阪/ ボランティア
- ボランティアは生涯現役
- 中四国/ 思いやリ
- 思いやりも、日本の国技に。
- 九 州/ 自転車運転マナー
- 自転車も車です。
- 沖 縄/ 青少年の育成
- いちばんの栄養は家族です。
【支援キャンペーン】
以下の9団体を支援しました。新たな支援団体としては「国連UNHCR協会」「あしなが育英会」の2団体。「日本対がん協会」が復活しました。「WFP国連世界食糧計画」「結核予防会」「こども未来財団」は支援をいったん休止いたしました。
震災は支援キャンペーンに大きな影響を与えました。非常時を意識して作られていない表現に違和感を覚えると言う声が多く、それを受けて、子どもの夢を描く「日本アイバンク協会」、親を亡くした子を支援している「あしなが育英会」、ゴミの分別をテーマにしている「3R推進団体連絡会」、断層を連想させる「文字・活字文化推進機構」、生死の境目というコピーのある「国境なき医師団」などを期中中断とせざるをえなくなりました。
さらに、広告素材が少なくなってきたために同じものが繰り返し使われることになり、これによる批判が急増、異例のサウンドロゴのカットで対処しました。その後、残った「日本脳卒中協会」「日本対がん協会」のCMの露出頻度がさらに増したことでこれらも結局中断せざるをえなくなりました。
- 日本脳卒中協会
- オシムの言葉
- 国境なき医師団
- 国境を越えた医者
- 3R推進団体連絡会
- ちょっとだけバイバイ
- 日本心臓財団 (グラフィックのみ)
- AEDは話します。
- 日本アイバンク協会
- 子供たちが描いたもの
- 文字・活字文化推進機構
- 知層
- 日本対がん協会
- 大切なあなたへ
- 国連UNHCR協会
- 難民のふるさと
- あしなが育英会
- ありがとう あしながさん
【臨時キャンペーン】
東日本大震災を受けて、被災地への応援、生活者の心構えなどをテーマに、ACジャパンとしての臨時キャンペーンを立ち上げました。地震発生の翌週すぐに、全国の広告会社から提案をうけ、臨時委員会で検討・選考、第一弾は震災後一週間で放映・放送にこぎつけました。「みんなでやれば、大きな力に。」篇、「日本の力を、信じてる。」篇を全国展開、支援キャンペーンの多くが中断したために、それに代わる素材をというメディアの要望に応えました。広告会社には無償に近いボランティアの要請に迅速に応えていただきました。
- みんなでやれば、大きな力に。
- 文字篇A・B(テレビ・ラジオ)
タレント篇A・B(テレビ・ラジオ)
サッカー篇(テレビ・ラジオ)
- 日本の力を信じてる。
大阪地域 - タレント篇C・D(テレビ・ラジオ)
できる支援を、ひとつひとつ(新聞)
選手宣誓/ ひとつひとつ(新聞)
こいのぼり(テレビ・ラジオ)
生き物(テレビ)
- 東京・東北(一部)地域
- 同じ空の下(テレビ・ラジオ)
【AC・NHK共同キャンペーン】
今年度もACジャパンとNHKのCM交換方式による共同キャンペーンを実施しました。ACからは全国キャンペーン「あいさつの魔法」「見える気持ちに」を提供し、NHKからは「命のかげ」の提供を受けましたが、「命のかげ」も、「いのちが消える」というコピーを含んでいるために、期中中断することになりました。
- 生物多様性 NHK制作
- 命のかげ
- 挨拶の励行 AC制作
- あいさつの魔法
- 思いやりの気持ち AC制作
- 見える気持ちに。
【公共広告CM学生賞】
第6回公共広告CM学生賞に参加した大学は25校、作品数は大幅に前年より増え151点となりました。厳正な審査の結果、グランプリは東京藝術大学の「つられ迷惑」篇が獲得、BS民放賞には文星芸術大学の「ミレーのゴミ拾い」篇が、そのほか部門賞4賞、優秀賞が11作品選ばれ、グランプリ作品がBS民放8社で現在放送されています。
- グランプリ 東京藝術大学
- つられ迷惑
【マスメディア以外の広告活動】
交通媒体ではJR、私鉄、地下鉄駅の電飾看板、車内中吊りをはじめ、駅コンコースでの連張りポスターの掲示などを実施しています。また、デジタル・サイネイジと呼ばれる電子広告媒体の活用他、シネアドも実施しています。
U 調査活動について
