東日本大震災の大津波で170人以上が犠牲になった仙台市若林区荒浜地区。市が9月に公表した復興計画案では、住宅の新・増築が原則禁止される区域になった。住み慣れた土地や家から引き離される上、集団移転で多額の費用負担も強いられる恐れがある住民は不安を募らせている。【堀智行】
若林区の公園にある仮設住宅。「お父さん、買ってきたよ」。佐藤和弘さん(43)の長女海里(かいり)さん(12)と次男晄助(こうすけ)君(11)がレジ袋を提げ、お使いから帰ってきた。佐藤さんが「よし、やるか」と台所でフライパンを握る。ウインナーと卵焼きの夕飯ができた、が、ご飯を炊き忘れている……。妻久美さん(当時42歳)のいない生活も半年を過ぎた。
長男弘輝さん(14)も含め家族4人は震災発生時それぞれ仕事場や学校にいて、ヘリコプターに救助されるなどして助かった。久美さんは市内でパート中だったが、自宅近くで遺体で見つかった。一家は親類宅や避難所を転々として6月、仮設住宅に入った。
荒浜地区は約980世帯の大半が流失。海から約100メートルにあった佐藤さんの自宅も基礎しか残っていない。「荒浜は古里だけど、家や妻を流された土地」。亡妻に託された子どもたちを、危険にさらすわけにはいかないと考えている。
集団移転は、住民が住み慣れた土地を売り、移転先の土地を買って自宅を建てる仕組み。その差額は現状では全額自己負担になる。
佐藤さんは、津波で仕事道具を流され一時中断していた配管工の仕事が、ようやく少しずつ戻り始めたばかりだ。自力で自宅を再建するのは難しい。「せめて子どもたちに土地を残してやることはできないのか」とため息をついた。
毎日新聞 2011年10月7日 12時15分(最終更新 10月7日 12時20分)