一時帰宅:原発3キロ圏内も容認 準備区域は9月にも解除

2011年8月9日 20時51分 更新:8月9日 21時35分

原子力災害対策本部の会合の終わりにあいさつする(左から)菅直人首相と海江田万里経産相、細野豪志原発事故相=首相官邸で2011年8月9日、藤井太郎撮影
原子力災害対策本部の会合の終わりにあいさつする(左から)菅直人首相と海江田万里経産相、細野豪志原発事故相=首相官邸で2011年8月9日、藤井太郎撮影

 政府は9日、首相官邸で原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)の会合を開き、これまで認めていなかった東京電力福島第1原発から半径3キロ圏内の地域への一時帰宅を認めることを決めた。放射線量などを調査した上で8月中の開始を目指す。半径20~30キロ圏内の「緊急時避難準備区域」についても、区域内の5市町村が今後1カ月程度でまとめる「復旧計画」の策定を受け、9月にも一括して指定を解除する方針を決めた。また、8月中に原発周辺区域の除染に関する基本方針をまとめる。

 3キロ圏内の一時帰宅の対象世帯は、双葉・大熊両町の計約460世帯。既に実施している他の地域と同様に、自宅での滞在時間2時間以内、などの条件を課す。

 緊急時避難準備区域は、区域内の放射線量が低いことや、経済産業省原子力安全・保安院がまとめた原発の安全確保状況の報告を参考に解除を決定。保安院は原発施設内での水素爆発の可能性が低く、原子炉への注水が長時間中断した場合でも20キロより遠い地域への放射線の影響が少ないなどとした。

 今後、各市町村が▽学校・病院などの公的サービスの再開▽上下水道など公的インフラの復旧▽グラウンドなどの除染--の見通しや、計約2万5800人の避難住民の帰宅時期を盛り込んだ「復旧計画」を策定し、出そろった段階で同本部が一括解除を決める。

 ただ、全町村避難に近い広野町・川内村、多くが帰宅した南相馬・田村両市、対象が約10人の楢葉町と実情はさまざまで、実際の住民の帰宅時期は異なる見通し。政府はそれぞれの実情に合わせて支援にあたるとしている。

 また、同本部は、立ち入りが禁止されている20キロ圏内の「警戒区域」や、年間被ばく線量が20ミリシーベルトを超える「計画的避難区域」についても、原子炉の冷温停止が目標の「ステップ2」終了後に見直しを進めることを決めた。ただ、同本部が9日にまとめた文書では今後の調査で「極めて高い(放射)線量などで相当長期にわたり住民の帰還が困難な区域の存在も明らかになると思われる」としている。【笈田直樹】

 ◇緊急時避難準備区域

 事故が起きた福島第1原発の半径20~30キロ圏内のうち、年間の累積放射線量が20ミリシーベルトに達しないと想定される地域を対象として、政府が4月22日に設定した。福島県広野町の全域と南相馬市、川内村など2市1町1村の一部で約6万人が対象。居住は可能だが、水素爆発などの緊急時に備え屋内退避や区域外避難の準備が必要。自力での避難が難しい子供、妊婦、要介護者、入院患者は区域内に入らないよう求められている。幼稚園、保育園、小中高校は休校。

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