「公共広告に関する生活者調査」を、前年に引き続き2010年6月にインターネット上で実施しました。一般生活者3000人に対して行われたアンケートで、ACジャパンに対する認知度、期待度などのほか、ACのキャンペーン・テーマに関するデータが得られ、これを2011年度のテーマ設定のための資料としました。同時に得た広告表現についての評価データも今後の広告制作の中でいかすことができます。例年行なっている「会員社アンケート調査」についても、同様にWeb上で行ないました。
【2011年度全国キャンペーンのテーマ選定について】
2011年度全国キャンペーンのテーマ選定の調査の中から、「今後、ACが社会に訴えていくべきもの」と「個人的に取り組みたいもの」という項目に関しての上位8テーマは下記のとおりです。
ACが社会に訴えていくべき | 個人として取り組みたい | ||
(上位8テーマ) | (上位8テーマ) | ||
思いやり・助け合い | 67.6% | 思いやり・助け合い | 73.3% |
公共マナーの低下 (喫煙・携帯電話・車内マナー等) |
66.2% | 公共マナーの低下 (喫煙・携帯電話・車内マナー等) |
70.3% |
いのちの重み | 64.1% | 感謝の気持ち | 69.1% |
自然保護 (環境汚染/生態系破壊) |
57.1% | 省エネ | 62.1% |
感謝の気持ち | 57.0% | リサイクル | 58.3% |
省エネ | 51.5% | いのちの重み | 57.7% |
リサイクル | 49.0% | もったいないの精神 | 56.5% |
地球温暖化 | 48.7% | 自然保護 (環境汚染/生態系破壊) |
51.4% |
【2009年度に実施したすべてのキャンペーンの接触状況と評価】
2009年度に実施したすべてのキャンペーン作品の接触状況(見たことがある・見たような気がする)、評価(非常に良い広告だと思う・まあ良い広告だと思う)、行動喚起率(行動を起こしたいと思った)は表の通りです。
地域キャンペーンの調査対象者は該当地域居住者です。
キャンペーンテーマ | 作品タイトル | 使用媒体 | 認 知 |
評 価 |
行 動 喚 起 率 |
|||||||
テ レ ビ |
ラ ジ オ |
新 聞 |
雑 誌 |
ポ ス タ | |
電 飾 看 板 |
イ ン タ | ネ ッ ト |
||||||
全 国 |
親子のコミュニケーション | きちんとしかろう | ○ | ○ | ○ | ○ | 81.2% | 87.8% | 13.6% | |||
命の大切さ | あなたでいいのだ。 | ○ | ○ | ○ | ○ | 74.9% | 75.1% | 6.0% | ||||
老親との会話 | ごきげんうかがい | ○ | ○ | ○ | ○ | 72.6% | 83.2% | 11.6% | ||||
広報 | ACジャパンの公共広告 | 公共広告を あきらめない。 |
○ | ○ | 24.0% | 50.2% | 2.9% | |||||
NHK 共 同 |
地球温暖化防止 | ぱなしのはなし | ○ | 85.0% | 86.0% | 32.0% | ||||||
地 域 |
北海道: 北海道を元気にするために、今なにが必要か |
北海道のない日本 | ○ | ○ | ○ | 67.8% | 73.6% | 7.3% | ||||
東北: 防災コミュニケーション |
いつもの挨拶だって、防災になる。 | ○ | ○ | ○ | 70.3% | 86.9% | 13.0% | |||||
東京: 社会・モラル |
モラルの低下に サイレンを。 |
○ | ○ | ○ | 67.8% | 80.1% | 5.5% | |||||
名古屋:おもいやり | 先生は、腕のなか。 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 49.0% | 80.8% | 4.4% | |||
大阪:マナー・モラルの向上 | ルールブックには ないルール |
○ | ○ | ○ | 78.6% | 84.4% | 16.0% | |||||
