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「好きになってね!頼むよ!」ラジオ業界が一致団結して必死のキャンペーン

BLOGOS 編集部 10月4日(火)16時37分配信

10月2日日曜日、第1回NHK・民放連共同ラジオキャンペーン「はじめまして、ラジオです。」が開催された。AKB48、オードリー、ももいろクローバーZをはじめ、各ラジオ局の人気パーソナリティが渋谷に集結し、若者のラジオ離れをなんとか食い止めようと、NHKと在京ラジオが協力しての一大キャンペーンとなった。民放側の総合プロデューサー、TBSラジオの加藤嘉一社長にお話を伺った【取材・構成 BLOGOS編集部 田野幸伸】


イベント開催のきっかけ
加藤:今回のイベントは、NHK、民放が一緒になってラジオの将来を考える場が必要だろうという所から始まった。そこではデジタルラジオを念頭に置いた形で、将来のラジオに対して意見交換をし、アナログラジオについての意見交換もした。そこで様々な現状課題が見えてきた。このイベント、当初は今年の5月に予定されていた。しかし、3月11日の東日本大震災で、ラジオ局は災害報道に注力。余震も続く中、秋に延期となった。

−パソコンでラジオが聴けるradikoや、NHK版radiko「らじる★らじる」も出来ましたが、若い世代への影響はありましたか?

加藤:今のところ、数値に表れる、客観的な現象は起きていない。まだまだこれからだと思う。今回キャンペーンに当たって、実際の高校生にもいろいろ話を聞いて見たが、マイパソコンはまだ持っていない。家族で1台という家庭が多い。スマートフォンに関してはほぼ持っていない。彼らの最大のツールは携帯電話(ガラケー)。radikoもNHKのらじるも、すぐに高校生に訴求するツールではない。スマートフォンの価格が下がり、高校生の小遣いでも買えるようになれば、あっという間に普及するでしょうけれども。radikoと高校生の相性は、現状まだ良いわけではない。アナログラジオが我々と彼らをつなぐツール。したがって、都市部を中心とした難聴問題は、モロに影響が出てくる課題である。


MCは山里亮太(南海キャンディーズ)

都内でラジオが聞こえない
−難聴問題について、業界全体で何とかする対策はあるのか。
※難聴問題・・・高層ビルの増加、建物の鉄筋化で、都市部でラジオが聞こえにくくなっている

加藤:アナログラジオの難聴問題を解決する術はないですよ。だから、デジタルへの緩やかな以降は必然必至。(デジタルとアナログの)サイマル放送がいつまで続くかが、各放送事業者の経営に深く関わってくる。ただ、TVのように国策としてデジタル化を国がやってはくれませんので、今後苦しい課題になってくるでしょう。かといって、アナログの受信環境をよくしようとしても、無理ですよ。この社屋の中(赤坂・TBSビックハット)でも窓際に行かないとラジオは聞けませんから。やっと聞こえたところで、今、iPodだなんだと、いい音で聞けるものがたくさんある中で、何でわざわざ、悪い音のものを聞かなきゃいけないんだ、ってなりますよね。

1回目は高校生をメインターゲットにしたのも、やがて大学生になり、社会人になり、だんだんパソコンやスマートフォンというツールに近くなっていくから。まずはラジオという物の面白さを1回も聞いたことのない人達、相当数に対して、ラジオは音が悪いけれども、TVに勝るとも劣らない面白さがあるんだよという事を知ってもらって、その彼らが、年を重ねて、ラジオがよりいい音で受信できる選択肢(デジタルラジオ)が広がっていった時に、そのままラジオを聴き続けてもらうことが必要だと思っています。

それから、僕なんかは小学校4年生の頃から深夜ラジオを聴いていて、時代が変わったと言われればそれまでなんだけど、高校の頃に一番ラジオというものに刺激と知識をもらった記憶があるんです。それから40年近く経っていますが、それが普遍であれば、ラジオの面白さを伝えるべき相手はまず高校生ではないかと思ったのです。


