米国債格下げ:最高位から転落は史上初 金融市場にも影響

2011年8月6日 11時57分 更新:8月6日 12時56分

 【ワシントン斉藤信宏】米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5日、米国債の長期信用格付けを最高水準の「トリプルA」から「ダブルAプラス」に1段階引き下げたと発表した。米国債が最高位から転落するのは史上初めて。格付け大手3社のうち1社が米国債の格下げに踏み切ったことで、「世界で最も安全な投資先」とされてきた米国債の信用に影響することは避けられず、不安定な状態の続く世界の金融市場にも悪影響が及びそうだ。

 週明けの市場で米長期金利が急上昇(米国債価格は急落)する可能性があるほか、ドルの信認低下につながり、外国為替市場で一層の円高・ドル安が進む可能性もある。世界的な景気減速への不安から売り込まれていた世界の株価への悪影響も懸念されており、市場の混乱に拍車がかかる恐れも出てきた。

 米国は現在、14.6兆ドル(約1100兆円)の巨額債務を抱えている。政府債務の上限引き上げ問題は、債務上限引き上げ法の成立により、財政赤字を今後10年間で2.4兆ドル超減らすことで決着したが、S&Pは法律に盛り込まれた財政赤字削減を不十分と判断。中期的な見通しについても依然として「ネガティブ」とし、2年以内に債務が予想より増えた場合には、さらに1段階引き下げる可能性も示唆した。

 一方、米財務省の報道担当者は「(米財政状況に関する)S&Pの算定には2兆ドルの誤りがある」と指摘、格下げ判断に疑問を呈した。米連邦準備制度理事会(FRB)は「米国債やその他の政府関連機関債の安全性になんら変化はない」とのコメントを発表した。

 また、欧米の格付け大手3社のうち、米ムーディーズ・インベスターズ・サービスと欧州系のフィッチ・レーティングスは、債務上限引き上げ法の成立を受けて、米国債の格付けをトリプルAのまま維持すると発表している。

 ◇ことば・格付け会社

 債券や株式を発行する企業や国、自治体などの財務内容や収益力などを分析し、元本支払いの確実性を評価する会社。確実性が高い順にA、B、Cなどの評価を付けている。金融商品のリスクを投資家に分かりやすく示す役割がある一方、米低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題では、リスクの高い証券化商品に安易に高い格付けを与えていたとして批判を浴びた。

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