■2

次のターゲットが定まった。
相手は地球連邦政府が密かに進めていたプロジェクトの試作機だ。
こちらに入っている情報によれば機体名は『バルゴラ』。
かつては3機存在した、と情報にある。
戦闘記録によれば、1機は既に撃墜されており、もう1機は行方不明。
そして…
残された最後の1機は軍務から外れて単独で行動をしているようだ。

これは期待できるかも知れない。
俺の勘がそう告げていた。



しかし、期待に反して接触より2分程度で戦闘は終了した。
結果だけ見れば…、いつもと変わりはない。
だが大切なのは戦闘結果ではない、有能な素材であるかどうか。
その点では大きな収穫があった。

このターゲットの動きは実に素晴らしかった。
多少積極性に欠ける動きではあるが、
圧倒的な戦況においても変わらない丁寧で適格な行動。
武装解除を目的とした手足狙いの攻撃は回避を得意とする
俺の動きをことごとく捉え、武装はほぼ無効化された。
スパーク・トピードーによる奇襲によって、辛うじて倒せたが
この武装のデータが向こうにあれば、間違いなくこれも封じられていただろう。

もし、この機体のパイロットが本気で俺を殺しに来ていたのならば。
積極的な攻撃性を持って撃墜目的のみで動いていたのならば。
俺を撃ち落す事も出来ただろう。

これは光るかもしれない。
そう判断した俺は機体ごと、そのパイロットを回収したのだった。



程なくして、例の機体のパイロットが尋問室につれてこられる。
『お前があの機体のパイロットか?』
「…」


俺は一瞬息を飲んだ。
この女性があの機体のパイロットだったのか…
整った顔立ち、澄んだ瞳に美しく艶のある長い髪。
女性らしい豊かな膨らみを持つ胸と細く華奢な体。
しかし表情は悲壮感で曇り…、より彼女を美しく魅せている。

その様相は『乙女』という言葉がピタリと似合う。
本当に彼女は戦場に立っていた兵士なのだろうか?

『まずは名前から聞かせてもらおう。
 言っておくがお前は捕虜だ、黙秘権は無い』

「……セツコ。セツコ・オハラ…です。階級は…」
『おっと、地球での階級などここでは何の意味も持たん。
 それより、お前に聞きたい事がある』

「?」
『なぜ、お前はあの時、俺のコックピットを狙わなかった?
 あの最後の一撃が手元の武器狙いでなかったら、
 今頃お前はここで捕虜の立場に甘んじていなかっただろうに』


そうだ。
彼女が放った攻撃は、レーザーブレード、オルガキャノンに焦点が絞られ、
決して胴体部分に向けられる事はなかった。
それがもし、コクピットにのみ向けられていたとしたら…
今俺はここにいなかっただろう。
…なぜ、彼女は異星の侵略者である俺に手加減をしたのか?

「それは……」
『言えないのか?』

「…命を奪う事は出来ない…から。
 もう、私の目の前で誰かの命が消えるのを見たくなかったから」


…それが彼女の答えだった。
悲しげに揺れる瞳が、もう誰も傷ついて欲しくないという想いを
言葉なき声で語っている。
そう、彼女は美しい姿に見合う清らかな心を持ち合わせている。
だがそれは、俺にとって理解し難い感情でもある。

『なるほど、崇高な博愛の精神だな。
 だが、そんな感情は戦場において何の役にも立たない。
 余計な感情は迷いを産み、結果として敗北を招くのだ』

「!!それでも…私は!……貴方にはわからない」


一瞬、悲しげに伏せられていた瞳に強い感情が走った。
彼女が隠し持っている強い意志、それを感じさせたが…
すぐにまた顔を伏せてしまった。


…面白い、面白い素材を手に入れた!
俺は自分が久しく忘れていた高揚感に心が躍るの感じていた。

セツコ・オハラ。
彼女は清らかで美しい心と魅惑的な外見を持ち、
更には暗褐色に揺らぐ強い想いも同時に持ち合わせている。
それに加えて潜在能力は、おそらく本人が思ってる以上に高い。
十分に俺の背中を任せられるレベルだ。


この美しい女を身も心も俺の専属の兵器に生まれ変わらせる。
その心を、意志を全て俺の色に染め、俺の為だけに存在するシモベにする。
いつでも手元に置いておきたい、そう思えたのは彼女が始めてだ。
フフッ、どうやら俺はやっと欲しい逸材に巡り合えたようだ。


やっと、この任務が面白いと思える展開になってきたじゃないか。
 


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