NHK青井実アナウンサー・指原莉乃(AKB48)


震災でワンセグに負けたラジオ
−民放連の広瀬会長から「今回の震災では、阪神大震災の時と比べて、ラジオが役に立たなかった」という発言がありましたが、「ラジオ=災害」というメディアの役割をPRしてきた業界としてどう受け止めているのか。

加藤:理想は、国民一人ひとりが一台ずつ、携帯ラジオを持ってるという状況を作るということ。いつ何時起こるかわからない災害、特に地震は。家にラジオがあるべきだとも思いますが、どこで災害が起きるか分からない。できれば電池も1週間分くらい、携帯しておいてほしい。そのことはラジオ局側がいくら言ってもなかなか出来ないことだが、とはいえ、これだけの事が起きて、これだけのものを失ったわけですから、そういった意味では、ラジオ界全体だけでなく、電機メーカーも含めて取り組んでいかなければいけない。携帯電話をポケットに入れたら、同じようにラジオも持ち歩くという必要性を、世論として高めていく必要がある。これも、NHKと民放が協力して出来る事だと思っています。

震災直後、量販店でラジオが売切れてしまった。電池も売り切れていた。それはそれで、メーカにも責任がある。ラジオ業界、電機メーカー、国が三位一体となって、本当に「ラジオ=災害」というならば、本腰を入れてそこに取り組まないと。もちろん、スマートフォンが普及して、radikoで聞けるようになればいいのですが、まだそこまで全国的に広まっていないので、まずはアナログラジオを「一家に一台」ではなく「一人に一台」にする事です。

これはラジオ業界だけでは出来ないことでしたが、じゃあ、我々が今独自に出来る取り組みと言えば、災害時の情報発信を振り返り、今回どれだけの事が出来て、どれだけの事が足りなかったのか、その総括をする事。今TBSラジオではまとめさせていますが、他局さんもやっているでしょう。(災害報道で)良かったところや、不慣れで、反省しなければならなかったところ、こればっかりはこういう時でないと、(災害用の)マニュアルが作れないですから、全社を上げてまとめている所です。


マルイシティ渋谷特設ステージ ニッポン放送吉田アナ・ももいろクローバーZ


−野球人気の低迷で、ラジオのキラーコンテンツ「ナイター中継」に影響は?

加藤:ナイターはもう「衛星メディア」ですよ。TV・ラジオの地上波のキラーコンテンツではなくなって、BS.CSのキラーコンテンツになった。かつてラジオがナイター中継でなぜ飯を食えたかというと、他に(試合終了までやるメディアが)なかったからですよ。試合開始から終了まで、全部見られるようになった訳ですから、それはTV(地上波)も影響を受ける。唯一車に乗っている方だけが、TV中継が減った分、ラジオをお聞きいただけるかなと。CS・BSはまだカーナビで映りませんから。


渋谷パルコ前特設ステージ 文化放送K太郎・桐谷美玲


ラジオって何ですか?
−若者のラジオ離れを防ぐためにラジオ局側がやっている事は?

加藤:受信環境もよろしくないし、我々が学生の頃は少なくとも音楽だけは、洋楽邦楽問わず、一番新しい情報はラジオだった、今はいろんな所から情報が手に入る。そういうメディア環境の変化もあるし、若い子にラジオの魅力はなくなってしまったのかなと思うものの、問題は、色々調べて話を聞いていくと、とにかくラジオを聴いたことがないんですよね。もっと言うと、ラジオを知らないんですよ。「ラジオって何ですか?」って言う。それが今の現実、しょうがない。だとすると、我々は嫌われたわけではない。みんなが1回2回聞いてみて、「もうラジオはいいです、私たちには関係ない」って言うなら敗北宣言しなければならない状況ですけれども、言って見れば戦ってもいない中で、同じ土俵で相撲を取ったこともない相手なんです。各局それぞれ放送している番組の中で、彼らが「面白い」と思ってもらえる可能性がある番組はかなりあると思うんです。まずは知ってもらいたい。ラジオという存在を。TV・新聞と同列にあるものなんだよと。それで面白いなら聞いてくれればいいし、つまらなかったなら我々の努力不足。