中四国: 人と人との思いやり |
「いつも」の人に 「いつも」から、 はじめよう。 |
○ | ○ | ○ | 59.8% | 76.1% | 19.7% | |||||
九州: 飲酒運転をなくそう |
飲酒と運転は別々に。 | ○ | ○ | ○ | 60.1% | 81.7% | 12.0% | |||||
沖縄:沖縄をよくしよう | 子供達の睡眠を 奪わないで下さい |
○ | ○ | ○ | 85.6% | 83.0% | 22.0% | |||||
支 援 |
WFP国連世界食糧計画 | hopeを消さないで | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 70.1% | 84.6% | 14.5% | |
日本脳卒中協会 | 脳卒中の症状か。 ただの疲れか。 |
○ | ○ | ○ | ○ | 76.7% | 82.1% | 6.7% | ||||
結核予防会 | 立ち止まって 考えてみよう。 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 77.6% | 81.7% | 5.2% | |||
日本脳卒中協会 | 脳卒中の症状 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 69.9% | 65.3% | 25.5% | |||
国境なき医師団 | 生死の境目 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 74.2% | 87.6% | 13.4% | |||
3R推進団体連絡会 | リサイクルの夢 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 58.3% | 83.0% | 18.4% | |||
日本アイバンク協会 | 最後の親孝行 | ○ | ○ | ○ | ○ | 62.4% | 83.6% | 11.0% | ||||
文字・活字文化推進機構 | コトバダイブしよう。 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 46.3% | 41.9% | 4.3% | |||
こども未来財団 | ママも1歳。 パパも1歳。 |
○ | ○ | ○ | 22.7% | 51.3% | 5.3% | |||||
日本心臓財団 | 高校球児を救った AED |
○ | ○ | ○ | 20.2% | 67.0% | 5.8% |
V 広報活動について
広報の活性化は、広告素材の品質向上と合せて、AC活動の目指すところです。ACの素顔を知ってもらうための重要な活動と位置づけ、本年度も数々の施策に取り組みました。 新聞とラジオ媒体による広報広告「おせっかい」篇を全国展開し、ACジャパンの想いを伝えました。
- 広報広告
- おせっかい(ラジオ・新聞)
また広報誌「ACレポート」を旬刊で刊行し、調査およびキャンペーン計画提案、オリエンテーション、審議過程の詳細情報などを、会員社へ知らせました。本年度も、ACの歴史と組織の概要、過去現在の作品集をまとめたDVD「AC2010」を制作、合せてその英語版を同時制作、海外からの問い合わせに対応しました。
講演活動を各地で行いました。東京大学、日本大学芸術学部、法政大学、目白大学、東京藝術大学などでの講演活動のほか、韓国ソウルでの国際公共広告祭(11月)にも出席、日本の環境広告についての講演をしました。
今年は、キャンペーンに関するポスターや、DVDの提供を学校、地方自治体などから求められることが一段と多くなりました。中央官庁からの協力依頼、たとえば法務省保護局からの支援要請などにも対応しました。
W 公益社団法人申請
公益社団法人の認定申請は関係官庁や専門家の方々のご意見、ご指導を仰ぎながら2010年11月に申請を済ませ、2011年1月21日に無事、委員会から認定の答申が出ました。3月22日に認定の処分が行われ、その後登記手続きなどを済ませた上で、4月1日より正式に公益社団法人としての活動がスタートしています。