各ラジオ局の人気パーソナリティが勢ぞろい。左からTBS小島慶子・文化放送K太郎・ニッポン放送吉田尚記・TOKYO FMやまだひさし・J-WAVEジョン・カビラ・NHK青井実

だから今回のキャンペーンのイベントは、各番組のレギュラーの延長線上のものが多い。そこに触れてもらって「YES」なのか「NO」なのか、NOなら仕方が無い事。キャンペーンを通じて各局が「聞かないやつが悪いんだ」なんてふんぞり返っていることをなくすのは当然として、親近感を持ってもらうために何かが足りなかった所を、来年の4月改編以降、前向きに取り組んで行くことが必要になるでしょう。

若者のラジオ離れは未来永劫続く課題だと思うんです。だから今回1回イベントをやったところでどうなる事ではなくて。いつもやってなきゃいけないんですよ。これを一過性のものにせず、次につなげていく。10年、20年と取り組んでいくべきもの。だから今、第2回についても検討しているところです。

ラジオ業界は10年、20年、30年というタームでの、リスナーを開拓する努力が足りなかったんじゃないかと思う。ラジオの中心は中高年。じゃあそこに絞って番組を作っていくと、その後が途切れるわけですよ。30代40代の人にどれだけラジオが浸透しているのか。学生の間にラジオの魅力に触れてほしいし、触れたときに最低限面白いと思ってもらえるものを作り続けなければいけない。そこでつまらないと思われたらそれは我々の責任。その努力を繰り返す必要がある。最大に効果があるのは、学生の場合はやはり「口コミ」口の端に上らない話題はダメなんです。タレントさんだろうが、歌だろうが。今、教室でラジオを聞いているのは1人か2人だそうです。非常に疎外感を感じているそうです。

ただ、ラジオが本当にやるべき事は、「あの芸人さんのラジオ面白いね!」ではダメなんです。「今頃あの人が面白いとか言ってるの?」ってなるべきで、誰よりも何処よりも新しい情報をラジオは伝えなけばいけないはずなのに、TVで十分「面白い」って認知された人をラジオが後で使うなんて現象が起きている。これが本当に良くない。僕が学生時代、なぜラジオを聞いていたかというと、TVでは絶対聞けない話をラジオで聴けたから。TVより早く最新の楽曲が聴けたから。そこを各ラジオ局がどれだけ本気で考えているのか。リードする側に立つべきで、我々が(情報を)後追いしてちゃ、そんなメディア栄えるわけないですよね。


文化放送・のん子とのび太のアニメスクランブル


TVのおさがりではダメ
ビックリしたのがラジオに来て、(加藤社長は2年半前にTBS本体からTBSラジオ&コミュニケーションズ社長に就任)ウチ(TBSラジオ)の深夜番組表を見たときに(JUNK)、これはTVで売れてる連中じゃないかと。すごく不思議で、なんでこんな人使ってるのって編成に聞きましたね。素朴な疑問で。何のためなの、この人たちをどうしたいの、十分売れてるし、お金も稼いでいるだろって。この人たちに貴重な時間を与えて、何のために番組やってるのって。その後、ガラっと変えたんですけど、まだそういう並びになっているんですよ。(JUNK 月・伊集院光 火・爆笑問題 水・山里亮太(南海キャンディーズ)木・おぎやはぎ 金・バナナマン)見つけてくるのがラジオだと僕は思うので。


リスナーとの記念撮影に気軽に応じる山里亮太、こういったパーソナリティの「身近さ」もラジオの魅力の一つ


でも各局忙しくて、なかなか街に出る時間がないんですよね。本当はラジオのディレクターとかプロデューサーとかは毎晩ライブに行ったり芝居観たりして、いいなと思ったらノーアポでも楽屋行って話してくるとかやんなきゃいけない。で、ラジオで売れたらTVに差し上げる。それが本来の流れだったのに、今はTVからいただいてるっていうのが理解できなくて。伊集院君なんていうのはラジオから出てきて、TVに行って、またラジオに戻ってきて努力しているからいいと思うんですけど。やっぱりそういう人を探す努力も含めて、ラジオ側にやらなければいけない事はたくさんあると思うので。誰も知らない人を堂々と面白いでしょって番組を作って出していく。それを聞いた人は「初めて知る」という特権を得ることが出来る。あの番組を聴いていれば、誰も知らない情報を得られるぞって。そういう番組がもっとあってもいいと思うんですけれどね。

−ラジオが、生き残っていくためには?

加藤:ラジオへの接触回数を増やすことと、接触してもらった時に好意を持ってもらえる物を放送しておくこと。それに尽きるでしょうね。

−ありがとうございました。


オードリーのオールナイトニッポン

多メディア時代におけるラジオの存在価値
誰も知らない才能を最初に知ることができ、売れてきたら大きなメディアに羽ばたいていく。このサイクルはニコニコ動画から次々にスターが生まれていく今のサイクルの元祖だ。ディレクターが多忙でスターを探せない間に、視聴者が自らスターを生み出す時代になってしまった。

ラジオのデジタル化についても、まだ国として方針は固まっていない。TVの地上アナログ停波で空き地となった、1〜3チャンネル(v-Low)を使って放送を行う方針だが、社団法人デジタルラジオ推進協会に取材したところ、時期も含め具体的には何も決まっていないという。

・これからのデジタルラジオ−社団法人デジタルラジオ推進協会

加藤社長にお話を伺っていて一つ感じたのは、ラジオが聴かれなくなった原因のもう一つ、「不便」という概念がない、という事だ。正確に言えば、他のサービスが便利になりすぎて、いつでも何処でも最新の情報を手に入れられるようになってしまった。番組の時間にラジオを付けて待機して、いつその情報が流れてくるかも分からないでは、多忙な現在社会において、客足が遠のくのは当然である。筆者もラジオ業界に8年半いて、様々な番組を制作させてもらった。今のラジオが昔より面白くないとは全く思わない。ただ単に、ラジオを聞く時間が21世紀にはないのだ。今の高校生は片時も携帯電話を離さない。ケータイより便利にならなくては、選択肢から外れるのは必然なのである。ラジオはつまらなくなったのではなく、相対的に不便になってしまったのだ。


会場にはラジオを必要としている、目の不自由な方も来場していた


ラジオ業界がしなければならないのは「新規」のお客さんにいかに知ってもらうか。今回会場には、若いお客さんも多数来ていた。来ていたが、そのほとんどは普段ラジオを聴いている「リスナー」であり、「はじめまして」ではなかった。これではファン感謝祭のようなものだ。しかし、今回いきなり新規のお客さんが詰め掛けてくれるとは、主催者側も思ってはいなかっただろう。

ニッポン放送の戸田プロデューサーは、「感覚としてはロッキンオンやサマソニのような、ラジオのフェス。渋谷というフェスティバル性のあるところで、様々なプログラムを集めてお祭りをやったときに、どんなイメージが膨らんでくるか。そういうことを味わってもらえると、次につながるのではないか。」と言っていた。

今回イベントに参加した中高生が学校で友達に「ラジオのフェス、面白かった、次は一緒に行こう」と誘うもよし、ブログに感想を書いて広めるもよし、このイベントが毎年行われ、盛り上がっていく事が、将来的にラジオの生き残りを左右する事になる。それほど大切な第一歩だと感じた。


やまだひさしのラジアンリミテッドF


最後に、マルイシティ前ステージで公開録音をしていた、TFMのやまだひさしが「みんな、ラジオを好きになってくれよ!頼むよ!」と言ってステージを去っていったのが印象的だった。

ラジオはまだ嫌われていない。マイナスからではなく、ゼロからのスタートなのだ。

最終更新:10月4日(火)18時59分

BLOGOS 編集部

 

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